SIMロック
携帯電話機器(端末機器)の分野では韓国のサムスンやフィンランドのノキアのような会社が世界では存在感を示し、日本のメーカーは苦戦を余儀なくされています。
採算が取れないことから、これまでに多くの会社が実質的に撤退してきました(カッコ内は実質的な撤退を発表した年。他社への事業譲渡を含む)。
2001年 デンソー
2002年 ケンウッド
2007年 サンヨー
2008年 三菱電機
2008年 ノキア(日本市場から撤退を発表)
2009年 東芝(国内生産からの撤退)
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いまから10年ほど前、私は日本の総合電機メーカーA社幹部の方とロンドンで行なわれた「欧州機関投資家向け説明会」に出席していました。
説明会を無事に終え、夜の内輪の打ち上げの席でこんな話を耳にしました。
「一つの携帯機器からボタン一つを押すことによってドコモとか au とかケータイの通信会社を自由に選べる、そんな機器の出現も将来、技術的には可能になるかもしれません。消費者は自分が気に入った、使い勝手の良い端末を購入する。その後で、実際に電話をかける時に、通話相手に応じて、どこの通信会社を選ぶか決断すれば良いという考え方です」
なるほど固定電話の世界では、電話をかける段になってNTT経由とかKDDI経由とか電話会社を選ぶことが出来ます(当時は例えば0077を付けてから電話をすればKDDI経由でかけることが出来ました)。
仮に将来ケータイの世界でこれが実現すると、携帯電話ビジネスの収益は、通信会社から機器メーカーに移転するようになります。
携帯の通信会社は、水道会社、ガス会社などのような単なるユーティリティ・メーカーになってしまう。
しかしそれは技術の進化と共に起こりうる「必然」なのではないか・・
そんなことをロンドンで考えていたのが、いまから約10年前。
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しかし10年たってもA社幹部が話していたような世界はなかなか実現しませんでした。
本日のYomiuri Online 記事によれば、ようやく「SIMロック解除」の動きが実現に向けて動き始めたとのことです。
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(Yomiuri Online記事)
総務省は27日、携帯電話端末を、通信契約した携帯電話会社経由でしか使えないようにしている「SIMロック」について、解除するよう携帯電話会社に求める方針を固めた。
2010年末から発売される次世代携帯電話の端末を対象とし、法制化による義務付けも検討する。利用者が、端末と携帯電話会社を自由に組み合わせて選べるようになる見通しだ。
通常の携帯電話の端末には、電話番号や契約内容などが記録された「SIMカード」が差し込まれており、海外ではSIMカードを取り外して差し替えれば、どこの会社の端末でも使えるのが一般的だ。
日本では、端末は特定の携帯電話会社向けに作られており、別の会社向けの端末を使うには通信契約も切り替えなければならない。SIMカードを他社向けの端末では使えないようにするSIMロックがかけられているためだ。
総務省は、ロックが解除されれば利用者の選択の幅が広がり、企業間の競争が激しくなって通話料の値下げや端末の性能向上などにもつながるとみている。そのため、NTTドコモなどの携帯電話会社に、契約から一定期間がたった次世代携帯電話の端末について、希望者にはSIMロックの解除に応じるよう求める。現行の端末を使っている利用者は対象外とする。
日本の携帯電話業界では、携帯電話会社がメーカーからすべての端末を買い上げて販売している。メーカーは端末を特定の携帯電話会社向けに開発するため、海外で販売することができず、世界市場でのシェア(占有率)低迷の一因となっている。その閉鎖的な開発・販売モデルは、特殊な生態系が残る太平洋の島々に例えて「ガラパゴス状態」とも呼ばれている。
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