1+1=0.7 の壁を越える
出版社の話によると、対談本というのは作るのが難しいと言います。
著者が1人で書くのに比べて2人の名前で書くようなものなので2倍売れるかというと、実際にはその逆。
むしろ1人の名前で本を出した時より売れないことの方が多いとのこと。
つまり1+1=2ではなく、往々にして 1+1=0.7 となってしまうようです。
何となく分るような気がします。
読む立場からすれば、対談本は気楽にさっと読めてしまうことも多いように思います。
これはこれで利点なのでしょうが、話がポンポン飛ぶだけで雑誌記事のような対談本が多いのも現実。
わざわざレジに行ってお金を払って家に持ち帰って読むより、書店でサッと立ち読み出来てしまいそうです。
さて、1+1=0.7 という壁。そういった対談本の「限界」に挑戦するような本を読みました。
日下公人・金子仁洋共著の『官僚の正体』。
この本は1の値段で 1.3 位の価値はあるように思います。
もしこれが仮に金子さんだけで書いた本であれば、道州制や地域主権基本法に関する本となり、一般の読者にはちょっと取っ付き難い本になっていたかもしれません。
そこを日下さんが絶妙な手綱捌きで、金子さんの奥行きの深い「引き出し」から貴重な話を掘り出していきます。
金子さんによると例えば、「昭電事件の発端は、憲法をつくったり農地改革をやったり、共産党を助けたり、民主化政策の中心にいたGHQのケーディス大佐を追い落とそうと日本の内務省の残党がたくらんだこと」。
「ナポレオンがポーランドを占領したとき、ポーランド貴族のマリー・ワレウスカという美人をあてがわれた類」が、ケーディス大佐と元子爵夫人Tとの間にあると言われていて・・と金子さんならではの話が次から次へと出てきます。
それが単なる雑学の宝庫や官僚批判本で終わってしまえば、わざわざレジに行く気がしないのですが、道州制・地域主権基本法といった筆者(金子さん)の主張・筋が1本きちんと通っていって読み応えのある本に仕上がっています。
本書ではあからさまな形では対談者2人の対立軸は示されていませんが、日下さん自身が「あとがき」で書いているように 『お互い古い世代の日本人だから「お前の話は分る」・・』 として話が進められていきます。
浅薄な官僚批判が多い昨今の言論界でキラリと光る本。この本ならば 1+1=0.7 の壁を越え1+1=2に近づくのではないでしょうか・・。
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コメント
>岩崎さん
言われてみるとそうですね。
私も対談本の著者買いは基本的にあまりしません。
組み合わせにもよるのかもしれませんが、片方の著者にしか興味がない場合は単に量が半分になっているだけですし。読者層が絞られていない場合、対談者の経歴など他書で既に述べられていることの重複が多かったり通には損だったりします。
官僚の正体面白そうなので、早速アマゾンで注文しました。
投稿: マンガー | 2010年2月 3日 (水) 08時54分