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2010年2月26日 (金)

あらためて「人が死ぬということ」について考えさせられる本

島田先生の近著『葬式は、要らない』 。

最近のデフレ風潮もあり、この本は「そもそも葬式に231万円(日本人の平均費用)もかけるなんておかしい」と思っていた人たちに受けて、幅広く読まれているようです。

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2010年2月25日 (木)

文化の衝突

豊田社長による公聴会での発言を受けて Associated Press 社(AP通信)の Ron Fournier 記者が書いた記事です(すみません。英語です) (↓)

   『こちら』

多くのアメリカ人はFournier 氏と同じような感想をもったのだと思います。

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2010年2月24日 (水)

金融のロジックと財政のロジック

水俣病訴訟で被害者団体と国などとの和解協議が熊本地裁で始まっています。

小沢鋭仁環境大臣は先月「5月1日の慰霊式を念頭に全面解決に向けて努力したい」と発言(『こちら』)。

5月1日まで残り2ヶ月ちょっと。

救済問題は大詰めを迎えつつあります(『こちら』)。

* * *

水俣病については下記の通りこのブログでも何度か書いてきました。

『金融機関から見た水俣病(その1)』

『金融機関から見た水俣病(その2)』

『金融機関から見た水俣病(その3)』

『金融機関から見た水俣病(その4)』

『新聞協会賞』

『水俣から、未来へ』

『Chisso accountable to public』

『オバマ大統領と水俣病』

* * *

チッソ水俣工場による水俣湾の水銀汚染は既に第二次世界戦前から始まっていたといいます。

水俣湾で魚が浮上しネコの狂死が相次いだのが1953年。

水俣病公式発見の日とされるのが1956年5月1日。

50年以上にもわたってこの問題は政治問題、社会問題として続いてきました。

なぜこれほどまでに長い間解決することが出来なかったのでしょうか。

いろいろな理由があるのでしょうが、ひとつには住民の方たちに複雑な感情があったと言われています。

「水俣病であるとして手を上げることに対しては勇気が必要だった。周囲から白い目でみられるかもしれない」という住民感情。 

企業城下町「水俣」における独特の住民感情です。

* * *

ところで1990年12月。

水俣病訴訟を担当していた山内豊徳環境庁企画調整局長が自殺。

詳しくは『こちら』の書に譲りますが、私が興銀で水俣病問題を担当するようになったのはこの約1年半後の1992年。

1997年までの約5年間、私もまた銀行員としての立場からこの問題で苦しみました。

* * *

「なるほど金融には金融のロジックがあるのですね。しかし財政には財政のロジックがあるのです」

これは当時の大蔵省の発言。

当時私は「水俣病問題解決に向けて銀行としても出来るだけのことをしたい」との思いを強くしていたのですが、金融のロジックからすれば「返ってくる当ての無いカネ」は貸すことが出来ません。

別言すればこういうことです。

企業が設備投資をするというのであれば、銀行はそのためにカネを貸すことが出来ます。融資されたカネで企業は設備を購入し、その設備をもってして上げた収益を、借金の返済原資に充てることが出来るからです。

しかし患者の方々への補償金に充てられる資金というのは、企業サイドに新たなキャッシュ・フローをもたらすものではなく、返済原資が見当たらない融資ということになってしまいます。

預金者の金、株主の金を預かる銀行としては、銀行の社会的責任というロジックだけでは補償金融資を行うことは非常に難しい、場合によっては株主代表訴訟へと発展してしまうことにもなりかねません。

一方、財政を司る大蔵省の立場からしても国民の税金を一企業の救済に当てて良いのかという壁にぶつかります。

水俣病を引き起こしたのはチッソであり汚染者負担の原則に基づきチッソこそが患者への補償金支払の責務を負うからです(しかしチッソは多額の債務超過に陥っていて負担能力が無いことから問題が複雑化していました)。

すなわちチッソに対する金融支援に関しては、国、県、銀行のそれぞれが自分の庭先をきれいにすることは止めて、ギリギリのところまで歩み寄る-別の言葉で言うと「三方一両損」の発想です - そしてこれにより、大きな目的(患者救済)を達成しようと尽力してきたのですが・・・。

* * *

この問題に関しては上記の通りこのブログでも何回か書いてきましたので、ここではこれ以上繰り返しませんが、胎児性水俣病患者の方たちでさえ既にもう50歳、60歳になりつつあります。この状況に鑑みるに、未だこの問題が解決されていないことに対して、この問題に係わった一人として、やるせない気持ちをより一層強くしています。

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2010年2月23日 (火)

人民元切り上げの可能性

人民元切り上げを予想する報道が多くなりました。

以下は全て Wall Street Journal (Japan Online)、ロイター、Record China の記事ですが、主なものを拾ってもこんな感じです(緑字をクリックすれば原典に行きつきます)。

『人民元の切り上げ必要との声、国内からも』 (1月8日)

『中国人民元の切り上げ見通し強まる』 (1月15日)

『人民元相場、今こそ切り上げが必要』 (1月27日)

『中国、人民元相場の上昇を容認するか』 (2月10日)

『中国、間もなく人民元を切り上げ=ゴールドマン』 (2月14日)

『人民元レート、5%前後の切り上げを予測-投資銀行エコノミスト』 (2月18日)

人民元が切り上がれば、ドル円も短期的には円高方向に向かう可能性が高くなると思います。

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2010年2月21日 (日)

世論の曲解

政治学はマキャヴェリの君主論、ドイツの国家学を初めとして、政治哲学、政治思想、政党論など多様な領域にわたります。

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         (マキャヴェリ肖像画)

第二次世界大戦後は行動科学的アプローチからの研究も進み、投票行動、世論調査などのデータ分析を駆使する手法も進んできました。

3年ほど前に亡くなられた早稲田の内田満教授も、学生時代に私が受けた授業で、行動科学革命、合理的選択理論などについて話しておられました。

さて計量政治学のアプローチから前回の総選挙を分析したのが、『この本』

以下はアマゾンの書評から:

・自民党が2005年総選挙の大勝の後の2007年参院選の大敗を 小泉―竹中路線への(とりわけ伝統的自民党支持層の農村部の有権者の)反発と解釈し、安部政権以降伝統的保守の復活を目指したが、これが完全に自民党の読み違えだった

・データ分析によれば、有権者は2005年以降一貫して構造改革を中心とする小泉―竹中路線を支持していた

・著者は本書で、反小泉旋風によって、政権交代が実現したという言説を見事に覆してみせる

・本書を読んでもうひとつ気がついたことは、小沢民主党幹事長の戦略と本書が見事に重なっていることだ

* * *

さてこれから先、有権者はどんな審判を下すのでしょうか。

今日は長崎県知事選挙の投開票日。

そして7月には参議院議員選挙を迎えます。

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2010年2月20日 (土)

市場は機能している

18日の公定歩合引き上げについてのフェルドシュタイン教授(『こちら』)のコメントです。

『当局は“市場は機能している”ことを明確にした。資金を調達する必要があるのであればFRBのdiscount window に来ないで(市場で調達しなさい)』

(They made it very clear. The markets are working now. If you need to get credit, don't come to the discount window.)(詳しくは『こちら』

19日(金)、米国の株式市場は上昇して取引を終え、ドルも92円台から91円台へと戻しています。

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2010年2月19日 (金)

Slow Motion Replay

Slow Motion Replay のCDが2月17日発売になりました。

詳細は『こちら』のページで。(視聴も出来ます)。

以下はWeb ページの紹介文より。

往年のファンク、ジャズ、ソウルミュージックに対する過剰で偏執的な愛を、ヒップホップ/R&Bマナーでスマートに再構築する、驚異の”新人・玄人ユニット”SLOW MOTION REPLAY。

既にフランス最高峰の“黒光り”レーベル「soulab」との電撃契約をかわし、世界発売が決定!

本作は、それに先駆けての、日本先行デビューアルバム。

誰の耳にとってもなじみのある名フレーズを随所にちりばめたファンキーなインスト曲をはじめ、流麗かつ繊細なボーカル曲、甘く切ないラップ曲。

さらに、巧みなアレンジとビートメイキングが光るカバー曲など、

「辣腕プロデューサー」箭内健一

「業界屈指のネタ掘り師」楠元伸哉

「わんぱくビートメイカー」石橋卓也

の3者による驚愕の職人芸が炸裂。

スタイリッシュなBGM集として、また、ダンスフロア直撃のブレイクビーツ集として……多彩な機能性と、豊かな音楽性を保持するマルチパーパス・アルバムの完成。

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写真で右が箭内さん、左が楠元さん、真ん中が石橋さん。

実は石橋さんは以前、某大手証券会社に勤務していて、私のアカウントを担当していました(今は証券会社を辞めて某大手金融機関に移っています)。

証券マンとしてお付き合いしていた時は、ここまで本格的に音楽活動をされているとは知りませんでした。

『こちら』がアマゾンのページです。

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2010年2月18日 (木)

アマゾン キンドルDX (その2)

意外と早くキンドルが着きました。、軽くて薄いという印象です。

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2010年2月17日 (水)

アマゾン キンドルDX

先週末、アマゾンのキンドルDXを注文しました。

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2010年2月16日 (火)

新聞・テレビ・出版の将来

週刊東洋経済や週刊ダイヤモンド。

私は書店で見て面白そうな号があると買って読んでいます。

週刊ダイヤモンドでは数週間前の『ツイッターの特集号』が面白かったですね。

そして今週の東洋経済。

『新聞・テレビの断末魔』という衝撃的なタイトルですが、確かにこの特集記事の中身を読むと各社の業績はかなり悪化してきていることが分ります。

それでも記事の中に出てくる各社の賃金やボーナスは他の民間企業に比べればまだ相当高く、残業代の強制カットを「事件」と呼ぶあたりは、余裕のある業界であることを改めて認識させられます。

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就活生必見! OB・OGガイドブック

『就活生必見!卒業生と現役生をつなぐキャリアマガジン。OB・OGガイドブック(vol. 5) (Winter 2009–Spring 2010) という雑誌があります。(Web版は 『こちら』)。

この雑誌の67頁と69頁に「未来のビジネスリーダーになる大学生・大学院生が読むべき 厳選ブックリスト50冊」(OB・OGガイドブック監修)と題する特集があります。

7つの分野で数冊の本が選ばれ、全体で50冊が推薦されているのですが、このブックリストの中に拙著『M&A新世紀』が選ばれました。

50冊全部をここで紹介することは出来ませんが、この50冊の中から私なりに更に10冊を厳選(これから読んでみたい本を含む)してみたいと思います。

(下記の緑の文字の部分をクリックすればその本の紹介頁に行きつきます)

7つのキャテゴリーはOB・OGガイドブック監修の推薦リストに副っています。

【人間学/哲学/教養】

『その数学が戦略を決める』

【リーダーシップ/ロジカルスキル】

『選ばれるプロフェッショナル』

【社会問題を解決する/働き方を考える】

『ムハマド・ユヌス自伝』

【経営/マネジメント】

『マーベリック・カンパニー』

【起業/アントレプレナーシップ】

『経営に終わりはない』

【金融/経済/ファイナンス】

『ブラックスワン』

『バブルの物語』

『M&A新世紀』

【世界情勢/歴史観】

『失敗の本質』

『老いてゆくアジア』

* * * *

さて大学生・大学院生にお勧めするのは、上記のうち、まずは自分が気に入った3冊を選び出して、ともかく読んでみることです(もちろん上記以外でも構いません)。

本を読む習慣を身に付けた人と、身に付けることが出来なかった人。その差は年が経つにつれ大きく現れるようになります。

最後に私自身の就職体験。興銀で試験官が最初に聞いてきた質問。

「国連の理念と現実について英語で話して下さい」

私は国際政治学専攻だったこともあり、金融についてはほとんど知識が無かったので、逆に助かりました。

【注】こういった変な質問が出たのは興銀だけでした。他の会社も受けましたが、ほかでは全て常識的な質問でした。

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2010年2月15日 (月)

シリコンバレーの空気

米国の失業率は9.7%(『こちら』)。

新卒者などの若年層は更にひどく、15.6%に及ぶと言います(『こちら』)。

国全体の経済情勢がこのように厳しい中、シリコンバレーとて例外ではありません。

何よりも米国におけるベンチャーキャピタルの投資額は、2008年第2四半期には74億米ドルでしたが、2009年第1四半期には33億ドルにまで激減しました(『下記記事参照』)。

先日一時帰国した人の話では、シリコンバレーでもオフィスの空き室が目立つと言います。

しかしこのような激しい逆風が吹き荒れる今こそが、戦略的転換点(strategic inflection point)と考える若者がシリコンバレーには増えてきました。

その結果、例えば年収3千万円といった就職のオファーを受けずに自ら起業を試みる人が増えているといいます。

それも例年の2倍という圧倒的なペースで・・。

    Stanford

詳しくは『こちら』の記事をどうぞ。

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2010年2月13日 (土)

バークシャー・ハサウェイ (ウォーレン・バフェット)が保有する株式:トップ15

バークシャー・ハサウェイウォーレン・バフェット)が保有する株式:トップ15。

少し前(昨年9月末)のデータです。詳細については末尾の出典をあたってください。

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2010年2月12日 (金)

2010年 全世界ビジネススクール・ランキング

【フォーブス】

2010年1月11日のフォーブス誌(『こちら』)は米国と米国以外の2つのグループに分けて発表。米国のランキングは:

1位 Stanford

2位  Dartmouth

3位  Harvard

4位  Chicago

5位  Pennsylvania (Wharton)

【フィナンシャル・タイムス】

2010年2月7日のフィナンシャル・タイムス紙(『こちら』)によれば:

1位 London

2位  Pennsylvania (Wharton)

3位  Harvard

4位  Stanford

5位  Insead

それぞれ何をベースにランキングしているのか、調査機関によって違いますので、関心ある方はオリジナル(原典)に当たってみて下さい。

* * * *

ところで、大学側から見たビジネススクールの目的(使命)、いわゆる mission statement は何なのでしょうか。

スタンフォードの場合(ホームページに載っています):

Our mission is to create ideas that deepen and advance our understanding of management and with those ideas to develop innovative, principled, and insightful leaders who change the world.

現在のDean であるGarth Saloner がDean になる直前に来日した時。私は夕食を共にしたことがあったのですが、大学の mission statement に話が及びました。

彼は「世界を変えうるリーダーを輩出することだ」と非常に明確でした。

スタンフォードのビジネススクールには、1学年約365名の学生がいるのですが、極論すれば364名のことよりも、「1人の世界を変えうるリーダー」のことを考えているように思えたのが印象に残っています。

      

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2010年2月10日 (水)

User-generated content (UGC)

2009年の1年間で東証マザーズに新規に株式を公開(IPO)した会社は4社しかありません。

そのうちの1つがクックパッドです(『こちら』)。

料理が好きな方や家庭の主婦の方なら、もう既にクックパッドのサイトはご存知かもしれません。

上記のサイトにアクセスして頂ければお分かりのように、クックパッドからはたくさんのレシピを取り出すことが出来ます。

例えばバレンタインのレシピだけでも現在のところ2,531品もあります。そしてこのレシピ数は今から数時間もすればもっと増えていくことが予想されます。

サイトにアクセスが集まれば(つまりユーザーのトラフィックが増えれば)、そのサイトを運営している人にとっては、それは「収益」を意味するようになります。

例えばサイトに広告を載せる、あるいは一部のユーザーをプレミアム会員にして有料化するなどの方法で、サイト運営者は収益を上げることが出来るようになります。

そしてここからが重要なのですが、アクセスを集めるのに、なにも有名人に多額のギャラを払って、例えば占いサイトを運営するといった方法は必要ない。サイトを見ている人たちにコンテンツを提供してもらって、アクセスを集めよう ― クックパッド社はそう考えたわけです。

そうなのです。クックパッドに掲載されているレシピは、株式を公開した「クックパッド社」が作っているわけではありません。

レシピを作って、このサイトに投稿・掲載しているのは、サイトを見ている一般の人たちなのです。

クックパッド社は一般の人々がレシピを投稿する「場所」を提供しているだけ・・。

UGC (User-generated content)の発想です(詳しくは『こちら』)。

カカクコム(『こちら』)が運営する食べログ(『こちら』)なども、UGCを上手く取り入れたもの。

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2010年2月 8日 (月)

ウォール街 Ⅱ Money Never Sleeps

昨年3月にこのブログで紹介(『こちら』)した映画『ウォール街』(『こちら』)。

23年ぶりにこの映画の続編が上映されます(4月の予定)。

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舞台設定は23年ぶりにゴードン・ゲッコー氏が刑務所を出所するところから。

『こちら』で予告編の動画を見れます。

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2010年2月 5日 (金)

もう一つの自動車会社

このブログでも紹介(『こちら』『こちら』)したことがあるテスラ・モーターズ。

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2010年2月 3日 (水)

1+1=0.7 の壁を越える

出版社の話によると、対談本というのは作るのが難しいと言います。

著者が1人で書くのに比べて2人の名前で書くようなものなので2倍売れるかというと、実際にはその逆。

むしろ1人の名前で本を出した時より売れないことの方が多いとのこと。

つまり1+1=2ではなく、往々にして 1+1=0.7 となってしまうようです。

何となく分るような気がします。

読む立場からすれば、対談本は気楽にさっと読めてしまうことも多いように思います。

これはこれで利点なのでしょうが、話がポンポン飛ぶだけで雑誌記事のような対談本が多いのも現実。

わざわざレジに行ってお金を払って家に持ち帰って読むより、書店でサッと立ち読み出来てしまいそうです。

さて、1+1=0.7 という壁。そういった対談本の「限界」に挑戦するような本を読みました。

日下公人・金子仁洋共著の『官僚の正体』

この本は1の値段で 1.3 位の価値はあるように思います。

もしこれが仮に金子さんだけで書いた本であれば、道州制や地域主権基本法に関する本となり、一般の読者にはちょっと取っ付き難い本になっていたかもしれません。

そこを日下さんが絶妙な手綱捌きで、金子さんの奥行きの深い「引き出し」から貴重な話を掘り出していきます。

金子さんによると例えば、「昭電事件の発端は、憲法をつくったり農地改革をやったり、共産党を助けたり、民主化政策の中心にいたGHQのケーディス大佐を追い落とそうと日本の内務省の残党がたくらんだこと」。

「ナポレオンがポーランドを占領したとき、ポーランド貴族のマリー・ワレウスカという美人をあてがわれた類」が、ケーディス大佐と元子爵夫人Tとの間にあると言われていて・・と金子さんならではの話が次から次へと出てきます。

それが単なる雑学の宝庫や官僚批判本で終わってしまえば、わざわざレジに行く気がしないのですが、道州制・地域主権基本法といった筆者(金子さん)の主張・筋が1本きちんと通っていって読み応えのある本に仕上がっています。

本書ではあからさまな形では対談者2人の対立軸は示されていませんが、日下さん自身が「あとがき」で書いているように 『お互い古い世代の日本人だから「お前の話は分る」・・』 として話が進められていきます。

浅薄な官僚批判が多い昨今の言論界でキラリと光る本。この本ならば 1+1=0.7 の壁を越え1+1=2に近づくのではないでしょうか・・。

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2010年2月 1日 (月)

リコールのコスト

朝日新聞報道によると「トヨタのリコールは延べ1千万台近くに上っている」といいます(1月30日、夕刊)。

一方、Yomiuri Online ではトヨタの世界におけるリコール対象車は「460万台以上」とした上で、トヨタはCTS(アクセルペダルの製造メーカー)に「数百億円とみられるリコール費用の一部負担を求める考えだ」と報じています(1月30日)。

1月23日の毎日新聞報道では、トヨタ幹部のコメントとして「今回のリコール費用がいくらかかるかは言えないが引当金の範囲内で手当てできる」とのこと(【注】これはアメリカでの230万台リコールが報じられた時点での発言)。

いったいリコールに係わるコストはどの位になるのでしょうか。

リコールの告知を出して、消費者(トヨタ車オーナー)が持ち込んだクルマを修理工場が修理(部品交換)をする・・・このことに係るコストを仮に1台1万円と大胆に想定(あくまでも仮定です)すると、

朝日新聞報道ベースでは、リコールのコストは1000億円(1万円×1千万台)となります。

トヨタの発行済み株数は3,448百万株(平成21年11月12日現在)。

よって1株あたりにすると、リコールコストは、29円。

仮にリコールコストを1台5万円と想定しても、1株あたりのリコールコストは、145円。

一方、トヨタの株価は1月21日の4,190円→29日の3,490円と、この間に、700円下落。

これを株式市場の過剰反応と見るかどうかは、リコールに伴う企業イメージ悪化、今後の新車販売への影響などをどう予想するかによって違ってきます。

トヨタはアメリカ版のホームページ(『こちら』)ではリコールについて詳しく報じていますが、日本版(『こちら』)では報じていません。

これだけ日本の新聞にも書かれ、株主も心配しているわけですから、リコールのコスト、1株当たり利益への影響などについて詳しく開示した方が、逆に株主の不安は和らぐと思います。

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