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2011年1月30日 (日)

金融界のエリートたち

リーマンショック後も投資銀行家たちの高額報酬が時おり話題になります。

昨年ゴールドマンは全従業員36,000人に対して総額で83.5億ドル(6,847億円)の報酬を支払った(1人あたり19百万円)とか、

あるいはモルガンスタンレーのゴーマンCEOの昨年の年収は12億円の見込みだとか・・(いずれも『こちら』参照。なお1ドル=82円で計算しています)。

しかし年収という観点からすると、彼ら投資銀行家たちはもはや金融界のエリートではなくなってきています。

少数の優秀なヘッジファンドマネージャーたちが稼ぎ出す所得(年収)が半端なものでなくなってきているからです。

下の写真はどちらもジョン・ポールソン氏。

彼が個人として稼ぎ出した所得は昨年4,100億円に上ったといいます(『こちら』)。

   Paulson

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彼は2007年にも3,200億円を稼ぎ出し話題になりました。

結果、彼は個人資産1兆円強を持つ至り、今や全米20位、全世界でも45位の金持ちに・・(『こちら』)。

ポールソン氏はもともとはボストン・コンサルティング・グループのコンサルタントで、ヘッジファンドを始めたのは38歳のとき。

昨年はポールソン氏のほかにもデイビッド・テッパー氏や、レイ・ダリオ氏といったヘッジファンドマネージャーたちが1,600億円から 2,500億円の所得を上げたと言われています(『こちら』)。

彼らヘッジファンドマネージャーたちは、「金(ゴールド)の上昇にかけた」とか、あるいは「新興国にかけた」といったように、相場のはり方はひとそれぞれだったと言います。

いずれにしても業界的には一部のエリート・ヘッジファンドマネージャーたちに富が集中したといった構図になったようです。

 

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2011年1月29日 (土)

Deep in Red

『こちら』の4つのグラフも視覚に訴えるものがあります。

『こちら』をクリックした後、

左側に現れる

Debt rating

Bond issuance

Government debt

Population

のタブをそれぞれクリックしてみてください。

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日本は次のギリシャか?

衝撃的なタイトルのビデオですが、中身はいったて順当。

ウォールストリートジャーナル紙のビデオです。

2分26秒で終わります(非常に分かりやすい英語です)。

『こちら』をどうぞ。

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2011年1月27日 (木)

日本国債格下げ

S&Pが日本国債を格下げ(AA→AA-)。

このニュースがきょう午後4時過ぎに伝わると外国為替市場では円が対ドルで1円近く下落。

もっとも格付についてはこんな事実もあります。

リーマンブラザーズが破綻する1週間前。

この段階に至っても、リーマンのS&P格付はシングルAでした。

S&Pによって「リーマンブラザーズは新日鐵や日立よりも安全性が高い」と評価されていたのです(『リーマン恐慌』54頁)。

したがって格付というのは実はあまりあてになりません。

むしろCDS市場での日本国債CDS保証料率(『こちら』)や国債の流通利回り、新発債への応募状況などを見ていった方が良いと思います。

以下のグラフは日経新聞1月19日付のウェブサイト(『こちら』)から取ったものです。

Cds

* * * * * *

そうは言ってもAA-というのはどのくらいの格付なのか、他国と比較してみましょう。

AAAの国

米国

英国

ドイツ

フランス

スウェーデン

スイス

オーストリア

ノルウェー

デンマーク

フィンランド

カナダ

オーストラリア

AA+の国

ベルギー

香港

AAの国

アブダビ

スロベニア

スペイン

AA-の国

日本

サウジアラビア

台湾

A+の国

中国

韓国

チェコ

イタリア

日本以外の国の格付けは昨年12月9日現在。

詳しくはS&Pのサイト(『こちら』)をどうぞ。

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2011年1月26日 (水)

6000人の命

今日、1月26日は外交官、杉原千畝さんの孫(中村まどかさん)と、杉原さんからビザをもらって生き延びたユダヤ人夫婦の孫(ダニエル・グリーンバーグさん)とが対面した日(2002年1月26日)。            

こういったこともあり、今日のお昼のテレビ番組『DON!』では杉原さんの特集を組んでいました。

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以下は『DON!』のサイトから(カッコ内は私による加筆):

1939年9月
ドイツがポーランドに侵攻。第二次世界大戦勃発。このときヒトラーひきいるナチスドイツはユダヤ人を迫害。人権を奪い財産を没収、強制収容所に送り込み殺戮した。約600万人のユダヤ人が死においやられた。

1939年11月
杉原リトアニア領事代理になる

1940年7月
ユダヤ人がリトアニアにある日本の領事館に押し寄せ、杉原にビザ発行を求める。

このとき(ユダヤ人が)ヨーロッパを脱出する(方法として日本を経由して米国等に向かうというルートがあった。杉原は)、

外務省とかけあうもビザ発行を禁止されるが、杉原は独断でビザ発行。

1945年8月
終戦

1947年
杉原一家は日本へ帰国。杉原は外務省をやめさせられる。三男晴生が小児癌で急逝

1968年
助けられたユダヤ難民が杉原を訪ねてくる

1986年
杉原死去

2002年
杉原の孫まどかさんと、救われたユダヤ人の息子ダニエル・グリンバーグさんが面会。

* * * * * *

杉原さんのことについては奥さんの幸子さんが本にして残してくれています。

「6000人の命のビザ」という本です(『こちら』)。

           6000

また、テレビ番組にもなりDVDも発売されています(『こちら』)。

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私も拙著『リーマン恐慌』で、シカゴ・マーカンタイル取引所会長を務め「先物取引の父」と言われたレオ・メラメドが、8歳の時に杉原さんに発行してもらったビザでナチスから逃れ日本経由アメリカに渡った旨を書きました(225頁)。

杉原さんが残した言葉です。

「私のしたことは外交官としては間違っていたかもしれないが、人間としては当然のこと。私には彼らを見殺しにすることはできなかった 」

「人間としては当然のこと」なのかもしれませんが、組織の意向に反して自らの信念を貫くというのはそう簡単に出来るものではありません。

杉原さんの話はこれからも多くのユダヤ人の方たちの間で語り継がれていくと思います。

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2011年1月22日 (土)

定年後 年金前

すみません、コマーシャルです。

『定年後 年金前』という本を出します。

2月1日発売予定で、すでに『アマゾン』で予約注文できます(『こちら』)。

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『定年後 年金前』というと、50代60代が読む本と思われそうです。

たしかにこの年齢層を想定した本であることには間違いありません。

しかし今やたとえ学生であっても20歳から毎月年金の保険料を払わされる時代。

これが将来の自分にとってどの程度の価値があるのか、無理してでも払っておくべきものなのか、気になる若い人も多いと思います。

また外資系投資銀行でかつて私と一緒に働いていていた若い方(といっても30代ですが)と先週お話ししていましたら、「自分の求めている道を行こうと思って、すでに勤め先を辞め、来月から米国に行く予定」とのこと。

こういった若い世代がリスクをとろうと決断するときにも、ライフ・プランニング上、どの程度のお金が将来にわたって必要になるのか、いちおう頭に入れておいた方がよいと思います。

ということで、この本の目次を以下に一部書いておきます。新書で 798円の本です。

よろしかったらアマゾンで予約注文なさってみてください(ますますコマーシャルぽくなってきました!)

第1章 年金不安を吹き飛ばす

   えっ、これだけしかもらえない?

   ねんきん定期便を読み解く

   空白の5年間が間近に迫る?

   改正高齢者雇用安定法は信頼できるか

   年金繰り上げ受給の落とし穴

   自分の余命、知っていますか?

   老後には1億円のお金がかかる?

   年金だけで生活できるのか

   毎月分配型の投資信託は年金の代わりにならない

   年金は毎月ではなくて2ヶ月に1回まとめて支払われる

   ある日突然やってくる「親の介護」

  85歳から本当の老後が始まる

  介護プロの手を借りる費用

   70歳まで働く時代

   働くと年金支給額が減ることも―在職老齢年金

   再雇用か個人事業か、道は2つに1つ

   「長生き」というリスクを年金でカバーする

    【コーヒー・ブレイク①】年金って本当に大丈夫なの? 破綻しないの?

第2章 定年後の再雇用か、個人事業か

   年金で不足する分は、働いて補うしかない

  再就職後の職場に「居場所」はない?

   60歳にして鬱病になる現実

   定年後、家にいれば家庭不和の元?

   「主人在宅ストレス症候群」の恐怖

   「個人起業」という選択肢

   退職金は安易に運用に回してはいけない

  株や投資信託より起業のほうが確実?

  社会を熟知している中高年の強み

  【コーヒー・ブレイク②】意外と知られていない「働いてももらえる雇用保険」の存在 

第3章 定年後の個人事業の実際

  中高年が絶対してはいけないこと―「借金」

 無借金で始める個人起業例

  少ない資金で初めの半年に勝負をかける

 コーヒーショップを経営することの問題点

 50代でマクドナルドを創業したセールスマン

 70歳でヘッジファンドを起業した証券マン

 「社長になりたい」だけでは意味がない

 人気を呼んだ「ちゃんこ鍋」店はなぜ倒産したか

 「朝令暮改」が個人起業の強み

 【コーヒー・ブレイク③】JRのグリーン車が指定席以下で ― 定年後のマル得情報

第4章 無謀な個人事業にしないための7つの原則

 【1】撤退のルールを決めておく

 【2】企業倫理を遵守する

 【3】来た話に乗らない

 【4】知らない分野に進出しない

 【5】1年以内の月次黒転を目標にする

 【6】「創業者の狂気」が自分にあるか

 【7】個人起業が楽しいと思えるか

 個人起業する際の仕事選び5つの条件

    (以下略)

 【コーヒー・ブレイク④】日本の個人金融資産の8割は60歳以上が握る

終章 再雇用の道を選んだ方が良いケース(7つのタイプ)

    (以下略)

【付録】思いのほか簡単―こうすればスタートできる

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2011年1月19日 (水)

昨日のアップル

昨日のアップル株価

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327.05(前日比 6.14%安)で始まりました。

ジョブズの medical leave の発表がこのタイミングで行われたのは、実はこの日の市場終了後に発表される予定のアップル四半期決算の数字がすごく良いので、(medical leave のこの段階での発表が)「一番影響が少ない」と首脳陣(何よりもジョブズ本人)がふんだのではないか・・。

そんな憶測で株価はじりじり上がり始め(上図)、結局340.65で終了。前日比2.25%の下落で済みました。

そして(アップルの決算は「相当良い」とアナリストたちは事前に予想していたのですが)、ふたを開けてみると、そんなアナリストたちの予想レベルさえ「はるかに」上回る好決算を発表(『こちら』)。

After Hours の取引では一時354ドルを記録。何のことはない、前日(先週金曜日)終値の348.48さえ上回るレベルに達しました(その後、After Hours の値は少し下げています)。

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2011年1月17日 (月)

ドリーム・ホームズ

私は時おり CBS MoneyWatch.com というウェブサイトを見ています(『こちら』)。

先日ドリーム・ホームズという特集をやっていました(『こちら』)。なおこれは先週末のYahoo!Finance でも紹介されていました。

以下にそのさわりの部分(一部住宅の写真)をご紹介します。オリジナルは上記ウェブサイトですので、ご関心のある方は『こちら』をクリックしてみてください。

所在地の次の価格は1ドル82円で換算しています。

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(マイアミの海岸の家;49億円)

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(コロラド、アスペンのスキー・ロッジ;20億円)

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(ニュージャージーの家;52億円)

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(ニューヨークのマンション;49億円)

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(フロリダ、パームビーチの家;69億円)

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(シカゴの家;19億円) 

 

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2011年1月14日 (金)

This evening is yours

2010年のノーベル平和賞は劉暁波(リウ・シアオ・ポー;Liu Xiaobo)氏(55)に授与されました(『こちら』)。

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昨年12月にはノルウェーのオスロで平和賞の記念コンサートが催されました。

俳優のDenzel Washington と Anne Hathaway がコンサートの司会を務めたのですが、この時の2人の司会者のスピーチが一部YouTubeにアップされていました(『こちら』)。

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たった3分間の映像ですが実際にコンサートに参加された方が撮ってアップしたものだと思います。

デンゼル・ワシントンのスピーチの一部です。

『受賞者の劉暁波氏は今日この場にはいません。彼は11年の刑に処され刑務所にいます。

2020年6月まで服役することになっています。

彼の罪は、中国のすべての人に基本的人権が与えられるように要求したというものでした・・

きょう、この会場には全世界から6000人の人が集まってきています・・』

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アン・ハサウェイが続けます。

『リウさん、あなたは今日この場にいませんが、それでも今晩(のこの機会)はあなたのものです・・

This evening is yours.』

    

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2011年1月13日 (木)

地球温暖化

昨日のNASAの発表(『こちら』)。

『こちら』にグラフが詳しく載っています。

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2011年1月11日 (火)

アップルと日産

ブログで株価について書くときはいつも悩みます。

今から5~6年前にDCFを使ってトヨタの株価を算定してみるといった趣旨の本を書きました。

このときの経緯もあり、

トヨタについては2006年の5月の米国セクハラ事件、2007年9月のJames Press氏の退社など、

その後の変化についてブログで追ってきました(たとえば『こちら』『こちら』)。

またトヨタは実は借入金が多い(『こちら』)とか、本業以外にも手を出しすぎている(『こちら』『こちら』)ことも書いてきました。

このように、買おうと思ってかつて注目した株、あるいは買って持っている株については、その後の会社サイドの変化について常にアンテナを張ってフォローしていく(そして必要とあれば売る)ことが大事です。

一方、「売り」ではなく「買い」のほうは、比較的気楽に書いています。

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アップル。

スティーブ・ジョブズの病状が気になり、買おうと思いつつもずっと躊躇してきました。

買うには十分「遅すぎた」と反省しつつも「思わず買ってしまった(261ドル)」、

しかしやはりその後 2か月経っても「冴えない動きだ」とブログで書きました(『こちら』)。

最近ようやく上がってきて(上のグラフ)、ひと安心しています。

日産についても、2009年10月にブログに書き(『こちら』)、この時650円で買いましたが、ようやく最近になって上がってきました(下のグラフ)。

(もっとも最近多くの株が上がってきており、別にアップルや日産に限ったことではありません)

Nissan

言うまでもないことですが、株は買うよりも売るタイミングを見つけるのが難しいものです。

私は株を買う時に(A)長期保有か(B)1年~2年で手放してもいい株か、2種類に分けて買うようにしています。

(A)長期保有の株は、めったに買いませんし売りません。バフェットは『住む家を毎年売買する人はいない』と言っていますが、まさに『住む家』の感覚で保有しています。

(B)と思って買っている株は、買った時の価格に比して1割下落したら売ります。『買うタイミングを間違った』と考え、うむを言わさず自動的に売却するようにしています。

問題は(B)で比較的順調に行ったケース。

いつ売るか・・。

とりあえずアップルについては410ドルくらい、日産は1150円くらいまで行ったら売ろうと考えていますが、そこまで届かず失速・下落してしまう可能性も高いだけに難しいところです。

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2011年1月 9日 (日)

市場の効率化

年末からほぼ2週間以上にわたりずっと引きずっていた風邪。

まだ少し残っていますが、やっと「終わり!」といった感じになってきました(長かったです)。

この間、元旦に近くの神社に初詣に行ったのと、1回だけ講演会(勉強会)に出かけたくらいで、あとはおとなしくしていました。

忘年会や新年会にお招きいただきながら失礼をしてしまい、改めてこの場を借りてお詫びします。

さて1回だけ出た講演会というのは昨年の早い段階からお約束していたもので、私が講師を務めるというものでした。

こればかりは休むわけにはいかず、風邪の症状を止める薬を医者に処方してもらって何とか切り抜けました。

「M&Aについて話してほしい」との依頼でしたので、1年半ほど前に書いた「M&A新世紀」の一部データを最近のものに置き換え、その後の動きも踏まえて日本の特異性(後進性)についてお話しました。

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(ダウ平均株価(青線)と日経平均(赤線)推移;10年前を100とする)

* * * * *

毎日の株式市場で取引されている株式は企業が発行している株式の0.2%程度です。たとえばトヨタの場合、発行済み株式数35億株のうち8~9百万株が1日の市場で取引されているにすぎません。

この0.2%の取引量で会社全体の値付けが行われている・・。

これはあたかもジュースを1缶買う時に1滴だけを口にしてみて、そのジュースが120円なのか200円なのかを判断するようなものです。

こういった構造にある株式市場は、時としてM&Aが行われ「会社全体の売買が行われる」ことで、効率化していきます。

株式市場が効率化することがどうして必要なのか、それは市場の効率化を通して、ヒト、モノ、カネの資源が効率的に配分されるようになるからです。

たとえば投資家は株式市場に投資する以上、預金金利や国債の利回り以上のリターンを求めます。

投資先企業が株式市場から集めた金を使って銀行預金をしたり国債を買う「だけ」の経営をしてほしくない・・。

積極的に研究開発投資や設備投資を行って、世界最先端の裸眼3D大型液晶テレビを作ったり高性能の電気自動車を作って世界市場を制覇し、高いリターンをあげてほしい・・。

投資家はこう思っているわけです。

市場から集めたカネを単に預金や有価証券にまわし無駄にしている会社(たとえば10年ほど前のブルドックソース)の株価は低迷し、そういった企業はこれ以上株式市場から資金を調達できなくなる(あるいはM&Aの標的にさらされてしまう)。

逆に成長性の高い分野に効率的に投資してくれる会社に対しては市場を通じて投資家はさらに資金を提供したくなる。

市場を効率化させることが、その国の経済成長を高める上での鍵となるわけです。

逆に、規制によって市場の効率化を阻害し、既得権に安住する経営者にとって敵対的となるM&Aを排除しておきながら、

「経済成長を高めるにはどこに予算を重点的に配分するか」

と国家戦略室や官僚・マスコミが中心となって企画・立案し実行に移す国を旧ソビエト連邦型の社会主義国家と言います。

市場が万能なわけではけっしてありませんが、市場を信頼して市場が持つ優れた機能を引き出す、これが経済の成長をもたらし国民に富をもたらす上での第一歩となるはずです。

・・・と、これは2時間続いた講演の最初の10分間の話で、後はもっと実際的な話を数多くしました。

もっとも風邪でおかしかったのか、25枚のパワーポイントのスライドを45分で説明し終わってしまい、残り1時間15分が質疑応答になるという冷や汗ものの講演でした。

それでも質問が多くて予定の2時間を20分ほどオーバーして終わるという、(風邪の割には)まあまあの出来だったと勝手に思っています。

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2011年1月 3日 (月)

お金の流れが変わった!

昨年末から引いていた風邪が抜けず、本を読んだりDVDを見て休みを過ごしています。

いくつか読んだ本のうちで面白かったのは大前研一『お金の流れが変わった!』(『こちら』)。

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私のように金融や投資に携わってきた者の目から見ると、この本に書かれていることには必ずしも賛成できないところもあり、特に最終項の『日本経済再成長の処方箋』には首を傾げたくなる部分もあります。

また細部では誤植もあります [たとえば184頁、(原子力で)『三菱重工はGE、日立はアレバと組んでいる』など]。

にもかかわらず、この本は世界の現状を鋭く切り取ってみせてくれます。

若干のマイナス面など気にならないほどの多くの『価値』を読者に与えてくれる本、ということでお勧めの1冊です。

タイトルの『お金の流れが変わった!』は著者が以前から指摘しているホームレスマネーのことであり、それ自体にはあまり新味はありません。

むしろそこから見えてくる世界の現状把握にみるべきものがあります。

アメリカ、中国、EUの3極の現状・・・

と同時にロシア、インド、ブラジル、インドネシア、シンガポール、タイ、トルコなどの新興国が大きく胎動、そして躍進していく現状を本書では豊富な事例をもって浮き彫りにしてくれます。

特にトルコに関する記述は、頁数的にはあまり割かれていませんでしたが、アラブとトルコの関係、EUや米国とトルコの関係などについて非常に的確に記されていると思いました。

個人的な話になってしまいますが、私は昨年1週間ほどトルコ・イスタンブールのリッツで過ごしました(『こちら』)。

この時の経験ですが、ホテルに入るにはチェックイン時のみならず、1週間滞在している間、毎回毎回、空港のボディーチェック並みのチェックを受けます。(アタッシュ・ケースも毎回エックス線チェックを受けます)。

私は宿泊客なのでチェックイン後1日か2日もすればガードマンたちとはすでに顔見知りになっているのですが、それでも彼らは私に向かって毎回、

『ソーリー(すまないね)』

と言いながら金属探知機のバーを潜るように誘導します。

実はホテルのロビーにはリッツが雇っているガードマンの3倍くらいの人数の大男たちがうろうろとしていました。

彼らもまた耳にはイヤフォンをつけ小声でマイクに向かって話している、一見してガードマンと分かる人たちでした。

このときこのホテルではハマスとイスラエルの秘密会談が開かれていたようです。

私がイスタンブールに滞在している間には、イスラムの過激派による自爆テロで市内の病院に駐車していた車が爆破され何名かが死傷するという事件も起きました。

大前氏が指摘するようにトルコはいつの間にか「中東の盟主」になってしまっており、今やトルコは欧米が一番頼りにしているイスラム国家でもあるのです。

したがって正式な会議・会談のみならず非公式なアラブ・イスラエル間や欧米・アラブ間の「接触」もイスタンブールで行われることが少なくありません。

こういったトルコの独特の立ち位置については日本のマスコミではほとんど報じられていません。

そしてトルコと言えば経済的にはドイツとの近さ。

本書の「トルコにはドイツに住んだ経験がある人、ドイツ語が通じる人がたくさんいて、中国なみに人件費が安い」との記述には思わず膝を打ちました。

本書は世界経済の現状を「ボーダレス」「サイバー」「マルチプル」といった3つのキーワードで分析してみせますが、もうひとつ「不動産」の視点も重要だと指摘しています。

リーマンショックで世界の不動産市況は下落したとはいえ、風光明媚で気候が温暖な地の不動産の供給には限りがあります。

欧州や米国、ロシアの「そこそこ」の富裕層はポルトガルやクロアチアの海岸沿いやトルコ・イスタンブールのボスポラス海峡沿いに別荘を買います。

この結果、これらの地の不動産はリーマンショックにもかかわらず、10年~20年の期間で見れば高騰してきています。

(次の2枚の写真はボスポラス海峡に面するこの種の別荘を海峡を行く船から撮影したものです)

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いま世界で起きている大きな地殻変動。それは一言でいうと新興国の台頭です。

いまや世界のどんな中小国に生まれても経営者の知恵と才覚と戦略によって企業は世界の表舞台へと躍り出ることができます(この辺は拙著『M&A新世紀』でも書きました)。

世界1位のビール会社インベブはベルギーの会社でキリンの6倍強の時価総額を誇ります。2位のSabMillerはもともとは南アフリカの会社(キリンの3倍強)。

日本の百貨店である三越、伊勢丹、阪急、阪神、高島屋、大丸、松坂屋をすべて足し合わせても時価総額は1.33兆円でユニクロ(1.37兆円)以下ですが、そのユニクロとてスエーデンのH&Mやスペインのザラの半分以下でしかありません。(スエーデンやスペインは決して欧州の大国ではありません)。

いまから60年前にインドの田舎町で生まれたミタルが作り上げた鉄鋼会社は新日鉄の3倍もの時価総額を誇るに至っています(以上、時価総額はすべてFT500をベース)。

世界最大の非鉄金属・鉱山会社はブラジルのヴァーレ、世界1位の化学会社はデュポンやダウ、BASFではなくて、サウジの会社です。

こうした世界の大きな地殻変動と無縁なところにいる現在の閉ざされた日本。

日本の新聞だけを読んでいては新興国のきちんとした情報さえまともに入ってきません。

日本は、いまはそこそこ居心地の良いぬるま湯なのでしょうが、たとえばあなたが日本の銀行や郵便局(ゆうちょ銀行)に預けている預金は本当に安全なのでしょうか。

いずれそういった状況ではなくなりますよ、と著者の大前研一氏は『お金の流れが変わった!』で警鐘を鳴らしている・・・

そういったように私は読みました。

 

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2011年1月 1日 (土)

明けましておめでとうございます

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近くの神社に初詣に行き、おみくじを引いたら、「学問に精進せよ」との言葉が・・。

確かにビジネスばかりを追っていて、自分自身を深めていくことを忘れては1年(あるいは一生)が終わったときに後悔しそうです。

學不可以已 ― 学は以(もっ)て已(や)むべからず (荀子)

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今年もみなさんにとって良い年でありますように・・。

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