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2010年5月30日 (日)

眠れる巨人

一昨日の高木さんのスピーチでも紹介されていたスティーブ・ジョブズの1983年のスピーチ。

ジョージ・オーウェルの小説『1984年』に引っ掛けて、翌84年1月に発売となるアップルのマッキントッシュのCMを紹介したスピーチです 〔『こちら』のYouTubeでその動画を見ることが出来ます(注)最初の20秒くらいは音楽だけで暗い画面が続きます。これも演出です〕。

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このスピーチはジョブズが28歳の時のものです。

ジョブズはこの演説を行う3年前(ジョブズ25歳の時)にすでにアップルの株式公開を果たし大富豪でした。

1984年、彼は、「コンピューターを誰にでも使えるようにしたい(For the rest of us)」との理念のもとに、マッキントッシュを世に送り出し、巨艦IBMに戦いを挑みます。

* * *

さて現在の日本。

一昨日、ルース駐日米大使は、シリコンバレーで弁護士を25年間勤めた自らのキャリアに触れ、こう語りました(5月29日付け日経新聞)。

「グーグル、アップル、ユーチューブといったベンチャーがガレージで作業していたころから10億ドル企業になるまで面倒を見た」

「日本は眠れる巨人。素晴らしい技術があり、世界的なベンチャー企業が次々と生まれても不思議ではない」

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2010年5月29日 (土)

iPad

昨日は第140回、デジコンサロンに参加してきました(詳しくは『こちら』)。

今から14年前(1996年)にスタートしたデジコンサロン。

『こちら』にある過去14年間のタイトルを見て分るように、これまでに実に多くの話題を取り上げてきています(私が最初に参加したのは確か第120回の時です)。

さて昨日のトッピクスは iPad について。

日本での iPad の発売が延期されてきた為、昨日の講演は期せずして iPad の日本における発売日と重なりました。

講師は、「MACLIFE」の創刊など、PC関連雑誌の編集長として長い間、PC、ネットなどコンピュータ技術の発達史に関わってきた高木さん(『こちら』)と、テクノロジーライターとして多彩な活動を展開している大谷さん(『こちら』)の両名。

2人の話は、時に 1968年のAlan KayDynabook にまで遡り、iPad の魅力を多面的に紹介。

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「これからの子供たちは iPad を触りながら育っていくようになる」と高木さん。

『こちら』は高木さんが昨日紹介していた YouTube の動画です。

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なお昨日のサロン参加者の中に、この日発売になったばかりの iPad を既に持っている人が何人もいたのには驚かされました。

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2010年5月28日 (金)

Eurozone Bond Holdings

ユーロが急回復したのを受け、ニューヨークのダウも今年2番目の上げ幅を記録。

相場は激しく乱高下していますが、今回の切っ掛けは、フィナンシャルタイムス (FT) の記事にあったのかもしれません。

5月26日18:43 に FT は、「中国はユーロ圏の債券(国債)への投資を見直す」と報じました(『こちら』)。

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これに市場が反応し、ユーロ安(欧州信用不安)、株安となったのですが、昨晩のニューヨークでは、中国の高官がこれを否定したことが報じられ、上述の通り、マーケットは急回復。

世界市場における中国の存在感を見せつけられた形となりました。

と同時に、マーケットは欧州信用不安に対して極めて神経質になっている-このことが改めて確認された一幕でした。

当面市場は乱高下を繰り返すかもしれません。ギリシャから、(より経済規模の大きい)スペインに飛び火するのを防げるかどうか(下記注参照)-このあたりが危機を封じ込めることが出来るかどうかを占う上でのポイントとなります。

【注】169対168の僅差でスペイン議会は昨夜150億ユーロの歳出削減を可決。

           28spainarticleinline

ニューヨークタイムスは the knife-edge vote と報じています(『こちら』)。

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2010年5月26日 (水)

危機を封じ込めることが出来るか

昨日のニューヨークではユーロが値を戻し、ダウも 10,000 を回復しました。

さて、今週の 日経ヴェリタス・トーク では、日経ヴェリタス編集部長がユーロを巡る今後について、次の 3つの見通しを挙げていました。

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(1)危機を何とか封じ込めることに成功する

(2)ユーロという共通通貨のシステムから弱い国が抜けていく

(3)逆に各国の独立性を弱める形で欧州統合がより強化される

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これに対して、ゲストの三菱UFJリサーチ&コンサルティングの五十嵐さんは、

(2)も(3)も難しく、結局は(1)で対応せざるをえないのではないか、先般EUが発表した 90兆円の緊急支援枠 もこの流れに沿うものだ、

と話していました。

野村のポール・シアード氏(私はリーマン在籍時にご一緒していました)は新聞紙上で、(3)に近いようなニュアンスの発言をしていました。

(1)の処方箋が効けば、それが当面の世界経済にとっては望ましいのでしょうが、マーケットは懐疑的に見ているように思えます。

ベルリンの壁崩壊やユーロ誕生時のように、ドイツという国に経済的余裕があれば、ドイツの負担の元に弱者に手を差し伸べることも出来るのでしょうが、

リーマン危機により、そんな余裕も無くなってしまった。そういった時に起きている危機だけにより一層深刻です。

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2010年5月25日 (火)

ビジネス・ボイス講座

通勤時の電車やクルマの中で、アイポッド(iPod)などを使ってビジネス講座を聞いたり語学のレッスン講座を聴く人が増えていると言います。

㈱アートデイズ が運営する ビジネスVOICE講座 もそういった人たちのニーズに応えようとしているものです。

私は昨年3月の ビジネスVOICE講座 創刊ラインナップの一角を占めさせて頂きましたが、今回(2010年5月)再び 『日本企業の起死回生策・・・』 と題する講座を配信させて頂いております。

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これは実はアートデイズの宮島編集長が拙著『M&A新世紀』を読んで、声をかけてくれて実現したものです。

「ちまたでは、グローバル資本主義によって日本がどんどん経済侵略されてしまう(職が奪われる、企業が買収される)と言われるが、『M&A新世紀』はグローバル資本主義をチャンスと捉えている、こういった発想は日本の中小企業経営者には新鮮ではないか」

宮島さんはこう考えてメールを送ってくれて、この講座が実現しました(従って内容的には『M&A新世紀』と重なるところも多々あります)。

先日アリババの方とお話しする機会があったのですが、世界では海外販路を開拓する目的でアリババが良く使われているのですが、日本の中堅中小企業の利用はいまひとつであると残念がっていました。

中小企業こそ、うちに篭らずに積極的に外に打って出る、そういった時代になってきていると思います。

ご関心のある方は是非『日本企業の起死回生策』を聴いてみてください。

* * * *

ところで、iPad といい、アマゾン・キンドルといい、あるいは、この種の配信型オーディオ・ブック、CDなど、出版の形は単なる紙媒体からどんどん進化・多様化しています。

紙で保存する時代から、NAND型フラッシュ・メモリーやクラウド(アマゾンのキンドルでは一度購入した書籍を誤って消したり機器を破損してもすぐに re-download が可能)が保存する時代へと変わってきています。

狭い家が本で一層狭くなるといったこともなくなってくるかもしれません。

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2010年5月23日 (日)

CDS クレジット・デフォルト・スワップ Credit Default Swap

リーマンショックの直後、一時新聞紙上を盛んに賑わせたCDS (クレジット・デフォルト・スワップ)

この言葉が最近再び新聞で目に付くようになりました。

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例えば先週の『日経ヴェリタス』

用語解説コラム(第8頁、Dictionary)でCDSについて解説。

CDSとは:

(例えば)Aの債権1億円分のプロテクションを買った投資家は、Aが債務不履行に陥った場合に(プロテクションの)売り手から、1億円の債権の回収不能相当額を補償してもらう。

売り手はリスクを引き受ける代わりに毎年一定の保証料を買手から受け取る。

と説明しています。

以下は英文Wikipediaの解説:

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Buyer purchased a CDS at time t0 and makes regular premium payments at times t1, t2, t3, and t4. If the associated credit instrument suffers no credit event, then the buyer continues paying premiums at t5, t6 and so on until the end of the contract at time tn.

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However, if the associated credit instrument suffered a credit event at t5, then the Protection seller pays the buyer for the loss, and the buyer would cease paying premiums.

先週の『日経ヴェリタス』の第4頁では各国のCDSを掲載(出所:マークイット・グループ)。

5月7日時点のCDS値は:

ギリシャ   9.4 (%)

ポルトガル  4.6

スペイン   2.7

イタリア    2.3

日本     0.8

中国     0.8

シンガポール 0.5

米国     0.4

フィンランド 0.3

日本よりもシンガポールやフィンランドの信用が高い(リスクが低い)と評価されています。

東京金融取引所が公表する日本企業のCDS参考値は『こちら』です。

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2010年5月20日 (木)

ユーロのゆくえ(2)

ユーロが乱高下を繰り返しながら、じりじりと値を下げてきています。

昨晩(NY市場)は「一服」と言いますか、むしろユーロは対ドルで、1.215から1.243くらいまで「上昇」。

一日の取引時間内での動きとしては、ほぼ過去1年間位の間で、もっともユーロが上昇(!)した一日となりました(『こちら』)。

しかしこれは一時的な動きで、ユーロに対しては引き続き悲観的な見方がマーケットを支配しているようです(『こちら』)。

先般『ユーロのゆくえ』と題する記事を載せました(『こちら』)。

今年2月8日に Monness, Crespi, Hardt & Co.(『こちら』)が "idea dinner" と称する夕食会を開催。ヘッジ・ファンドの人たちが招かれ、

『ユーロはもっと下落すべきではないか。1ドル=1ユーロくらいになるのではないか』

といった議論なされたとの、ウォールストリート・ジャーナル紙の報道(2月26日付け;『こちら』)を紹介したものでした。

この時(2月)のレートは1ユーロ=1.36ドル。それが今では1ユーロ=1.24ドルにまで下落しています。

対円で見ると、この時124円だったユーロが現在では113円台に・・・。

ECB(European Central Bank)のサイトに行くと、通貨ユーロが誕生してから今日までの対ドル相場のグラフが出てきます。

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こうしてあらためて眺めてみると、2000年から2002年までは米ドルの方がユーロより(値段が)高かったことが思いおこされてきます。

ユーロは今後どうなるか。

浜矩子教授の『ユーロが世界経済を消滅させる日』は、(本のタイトルがやや刺激的過ぎますが)、分りやすく書かれていると思います。

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2010年5月18日 (火)

日経ヴェリタス・トーク

昨晩、日経CNBCの『日経ヴェリタス・トーク』という番組に出演しました。

再放送は今日、5月18日(火)の 18:15~、および19:06~です。

       Movie_pic_2

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2010年5月17日 (月)

電気自動車

私がスタンフォードに留学していた時(1978-80)。

1年先輩の学年(class of MBA79)に何人かの日本人留学生がいました。

たまたま本屋さんの店頭で、そのうちの一人、村沢さん(『こちら』)の本を見かけました(『こちら』)。

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村沢さんと言えば、東大の機械工学科を出て、更に東大の大学院で工学部の修士を取得してから、スタンフォードのビジネススクールにやってきた方。

電気自動車について非常に分りやすく、要領良くまとめています。

すでに日産リーフのウェブサイトはオープン(『こちら』)し、購入の予約受付も行われています。銀座4丁目の日産ショールームにはリーフが飾られ、パンフレットを貰うことも出来ます。

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三菱の電気自動車i-MiEVは、軽自動車 i (アイ)の車体がベースとなっていましたが、リーフはホイールベース2700mm、車体の大きさは、4445mm×1770mm×1550mm。

いよいよ電気自動車が身近なものになりつつあります。

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2010年5月16日 (日)

ユーロはギリシャに勝てるか

今日発売された『日経ヴェリタス』に野口悠紀雄さんが『ユーロはギリシャに勝てるか』という興味深い一文を寄稿しています。

ユーロの動向、あるいは今後の金融市場、株式マーケットの動向等を見通す上でも、コンパクトですが説得力ある解説だと思います。

最後のさわりのところのみ下記に記しますが、是非全文を読んでみられたら良いと思います。

* * *

「独立国家が通貨を共有する」という経済的にはありえない奇妙な仕組みを維持できるのか、人類史上初めての壮大な実験が行われている。

それは政治的にはきわめて野心的であるが、経済的には失敗することがほぼ確実なばかげた実験ある。」

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2010年5月15日 (土)

WMD: Weapons of Mass Destruction

WMDとは、Weapons of Mass Destruction の略で大量破壊兵器のこと(『こちら』)。

これがあるからとの名目でアメリカはイラクに戦争を仕掛けた(『こちら』)のですが、結局いくら探しても WMD は見つからず ― それでは、イラク戦争はいったい何のための戦争だったのでしょうか。

今日映画館で見た『グリーンゾーン』は、『ハートロッカー』とはまた違った意味でインパクトのある映画でした。

    Green_zone_2

実際の映画撮影はスペインやモロッコで行われたようなのですが、出演者の兵士の殆どが(主演のマット・デイモンやその他1~2名を除き)、イラクやアフガニスタンから帰還した本物の米兵とのことで、本作はリアリティに溢れた映画に仕上がっています。

またこの映画は、『グリーン・ゾーン』という本に、Inspired されて製作されたとのこと。

本の方はノンフィクションとのことなので、映画を観た後、本も読んでみたいと思いました。

もうひとつ。映画を観て思ったのは、『グアンタナモ収容所』

オバマ大統領は大統領選中にグアンタナモ収容所は閉鎖すると発言し、2009年にも、「今年(2009年)末までに閉鎖する」と宣言したにも係わらず、まだ閉鎖されていません。

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2010年5月13日 (木)

The End of the Euro

ハーバード大学の Niall Ferguson 教授。

彼はハーバードの歴史学部の教授(Professor of History)であると同時に、ハーバードビジネススクールの教授でもあります。

         Ferguson

Ferguson 教授は、ご自分の Web Site も持っているので、ご関心ある方は覘いてみて下さい(『こちら』です)。

さてその Ferguson 教授が、「The End of the Euro」と題する解説記事をニューズ・ウィークに寄稿しています。

『こちら』で全文をご覧になれます。

英語よりも日本語で読みたいという方は、ニューズ・ウィーク日本版の最新号(『こちら』)に全文が訳されて掲載されています。

Ferguson 教授は記事の中で次のように述べています。

「ヨーロッパ合衆国」として独り立ちするのか、それとも神聖ローマ帝国の現代版という程度で終わるのか。

寄せ集めにすぎない「多様な幾何学模様」は遅かれ早かれ崩壊するだろう。

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2010年5月12日 (水)

豚はU.S.?

財政が悪化して国際金融市場の火種になっている国を称して、PIIGSなどと言っています。

ポルトガル 【P】 85.9%

アイルランド 【I 】 78.8%

イタリア   【I 】 118.6%

ギリシャ  【G】 124.1%

スペイン  【S】  66.9%

数字は国家債務の対GDP比(IMFベース)。

       Greece_strike

       (ギリシャのストの様子)

ところが、米国も実はこの数字が92.6%になることから、PIIGSではなくて、

PIG IS U.S.

ではないか、こんな記事がWSJに出ていました(『こちら』です)。

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2010年5月10日 (月)

シンガポールでのスモール・ミーティング(4)

(5月1日から掲載してきたフィンク会長のスピーチ。今回で取り敢えず終わりです。)

6.金利はどうなる?

Federal Reserve は symbolic な意味合いを込めて、早ければ今年の夏にも金利(Fed Fund Rate)を引き上げる可能性があると見ている。

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   (1954年7月~2009年12月のFFレート推移)

そしてその上げ幅は50BP(0.5%)程度という大幅なものであってもおかしくはない。

インフレはまだ大きな脅威ではない。というのは貨幣乗数(money multiplier;MM)はまだ 0.67 と通常の 1.5~2.0 (インフレ的なMMは 2.0以上)に比しても、極めて depressed な水準にあるからだ。

何れGDPの上昇が顕著となり、企業などが持つ現金が動くようになれば、MMも上昇していくだろう。

7.金融改革法は?

いま提出されている法案のままで可決されることはないだろう(注:フィンク会長のこのスピーチの後、4月28日、米上院は金融改革法の審議入りを否決。その後、共和党が議事妨害を中止して審議入りを可決)。

これは利害関係者たちが激しくロビー活動を行っているためだが、しかし一方で政治的には何らかの手が打たれなくてはならない。

つまり現状の法案を修正した内容のものが可決されるだろう。

8.商品市況は?

原油や天然ガス開発の技術革新には凄まじいものがある。

米国はいまや300年分の天然ガスの埋蔵を有することとなった。

新しい技術によりイラクはサウジと同じだけの原油を産出できる。

ブラックロックはサウジアラムコの資金を運用しているが、サウジは原油価格の見通しを、65~85ドルと考えているようだ。

さらに付け加えるならば、サウジは西側諸国の対応に頭に来ている。

サウジは原油産出能力を8百万バーレルから12百万バーレルに増加させたが、西側は8百万バーレルしか使っていない。

結果、彼らの設備は一部不稼動になっている。

ということで、これまでの伝統的なエネルギーがまだまだ主流で有り続ける。ソーラーとか風力といった代替エネルギーへの転換はそう簡単には進むまい。

9.穀物、食料は?

長期的には bullish だ。途上国の人がミドルクラスになるに伴い、より多くの食料を消費するだろう。

10.貴金属は?

採掘能力が不足している(shortage in mining capacity)。貴金属そのものに投資するようリも、貴金属を採掘(産出)している会社を買った方が良い。

11.新興国市場をどう見る?

強気見通し(bullish)だ。

しかし個別に良く見ていく必要がある。

例えばブラジルは成長スピードに比して(投資家の人気が集中して)、株式市場は高くなりすぎた。

これに対してコロンビアはいままで余り注目されていなかった。

私は中南米の中でコロンビアをもっとも bullish に見ている。(岩崎注:知人のオーストリア人A氏の奥さんはコロンビア出身。その関係で彼はこれまで何年にもわたってコロンビアを訪問してきたが、最近ウリベ政権のもとで治安が著しく回復してきたと述べていました)。

      Photo_6

         (ウリベ大統領)

私は現在のタイに対しても bullish に評価している。現在のタイでの騒動(騒乱)は、タイでは民主主義が機能していて、人々が恐れることなく、自分たちの意見をはっきり言うようになっていることの証左だ。

12.プライベート・エクイティについてどう見る?

学校、病院などの基金が歴史的にプライベート・エクイティ・ファンド(PE)に overallocate してきた。そしてPEは何年にもわたってマーケットを outperform してきた。

しかし2008年、彼らは30%もの下落を経験。これまでの7~10年分ものoutperformance 分がチャラになった。

PEへの投資は流動性を犠牲にする。

2008年の危機以降、endowments (基金)や機関投資家は以前にも増して流動性を好むようになった。彼らはPEへの投資から遠ざかってしまった(moving away from PE)。

13.ミューチュアル・ファンドは?

強気だ。今年の1~4月のブラックロック・ミューチュアル・ファンドへの資金流入は、歴史上最大のものだ。

* * * *

以上が4月下旬のフィンク会長の発言要旨です。

世界最大の顧客資産を運用しているとなると、いろんな人たちと直接会って生の情報を得ることが出来る・・・

その辺も運用成績を上げる上で役に立っているのでしょう。

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2010年5月 8日 (土)

イパネマの娘

今日はブラックロックのフィンク会長のスピーチ記事(第4回でこれが最後)を書くつもりでしたが、1回小休止して、今朝の朝日新聞。

私は毎週土曜日の別刷り版、「be on Saturday うたの旅人」というセクションをよく読んでいます。

今週の「うたの旅人」は「イパネバの娘」。

         Photo

冒頭、このような書き出しで始まります。

* * *

題名からメロディーが浮かばない人も、聴けば必ず「ああ、これね」と覚えがある、「イパネバの娘」はそんなたぐいの曲だ。

* * *

YouTubeで探したら直ぐ出てきました。『こちら』です。

CDを試聴されたい方は例えば『こちら』(20番目の曲の「試聴する」をクリック)あるいは『こちら』をどうぞ。

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2010年5月 7日 (金)

シンガポールでのスモール・ミーティング(3)

昨日のNY(ダウ平均)は一時、10,000を割り込み、9,869を記録しましたが、その後、急速に回復。為替も3円ほど円高に振れました。

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(さて前回からの続きです)

4.中国について

今回の出張では中国を訪問してから、シンガポールにやってきた。

中国では何人かの政策決定者と面談した。

周小川中国人民銀行(中国の中央銀行)総裁とも面談した。

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       (周小川総裁)

中国経済の将来の成長について中国の要人たちは、「謙虚なレベルの心配(modest degree of worry)」を持っているのかもしれないと、私は感じた。

人民元については切り上げが起きるとしても、ドル単独に対して、というよりも、通貨バスケットに対してペッグさせて再評価させる ― こういった方向もあるように感じた。

中国の要人たちは、中国の輸出産業のコスト構造の構造的変化を心配している。

中国内陸部から珠江デルタ地域への労働者の移住のペースが落ちてきている。

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       (広州市内の珠江)

結果、深圳、広州、東莞、珠海などの大都市が並ぶ中国の輸出産業の一大集積地では労働力が不足。

賃金が上昇して、対外的なコスト競争力の低下に繋がりかねない状況にある。

5.それでも全体観からするとプラス面の方がマイナス面を上回る

ヨーロッパが抱える問題、そして米国の問題など、世界を取り巻いている問題は多い。

にもかかわらず、私は全体観からするとプラス面の方がマイナス面を上回ると考えている。

それはなぜか。

1)機関投資家や企業は多額の現金を保有している。

米国企業はいまや1兆2000億ドル(110兆円)もの現金を持つに至っている。

2)投資家の間には十分な(余りあるほどの)恐怖心がある。

最近時の株式市場の好調ぶりに対して、abundance of fear (余りあるほどの恐怖心)がある。

このことが市場が脱線するのを防いでいる。

3)大学などの運用基金、年金、生保などは(リーマンショック後)これまでリスクを極端に嫌って運用してきた。

社債や公共債などの債券での運用を株式での運用に比べて高め、これら比較的安全な資産での運用を overallocate してきたのだ。

しかしながらこんな運用スタイルは長期間継続させることは出来ない。

というのは、長期にわたるliability servicing に不足が生じてしまうからだ。

年金基金の平均的 liability である6%は、4~5%の債券運用ではまかないきれない。

よって何れは運用スタイルの変化が生ずる(株式運用比率を高める)ことになる。

以上、1)~3)の要因を勘案するに、株式市場は今後、10~15%程度の上昇(rally)を経験することになるだろう。

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      (フランクフルト取引所:ブルとベアー)

特に現在投資家が underweight なのは米国だ。

すなわち株式市場は米国の市場に牽引されて上昇していくと見ている。

(次回に続きます)

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2010年5月 3日 (月)

シンガポールでのスモール・ミーティング(2)

昨日ギリシャについてのフィンク会長のコメントを書きましたが、今朝の新聞には

『EUとIMFがギリシャ支援のために協調融資(約14兆円)を行う』

との見出しが躍っていました。

日経と朝日の記事を比べてみますと、朝日の方が突っ込んだ内容の記事になっています。

日経がブッリュセルとベルリンの記者の記事を載せていたのに対して、朝日は現地アテネの特派員の記事を中心にまとめていたのが影響しているのかもしれません。

ということで、朝日の記事を参考に今回の決定内容を以下にまとめてみます。

ポイントはEU、IMFから求められていたギリシャの財政再建策のなかみ。

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      (ギリシャのパパンドレウ首相)

ギリシャ政府は2日付けで閣議決定を行いましたが、その内容は:

1)ギリシャ全労働人口の25%を占める100万人の公務員の3年間の昇給や新規採用の凍結、賞与廃止など。

年金受給年齢を現在の平均62歳から段階的に引き上げ、額も約30%削減する。

(注:日経の記事にはこの辺の詳しい記述がありません)。

2)今年3月末に19%から21%になったばかりの付加価値税(注:一種の消費税)をさらに23%に引き上げる、など。

朝日の記事によると、ギリシャの財政再建には「暗雲が漂っている」とのことです。

スト社会であるギリシャにとって、ストはほぼ「生活の一部」であると言います。

全ギリシャ社会主義運動(PASOK)を単独与党とするパパンドレウ政権はあしき慣習を断ち、一切の妥協を排除するとしていますが、

こうした「方針変換」に労組は対応できていないとのことです。

5月1日のメーデーでは、数万人の市民がデモ行進。

警察官は火炎ビンの炎に包まれ、国営テレビのワゴン車も炎上。

庶民の平均月収は約12万円。

「痛みを強いられる国民の怒りの矛先は破壊行為へと向かい、暴徒化した市民と警官隊があちこちで衝突した」(朝日新聞5月3日)。

* * * *

さて、昨日のフィンク会長のスピーチの続きです。

ギリシャの次、スペインについてです。

* * * *

2.【問題その1】 ヨーロッパ (前回の続き)

さてスペインの負債過多の問題は、更に次の2つの別の問題があるために、より一層深刻なものになっている・・

1つは失業率。

国全体で18%、30歳以下の人口では何と失業率は30%に達する。

このような失業率が仮に米国で起きるとすると、米国では内戦(civil war)を引き起こすかもしれない。

そういったレベルの深刻な失業率がいまのスペインを襲っているわけだ。

2つ目の問題は、スペインでは、住宅ローンについては個人が保証する形になっている。(注:米国のように住宅ローンが返済できなくなった債務者は銀行に鍵を送って終わり。すなわち個人が破産するわけではない、といったシステムとは違うのだ)。

このことは最も間違った時期(タイミング)での個人消費の崩壊を招いてしまった。

ギリシャもスペインも、これから更なる景気後退へと落ちていくだろう。

その後で、やっと回復の道筋が見えてくるだろう。

英国だってギリシャやスペインとそれほどの違いがあるわけではない。

そしてこれらの理由ゆえに、私はユーロや英国ポンドについては、米ドルに比して、更に弱くなると見ている(ユーロ安、ポンド安)。

3.【問題その2】米国

米国は3つ~4つの問題を抱えている。

① 住宅保有者の問題

アメリカの住宅保有者の多くは債務超過の状況にある。

すなわち住宅ローンの額が、保有している住宅やその他資産の額を上まわっているのだ。

多くの住宅保有者が negative equity (債務超過)の状況にあるということは、失業率が高どまりしている状況と相俟って、国内のモーゲッジ(住宅ローン債権市場)に更なるストレスを及ぼしている。

実際のところ、現在のマーケットでは、FED がMBS(Mortgage Backed Securities)の唯一の購入者だ。

② セカンド・モーゲッジ(第2抵当権)の問題

セカンド・モーゲッジの市場は壊れてしまっている(注:セカンド・モーゲッジについては『こちら』『こちら』を参照)。

③ 商業用不動産(CRE)の問題

CREのDebt Financing は問題ない。これに対してはリスクを取っても良いという人たちがいて、流動性もある。しかしCREの評価(Valuation)が問題であり、CRE の Equity を取っても良い(新しくCREの保有者になる)という人たちがまだいない。

④ 地方政府の問題

ニューヨーク州の財政赤字は110億ドル(約1兆円)、カリフォルニア州は180億ドル(約1.7兆円)の財政赤字だ。これらは今年の6月までに解決されなければならない。

* * * *

問題点が山積みという感じですが、それでもフィンク会長によれば、

全体観からするとプラス面の方がマイナス面を上回る」。

「全体としてみれば、世界のマーケットは現在の水準(注:4月23日(金)― 米ダウ平均:11,204、日経平均:10,914円)に比べて、今後おおよそ10~15%程度は上昇していくだろう」

とのことです。

次回以降でこの辺が明らかになります。

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2010年5月 2日 (日)

シンガポールでのスモール・ミーティング(1)

4月下旬に行われたシンガポールでのスモール・ミーティング。

そこでブラックロックのフィンク会長が話した内容です。

(前回お話したように私自身がこのミーティングに参加したものではありません。幾つかのメールの転送を経て私のところにも、その内容が送られてきたものであり、必ずしも正確でない部分が含まれているかもしれません。なお今回の記事は5月1日のブログ記事をお読みになった後でお読み頂いた方が宜しいかと思います)。

1.全体観

今日の世界のマーケットを取り巻く環境を見てみよう。

そこには非常に深刻な逆風や問題がある。

しかし全体観からするとプラス面の方がマイナス面を上回る。

全体としてみれば、世界のマーケットは現在の水準(注:4月23日(金)― 米ダウ平均:11,204、日経平均:10,914円)に比べて、今後おおよそ10~15%程度は上昇していくだろう。

それでは、今日の世界のマーケットを取り巻く、幾つかの非常に深刻な逆風や問題とは何か、主なものを見ていこう。

2.【問題その1】 ヨーロッパ

ヨーロッパの問題は始まったばかりだと見ている。

ギリシャ、スペイン、その他の国々の負債(過多)や赤字の問題は、解決に向けての諸段階の中で、非常に初期の段階にある。

全ての負債過多(debt crisis)の問題がそうであるように、

この問題の解決や回復は、負債を負ってしまった当事者にとって

苦痛を伴う(painful)調整があって、初めて、その道筋(解決や回復)が見えてくるものだ。

ギリシャやスペインについては、この種の苦痛を伴う(painful)調整がまだ行われてはおらず、これからのことだ。

アイルランドについてはもっと遅れており、全てのプロセスはまだ始まったばかりだ。

たとえば、ギリシャについてもう少し詳しく見てみよう。

ギリシャの公務員の中には50歳で定年を迎え、公務員の年金生活に入ることが出来る層がある(岩崎註:全ての層ではありません。むしろ50歳定年は特殊なケースであるようです。ギリシャの公務員の定年については『こちら』『こちら』なども参考にしてみて下さい)。

ギリシャ問題の本格的な解決の為には、国民の痛みを伴う諸施策が講じられる必要があり、その結果、社会的な不安定と混乱(unrest and disruption)が起こることになるだろ。

スペインの負債過多の問題は、更に2つの別の問題があるために、より一層深刻なものになっている・・

(続きは次回にします)。

* * * *

ところで、ネットで調べていましたら、大前研一さんが2年前にブラックロックのフィンク会長について書いた記事が出てきました(『こちら』)。

その一部を以下に抜粋します。

「フィンク会長と言えば、サブプライムの勝者として一躍有名になりました。

私も以前、サブプライム関連を組み込まずに絶妙な運用をした人がいたということで、紹介したことがあります。

シティバンクやメリルリンチが1兆円を超える損失を計上したのに対し、ブラックロック社のサブプライム関連損失は軽微な額です。

さらに、同社旗艦ファンドであるオブシディアンは不動産価格下落に乗じて大きな収益を得たという慧眼ぶりには一目置かざるを得ないでしょう。

実際、ローレンス・フィンク会長には、色々な銀行や証券会社などからトップ就任を請われていると聞きますが、それも頷けます」

* * * *

さてそのフィンク会長が今回語るスペインの問題、イギリスの問題、そして、アメリカは・・?

通貨ユーロとドルとの関係などは・・?

次回以降、これらについて紹介していきます。

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2010年5月 1日 (土)

「ポジション・トーク」 vs. 「unbiased views」

カリスマ・ディーラーと称する人。

こういった人が例えば自らドル資産を買い持ちにして(ドル資産を積み上げて)おいて、相場を自分に有利なように導こうとドル高(円安)誘導発言を行うこと。

これを一般にポジショントークと言っています。

すなわちポジショントークとは、株式・為替・金利先物市場において、買い持ちや売り持ちのポジションを保有している著名な市場関係者が、

自分のポジションに有利な方向に相場が動くようにと、

市場心理を揺さぶる発言を、マスメディア・媒体などを通して行うことを言います。

ちなみにこの言葉はきちんとした英語ではなく和製英語です。

個人投資家の方はポジション・トークに騙されないように市場関係者の話を聞く必要があります。

「この市場関係者は実は自分でポジションを持っているのではないか」

プロップと言っていますが、英語で言う Proprietary Trading Intererst (自己勘定取引)。「これにに従事しているのではないか」- そういった目で発言者の言葉の裏を探ってみる必要が有ります。

* * *

ところで、このようなプロップに従事しないで、ひたすら顧客の資産運用に努めて、世界最大の顧客資産(3.4兆ドル;310兆円)を運用するようになったのが、ブラックロック(『こちら』)です。

このためブラックロックの会長ラリー・フィンクの言葉は、

バイアスのかかっていない見方(unbiased views)ということで、マーケットではそれなりの高い評価を得ています。

         Laurencedfink_3

(ちなみ私はブラックロックとはほとんど接点ありません。興銀時代の後輩でブラックロック・ジャパンに勤務している人がいるくらいです)。

* * *

さて今般ブラックロックのフィンク会長がシンガポールで行われたスモール・ミーティングで話した内容が、幾つかのメールの転送を経て私のところにも送られてきました。

スモール・ミーティングとは少人数が参加するミーティングのことです。

大人数の聴衆を前にしての発言やマスコミの取材がある場での発言に比べて、突っ込んだ内容の発言が期待できます。

はたしてブラックロックのラリー・フィンクはいまのマーケットをどう見ているのか。

強気か弱気か。

株式相場はどうなるか。

ユーロは?

ギリシャは?

次回以降、彼のシンガポールでの発言を簡単にご紹介していきます。

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