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2009年6月16日 (火)

リグリー球場 (トヨタの借入金 その2)

シカゴのリグリー球場。カブスの本拠地で昼間に野球をやります。

1983年から87年まで私は興銀のシカゴ事務所で駐在員をしていましたが、シアーズ社のAT(Assistant Treasurerの略。財務部次長ということになるが、当時の米国企業の多くは、CFOが副社長クラス、Treasurerが財務担当役員、ATは日本で言えば取締役ではない財務部長といったイメージでした) と一緒に、接待でリグリー球場に野球観戦に行ったりしていました(当時、私はまだ20代でした)。

シアーズといえばダウ・ケミカルなどと同様、当時既に円建て外債を発行していた先。興銀にとっては重要な取引先でした。

ATと野球観戦をしながら、いろんなことを教えてもらいました。一つは野球観戦のしかた。スコアや選手の打撃結果などを記入する紙を球場でもらい、これに書き込みながら観戦します。

もう一つはシアーズの話。クレジットカードビジネスについて質問すると彼がこう答えたのが印象的でした。

『アメリカ国民を信用リスクの高い順から並べて真ん中で2つに分ける。上半分がシアーズのカードを持つ。そうすればシアーズのクレジットカードビジネスの信用リスクはアメリカ国債のリスクより低い(優良な)ものになる。』

シアーズは積極的に金融ビジネスへ参入。シアーズの店の中にディーンウィッターという証券会社を置き、ディスカバリー・カードと名付けられたクレジット・カードをシアーズのカタログ客に持たせます。(後にディーンウィッターはモルガンスタンレーと一緒になっていきます。)

シカゴでは私はユナイテッド航空の人たちとも仲良くしていました。

彼らも自らを航空会社としてとは考えず、Travel Industry と考え、Westin Hotelのチェーンを買収。傘下にハーツレンタカーも収めました。

私がリーマン・ブラザーズに勤めていた時。リーマンの不動産チームの人たちにはGMAC(GMの金融子会社として設立された)出身の人が多くいました。彼らは、『GMよりもGMACの方が信用リスク的には優良だ。将来GMが駄目になってもGMACは優良会社であり続ける』 と豪語していました。

大会社が自らの事業ドメイン(領域)をどう考えるかは難しい問題ですが、『シナージーがある、Value Chain で結ばれている』 と信じて安易に事業領域を拡張しても上手く行かないことが多くあります。

もちろん富士電機から富士通が生れて、さらにファナックが生れたような例もあります。

しかし例えばユナイテッドについては、その後、明らかになったように、彼らはやはり航空会社でした。

そして金融はどの事業とも接点があることから、以下のように多くの企業が金融子会社を設立、金融を一つの事業部門として育てるべく注力してきました。

GM   GMAC

シアーズ  ディスカバリー・カード、ディーンウィッター

GE  GEキャピタル

ソニー   生命保険、損保、銀行、証券

三洋電機  三洋クレジット

トヨタ  金融事業部門

しかし例えばトヨタについては、前回のエントリー記事『借金を10兆円も抱えている会社』のコメント欄でも書きましたが(詳しくはここでは繰り返しませんので是非コメント欄を見てください)、私は、彼らがオートー・ローンやカーリースを超えて、金融事業をどんどん拡張していくことに不安を感じざるをえません。

上述のコメント欄にも書きましたが、私はトヨタの株主です。しかし主として昨年の4月から6月にかけて、持っていたトヨタ株の、ほぼ半分の株数を売却してしまいました(今でもまだ半分持っていますのでトヨタにはしっかりして欲しいのですが・・)。

こう書いた方が分かりやすいかもしれません。

私は任天堂の株も持っていますが、もし任天堂が傘下に証券会社を作り、投資信託を個人投資家に対して販売し始めると言い出したら・・。その時は即座に任天堂の株を売りますね。

そう考えると、トヨタの株を半分しか売却していないというのは、いささか中途半端だったのかもしれないと、今になって反省しています。

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