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2010年5月10日 (月)

シンガポールでのスモール・ミーティング(4)

(5月1日から掲載してきたフィンク会長のスピーチ。今回で取り敢えず終わりです。)

6.金利はどうなる?

Federal Reserve は symbolic な意味合いを込めて、早ければ今年の夏にも金利(Fed Fund Rate)を引き上げる可能性があると見ている。

640pxfederal_funds_rate_1954_thru_3

   (1954年7月~2009年12月のFFレート推移)

そしてその上げ幅は50BP(0.5%)程度という大幅なものであってもおかしくはない。

インフレはまだ大きな脅威ではない。というのは貨幣乗数(money multiplier;MM)はまだ 0.67 と通常の 1.5~2.0 (インフレ的なMMは 2.0以上)に比しても、極めて depressed な水準にあるからだ。

何れGDPの上昇が顕著となり、企業などが持つ現金が動くようになれば、MMも上昇していくだろう。

7.金融改革法は?

いま提出されている法案のままで可決されることはないだろう(注:フィンク会長のこのスピーチの後、4月28日、米上院は金融改革法の審議入りを否決。その後、共和党が議事妨害を中止して審議入りを可決)。

これは利害関係者たちが激しくロビー活動を行っているためだが、しかし一方で政治的には何らかの手が打たれなくてはならない。

つまり現状の法案を修正した内容のものが可決されるだろう。

8.商品市況は?

原油や天然ガス開発の技術革新には凄まじいものがある。

米国はいまや300年分の天然ガスの埋蔵を有することとなった。

新しい技術によりイラクはサウジと同じだけの原油を産出できる。

ブラックロックはサウジアラムコの資金を運用しているが、サウジは原油価格の見通しを、65~85ドルと考えているようだ。

さらに付け加えるならば、サウジは西側諸国の対応に頭に来ている。

サウジは原油産出能力を8百万バーレルから12百万バーレルに増加させたが、西側は8百万バーレルしか使っていない。

結果、彼らの設備は一部不稼動になっている。

ということで、これまでの伝統的なエネルギーがまだまだ主流で有り続ける。ソーラーとか風力といった代替エネルギーへの転換はそう簡単には進むまい。

9.穀物、食料は?

長期的には bullish だ。途上国の人がミドルクラスになるに伴い、より多くの食料を消費するだろう。

10.貴金属は?

採掘能力が不足している(shortage in mining capacity)。貴金属そのものに投資するようリも、貴金属を採掘(産出)している会社を買った方が良い。

11.新興国市場をどう見る?

強気見通し(bullish)だ。

しかし個別に良く見ていく必要がある。

例えばブラジルは成長スピードに比して(投資家の人気が集中して)、株式市場は高くなりすぎた。

これに対してコロンビアはいままで余り注目されていなかった。

私は中南米の中でコロンビアをもっとも bullish に見ている。(岩崎注:知人のオーストリア人A氏の奥さんはコロンビア出身。その関係で彼はこれまで何年にもわたってコロンビアを訪問してきたが、最近ウリベ政権のもとで治安が著しく回復してきたと述べていました)。

      Photo_6

         (ウリベ大統領)

私は現在のタイに対しても bullish に評価している。現在のタイでの騒動(騒乱)は、タイでは民主主義が機能していて、人々が恐れることなく、自分たちの意見をはっきり言うようになっていることの証左だ。

12.プライベート・エクイティについてどう見る?

学校、病院などの基金が歴史的にプライベート・エクイティ・ファンド(PE)に overallocate してきた。そしてPEは何年にもわたってマーケットを outperform してきた。

しかし2008年、彼らは30%もの下落を経験。これまでの7~10年分ものoutperformance 分がチャラになった。

PEへの投資は流動性を犠牲にする。

2008年の危機以降、endowments (基金)や機関投資家は以前にも増して流動性を好むようになった。彼らはPEへの投資から遠ざかってしまった(moving away from PE)。

13.ミューチュアル・ファンドは?

強気だ。今年の1~4月のブラックロック・ミューチュアル・ファンドへの資金流入は、歴史上最大のものだ。

* * * *

以上が4月下旬のフィンク会長の発言要旨です。

世界最大の顧客資産を運用しているとなると、いろんな人たちと直接会って生の情報を得ることが出来る・・・

その辺も運用成績を上げる上で役に立っているのでしょう。

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