ウォール街の高額報酬をどう考えるか
昨日のウォールストリート・ジャーナル紙(『こちら』)によると、ゴールドマンには約3万人の社員がいますが、このうち953名(社員30名につき1人の割合)に対して、リーマン・ショックのあった昨年、各人1億円以上の給与・賞与が支払われました。
メリルリンチでは 696名の社員がそれぞれ1億円以上を貰いました。
『1億円以上』と言っても全額現金ではなく大半は株(会社の株式、ストック・オプション)による支給です。
ところで、TARP(Troubled Asset Relief Program)のカネを100億ドル(1兆円)受け入れているゴールドマンにとって今年はこのような高額の給与・賞与を社員に支払うことは出来にくくなります。
であれば、『TARPのカネなど返してしまえ・・』ということなのでしょう。
現在ゴールドマンは5000億円(50億ドル)の増資を計画。と同時に『TARPのカネを返済させて欲しい』と政府に申し入れるとのことです。
ただ米政府としては『はい、そうですか』と簡単にゴールドマンからの返済を受け付けるわけにはいきません。返済することの出来ない弱体金融機関が数多くいる以上、一部の強者からの返済を受け入れてしまえば、どの金融機関が弱体であるか、より一層鮮明になってしまうからです。
さらに政府としては国民感情にも配慮しなくてはなりません。
『これだけの問題を起こしておいて1億円以上の高額報酬を払うとは納得できない』という国民感情です。
一方、ゴールドマンの側にしてみれば、儲ける社員をそれなりに処遇しなければその人たちは辞めていって自分で会社を興してしまう。そのことを恐れるわけです。
あるいは米国には5大投資銀行と言われた金融機関以外にも、ラザード・フレールのような名門投資銀行やブティックと称される投資銀行がたくさんありますから、優秀な人たちはそちらに移ってしまう。こういった懸念もあるわけです。
過去にもファーストボストンを骨抜きのような状態にしてしまったワサースタイン・ペレラの例もあります(【注】スター・プレイヤーであったワサースタインとペレラが独立して新会社を作ってしまった。)
実際、M&Aのアドバイス業務などは、出来る人がやれば、きちんとディールをまとめあげ、顧客に感謝されますが、出来ない人がアドバイザーになるとグチャグチャにこね回された挙句、ディールは仕上がらず、最終的には訴訟の嵐になってしまう・・・
こういったことを考えていくと、個々人の報酬についてはマーケット・メカニズムを働かせて決め、国民感情への配慮の点は所得税の累進性をきつくするなどの方策で対応するしかないと思うのですが、はたしてゴールドマンと米政府との綱引きは今後どうような展開を示すのでしょうか。
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