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2009年5月 4日 (月)

法人税を考える

不況の深刻化は中小企業に特に悲惨な影響を及ぼす。実際に破綻してしまう先も多い。

このことの理由のひとつとして、一般に中小企業の資本勘定が脆弱であることが挙げられる。

資本勘定というバッファーが薄い為、ひとたび売上が減り、利益が出なくなると、多くの中小企業が債務超過に陥ってしまうのだ。(【注】債務超過に陥った会社には一般に銀行は貸出をしないから、多くの場合、会社は資金繰りがつかなくなって破綻してしまう。)

中小企業が破綻することにより失業者が増大してしまうから、これは社会全体にとって大きな問題だ。

ところで、中小企業が資本勘定を薄くしている理由のひとつとして、中小企業の経営者が往々にして「会社が儲かった時に金を使ってしまう」ことが挙げられる。

中小企業は同族会社であることが多く、「経営者の個人勘定」と、「会社の勘定」とが、必ずしも峻別されていないことが多いことも、「儲かった時に金を使ってしまう」ことの一因となっている。

具体的な例で示そう。

現時点で破綻の危機に瀕している中小企業の中にも、例えば2年ほど前には従業員を連れ立って海外に慰安旅行に出ていった先も多いはずだ。

すなわち「儲かった金を利益で計上しても、税金で持っていかれるだけなので、従業員で旅行でもした方がいい」と考え、福利厚生費など損金処理が許される範囲で、従業員を連れ立って海外などに出かけていった会社が多いのである。

資本勘定は、単純化すれば「資本金」+「資本準備金」+「利益剰余金」である。

すなわち資本勘定は、(会社の利益の約半分にあたる)税金を払った後で、余った利益(税引き後利益)が積み重なることで、初めて(利益剰余金が増え)厚みを増していく。

多くの中小企業経営者が景気のいい時に「税金を払って資本勘定を厚くしよう」とは考えずに「税前利益の半分も税金で持っていかれるのであれば、使ってしまおう」と考える限り、中小企業の不況抵抗力はなかなか強化されない。

であれば、最低限の利益剰余金(たとえばその会社の人件費一年分)が積みあがるまでは法人税を免除するといった形に、法人税を変えてはどうだろうか。

逆に必要以上に利益剰余金を溜め込んで、必要な設備投資や研究開発も行わず、株主還元(配当)もしない上場会社に対しては、過分な利益剰余金に対して課税することを検討できるかもしれない。

100年に一度の不況は、我々がこれまで前提としてきた諸制度を見直す契機でもある。

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