年金について
実は今回のこの記事は9月19日から書いているブログ記事の続きで、4回目にあたります。
19日、21日、23日の記事をお読みになっていない方は、これらを読んでから、今日の記事を読んだ方が分かりやすいと思います(緑字のところをクリックしてみてください)。
さてMさんの年金、月30万円というのは実はちょっと高めです。
厚生労働省が発表しているモデル世帯のケースでは、サラリーマンの夫と専業主婦がもらえる年金は2人で月23万3000円です。
サラリーマンではなくて個人事業主の場合は、もっとずっと少なくて月6万6000円。
本屋さんを覘くと年金の本がたくさん出ていますが、多くの場合、幾らの年金がいつからもらえるかが中心になっています。
700円から1500円を投資してこれらの本を買うのも一案です(なかでも『この本』が分かりやすいと思います)。
しかしもっと簡単で確実な方法は(1)日本年金機構から送られてくる『ねんきん定期便』(上図)を見る、あるいは(2)地元の年金事務所に問い合わせてみることです。
一昔前は年金事務所は横柄で感じが悪く、質問によっては「なんでそんな質問をするんだ」と怒られることさえあったと聞きますが、いまはとても親切に教えてくれるとの評判です。
年金の本は一般的に言って分かりづらいのが難点です。
専門用語がじゃんじゃん出てくるからです。
これらの専門用語は学問的な専門用語とは違って役人だけの世界で通じる用語です。
たとえば「マクロ経済スライド」。
この妙な言葉は日本語なのか、英語なのか、一般の経済学者でも何のことか分からないと思います。
もちろん macro economic slide などと言っても外人には通じず、通訳の人はどうしているのだろうと、人ごとながら気の毒に思います。
私には厚生労働省の役人の方がわざと普通の人には分かりにくい言葉を創作して使っているだけとしか思えません(と思っていたら、私と同じ考えの人が書いた本に最近出くわしました。『こちら』です)
ただそうは言っても、日本の年金の仕組みの基本的なところは押さえておかないと、老後の生活を考える上での「一番大切な資産」のことが分からないということになってしまいます。
ということで基本は以下のようなものです。
年金は人によってもらえる年金の種類や額は違うのですが、
大きく1階部分と2階部分、そして3階部分に分かれる
ということです。
家を想像してみてください。
1階建ての人はその部分の年金しかもらえません。
冒頭の個人事業主の人がこれにあたり、最大でも月6万6000円が国民年金から支給されるだけです。
サラリーマンの夫を持つ専業主婦も同じです。
2階建ての家に住むのは、普通のサラリーマン。
1階の月6万6000円に上乗せされて、2階部分の年金がもらえます。老齢厚生年金という、役所の人が考えた複雑な名前のもので、厚生労働省のモデルケースでは月10万1000円。
冒頭の月23万3000円のモデルケースは、夫と妻の1階部分に、この2階部分を加えた数字です(66,000×2+101,000=233,000)。
サラリーマンの時に年収が高かった人はこの2階部分がもう少し大きな金額になり、逆に年収が低かった人はモデルケース以下しかもらえません。
さて3階建てとは・・?
一部の大企業などでは社員のために1階、2階の公的年金に加えて、特別な企業年金を用意しています。
たとえば経営破綻した日本航空の場合、報道によればモデルケースでは年金支給額は1階、2階の公的年金に3階の企業年金を加えて、月48万6000円。
日本航空の破綻時にはこの年金の扱いを巡ってもめていたわけです。
企業年金には退職金の一部が年金になって充当されたりするケースがあります。また公的年金(1階と2階)と違って、死ぬまで支給されるとは限らないものもあります。
いずれにせよ3階まであると、老後の生活設計はずいぶんと楽になります。
逆に1階しかないない個人事業主などの老後は結構シビアなものになります。
専業主婦は1階しかありませんが、サラリーマンの夫が先に死ねば75%の遺族厚生年金を受け取れます。
離婚した場合も、かつては2階部分は夫に残され、妻は1階部分だけでしたが、法改正によって夫が持つ2階部分を分割できるようになりました。
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