市場の効率化
年末からほぼ2週間以上にわたりずっと引きずっていた風邪。
まだ少し残っていますが、やっと「終わり!」といった感じになってきました(長かったです)。
この間、元旦に近くの神社に初詣に行ったのと、1回だけ講演会(勉強会)に出かけたくらいで、あとはおとなしくしていました。
忘年会や新年会にお招きいただきながら失礼をしてしまい、改めてこの場を借りてお詫びします。
さて1回だけ出た講演会というのは昨年の早い段階からお約束していたもので、私が講師を務めるというものでした。
こればかりは休むわけにはいかず、風邪の症状を止める薬を医者に処方してもらって何とか切り抜けました。
「M&Aについて話してほしい」との依頼でしたので、1年半ほど前に書いた「M&A新世紀」の一部データを最近のものに置き換え、その後の動きも踏まえて日本の特異性(後進性)についてお話しました。
(ダウ平均株価(青線)と日経平均(赤線)推移;10年前を100とする)
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毎日の株式市場で取引されている株式は企業が発行している株式の0.2%程度です。たとえばトヨタの場合、発行済み株式数35億株のうち8~9百万株が1日の市場で取引されているにすぎません。
この0.2%の取引量で会社全体の値付けが行われている・・。
これはあたかもジュースを1缶買う時に1滴だけを口にしてみて、そのジュースが120円なのか200円なのかを判断するようなものです。
こういった構造にある株式市場は、時としてM&Aが行われ「会社全体の売買が行われる」ことで、効率化していきます。
株式市場が効率化することがどうして必要なのか、それは市場の効率化を通して、ヒト、モノ、カネの資源が効率的に配分されるようになるからです。
たとえば投資家は株式市場に投資する以上、預金金利や国債の利回り以上のリターンを求めます。
投資先企業が株式市場から集めた金を使って銀行預金をしたり国債を買う「だけ」の経営をしてほしくない・・。
積極的に研究開発投資や設備投資を行って、世界最先端の裸眼3D大型液晶テレビを作ったり高性能の電気自動車を作って世界市場を制覇し、高いリターンをあげてほしい・・。
投資家はこう思っているわけです。
市場から集めたカネを単に預金や有価証券にまわし無駄にしている会社(たとえば10年ほど前のブルドックソース)の株価は低迷し、そういった企業はこれ以上株式市場から資金を調達できなくなる(あるいはM&Aの標的にさらされてしまう)。
逆に成長性の高い分野に効率的に投資してくれる会社に対しては市場を通じて投資家はさらに資金を提供したくなる。
市場を効率化させることが、その国の経済成長を高める上での鍵となるわけです。
逆に、規制によって市場の効率化を阻害し、既得権に安住する経営者にとって敵対的となるM&Aを排除しておきながら、
「経済成長を高めるにはどこに予算を重点的に配分するか」
と国家戦略室や官僚・マスコミが中心となって企画・立案し実行に移す国を旧ソビエト連邦型の社会主義国家と言います。
市場が万能なわけではけっしてありませんが、市場を信頼して市場が持つ優れた機能を引き出す、これが経済の成長をもたらし国民に富をもたらす上での第一歩となるはずです。
・・・と、これは2時間続いた講演の最初の10分間の話で、後はもっと実際的な話を数多くしました。
もっとも風邪でおかしかったのか、25枚のパワーポイントのスライドを45分で説明し終わってしまい、残り1時間15分が質疑応答になるという冷や汗ものの講演でした。
それでも質問が多くて予定の2時間を20分ほどオーバーして終わるという、(風邪の割には)まあまあの出来だったと勝手に思っています。
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