一代一業 (トヨタの借入金 その6)
『トヨタの借入金』と題して6月から折に触れて書いてきました(第1回は6月12日)。
今回で6回目になりますが、この辺で終わりたいと思っています。
私が6回にも及ぶブログで言いたかったのは、2点です。
一つはトヨタの借入金が余りに膨大であること(連結ベース:12兆6000億円。保有する現預金を相殺させた後で得られるネットデットのベースでも借入金は10兆1000億円を超える)
もう一つは、トヨタは自動車事業に専念して、それ以外の事業は、自動車を売る上で必要な範囲に留めた方がいいということです。
6月19日のブログにも書きましたが、小説『レッドゾーン』(真山仁著)で、主人公の鷲津がこう発言する場面があります。
『ハゲタカからのご忠告です。本業以外のビジネスに手を出した企業は、必ず潰れます』
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ところでトヨタには一代一業という考え方があるといいます。
一代一業とはファミリーの一代で、一つの(別の)事業を興すという家訓。
豊田佐吉が自動織機を発明し、佐吉の長男の喜一郎がトヨタ自動車を創業しました。
喜一郎の長男、章一郎は大学院を出た後、様々な仕事を経て、コンクリート製プレハブメーカーに入りました。
章一郎は喜一郎の急逝に伴い、トヨタの取締役になりますが、住宅事業に対する思い入れも強いといいいます。
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一代一業を唱えるファミリーは豊田家だけではありません。
例えば北野建設の北野家などのように、ほかのファミリーでも散見されます。
欧米にもあります。
起業家精神、チャレンジ精神を継承させたいとの思いがその根底にあるのでしょう。
ところでこの「一代一業」と「経営資源の本業への集中」とは、相容れない考え方でしょうか。
本来、一代一業が意味するところは、一代一業を進めた結果、本業とは関連性に乏しい新規事業が立ち上がったとしたならば、
その事業は早く独り立ちさせるということでしょう。
豊田自動織機製作所からトヨタ自動車が独立し、(一代一業とは少し違いますが)富士電機から富士通が生れ、さらにファナックが生れたように、
新しく立ち上がった事業は独立させていけばいいのです。
いかに一代一業といっても、いつまで経っても独り立ち出来ない事業を自社内に留めておけば経営が拡散してしまいます。
かつて株式会社豊田自動織機製作所の内部に自動車部が設置(1933年)された後、トヨタ自動車が上場する(1949年)までには、16年を要しました。
トヨタホームの前身である住宅事業部が、トヨタ自動車内に設置されたのが、1975年。
以降34年を経過しても、トヨタホームはトヨタ自動車の100%子会社のままです。
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コメント
別のハンドルネームで幾度かコメントさせていただいております。
本日付の日経によると、トヨタが証券部門を譲渡するようですね。
英断だと思うのですが、いかがでしょうか。
投稿: 轍 | 2009年9月24日 (木) 09時35分
これを機により一層本業集中を進めて欲しいですね。
トヨタが8月4日に発表した業績予想では、来年3月末の決算でもまだ7500億円の営業赤字を予想してます(為替レート1ドル=92円を前提)。
本業以外にかまけている余裕などないはずです。
VWのピエヒ会長はあなどれません。
投稿: 岩崎 | 2009年9月24日 (木) 10時22分