断固たる措置
9月3日(金曜日)に発表された米国の雇用統計が市場予測より良かったことから、株安、円高の動きは一服しました。
もっともその後に発表されたISM指数は芳しくなく、ドル円は85円台から再び84円台へ・・
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最近の野田財務大臣は、「必要な時に断固たる措置を取る」と言って為替介入を示唆してきています。
しかし政府は本当に「断固たる措置」を取れるのでしょうか。
ミセスワタナベのように、FX取引を経験した方ならお分かりだと思うのですが、相場を張っている人が一番恐れるのが、市場が反転することです。
これまで円高だと思っていたのが、急に逆に円安になる。。。この潮目を読み違えると、FX取引に投入していた資金はあっという間に「蒸発」しています。(しかもこの「潮目」というのが実はくせ者で、大きな潮目のほかに1日から1週間単位でころころ変わる小さな潮目もあります。運が悪いと小さな潮目を読み違えただけで大きく傷つくことがあります)。
それでは政府が介入すると、市場関係者は相場が反転したと恐れるようになるのでしょうか。
逆です。
相場の方向性が見えやすくなってしまいます。
要は、「マーケット(ヘッジファンドほか)vs. 政府の戦い」の構図となり、
「マーケットは円高、政府は円安の方向にもっていくような形で市場に参入」といった色分けが出来てしまいます。
実際のところ「政府が出てきた方が儲けやすい」と思っているヘッジファンドは少なくありません。
日銀時代に為替介入を担当していたJPモルガン・チェース銀行の佐々木融さんは、
「円売り介入が始まると世界中から円買い注文が集まるため、逆に円高が進んだ」と指摘しています(『こちら』)。
2003年~2004年。このとき日本政府は積極的に円売り介入(全部で35兆円規模)を行ないました(これ以降、政府は介入していません)。
しかしこの間にマーケットでは逆に円高が進行(120円→105円)してしまった(すなわち介入は逆効果になってしまった)というのは良く知られているところです。
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このブログでも再三再四の繰り返しになってしまいますが、
為替問題の本質は日本のデフレにあります。
「日米の名目の短期金利はほぼ0%で同じ。
にもかかわらず、米国のインフレ率は2%弱で、日本はマイナス1.5%程度というデフレだから、
アメリカの実質金利は0-2でマイナス2%とマイナス金利なのに対して、
日本は0-(-1.5)でプラス1.5%と、日本の実質金利がアメリカを大きく上回っている」(『こちら』)。だから円に投資した方が金利面では得になる・・・。
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円高に対する「対処療法」になっているかどうかさえ疑わしい「為替介入」。
野田大臣の言う「断固たる措置」とは、この「為替介入」ではなくして、病気の根源の治療、すなわち「デフレ退治」に向けられるものでなければなりません。
もっとも「円売りドル買い」の為替介入をして政府・日銀が市場に円を放出、
それに対して日銀が「非不胎化政策」で協力すれば、デフレ退治に向けて一定の効果が期待できると思います(『こちら』の記事を参照)。
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