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2009年4月27日 (月)

ウォール街が死んだ週末

最近「リーマンが暴走して破綻したから世界が大混乱に陥った」といった論調を目にします。しかしこの説明は必ずしも正確ではありません。

一つには、破綻したのはリーマンでしたが、昨年後半はウォール街全体が崩壊の瀬戸際にありました。

(ジョージ・ソロスのように金融システムは既に崩壊してしまっており、「今や生命維持装置で生かされているだけ」と見る人もいます。)

* * *

金融機関の仕事のうち、大きく占める部分が、「リスクを管理する」ことです。

にもかかわらず、欧米各国の金融機関が「リスクの管理」ということに完全に失敗してしまった。。。

これはいったいどういうことなのでしょうか。

学者の方とお話しすると、「ロングテール」とか「不可逆性」といった難しい説明になってしまいますが、証券化商品の組成に際して、金融工学を駆使してコントロールしようとしたリスクは、主として「信用リスク」が中心でした。

これは債務者が支払えなくなるリスクです。債権債務に優先劣後構造を人為的につけ、信用リスクの高いものには金利を高くして投資家に販売する・・。

しかし今回問題となったのは証券化商品の流動性リスク、もっと別の言葉で言うと「信認のリスク」です。(もちろん根底には信用リスクの問題があります。つまり住宅バブルが続かなくなったことによって生じた信用リスクの増大が原因となって、証券化商品の流動性リスク、信認リスクに結びついていったのですが・・)。

こういった21世紀型のリスクに対する管理の体制を世界の金融機関と金融監督当局は更に一層磨きをかけていかなくてはなりません。

* * *

ところで、リーマン破綻の過程を克明に綴ったのが「ウォール街が死んだ週末」と題するウォールストリートジャーナルの特集記事です(『こちら』をクリックしてみてください)。

当時ウォール街の各社とも一様に同様な危機に瀕していたことが分かります。英文でチョッと読み応えがありますが、臨場感が伝わってくる記事です。

* * *

リーマンブラザーズ破綻を扱った経済ドキュメンタリー・テレビ番組『ルビコンの決断』(4月23日放送分)は、連休中の5月6日昼12時からテレビ東京で再放送されます。

(BSジャパンでは5月6日夜10時から再放送)。

* * *

バンカメによるメリル買収の背景には財務省、FRBからのプレッシャーがあったと報道され始めました。注目のバンカメ株主総会は今週火曜日(アメリカ時間)です。

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2009年4月23日 (木)

私のまだ生れていない息子はパーキンソン病になる危険性を50%受け継ぎます

『23andMe』というの名の会社があります(『こちら』をクリックしてください)。

日本語に訳すと『23と私』となりますが、なぜ『23』なのでしょうか。

実は23というのはヒトの染色体の対の数なんですね。

米国のタイムという雑誌は毎年その年で最も優れた発明(Time's Best Invention)を発表していますが、2008年度でトップ(詳しくは『こちら』)に選ばれたのが、この会社が提供するサービスです。

(ちなみにこの年の2位はテスラの電気自動車で、第3位がNASAの月探査衛星Lunar Reconnaissance Orbiter た)。

さて『23andMe』という会社は何をする会社なのでしょうか。

ひとことで言うと、オンライン上の遺伝子診断サービス会社です。

自分の遺伝子情報を知りたいと思う人は、この会社のサイトに行きクリックをすることでサービスを申し込みます(料金は399ドル。日本円で約4万円です)。

(注)現在この会社はアメリカ、カナダ、ヨーロッパ、中近東(イスラエル)、アジア(シンガポール)など世界50数カ国からの申し込みを受け付けていますが、日本からの申し込みはまだ受け付けていません。

オンライン上での申し込みが終了すると間もなくして会社から診断キットが送られてきます。中には試験管が同封されていますので、試験管に唾液を入れて会社に送り返します。すると数週間後に遺伝子の診断結果が送り返されてくるといった流れになります。

実際にサービスを受けた人の日本語のブログがあります(↓)ので覘いてみてください(但し少し前のブログなので価格が1000ドルの時のものです。今では399ドルです)。

『DNA検査結果のブログ』(←こちら)

具体的にどの程度のことを診断してくれて、何が分かるのかについては、上記のタイム誌が1ページの大きなイラスト図にまとめていますので、『こちら』をご覧下さい。

例えば、あなたはアルコールを飲むと顔が赤くなりやすいとか、逆に赤くなりにくいといった情報のほか、30歳ぐらいで頭の毛が薄くなる傾向があるとか、50歳ぐらいで糖尿病になる確率、癌にかかるとしたら、どこの部位に気をつけなくてはならないか、などなど・・。

2008年11月10日のタイム誌の記事によると、記者が23andMeの創業者(共同創業者の一人)Anne Wojcickiにインタビューした時、彼女は妊娠中で年末にも出産の予定でした。

『私のまだ生れていない息子はパーキンソン病になる高い危険性を50%の確率で遺伝的に受け継ぐことになります』

このように創業者のAnne Wojcickiは記者に語りました。

実は遺伝子情報を調べて知らせてくれる会社は他にもあります(日本でも一部のクリニックで同様のサービスを受けられるといった話を耳にしました。)

しかし23andMeのように、安価に、手軽に、そして広範な範囲にわたって、信頼性の高いテスト結果を提供してくれる会社は他にはなかなか見当たりません。

さて、この会社はまだ未上場で財務データなど明らかではないため、これから先は私の推測になります。

おそらく当社は399ドルの診断料で儲けようとしているのではない・・399ドルというのはほぼコストに見合う金額なのではないでしょうか。このように私には思えるのです。

極めて安価にこのサービスを提供することにより、会社はたくさんの人々から遺伝子情報をまず集めてしまう。

一人ひとりの遺伝子情報はプライバシーに係わるデータですが、たくさんの人々のマス(大数)としての遺伝子情報データはプライバシーの制約から外れ、これを例えば新薬の開発、薬の副作用の研究などに利用したいという全世界の製薬会社に売却することが出来るかもしれません。

グーグルが最初に登場したとき、彼らは極めて質の高い検索サービスを無料で提供しました。これまでは有料であったメール・ソフト、表計算ソフト、文章作成ソフトなども無料化しました。そして多くの人々にグーグルのサービスを利用させることにより、(その先で)例えば検索結果に基づくターゲット広告の分野で、収益を得るビジネスを確立しました。

いろいろな人にまず利用してもらって、多くの人のデータを集めて、それを収益化することを考える。

23andMeのアプローチはなんとなくグーグル的です。

実はこの会社の資本金は約8億9千万円($8.9million)。このうち約半分を出資しているのはグーグルです。

23andMeの創業者(の内の一人)Anne Wojcickiは、エール大学(Yale Univ.)で生物学を学んだ後、バイオテクノロジーの会社などを対象としたベンチャーキャピタル投資の業務に10年間従事しました。そして23andMeをもう一人の創業者Linda Aveyと共に立ち上げたのです。

そう言えば、グーグルを立ち上げたのも2人の共同創業者(セルゲイ・ブリンとラリー・ペイジ)でした。

もうひとつ。

23andMeの創業者Anne Wojcickiはグーグルの創業者セルゲイ・ブリンと結婚していて、二人は夫婦の関係にあります。

* * *

話は少し変わりますがリーマンショックのあった2008年1年間を通じて日経平均は4割下落し、ダウ平均は3割下落しました。

実は1973年10月から翌年1974年10月までの1年間でダウ平均株価は4割下落しています(オイル・ショックです)。

そしてこの時の不況のなかで新しいビジネスの胎動が起きました  (1975年マイクロソフト創業、1976年アップル創業)。

いままたアメリカで 23andMe のような会社が羽ばたこうとしています。日本もがんばらないと・・・。

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2009年4月20日 (月)

NHKスペシャル

NHKスペシャル『マネー資本主義』を見ましたが、正直がっかりしました。

この番組では、いろいろな方にインタビューして、それをひとつの番組にまとめているのですが、インタビューに答える一人ひとりの方のコメントは正確でも、これを繋ぎ合わせる際に、ある種の無理が働き、まとまったものとして見ると、間違ったものになってしまっています。

(1)この番組を作った方は、おそらく自己勘定取引というものを誤解していて、モーゲージ債の単純な引受・販売を自己勘定取引と呼ぶくだりがあります。

確かに引受業務にはリスクが伴いますが、自己のキャピタル(資本)を使って積極的にリスク(ポジション)を取りに行く自己勘定取引(Proprietary Trading)と、引受とは一般的には分けて考えています。(『こちら』の記事などを参考。)

投資銀行は昔から引受業務を行っていたのであり [日露戦争の時、日本国債を引き受けたのも投資銀行であるところのクーン・ローブ(リーマンの前身のひとつ)です] 、引受業務はモーゲージ債が出発点となったわけでも、ソロモンのGutfreund氏が始めたわけでもありません。

(2)番組ではソロモンのGutfreund氏に取材が出来たからなのでしょうか、『投資銀行が彼の時代から変遷した』と結論して、番組を構成していますが、今回の金融危機の主因をトレーディングに求めるには無理があります。

全てをマネーゲームで解説できれば、番組的には楽なのでしょうが、証券化商品の価格喪失は(マネーゲームのトレーディングとは別物で)昔ながらの切り口(マネー・ゲーム、トレーディング)で切るにはやはり無理があります。

(3)『レバレッジを40倍に高めた』との解説も、いったいどこからそんな数字を引っ張ってきたのか、理解できません。(2007年11月末のレバレッジ:リーマン、31; モルスタ、33; ゴールドマン、26)。

(4)サブプライムローンは全体でも残高が約130兆円。それがなぜ今回の金融危機の不良債権額(一説には800兆円とも言われる)になるのか、その辺のところがこの番組を見てもわかりません(おそらく番組制作者も理解していないのではないでしょうか・・)。

NHKは1998年ころ『マネー革命』というNHKスペシャル4回シリーズを作りました。当時、私は興銀にいて番組制作に協力しました(番組のEnd Creditで私の名前も制作協力者として出てきます)。

今回はいったい誰が協力したのかとEnd Creditを探しましたが、誰の名もありませんでした。

かなりの制作資金を使って、せっかくJoe Perellaなどの大物にインタビューしたのですから、これを繋ぎ合わせる時には、特別な色をつけないで繋ぎ合わせて欲しかったと思います。

何が今回の金融恐慌を引き起こしたのか・・その原因に切り込まなければ、人類はまた同じ過ちをおかしてしまうでしょう。人々の強欲さとマネーの暴走が根底にあるのは事実でしょうが、そこで終わってしまっては思考停止につながりかねません。

資本主義を前提とする以上、人々の欲望(生命欲、知識欲、物欲)が経済行為の裏にあることを認め、これを適切にコントロールして、社会全体の向上・成長に結び付けるようにする必要があります。

金融(マネー)についても、どうして証券化商品の価格が喪失してしまったのか。何をどうコントロールすれば良かったのか。その辺についての検証が必要です。

リーマンのファルド会長が議会に呼ばれ、『今でも、これ以上、どう行動すべきであったか、やってきたこと以上のことがはたして出来たのか、毎日、寝ないで考えているが分からない』と述べる下りがあります。

金融商品の信用リスク(ディフォールト・リスク)だけでなく、流動性リスク、信認のリスクをどうコントロールするか・・・・・。この考察が重要になります。

言うまでも無く、次に来るのは、国債の流動性リスク、信認のリスクの問題・・、そして、その次に来るのは、通貨の流動性リスク、信認のリスクだからです。

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2009年4月17日 (金)

Did you know?

私は高校時代にAFSで一年間米国ニューポート・ビーチ市Corona del Mar High Schoolに留学したのですが、その時のクラスメートの Craig が今、経営コンサルタントをしています。

彼から、Mind Boggling と題するメールが送られてきました。

アメリカで、ある日系の会社が次のビデオを役員会で上映し話題になっているとのこと。

約5分のビデオです。(ビデオは『こちら』をクリックしてください。)

なお YouTube に寄せられたコメントによるとビデオの中のデータは必ずしも全てが正確であるとは言えないようです。

そうは言っても驚くべき内容で、確かに Mind Boggling です。

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2009年4月16日 (木)

Online Class

先日ご紹介した Khan Academy のサイト(『こちら』)では、数学、物理、ファイナンスなどの “授業” を YouTube の上で無料で視聴することが出来ます。

このような Online Class は米国を中心に急速に広がりつつありますが、出版の世界でも、ネットを活用して、Audiobook (ダウンロード)、CDの形でコンテンツを提供することが多くなってきました。

手前味噌になりますが、『こちら』は私も参加しているビジネス講座のサイトです。CD、もしくはダウンロードの形でコンテンツを取得する形式(有料)となります。

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2009年4月15日 (水)

ウォール街の高額報酬をどう考えるか

昨日のウォールストリート・ジャーナル紙(『こちら』)によると、ゴールドマンには約3万人の社員がいますが、このうち953名(社員30名につき1人の割合)に対して、リーマン・ショックのあった昨年、各人1億円以上の給与・賞与が支払われました。

メリルリンチでは 696名の社員がそれぞれ1億円以上を貰いました。

『1億円以上』と言っても全額現金ではなく大半は株(会社の株式、ストック・オプション)による支給です。

ところで、TARP(Troubled Asset Relief Program)のカネを100億ドル(1兆円)受け入れているゴールドマンにとって今年はこのような高額の給与・賞与を社員に支払うことは出来にくくなります。

であれば、『TARPのカネなど返してしまえ・・』ということなのでしょう。

現在ゴールドマンは5000億円(50億ドル)の増資を計画。と同時に『TARPのカネを返済させて欲しい』と政府に申し入れるとのことです。

ただ米政府としては『はい、そうですか』と簡単にゴールドマンからの返済を受け付けるわけにはいきません。返済することの出来ない弱体金融機関が数多くいる以上、一部の強者からの返済を受け入れてしまえば、どの金融機関が弱体であるか、より一層鮮明になってしまうからです。

さらに政府としては国民感情にも配慮しなくてはなりません。

『これだけの問題を起こしておいて1億円以上の高額報酬を払うとは納得できない』という国民感情です。

一方、ゴールドマンの側にしてみれば、儲ける社員をそれなりに処遇しなければその人たちは辞めていって自分で会社を興してしまう。そのことを恐れるわけです。

あるいは米国には5大投資銀行と言われた金融機関以外にも、ラザード・フレールのような名門投資銀行やブティックと称される投資銀行がたくさんありますから、優秀な人たちはそちらに移ってしまう。こういった懸念もあるわけです。

過去にもファーストボストンを骨抜きのような状態にしてしまったワサースタイン・ペレラの例もあります(【注】スター・プレイヤーであったワサースタインとペレラが独立して新会社を作ってしまった。)

実際、M&Aのアドバイス業務などは、出来る人がやれば、きちんとディールをまとめあげ、顧客に感謝されますが、出来ない人がアドバイザーになるとグチャグチャにこね回された挙句、ディールは仕上がらず、最終的には訴訟の嵐になってしまう・・・

こういったことを考えていくと、個々人の報酬についてはマーケット・メカニズムを働かせて決め、国民感情への配慮の点は所得税の累進性をきつくするなどの方策で対応するしかないと思うのですが、はたしてゴールドマンと米政府との綱引きは今後どうような展開を示すのでしょうか。

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2009年4月14日 (火)

資産運用について

今日のような難しい時代にあって、どうように資産運用を考えれば良いのでしょうか。

先般Nikkei Net から取材を受け、それが今回記事になりましたので、ご関心のある方は、『こちら』をご覧下さい。

実は Nikkei Net からは昨年にも取材を受けており、この時の記事についても(今までこのブログではご紹介してきませんでしたが)、今でもなおネット上で見ることができます。下記の上段が昨年の記事、下段が今回の記事です(クリックすれば記事に行きつきます)。

『リーマンショックについて』(昨年12月18日)

『資産運用について』(今年4月14日)

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AIG

アメリカの5大投資銀行は破綻するか(リーマン)、買収されるか(メリル、ベアー)、銀行持株会社に業態変更(GS、モルスタ)しました。商業銀行もCitiを初め、どこも政府から多大な支援を受けています。

一方、保険会社でニュースになるのは世界最大の保険会社であったAIGだけです。

なぜAIGだけが多大なCredit Default Swapにのめり込んで行ったのでしょうか。

何人かの業界関係者の話では、これは一種の人災で1968-2005にかけてCEOを務めたMaurice Greenberg 氏の独裁的な経営によることが多いとのこと。ニュースウィーク誌の最新号などでもその種のニュアンスの記事が少しずつ出始めました。

Greenberg 氏は2005年、5億ドルの架空の損失引当金計上による粉飾、保険および証券法違反などの容疑で起訴されましたが、最終的には同氏に対する全ての criminal charges は dropped され、現在ではニューヨークのAttorney General's officeが民事で同氏に対して訴訟を起こしています。

『なぜAIGだけが・・』、『AIGではいったい何が起きたのか』については今後少しずつ明らかになっていくと思います。

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2009年4月13日 (月)

Movie Trailer

映画の予告のことを Trailer と言いますが、ヴィヴァルディの四季の音楽を効果的に使ったのが、『これ』

先日ご紹介した22年前の映画『ウォール街』です。

携帯電話機が異様に大きかったりワールドトレードセンターのビルを見ることが出来たり、時間の経過を感じさせますが、今回の金融危機を扱った『ウォール街Ⅱ』をハリウッドが作ることを期待したいとの投書がYouTube には多く寄せられていました。

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2009年4月12日 (日)

PPIP (Public-Private Investment Plan)   その2

PPIPが狙いとするのは、現在の金融制度を維持しながら不良資産を銀行のバランスシートから外すことです。

『マーケットメカニズムを使った官民共同のプログラム』と言えば聞こえはいいのですが、このスキームで『民』のところに、不良資産を有する銀行(もしくは銀行が影響力を有するヘッジファンド)の介在を許してしまうと、銀行による国民の税金収奪スキームにほかならなくなってしまう。そういった懸念を示していたのが、昨日紹介したYouTubeでした。

いろいろと問題点を指摘されるPPIPに対して、いっそのこと銀行を国有化してしまった方が上手く行くのではないか、こう主張する人も少なくありません。

日本でも日本長期信用銀行や、りそな銀行などまず国有化してから処理を行うことがなされてきました。

実は米国でも銀行国有化の経験があります。

コンチネンタル・イリノイ銀行です。

しかしこれに関して当時の当事者が銀行国有化の問題点を指摘して今、米国で話題になっています。

『Trust me. I've done this before.』との副題で William Isaac 氏がウォールストリート・ジャーナル紙に寄稿した一文。

2月24日に寄稿されたこの文章は原文がまだネットに載っていて『こちら』で見ることが出来ます。

アイザック氏は当時のFDIC総裁。

同氏は寄稿した記事の中で、

『 ① コンチネンタル・イリノイ銀行は国有化した後、売却するのに7年もかかったこと、② 当時のコンチネンタル・イリノイ銀行が全米の銀行に占める割合は(総資産ベースで)2%にも満たなかったが、現在の10大銀行は全米銀行資産総額の3分の2を占めること』

などを指摘しています。

PPIPに期待するのか、すっきりと国有化してしまった方がいいのか、PPIPの細部が明らかになるまでは簡単に結論付けることは出来ないようです。

なおPPIPに関してはフェルドスタイン氏がウォールストリート・ジャーナル紙に寄稿した一文も参考になります(『こちら』です)。

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2009年4月11日 (土)

PPIP (Public-Private Investment Plan)   その1

3月9日に 6,547ドルをつけたダウ平均株価は1ヶ月で23%上昇し、4月9日には 8,083ドルをつけています。

鍵は PPIP (Public-Private Investment Plan)。日本語では官民投資プログラムなどと訳されています。

さてこのPPIPについてはSalman Khan さんというシリコンバレー在住の投資家(ハーバードMBA。Khan Academyの主催者で『CNNでも紹介』されている)が、YouTube上で興味深いレクチャーを展開しています。

12分間のビデオです。英語ですが、黒板に書くような画像で分かりやすく説明されていますので、是非 『こちら』 をどうぞ。

今後株価の回復が本格化するのか、あるいは今回の上昇は陽炎(かげろう)のようにはかなく終わってしまうのか、鍵を握るのはPPIPだけに多くの方にご覧になって頂きたいと思います。

私の次回のブログでもこのPPIPについて引き続き見ていきます。

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2009年4月10日 (金)

潮の変わり目

先日、潮の変わり目について書きましたが、私はここ20年間における潮の変わり目は次の4時点ではないかと思っています。

① 1989年11月9日 

ベルリンの壁崩壊(東西冷戦終結)

② 1995年8月24日

ウィンドウズ95発売(IT時代幕開け)

③ 2001年9月11日

同時多発テロ(地政学リスク増大)

④ 2008年9月15日

リーマン破綻(金融恐慌)

* * *

ほぼ6~7年毎に大きな変化が起きてきました。

そしてここでのポイントは不可逆性です。

ベルリンの壁崩壊によって、世界は基本的に昔の米ソ冷戦時代には戻らない。

ウィンドウズ95によって、IT時代は決定的なものになった。

同じように我々はリーマン破綻前の時代に戻ることはない・・。

最近「資産価格はまた上がるだろう」とか、「ウォール街はまた別のバブルを見つけるだろう」といった発言が一部に見られるようになってきましたが、

リーマン破綻前の金融バブルの時代(資産価格高騰、レバレッジ増大、ファンド資本主義)に戻ることは(少なくとも当面の間は)ないと思っています。

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2009年4月 9日 (木)

大阪経済大学

今年も大阪経済大学で講師を務めます(『投資戦略論』)。

2007年に開始して今年で3年目。

6月から始まる春Ⅱ学期を、

(1)経済評論家の三原淳雄さん

(2)大和総研の熊谷亮丸シニアエコノミスト

(3)私

(4)みずほ証券の高田創投資戦略部長兼チーフ・ストラジスト

の順で講義していきます。

ご関心にのある方は、『こちら』(時間割)もしくは『こちら』をご参照下さい。

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2009年4月 8日 (水)

このインタビューは面白い

いつまでネットにアップされているのか分かりませんが、現在のマーケットをどう見るか、今後どうなっていくのか、『予測をするのは得意じゃない』と語るジョージ・ソロスが5分間で多くの価値ある示唆を語ります。(英語なのが残念です。下記↓をクリックしてみて下さい)。

http://finance.yahoo.com/tech-ticker/article/226586/Soros-%22Danger-of-Collapse-Has-Passed%22-But-Stock-Rally-Not-Sustainable?tickers=%5Edji,%5Egspc,xlf?sec=topStories&pos=2&asset=TBD&ccode=TBD

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2009年4月 7日 (火)

金融立国の脆弱性

仕事でスイスのファンドと付き合いがあり、1週間に1度はスイスと電話で話しています。

スイスと言えば金融立国。

同じ金融立国であったアイスランドが窮地に陥っていることもあり、スイスの人たちもまた今回の金融危機にはかなり神経を尖らせています。

ところで、アイスランドとスイスについては、これまでの著作(『リーマン恐慌』『金融恐慌後のサバイバルマネー術』)で書いてきたので、

ここではイギリスについて少しだけ見てみましょう。

水産業中心のアイスランドや、時計・医薬(ロシュ)などに産業が限られるスイスと違って、イギリスには裾野の広い産業があります。

例えば自動車産業。

しかし今年の2月の英国の自動車販売台数は59,777台で前年同月比6割減(詳しくは『こちら』。イギリス自動車製造販売協会は『こちら』)。

ひどいと言われた日本でさえ前年同月比3割減です(詳しくは『こちら』)ので、彼らの厳しさはその2倍ということになります。

そして金融の部分。

ロイヤルバンク・オブ・スコットランドとロイズの2行の不良債権額は、81兆円(『こちら』)。

これはイギリスのGDPの3分の1の金額です。

結果的にポンドは対ドルで1年間で25%下落(2.0ドル→1.5ドル)。

Gbp_2

金融危機が各国に及ぼす影響についてはまだまだ目が放せません。

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2009年4月 6日 (月)

インベストメント・バイカー

個人投資家が投資を成功させるポイントは流れを読むことです。

これは日々のニュースを追っているだけではつかめません。

鳥瞰することが重要です。

より長い時間軸を持ち、より広い地理感覚(他国との比較)を磨く。。。

「インベストメント・バイカー」(邦題『冒険投資家ジム・ロジャーズ世界バイク紀行』)の著者であるジム・ロジャーズと10年ほど前に一緒に食事をした時のことは、『金融恐慌後のサバイバル・マネー術』の中で書きました。

ある放送局の敏腕プロデューサーがこの食事会をアレンジしてくれたのです。

バイクや自動車を改造して世界中を走り回り、世界各地の実情を肌で感じることを信条とするこの投資家に私は日本の印象を聞いてみました。

『人々がとても綺麗なものを着ている(People dress very nicely.)』

確かに10年前は、中国などのアジア諸国と違って、街を行く日本の人々は質の高いものを着ていました。

しかし・・

『最近の若い人はおしゃれをしないの。街を行く人々の格好を良く見て下さい』

これはファッション関連のプレス・マネジメントの会社社長Sさんの言葉。(Sさんとは毎月1回の勉強会で一緒になります。)

ファッションデザイナーのIさんも同じようなことを言っていました。

桜の咲く時期、千鳥が淵やミッドタウンなどの東京都心の桜の名所には、人々が押しかけ通勤時の駅のホームのように行列をなします。

この光景を今ジム・ロジャーズが見たら、はたして『People dress very nicely.』と言うのでしょうか。

* * *

ロスジェネ世代と言われる今の若い人々。

『プレジデント誌(4月16日号別冊)』によると、

昨年のクリスマスイブにバブル世代がホテルでディナーを食べているとき、ロスジェネ世代は『スパゲッティーが299円の、あの「サイゼリヤ」』で行列をつくっていたとのこと。

もしこれらの現象が、世界同時不況を要因とするものだけではなく、人々の考え方の変化が底流にあるものだとしたら・・。

これが望ましい変化なのか、そうでないのか、議論が分かれるところでしょうが、単純に投資家としての立場で考えた場合、同じ日本株を買うにしても内需株よりも輸出企業株に目を向けたくなってしまいます。

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2009年4月 1日 (水)

愛が生んだ奇跡

ある出版社の社長から

「岩崎さん、こういう本を出しました」

と言って手渡されたのがこの本。

      Photo

『ミシェル・オバマ 愛が生んだ奇跡』

オバマ関連の本は何冊か読んできましたが、ミシェルの本は初めてでした。

デヴィッド・コルバートという米国の作家が書いたこの本は平易な言葉で書かれ、短時間で読めてしまいます。

アメリカにはまだ差別や貧困に苦しみ、将来への希望を失いかけている若い人たちがたくさんいます。

そういった人たちにこの物語を読んで欲しい。

著者の、そしておそらくはミシェルの思いがページの端々から伝わってきます。

私自身、この本で、オバマと同じようにミシェルも「奇跡」を起こした人物であることを知りました。

『ミシェルは奴隷を先祖にもつ史上はじめてのホワイトハウス居住者だ。・・バラクでさえこれに当てはまらない。』

ミシェルの父、フレイザーの教えは:

『人生は公平ではない。得られるべきものを得られないこともある。

だが、欲するものを手に入れようと努力することをやめてはならない。

それでも、努力と善行の果てに、やはり与えられないこともある』

* * *

もう一箇所、引用します。

「ミシェルには他にも仕事があった。夏季実習生の教育係である。大きな法律事務所は、人材確保の目的で、ちょうど子どもたちのサマーキャンプのように、夏休み中に有望なロースクールの学生たちを体験入社させる。実習生たちは、日中は実務を学び、夜には ― それがサービス精神あふれる大会社なら ―  バーベキュー・パーティーに誘われたり、スポーツ観戦に連れていってもらえたりする。

ある学生を面接したミシェルの同僚は、その人物の指導教官にはミシェルが一番いいのではないかと感じたという。ハーバード・ロースクールの学生がやって来る ― とミシェルは聞かされた。その学生は普通より年長だった。大学を卒業してからロースクールに入るまで間があったからだ。まだ一年目を終えたばかりにもかかわらず、シドリー法律事務所は彼を夏季実習に招いた。異例のことである。それほど彼が優秀だったということだ。ハーバードの教授たちのあいだでも話題になっていた。シドリーの古参弁護士たちは、その学生を釣り上げたことをとても喜んでいた。送られてきた彼の写真を見て、社内のあちこちで「キュート(かわいい)」という声が上がっていた。

だがミシェルはまったく興味を示さなかった。」

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