コングロマリット・ディスカウント と ピュア・プレイ
本日は『トヨタの借入金(その5)』を書く予定でしたが、チョッと脱線して、昨日のブログの続きを書きます。
昨日はGMの多角化経営とコングロマリット・ディスカウントについて書き、トヨタの持ち株会社構想に触れました。
実はコングロマリット・ディスカウントとピュア・プレイについては、4年ほど前にも記事を書いたことがあります。
昨日の記事では分かりづらいと思われた方は、是非『こちら』(4年前の記事)もご覧になってみてください。
ところで、日本では
『コングロマリット・ディスカウントなんて言うのは存在しない。アメリカが勝手に言っているだけだ。我々はコングロマリット・プレミアムを目指す』
と言う経営者が時おり出てきます。
そういう記事が出ると、私は経営者の発言内容をじっくりと読むようにしています。
たしかにビジネススクールで教えていることが正しいとは限らない。。
常識を疑ってみることも必要です。
そして考えます。
この経営者はどこまで分かって発言しているのか・・。
更に・・
それでは、この会社の株は売るべきか、買い増しすべきか。
私は『こちら』の記事を読んだ時は、その会社の株を売りました。
その後の株価の動きです。
もちろんリーマンショックで下落した部分が大きいのですが、
記事が出たとき(2005/12/15)の株価(始値)は804円。
今は324円、6割の下落です。
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コメント
初めまして、いつも拝見させていただいております。
コングロマリットのGEやABBについての分析についてもお聞かせ頂ければ、と思います。GEはコングロマリットプレミアムなのか?それとも完全に分割すればもっと価値が上がるのか?
投稿: 貧乏エンジニア | 2009年9月 3日 (木) 13時31分
GEのコングロマリット経営については、拙著『サバイバルとしての金融』(166頁~171頁)に書いたので、そちらをお読みになって頂ければと思います(すみません、きちんと説明しようとすると本にして5~6頁の分量になってしまいます)。
もっとも私が上記『サバイバルとしての金融』を書いたのは、2005年。
最近では学者やアナリストたちのGEやジャックウェルチに対する評価も(2005年当時とは)大分変わってきています。
その辺も含めて、今もう少し詳しい本を書いているところです(10月下旬には発売される予定です)。
投稿: 岩崎 | 2009年9月 3日 (木) 14時45分
貴重なご回答、ありがとうございました。早速読ませていただきました。
自分なりに以下の通り解釈しました。即ち、
・ウェルチはポートフォリオの構築が抜群にうまく、市場平均を上回る成績を出し続けた。
・ただし、事業間のシナジーを生み出せたかどうかという点においては記述なし。
事業間のシナジーを生み出したというよりかは、シックスシグマ等の"経営管理手法"を各事業間に広め、それらの効果により各事業単独のパフォーマンスを向上させた、と考えました。
投稿: 貧乏エンジニア | 2009年9月 3日 (木) 23時04分
そうですね。『ボーン・アイデンティティ』などの映画を作って配給している『NBCユニバーサル』はGEの一部ですが、ここと、例えば医療機器事業との間には、どう考えてもシナジーはありません。
ウェルチが一流のポートフォリオ・マネージャーであったとする論拠はこの辺にあります。
もう一つのポイントは、ウェルチは各部門で世界シェアが1位になる可能性のあるもののみを残し、他は売却していったこと。
逆にポートフォリオに残すと決めた『世界1位か、もしくは1位になる可能性のある事業』については、買収などによって、積極的に経営資源を追加投入した。
言わば、『勝ち組』だけを集める事業ポートフォリオを構築していったのです。
しかしそのGEも今では大きく傷つき、株価は一時、ピーク時42ドルの7分の1である、6ドル(2009年3月)にまで落ち込みました。
この辺については、人によっていろいろな意見があります。
なかにはウェルチはグリーンスパンと同じように虚像だったのではないかという人もいます。
私はGEは金融の世界に入りすぎたのがいけなかったと見ています。トヨタについてもGEを他山の石として金融の世界にのめり込まないようにして欲しいと思っています。
投稿: 岩崎 | 2009年9月 3日 (木) 23時35分