ヘッジファンド(その2)
昨日のブログ記事にコメントを頂きました(『こちら』)。
ご質問に対する私の考えを 「昨日の記事コメント欄」に書くことも出来たのですが、こちらの方が書きやすいので、こちらに新しい記事として書かせて下さい。
(1)CDSという比較的小さいマーケットがなぜ国債という膨大なマーケットにこれほど影響を与えることができたのかというご質問ですが、
CDSが国債という膨大なマーケットに影響を与えたのではなくて、
市場が評価する国債の信用リスクが変化したから、CDSの価格が動いたのだと思います。
(NHKの解説では、何となく原因と結果が逆になって伝わってしまうような感じがします)。
(2)放送中の事実はどれほど真実かというご質問ですが、ヘッジファンドを現代の錬金術師と盛んに述べるなど、番組はややセンセーショナルに煽っている感じがします。
「現代の錬金術師であるヘッジファンドがCDSや国債の空売りで多額の利益を上げた」とありますが、マーケットでは、ある人の利益の裏には、必ず反対取引をしている人がいます。
(国債を売っている人がいるということは、その取引の相手方、すなわち買っている人がいる)。
多額の利益を上げたヘッジファンドがいる一方で、損をしたヘッジファンドや投資家、投機家もいることに留意する必要があります。
マネーが「新しく」国債をターゲットにしたとの表現も必ずしも適切でないように思います。
1980年代の初めには、アルゼンチン、ユーゴスラビア、ポーランド、ルーマニアなどの国家財政が破綻(もしくはその危機に瀕し)、私は興銀でこれらの国々に対する貸付債権のリスケジュールに従事しました。
上記、1980年代の初めの東欧、中南米危機のほかにも、1997年のアジア危機など、国家の財政が破綻したり、あるいは破綻の危機にさらされたことは過去にも何度もありました。
これを番組のように「マネーの攻撃」と表現するにはやや無理があります。
国家の財政が破綻の危機に直面するのは、「マネーが新しく国債をターゲットとして攻撃する」からではなくて、まずは放漫財政を作り出す財政当局や政治家の姿勢に問題があるからです。
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コメント
ご返答ありがとうございます。
"必ず反対取引をしている人がいる"という指摘は、ついつい忘れてしまうポイントでした。
本来ならば当の昔に価値が下がっているはずのギリシャ国債に、正しい値段がついておらず、そのひずみにいち早く戦略的に対応できたヘッジファンドが利益を上げたという認識に至りました。
国債市場にマネーが流れ込んでいることは昔も今も変わらないものの、その流動性や規模が大きくなった影響はあるのかもしれません。
投稿: 石ころ太郎 | 2010年7月 8日 (木) 11時46分
いつも楽しく読ませて頂いております。
ところで私は個人的にヘッジファンド投資を行っています。
投資対象は主に下記のサイトに掲載されているような代表的な大手ヘッジファンドです。
http://www.minkaigai.com/archives/category/kaigaifund/jisseki
(みんなの海外投資)
ただ、最近のモルガン・スタンレーのレポートには下記のような表記がありました。
「2008年の金融危機以降、ヘッジファンドへの資金流入が見られても、その大部分は最大規模のヘッジファンドに集中していた。だが足元、そうした傾向に変化が見られる。実際、ヘッジファンドへの資金流入を詳しく見ていると、中小規模のヘッジファンドへ向かう資金が全体に占める割合が上昇している」
資源や新興国を過剰に偏重したポートフォリオには不安感も感じつつある現在、ヘッジファンドそのものも分散すべき時代になったのでしょうか? ご教授下さい。
投稿: ヘッジファンドMr.Y | 2011年6月10日 (金) 13時59分
ヘッジファンドへ投資するのは主に機関投資家(年金、生損保、大学基金など)と富裕層です。
機関投資家は通常、ファンドのトラックレコードを見て投資の可否を判断します。ポールソンやアインフォーンなどのように成功を収めたファンドにはどんどん資金が集まるようになります。
富裕層はファンドの運営者をよく理解して、彼(彼女)になら運用を任せてもいいと判断して始めます。
ご質問の件ですが、運用者の運用金額のサイズ、運用のニーズ(タイムホライズン)などのよって答えが違ってくると思います。
たとえば大手機関投資家のA社はポートフォリオ全体の7%をオータナティブ投資に振り分け、その約3割をヘッジファンドにあてる(よって全体の2.1%)といった有様です。
A社の場合ですが、約10社~15社くらいのヘッジファンドに投資しているといった状況です。
投稿: 岩崎 | 2011年6月10日 (金) 15時20分