シンガポールでのスモール・ミーティング(2)
昨日ギリシャについてのフィンク会長のコメントを書きましたが、今朝の新聞には
『EUとIMFがギリシャ支援のために協調融資(約14兆円)を行う』
との見出しが躍っていました。
日経と朝日の記事を比べてみますと、朝日の方が突っ込んだ内容の記事になっています。
日経がブッリュセルとベルリンの記者の記事を載せていたのに対して、朝日は現地アテネの特派員の記事を中心にまとめていたのが影響しているのかもしれません。
ということで、朝日の記事を参考に今回の決定内容を以下にまとめてみます。
ポイントはEU、IMFから求められていたギリシャの財政再建策のなかみ。
(ギリシャのパパンドレウ首相)
ギリシャ政府は2日付けで閣議決定を行いましたが、その内容は:
1)ギリシャ全労働人口の25%を占める100万人の公務員の3年間の昇給や新規採用の凍結、賞与廃止など。
年金受給年齢を現在の平均62歳から段階的に引き上げ、額も約30%削減する。
(注:日経の記事にはこの辺の詳しい記述がありません)。
2)今年3月末に19%から21%になったばかりの付加価値税(注:一種の消費税)をさらに23%に引き上げる、など。
朝日の記事によると、ギリシャの財政再建には「暗雲が漂っている」とのことです。
スト社会であるギリシャにとって、ストはほぼ「生活の一部」であると言います。
全ギリシャ社会主義運動(PASOK)を単独与党とするパパンドレウ政権はあしき慣習を断ち、一切の妥協を排除するとしていますが、
こうした「方針変換」に労組は対応できていないとのことです。
5月1日のメーデーでは、数万人の市民がデモ行進。
警察官は火炎ビンの炎に包まれ、国営テレビのワゴン車も炎上。
庶民の平均月収は約12万円。
「痛みを強いられる国民の怒りの矛先は破壊行為へと向かい、暴徒化した市民と警官隊があちこちで衝突した」(朝日新聞5月3日)。
* * * *
さて、昨日のフィンク会長のスピーチの続きです。
ギリシャの次、スペインについてです。
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2.【問題その1】 ヨーロッパ (前回の続き)
さてスペインの負債過多の問題は、更に次の2つの別の問題があるために、より一層深刻なものになっている・・
1つは失業率。
国全体で18%、30歳以下の人口では何と失業率は30%に達する。
このような失業率が仮に米国で起きるとすると、米国では内戦(civil war)を引き起こすかもしれない。
そういったレベルの深刻な失業率がいまのスペインを襲っているわけだ。
2つ目の問題は、スペインでは、住宅ローンについては個人が保証する形になっている。(注:米国のように住宅ローンが返済できなくなった債務者は銀行に鍵を送って終わり。すなわち個人が破産するわけではない、といったシステムとは違うのだ)。
このことは最も間違った時期(タイミング)での個人消費の崩壊を招いてしまった。
ギリシャもスペインも、これから更なる景気後退へと落ちていくだろう。
その後で、やっと回復の道筋が見えてくるだろう。
英国だってギリシャやスペインとそれほどの違いがあるわけではない。
そしてこれらの理由ゆえに、私はユーロや英国ポンドについては、米ドルに比して、更に弱くなると見ている(ユーロ安、ポンド安)。
3.【問題その2】米国
米国は3つ~4つの問題を抱えている。
① 住宅保有者の問題
アメリカの住宅保有者の多くは債務超過の状況にある。
すなわち住宅ローンの額が、保有している住宅やその他資産の額を上まわっているのだ。
多くの住宅保有者が negative equity (債務超過)の状況にあるということは、失業率が高どまりしている状況と相俟って、国内のモーゲッジ(住宅ローン債権市場)に更なるストレスを及ぼしている。
実際のところ、現在のマーケットでは、FED がMBS(Mortgage Backed Securities)の唯一の購入者だ。
② セカンド・モーゲッジ(第2抵当権)の問題
セカンド・モーゲッジの市場は壊れてしまっている(注:セカンド・モーゲッジについては『こちら』や『こちら』を参照)。
③ 商業用不動産(CRE)の問題
CREのDebt Financing は問題ない。これに対してはリスクを取っても良いという人たちがいて、流動性もある。しかしCREの評価(Valuation)が問題であり、CRE の Equity を取っても良い(新しくCREの保有者になる)という人たちがまだいない。
④ 地方政府の問題
ニューヨーク州の財政赤字は110億ドル(約1兆円)、カリフォルニア州は180億ドル(約1.7兆円)の財政赤字だ。これらは今年の6月までに解決されなければならない。
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問題点が山積みという感じですが、それでもフィンク会長によれば、
「全体観からするとプラス面の方がマイナス面を上回る」。
「全体としてみれば、世界のマーケットは現在の水準(注:4月23日(金)― 米ダウ平均:11,204、日経平均:10,914円)に比べて、今後おおよそ10~15%程度は上昇していくだろう」
とのことです。
次回以降でこの辺が明らかになります。
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