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2009年9月 2日 (水)

トヨタの借入金(4)(コングロマリット・ディスカウントと持ち株会社)

本業以外に手を出して破綻した企業の代表格は、GM(ゼネラルモーターズ)でしょう。

1984年、GMはコンピューター・ソフト(ITサービス)大手のEDS社を買収、翌年には航空宇宙産業・軍事大手のヒューズ・エアロクラフトを傘下に収めました。

こうしたコングロマリット経営の結果、本業の自動車製造・販売が疎(おろそ)かになってしまったのは、その後の歴史が示す通りです。

そもそも株式市場では、一つの事業を行なう会社、いわゆる「ピュアプレイ」(pure play)の方が好まれ、複数の事業を行なう会社は、価値が低く評価される傾向にあります(コングロマリット・ディスカウント)。

市場には、例えば自動車とITサービスの会社の株を、6対4の比率で持ちたい投資家もいれば、9対1の比率で保有したい投資家もいます。

各々の投資家のニーズは株式市場を通じて、株式のポートフォリオの比率を変えることによって実現させた方が効率的です。

GMという、一つの会社が自らの中で自動車とITサービスとを併せ持つことで、種々の投資家のニーズを満たすという発想には無理があるのです。

トヨタはGMとは違うはずだ。

このように我々は誰もが思ってきたのですが、今般トヨタが71年ぶりに営業赤字に陥ったことで、最近のトヨタ社内で何が起きていたか、その内幕がいろいろと報道され始めました。

その中の一つとして、トヨタ社内では数年前から「持ち株会社構想」が検討されていた、との話が一部マスコミから漏れ伝わってきました。

真偽のほどは分かりませんが、もし仮に事実だとしますと、それはトヨタのGM化に繋がりかねない危険性を持つといえるでしょう。

一部のマスコミ情報によれば、幸いこの案は豊田家が潰したとのこと。

トヨタに集まるヒト、モノ、カネの経営資源は、トヨタが最も得意とする自動車の事業に集中投下するべきです。

「持ち株会社化」は経営資源を拡散させてしまいかねません。

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