THE HURT LOCKER
私は中近東へはこれまでにサウジアラビアを初めとして何度か出張で足を運んだことがあります(注:イラクに行ったことはありません)。
オリーブなのでしょうか、街に漂う独特の匂いと、そしてどこからともなくコーランを読む声 (注:実はこれはアザーンの声だったようです・・・下記のこのブログ記事のコメント欄をご参照ください) が聞こえてきて、街中に響き渡るのが印象的でした。
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さて先週土曜日から公開されているのが、今年度アカデミー賞(作品賞)を受賞した『ハート・ロッカー』。
これは2004年夏のイラクを舞台にした映画です。
イラクでの豊富な取材経験を持つマーク・ボール氏による脚本は、本作を非常にリアリティーの高いものへと仕上げています(アカデミー賞:脚本賞を受賞)。
監督はコロンビア大学大学院で映画を学んだというキャスリン・ビグロー監督。
彼女はこれまでにも 『K-19』 など緊迫感に満ちた作品を作り出してきています。
そして今回。
ハート・ロッカーの映像は、観ている人をして、あたかも自分がイラクの戦場にいるかのような臨場感を持たせます(アカデミー賞:監督賞を受賞)。
死の淵に立つことを余儀なくされる爆発物処理班の男と、その背後で聞こえるコーランを読む声・・。中近東独特の乾燥した空気と匂いがこの映画からは伝わってきます。
The rush of battle is a potent and often lethal addiction, for war is a drug...
映画ハート・ロッカーはこの言葉で始まりますが、これは戦争記者(War Correspondent)のChris Hedges の言葉(詳しくは『こちら』)。
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ところで日本のマスコミでも報じられていますが、キャスリン・ビグロー監督はアバターのジェームズ・キャメロン監督の元妻。
どちらがアカデミー賞を取るか注目されていましたが、元妻の方が栄冠を獲得しました。
アバターの3D映像の見事な美しさは驚嘆ものでしたが、どちらか一つの映画を選ぶとすれば、私もハート・ロッカーの方に軍配を上げると思います。
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イラク戦争で亡くなったアメリカ兵はこれまでに4,371名。
3,452名(79%)が30歳以下。
3,265名(75%)が白人。
Operation Iraqi Freedom と称する米軍の作戦名のデータベースに詳細なデータが載っています(詳しくは『oif-deaths-total.pdf』をクリック)。
これらの数字を見ていくと、映画で伝えられるような、その裏にあるストーリーと相俟って、胸がずしんと重くなってしまいます。
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コメント
いつもblog拝読させていただいております。
ところで、サウジなどで聞こえていたのはコーランではなくアザーンの声ではないでしょうか。日本人にとってはアラビア語が分からないと判断できませんが、モスクなどで拡声器を使っているのはアザーンだと思われます。
投稿: kd | 2010年3月14日 (日) 09時34分
kd様
ご指摘、ありがとうございます。
確かに、アザーン(礼拝への呼びかけ)の声だった可能性の方が高そうですね。
投稿: 岩崎 | 2010年3月14日 (日) 10時43分