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2011年3月31日 (木)

規制の虜

同じように地震と津波に襲われても、福島第二の方は何とか大惨事になることをくい止めることが出来ました。

第一の場合はどうして大惨事となってしまったのか ― 今後いろいろな形で検証が行われていくと思います。

『日本は原子力の脆弱性についての警告を無視した(Japan Ignored Warning of Nuclear Vulnerability)』 ― こう題する記事が先日米国ウォールストリート・ジャーナル紙に掲載されました(『こちら』)。

                    Wsj_2

「日本の規制当局は数か月前に原子力発電所で新しい冷却技術を利用することについて討議した。

この技術を採用していれば今回のような大惨事は防ぐことが出来たか、そうでなかったとしてもずっと軽いものであったはずだ。

しかしながら彼らは現存の原子炉の脆弱性を無視する方を選んだ。

(Japanese regulators discussed in recent months the use of new cooling technologies at nuclear plants that could have lessened or prevented the disaster...

However, they chose to ignore the vulnerability at existing reactors..)」

* * * *

「規制する側が規制される側に取り込まれて、規制が規制される側に都合よく歪曲されるメカニズムを「Regulatory Capture」(規制の虜)という」-こう指摘するのは高橋洋一さんです(『こちら』)。

高橋さんによると

「東電は歴代経産幹部の天下りを受け入れており、11年1月には原子力安全・保安院の上部組織である経産省資源エネルギー庁の前長官だった石田徹氏が、退官後わずか4か月で顧問に天下っている。

そうした天下りの見返りとして政府は厳しい監督をせず、安全基準も今となっては甘かったことが明らかになった」

(以上、高橋氏の上記記事より)。

規制の虜は日本だけの問題ではありません。

米国の金融の世界でも規制する側(ワシントンD.C.)と規制される側(ニューヨーク)との間の人事交流が問題視されています。

ポールソン元財務長官やル―ビン元財務長官のように、規制される側の人間が規制する側になったり、あるいはその逆(ル―ビンは財務長官退官後、シティグループ取締役に就任)のケースも多く、米国では「回転ドア」(Revolving Door)と言われて批判されています。

                Rd

先般ご紹介(『こちら』)した映画『インサイドジョブ』では、このような回転ドアこそがリーマンショックをもたらした原因の一つであると痛烈に批判していました。

回転ドアにしろ天下りにしろ、結果的に規制に手心が加えられることに繋がりかねません。

大事故、大災害が起きて、我々は初めてこのシステムの問題点を痛烈に思い知らされます。

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2011年3月30日 (水)

Operation Tomodachi (トモダチ作戦)

Operation Tomodachi (『こちら』)の米軍陸上部門の指揮を執る Mark A. Brilakis 少将(Major General )へのインタビュー記事です(『こちら』)。

「現在、1,029 の troops (部隊)がこのオペレーション(作戦)に従事。

われわれがオペレーション(作戦)を展開している地域の放射能のレベルは2時間に一回、司令官に報告が行くシステムになっている。

放射能のレベルは今のところ無視できる (negligible) レベルだ。

このオペレーション(作戦)がいつ終わるかはわからない。( I don’t know when it will end.) 

ホスト国(注、この場合は日本)が当初のショックを克服し、ユニークな米国の軍事的能力をホスト国が引き受けることが出来るようになった後で、我々がしていることは彼らに引き継がれ、我々は自分たちの基地へと帰っていくことになる。

(As the host nation overcomes the initial shock, and after the unique U.S. military capabilities are able to be taken on by the host nation, we will turn over what we are doing and return to our home bases and stations.)」

軍人たちにはすでにヨウ化カリウムが配られています。これは用心のために配れているのであり、指示されるまでは服用してはいけないと伝えられています(『こちら』)。

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2011年3月29日 (火)

カズが決めた

東日本大震災の被災地を支援する日本代表対Jリーグ選抜の慈善試合。

2 (日本代表) 対 0 (Jリーグ選抜) とリードされていた後半37分、Jリーグ選抜のカズが見事なゴールを決めました [試合は2 (日本代表) 対 1 (Jリーグ選抜)で終了]。

44歳、不屈の精神の持ち主、カズ(三浦知良選手)のゴールに観客は酔いしれました。

* * *

         Guardian_4 

さて、A さんが 「私を原発信者にさせてくれたフクシマ] と題する産経新聞記事を送ってくれました。 『こちら』 です。

オリジナルの英国ガーディアン紙の記事は『こちら』

* * *

B さんは彼の友人からのメールということで下記の通り知らせてくれました。

「(3/26プルサーマルの関電工の件で- テレビ画面を) もう少しよく見て頂いて「訓練」という文字が写っていたことに気付かれていたと思います。映像は今回のものではなく、過去に行った訓練時のものです。手当てしていた患部は偽物です。同じ画像を使って日本でも報道されておりました。私も紛らわしい映像だと思って見ていましたので、よく覚えています]。

(注:私が見た英国BBCの放送には、画面上には英文しかなく、訓練という意味の英単語も見当たらなかったと記憶しています。どこかで落ちてしまったのかもしれません。)

* * *

C さんが知らせてくれたYouTubeの動画には吉田茂元首相の言葉がありました。

「君達は自衛隊在職中、決して国民から感謝されたり、歓迎されることなく自衛隊を終わるかもしれない。

きっと非難とか叱咤ばかりの一生かもしれない。御苦労だと思う。

しかし、自衛隊が国民から歓迎されちやほやされる事態とは、外国から攻撃されて国家存亡の時とか、 災害派遣の時とか、国民が困窮し国家が混乱に直面している時だけなのだ。

言葉を換えれば、君達が日陰者である時のほうが、国民や日本は幸せなのだ。 どうか、耐えてもらいたい」

これは、昭和32年2月、防衛大学第1回卒業式の時の言葉です。

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2011年3月28日 (月)

半減期2万4千年

ご覧になった方も多いと思いますが・・

ANN News (『こちら』)です 。

『こちら』はブルームバーグです。

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ガイガーカウンター

私は M さんからのメルマガで知ったのですが、M さんの知人の知人が、東京(日野市)のご自宅に、ガイガーカウンターを設置して、毎日放射能レベルを検知されています。

この方は、大手通信会社の研究所所長、ネットワーク部長などを歴任された石川宏さん(工学博士)です。

石川さんのウェブサイトは『こちら』

これによると

「隣国で核兵器の実験が行われ、物騒になってきましたので、ガイガーカウンタで放射線量を測定することとしました」

とあります。

更に石川さんのウェブサイトでは、ガイガーカウンターの入手についても語られています。

「放射線はガイガーカウンタを用いて測定しますが、国内ではまず手に入りません。

米国のBlack Cat Systems という会社が、パソコンに接続する、ガイガーカウンタを販売しています。

通信販売でリーゾナブルな費用で手に入れることができます。

USBで接続するタイプが、webへのアクセスソフト付きで、$199USでした」

『こちら』は3月10日(地震前)から3月27日までの計測結果をグラフ化したものです。

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2011年3月27日 (日)

米国からの強い要請

アメリカとしても「いつまでも日本だけに任せておけない」ということなのかもしれません。

<3月26日の日経新聞ニュース(『こちら』)から>

「日米が共同で原発への真水注入作戦に着手したのは、

現状では不測の事態が起こりかねない、との米側の強い危機感からだ。

米軍は横須賀基地にある「バージ船」と呼ばれるはしけ船2隻で約2200トンの水を用意し、ポンプ機もオーストラリアから購入。

C17輸送機で横田基地に輸送している。28日にも実際の注入作業が始まる」 

* * * *                      

<3月26日のAP電(『こちら』)>

「北沢防衛大臣はこの件で「米国から "an extremely urgent" request があった」と述べている」 

* * * *

『合衆国政府は毎分毎分、福島原発の分析をしている』

こう語ったのはヒラリー国務長官(『こちら』)。

すでに米国民に対して日本への渡航は延期するよう要請し(『こちら』)、

在日アメリカ軍の家族に対しては

軍が全額費用負担する形での「米国への一時帰国(希望者ベース)」が制度として開始されました。

3月25日の時点で 4,744名の在日米軍家族がすでに帰国し、

更に追加で 8,000名が日本を出国する予定

『こちら』が在日米軍の家族の避難を伝える米国国防総省のウェブサイトです)。

なお日本からの「一時避難地」としては

米国だけでなく、シンガポール、タイなどのアジアの国も認められることになりました(『こちら』)。

* * * *

『こちら』は米国国務省のウェブサイト。

渡航注意地域(Travel Warnings )として、これまでアフガニスタン、イラク、リビア、北朝鮮など30数ヶ国があげられていましたが、3月21日、日本の名前もこのリストに加わりました。

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格納容器

元東芝原子力設計技術者の後藤政志さんによる話がYouTubeにアップされています。

後藤さんは格納容器を専門に研究してきました。

以下、緑字をクリックするとその部分のYouTubeに飛びます。

3月17日『今後予想される危険』(約30分)

      Gm

* * * * *

3月26日『原発汚染はどこまで(その1)』(約14分)

3月26日『原発汚染はどこまで(その2)』(約15分)

     Mg_2

3月26日『原発汚染はどこまで(その3)』(約14分)

3月26日『原発汚染はどこまで(その4)』(約15分)

     Mg2

3月26日『原発汚染はどこまで(その5)』(約12分)

3月26日『原発汚染はどこまで(その6)』(約14分)

* * * * *

後藤さんの説明を聞いて、たとえば「なぜ水にホウ酸を入れるのか」とか、いろいろなことが分かってきました。

知るということは、不必要な心配を除去します。

もちろん必要な心配は残ります・・・。

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2011年3月26日 (土)

プルサーマル

福島第一の3号機がプルサーマル発電での営業運転を行っていたのは、すでに公表されている事実です(『こちら』)。

それゆえに、自衛隊や消防庁が3号機を優先して消火活動を行ったのか?― この辺については事実はわかりません。

しかしテレビや新聞が、「3号機がプルサーマル発電を行っていたこと」にまったく触れないのはどうしてなのでしょう?

さらに関電工の社員2名と関電工の協力会社社員1名が3号機タービン建屋で局所被曝したことを伝えるニュースで、欧米の一部テレビでは被曝者の足の赤くなった患部の画像を放映していましたが、日本のメディアでは報じられませんでした(この画像にはnhkと小文字の文字が表示されていましたので、NHKから海外メディアが入手したのだと思います。)

またこれは英国の記者の誤報であって欲しいと思いますが、『こちら』では

「5人の作業員がすでに死亡したと思われる。さらに15人が負傷し、他の作業員たちは放射能がやがては彼らの命を奪うであろうことを知っている」

(Five are believed to have died and 15 are injured while others have said they know the radiation will kill them. )

と報じています(記者は実名入りでこの記事を書き、なおかつ記者の写真まで載せています。誤報であるとすれば日本政府は抗議して記事を撤回させるべきでしょう)。

更に英語がわかる方はぜひとも『こちら』のCNNニュースをご覧になってください(5分30秒の動画です。なおCNNだけでなくABCでも報じていました『こちら』)。

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これは福島原発を設計したGEのエンジニア、ブライデンボー氏(Dale Bridenbaugh) へのインタビューです。

同氏は福島原発についてはそもそも設計上の欠陥(Design Flaws) があったと述べています。

東電は40年以上前にブライデンボー氏たちによって設計されたこの原発をずっと使い続けてきました。

CNNのこのインタビューについては現在発売されている週刊朝日にも(日本語で)詳しく載っています。

NHKをはじめ日本のメディア(テレビ、新聞)はこういった情報をいっさい伝えません。

われわれは米国のCNNやABC、あるいは英国のBBCを通じて初めてこうした情報を知ります。

先日のこのブログ(『こちら』)でもご紹介したAさんがメールをくれました。

「報道を聴いていると、1から4号機までみんな同じもののように思えますが、とんでもない。

プルサーマル原子炉の危険性については、数々の指摘がありますが、3号機がそうなのだということをなぜネグレクトして報じるのでしょう。・・・

ご承知のように、使用済み燃料を加工したプルトニウム・ウラン混合酸化物(=MOX)燃料によるプルサ―マル計画は、国の既定方針です。

これがダメだとなると、原子力行政は根本からやり直さなければなりません。(使用済み燃料の捨て場がないですからね)

(メディアは)専門的な数字を駆使して、素人をけむに巻きながら、事態の収拾を図ろうとしているのでしょうが、肝心なことを言っていません。」 

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2011年3月24日 (木)

浜岡原発

ここ1~2週間ずいぶんとたくさんの本を読みました。

たとえば広瀬隆原子炉時限爆弾』

この本はずいぶんと売れているみたいで、アマゾンによる売り上げランキングは「一時的に在庫切れ」であるにもかかわらず、現在順位が第 7位。

* * * *

ではこの本の評価はと言うと、これは一言でいうと、「アマゾンのレビュー評価によく現われている」といえます。

星5つと高く評価する人が多い反面、星1つ、トンンデモ本だとする評価もあるのです。

私自身のこの本の読後の感想はこのブログ記事のあとの方で書きます。

* * * *

ところで話は少しそれますが、広瀬隆さんというと私には『赤い盾』の著者としてインプットされています。

           R     

『赤い盾』が出版されたのは1991年。この本は、著者が再構築したロスチャイルド家の広範にしてかつ詳細な家系図に特徴があります。私は本書を読んでみて「実に丹念によく調べ上げられている」と驚嘆しました。

当時、私は興銀の審査部に所属していて、資源開発のプロジェクト・ファイナンスの審査を担当していました(1987~1992)。

審査案件の中には、金鉱山開発や、ダイヤモンド鉱山開発のプロジェクトもあり、このため De Beers やロスチャイルドについて数十冊の本を読みました。

(誤解の無いよう念のために書きますが、審査の要諦はキャッシュフローの評価・査定であり、『赤い盾』などの本を読んで審査しているわけではありません。

ただし当時の金鉱山開発やダイヤモンド鉱山開発のプロジェクト審査にあたっては、De Beers やロスチャイルドについて出来るだけ多くの客観的な情報を集めておくことが必要なのも事実でした)。

その後、私は興銀時代にいろいろな形でロスチャイルドと接点を持つに至りました。

ロンドンの本社を訪れ、有名な「赤の部屋」に案内されたこともあります。

「毎朝、ここで金価格が決まるのだよ」

と案内してくれた幹部は話していました(もう20年近く前の話です)。

アドバイザー案件ではロスチャイルドと競合したことも何回かあります。

ブラジル政府が通信の周波数帯の一部を民間に売り出すに際し、ブラジル政府のアドバイザーを求めていた時。

この案件では私は首都ブラジリアまで出かけて行ってがんばったのですが、「ブラジルがポルトガルから独立する際にこれを金融面でサポートしたのはロスチャイルドだから」といった事情もあり、

ロスチャイルドに敗退しました(詳しくは『こちら』)。

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なぜこんなことをくどくど書いたのかと言いますと、私自身が金融の世界で仕事をしてきた関係上、ロスチャイルドとはそれなりに接点があり続けてきました― そして私が知るロスチャイルドは、広瀬さんが『赤い盾』で描き出したロスチャイルドのイメージとはやや違っていることを指摘したかったからです。19世紀ならいざ知らず、少なくとも現在においては、やや違っていると思います。

広瀬さんの『赤い盾』の記述は、一つ一つは(おそらくは)正しいものであり、「よくぞここまで調べられた」と敬服する次第ですが、全体として見た場合、「ロスチャイルド関連の会社が一つの見えない糸で繋がっており、今なお世界で非常に大きな影響力を持つ」といったイメージを読者に与えるとすれば、それは行き過ぎであるように思います。

確かに19世紀の世界ではロスチャイルドがベアリングとともに世界を2分するほどの大きな力を持ったのは事実でしょう。しかし 20世紀も終わりに近づいてくると、ゴールドマンやモルガン、ソロモンなどを前にして、こと金融の世界においては、ロスチャイルドの存在感は薄くなっていったように思えます。

* * * *

このように私は、今となっては『赤い盾』についてやや批判的に見ているものですから、同じ広瀬さんの原子炉時限爆弾』についても、

「よく調べ上げたものだ」と驚嘆しつつも、この本が与える全体的な印象については同じようにやや批判的に読みました。

金融と違って、原子力に関しては私はシロウトですが、原子炉時限爆弾』について、ひとつひとつのピースはたとえ断片としては正しくても、それが積み上げられていって、全体として一つの主張をなす時、論理にやや飛躍があるように思えたのです。

アマゾンの評価が分かれるのも恐らくはそのようなところから来るのではないでしょうか。

* * * *

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こう述べたにもかかわらず、私は一人でも多くの方が原子炉時限爆弾』をお読みになるのをお勧めします。(と言っても私の知人のA氏が「都内の本屋を10店近く探したけど、どこも完売でした」と言っていました)。

それは仮に東海大地震が起きたとき、浜岡原発はほんとうに大丈夫なのかが心配だからです。

一説には「大陸プレート型の大地震が起きる場所と予想されているところに建っている原発は世界で浜岡だけ」とも言われています(『こちら』)。

3月24日の朝日新聞で、静岡県知事の川勝平太さんが次のように語っています。

「東海地震の想定は、マグニチュード8.0。・・・ 津波の高さは10メートル以下・・・。 今回の地震が起きた時、一番知りたかったのは、福島原発の揺れの数値です。・・・

(静岡県の浜岡原発の)揺れの許容度は800ガル(ガルは加速度の単位)で、実際には1千ガルまで耐えられます。

09年8月11日の駿河湾沖地震では、浜岡原発の5号機だけが426ガルと、他号機の倍以上も揺れました。・・

・・ところが、(今回の地震について)保安院も東電も、揺れのデータをほとんど出さない。福島第一原発3号機は507ガル、6号機は431ガルという以外、明らかにされていません。1号機、2号機、4号機、5号機の数値がなぜ公表されないのか。」

新潟県の柏崎刈羽原発では、今後起きると想定される地震による最大の揺れの強さ(基準地震動)は、最大2300ガルに引き上げられています(『こちら』)。

はたして浜岡は、これから起きると予想される東海大地震による強度の揺れに耐えられるのでしょうか。

* * * *

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   (浜岡原発の写真;中部電力のウェブサイトより)

なお浜岡原発については、社民党の福島瑞穂党首が今年3月17日夜、首相官邸を訪れ、東海地震の予想震源域にあることから、これを停止させるよう申し入れています(『こちら』)。

さらに浜岡原発に関してはこれまでに、今年1月の火災(『こちら』)や2009年12月の3号機での放射性廃液漏れ(作業員29人が被曝)(『こちら』『こちら』)などの事故も伝わってきています。

2009年8月の駿河湾地震(マグニチュード6.5)の際には、浜岡原発 5号機の起動領域モニタの動作不能が発生しました(『こちら』)

これはクラスA不適合事象、すなわち、原子力安全や電力供給に影響を与える可能性のある不適合、社会的に影響が大きいと思われる不適合でした(『こちら』)

* * * *

仮に、今回のようなマグネチュード9.0クラスの地震が東海地方を襲っても浜岡は大丈夫なのかどうか、これに対する中部電力の対応をまとめたペーパー(『こちら』)を読んでも必ずしも安心できないと感じるのは、私だけでしょうか。

安心してもいいと言うのであれば、安心できるような材料を提示して頂きたい、上述の静岡県知事の疑問にも答えて頂きたい、このように思います。

* * * *

【参考】広瀬隆さんの今回の福島第一の事故に関するコメントは『こちら』(YouTube動画のインタビュー;1時間17分)。

東海地震の提唱者として知られる石橋教授(神戸大学都市安全研究センター)による衆議院予算委員会公聴会での発言録(2005年2月23日)は『こちら』

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2011年3月23日 (水)

汚染者負担の原則

政府は22日、東京電力の原子力発電所の事故で被害を受けた周辺住民らへの損害賠償について、

「国も負担する方向で検討に入った」

とのことです(3月23日、読売新聞 『こちら』 )。

一般に、企業が環境汚染を引き起こしてしまった場合、「汚染を除去し環境を復元すること」や「被害にあった方たちに対して補償する」ことは、

「汚染を引き起こした企業が負担する」 ことになります。

これを Polluters Pay Principle(汚染者負担の原則;略してPPPの原則)といいます(『こちら』を参照)。

しかし原子力発電の場合には「原子力損害の賠償に関する法律」(『こちら』)が定められていて、この法律にそって誰がどこまで負担するかが決められることとなります。

所管官庁という言葉があるのかどうか、詳しいことは私にはわかりませんが、この法律を読むと、文部科学大臣に主たる権限と責任を課していることがわかります。

文部科学省のウェブサイトには、原子力損害賠償制度について説明してくれているページがあります(『こちら』)。

下の図(クリックすると大きくなります)は、このウェブサイトに出てくるものですが、原子力損害賠償制度の概要を要領良くまとめています。

Photo_2

要は(非常に簡単に言ってしまいますと)、

「PPPの原則が適用されますが、万が一の場合は政府がバックアップしますから、国民のみなさんは安心してください」

ということなのでしょう(『安心』と言っても、起きてしまった被害に対する補償という意味での安心に過ぎないのですが・・)。

* * * *

PPP原則の適用に際して、水俣病を引き起こしてしまったチッソの場合には次の2点が論点となりえました。

(1)チッソは、戦時中、陸軍の要請でアセトアルデヒドを生産し、それによって水俣湾が汚染された

( → 国に言わせれば、戦時中の生産量よりも戦後の生産量の方が圧倒的に多い。それに、汚染してまで生産しろとは言っていないはず。だから「チッソはPPPの原則から逃れることはできない」ということになります)

(2)PPPの原則を適用した結果、チッソが補償金の支払不能の状態になってしまった

( → 国、県、金融機関が一体となってチッソに対して金融支援を実施)

今回の原子力発電事故の場合では、あらかじめ原子力損害賠償制度が制定されていますから、(2)の問題は生じないか(たとえ生じたとしても)政府による出動は比較的スムーズに行われると思います。

(1)の問題は、そもそも原子力発電がどこまで国策に基づいて行われているかによって、たとえば国と東電との負担割合が決まってくることになるという「微妙な問題」かと思います。

いずれにせよ、損害賠償を東電が負担するということは、東電の株主がまず負担し、(万が一)それでも足りなければ、債権者が負担することになります。

国が負担するということは、国民の税金でこれを負担するということを意味します。

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2011年3月21日 (月)

福島第一: 昨年6月の電源喪失・水位低下

マスコミではあまり報じられていませんが、昨年6月の福島第一の電源喪失・水位低下事故について書きます。

まずは東京電力によるプレス・リリースです。

以下にプレス・リリースの一部を抜粋します。全文については是非『こちら』をクリックしてみてください。東京電力のウェブサイトの該当ページに飛びます。

『1.事象の発生状況  平成22年6月17日午後2時52分頃、運転中の福島第一原子力発電所2号機(沸騰水型、定格出力78万4千キロワット)において、

「発電機界磁しゃ断器*1トリップ警報」が発生し、

発電機の保護装置が作動して発電機が停止したため、

タービンならびに原子炉が自動停止いたしました。  

また、この事象にあわせて当該プラントの電源が停止し、

非常用ディーゼル発電設備が自動起動するとともに、

原子炉へ給水するポンプが停止したことから、 

原子炉の水位が一時的に低下しましたが、

代替のポンプである原子炉隔離時冷却系を起動して給水を行い、

現在、原子炉の水位は通常の範囲内で安定しております。

2.今後の対応 今後、原因について詳細に調査いたします。 ・・(以下略)』

* * * * *

この件は当時一部の関係者の間でずいぶんと話題になりました。

いわき市議会議員のブログ『あわやメルトダウン・・』 『こちら』

晴耕雨読の信之介のブログ『2010年6月17日福島第一原発2号機の事故』 (『こちら』

昨年の段階で原因を究明し、十分な対策を施していれば、(1)今回の惨事が防ぎえたのか、(2)仮に防げなかったとしても、もう少し程度の重くないものとすることが出来たのかどうか・・

この辺のところがいずれ明らかにされていくことを望みます。

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福島第一(IAEAによる現況サマリー)

IAEAのウェブサイトに掲載された福島第一の状況 [21日6時現在; (20 March 2011, 21:00 UTC)]

Iaea_2

上の図はクリックすると大きくなります。

上記ウェブサイトには、21日より前の図も載っていますが、この時は赤の部分の面積がもっと大きく、緑が小さいものでした。

現場の方々の尽力によって、これから先も赤の面積が減っていくことを祈るばかりです。

なお5・6号機の冷却機能が回復し(『こちら』)、使用済み燃料プールの温度も落ちてきました(20日午後2時現在、5号機:35.2°、6号機:30.0°)。

下の図もクリックすると大きくなります。

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根岸製油所稼働開始

JX日鉱日石エネルギーの根岸製油所が今日から稼働開始しました(『こちら』)。

首都圏にあるこの製油所(270千bbl/day)は、東燃ゼネラル石油の川崎製油所(335千bbl/day)とともに、もともとガソリンを作るのが得意な製油所です。

【製油所は、FCCなどの設備能力状況やコンビナート内の各社との関係などによって、生産する石油製品の比率が各々違います。

ガソリンを作るのが得意な製油所、ナフサやC重油などの生産比率が(他の製油所に比し)相対的に高い製油所、重たい原油を処理するのが得意な製油所など、それぞれ特徴がありますが、根岸や川崎はもともとガソリンの生産が得意な製油所です】

以下は少し古い(2010年3月現在)地図ですが、石油連盟が発表(『こちら』)している日本の製油所一覧です。なお下記の地図はクリックすると大きくなります。

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今回の一時的なガソリン不足は、東燃ゼネラル石油の川崎製油所(335千bbl/day)とJX日鉱日石エネルギーの根岸製油所(270千bbl/day)が、設備の点検作業のために一時的に稼働を停止していたことの影響が大きいと言えます。

以下の表は震災による製油所の稼働体制への影響をまとめたものです(詳細は『こちら』、なお下表はクリックすると大きくなります)。

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このうち、極東の千葉はすでに16日付にて稼働開始、東燃ゼネラルの川崎はすでに完全復旧し、ガソリン生産量は震災前と同レベルに戻っています(『こちら』)。

これに加えてJX日鉱日石エネルギーの根岸製油所が今日から稼働開始したことから、原油処理能力は震災前の原油処理量の99%のレベルにまで回復しつつあります。

特にガソリン生産量の多い川崎、根岸両製油所の再稼働によって、日本全体のガソリン需要はすでに十分まかなえるレベルに達していると思われます。

被災地は別にして、首都圏の人たちが、今この段階でガソリンスタンドの前で何時間も列を作ってクルマを満タンにしておく必要はないと思います。

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2011年3月20日 (日)

福島第一について Kavli Institute for Theoretical Physics でのMonreal 助教授の講演(3月16日)

カリフォルニア大学サンタバーバラ校(UCSB)のキャンパス内に

the Kavli Institute for Theoretical Physics という研究機関があります(詳しくは『こちら』のウェブサイト参照)。

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私は 勉啓塾のメンバーからのメールで知ったのですが、

Ben Monreal 助教授(『こちら』)が、the Kavli Institute for Theoretical Physics(以下KITP) にて福島第一の事故について3月16日講演を行っています。

    Ben_2

    (Ben Monreal 助教授)

Ben Monreal 助教授はMIT出身、Yale大学大学院を経て2年半前にカリフォルニア大学にやってきました。

講演ではまずKITPのDirector であるDavid Gross 教授が5分間ほど Opening Remark としてスピーチを行い、Ben Moreal 助教授を紹介しています。

ご存知の方も多いと思いますが、David Gross 教授は2004年にノーベル賞(物理学)を受賞しています。

     Gross_d00

   (David Gross 教授)

今回の東日本大地震が起きたとき David Gross 教授はたまたま東京にいました。

スピーチではその点についても触れられています。

David Gross 教授のスピーチは『こちら』 。

それに続く、Ben Monreal 助教授の福島第一の事故に関する講演は『こちら』です(81分間)。

Monreal 助教授のプレゼン資料は『こちら』 。

プレゼン資料の日本語訳は『こちら』です。

翻訳者などの紹介は『こちら』

翻訳者の一人、野尻美保子さん(高エネルギー加速器研究機構/東京大学IPMU) のブログも参考になります(『こちら』)。

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3月19日付の大前研一のコメント

大前研一さんは早稲田大学理工学部卒業後、東京工業大学大学院原子核工学科で修士号を取得し、その後、米国マサチューセッツ工科大学大学院原子力工学科で博士号を取得。

MITで博士号を取得した後は、日立製作所で原子力開発部技師として高速増殖炉の設計に係っていたとのことです。

大前さんの3月13日付のコメントはすでにこのブログでもご紹介しましたが、これに引き続き、3月19日付の同氏のコメントです(『こちら』)。

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2011年3月19日 (土)

Stop the hysteria

AFS 同期(18期)で「空飛ぶドクター」として有名な坂本医師がメールをくれました。

「今回は外国の方がパニックになり過ぎです」

坂本医師が教えてくれたのですが、我々同様 AFS留学生として米国から日本に留学してきた経験のある俳優のダニエル・カールがユーチューブで外国のマスコミへ訴えています。

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"Stop the hysteria" (不安を煽るな)

『こちら』でご覧になることが出来ます(約2分)。

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英国政府科学顧問の見解

英国政府の科学顧問(The UK government's chief independent scientific advisor)である John Beddington 教授の見解が World Nuclear News に掲載されていました(『こちら』)。

          Jb

記事は15日付のロンドン(Beddington教授)と在日英国大使館との電話会議の模様を18日付にて記事にしたものです。

以下、記事の要約です(青字は英語の原文)。

(1)Beddington 教授によれば、原発から20キロ以上離れた人たちは放射能汚染を心配する必要は無い。30キロ以上離れれば非常に安全だと考える。

He said that the general population outside of the 20 kilometre evacuation zone should not be concerned about contamination. If they extended out a little bit more to 30 km, that is well within the sort of parameters that we would think are extremely safe.

(2)Beddington 教授によれば、作業員が原子炉の十分な冷却を出来なければ、メルトダウンになりうる。その場合、basic reactor core が溶け、核物質が容器の床から落ちる。これは通常想定されうる最悪のシナリオで、これ以上の悪い事態は起こらないと考える。

・・ if workers were unable to keep the reactors sufficiently cooled, you can get "the dramatic word 'meltdown'." He noted, "What a meltdown involves is the basic reactor core melts, and as it melts, nuclear material will fall through to the floor of the container. There it will react with concrete and other materials ... that is likely ... remember this is the reasonable worst case, we don't think anything worse is going to happen"

(3)Beddington 教授によれば、通常想定されうる最悪のシナリオ下では爆発が起きる。その結果、放射性物質が上空500メートルほどの高さまで飛ぶだろう。これは重大な出来事だが、原発から30キロ圏内にとって重大な出来事なのであり、たとえ東京方面に風が吹いたとしても(東京では)まったく問題にならない。

"In this reasonable worst case you get an explosion. You get some radioactive material going up to about 500 metres up into the air," Beddington said. "Now, that's really serious, but it's serious again for the local area." He said that even if there was the worse weather situation, with strong winds pushing the release towards Tokyo, there would still be "absolutely no issue.  The problems are within 30 kilometres of the reactor."

(4)Beddington 教授によれば、チェルノブイリでは、上部が原子炉、そして次に原子炉の核(core)を吹き飛ばし、核(core)を囲む黒鉛が長期間にわたって燃えた。放射性物質は上空500メートルどころか、9150メートルの高さまで達し、しかもこうした事態が何か月も続いた。

しかしチェルノブイリの時でさえ、避難範囲(exclusion zone)は30キロであり、それを超えた範囲で人々が放射能により悪影響を受けたという証拠はない。

In Chernobyl, first of all the top blew off the reactor and then the core of the reactor, the graphite which surrounds the core, actually caught fire and burned for a very long time," he said. "Material was going up not just 500 metres but to 30,000 feet (9150 metres). It was lasting not for the odd hour or so, but lasted months, and that was putting nuclear radioactive material up into the upper atmosphere for a very long period of time. But even in the case of Chernobyl, the exclusion zone that they had was about 30 kilometres. And in that exclusion zone, outside that, there is no evidence whatsoever to indicate people had problems from the radiation."

(5)Beddington 教授によれば、チェルノブイリの時は人々は放射能で汚染された水を飲み続け、汚染された野菜を食べ続けた。日本ではそんなことは起きない。

The problems with Chernobyl were people were continuing to drink the water, continuing to eat vegetables and so on and that was where the problems came from.  That's not going to be the case here," according to Beddington.

(6)日本の当局が放射能に関する事実を隠蔽しているのではないかとの恐れも指摘されているが、Beddington 教授によれば、そんなことは起こりえない。

放射能のレベルは世界でモニターされており、隠蔽することなど起こりえない。

Beddington noted that there had been concerns both in Japan and internationally about the information from Japanese authorities on radioactive releases from the Fukushima plant following the quake and tsunami. However, he said that releases of radiation cannot be concealed. "It's monitored throughout the world. We know we can actually monitor exactly what the radiation levels are around there externally so [concealment] is just not happening."

* * * *

なお福島第一とチェルノブイリ、スリーマイルを比較したものとしてはナショナル・ジオグラフィックの記事(『こちら』『こちら』)も参考になります。

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情報の入手

出版社の編集長の方(Aさん)が以下のようなメールを送ってくれました。

『終戦の混乱の中で、朝鮮半島にいた邦人の引き上げ時に一番罪深かったのは、「治安は確保されます」「市民は動揺せずに現地にとどまれ」というラジオニュースでした。

ソ連軍の南下を知らずに、ラジオニュースを信じてピョンヤンを動かずにいた人たちはその後、大変は目に遭いました。

たぶん、いつの時代も一般市民というのは、そんなものです。垂れ流される公式のメッセージをひたすら信じて・・・。

悲しいものです。』

* * * * * *

テレビや新聞の情報だけに頼ることなく、自分から積極的に情報を入手しにいく姿勢、

風評やデマ、あるいは大袈裟な情報を避けて、出来るだけ広めに情報を拾っていく・・・

そんな姿勢が重要なのでしょう。

私が参考になると思う幾つかの情報(ウェブサイト)を下記にご紹介します。

緑字部分をクリックして覘いてみてください。

(1)東日本巨大地震 福島原発半径20km以内の住民に避難指示(大前研一ライブ)

少し古い(6日前)ですが、3月13日の大前研一さんのコメントです。

大前さんは米国マサチューセッツ工科大学大学院原子力工学科で博士号を取得しています。

(2)フランスから見た原発事故、日本の無知に唖然

フランス駐在のライター・レポーターである鈴木 春恵さんの記事です。

(3)頼れるどころか、もはや「有害」な日本の震災報道

朝日新聞記者、『アエラ』編集部記者、コロンビア大学修士課程に自費留学を経て、2003年フリーランスのジャーナリストとなった烏賀陽 弘道さんの記事です。 

* * * * * *

なお本日発売されたアエラ(AERA)や週刊現代の記事もよく取材されているとの印象を持ちました。

* * * * * *

下記コメント欄に記されていますが、米国マサチューセッツ工科大学(MIT)の原子力工学科の学生たちによって(教授陣のサポートも受けながら)書かれている MIT NSE のブログ『こちら』) も参考にしてください。

* * * * * *

また MIT NSE のブログ『こちら』) を読んで知ったのですが、World Nuclear News (『こちら』) も参考になります。

実際 MIT NSE のブログ はかなりのところ World Nuclear News (『こちら』)からの情報をベースに書かれているようです。

World Nuclear News の記事の中では、特に18日付のJohn Beddington UK chief science advisor のコメントを紹介する記事が参考になると思います(別途、日本語にしてサマリーをブログ記事としてアップする予定です)。

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武田邦彦さんのブログ

武田邦彦さんは、 内閣府原子力委員会、 内閣府原子力安全委員会などの専門委員を歴任。

東京大学工学博士、芝浦工業大学教授、名古屋大学大学院教授を経て、現在中部大学教授。

一般の方にはベストセラーとなった『偽善エコロジー』『環境問題はなぜウソがまかり通るのか』などの著者としての方が馴染みがあるかもしれません。

武田さんはコントロバーシャル(controversial; 論争を招くような)な説を展開している学者と見られていますが、彼のブログは一読すべきだと思います。

昨日午後10時にアップされた武田さんのブログはこちら

昨晩9時のNHKの放送で

『報道された放射線の値は高いのに NHK とそこに出ていた東大の先生が「健康に影響がない」と間違ったことを言っていたので、少し焦りました』

と書いています。

測定で160マイクロシーベルトと出た場合、東大の先生は「健康に影響がない」との結論を出しますが、武田さんによれば、

『一般人が年間に被爆しても大丈夫な量は1ミリシーベルトとされていますから、

1000÷160=6時間となり、

福島原発の北側30キロにいる人は

7時間だけそこにいたら一般人が1年間で浴びていいという基準値を超えることになります』

とのことです(詳しくはこちら)。

たとえば東京。

武田さんのブログによると、

『3月15日頃の東京の高い値は1マイクロシーベルトぐらいだった。

(東京に1ヶ月少し住むと、1ミリシーベルトで、1年ぐらい住むと子供はかなり危険。胃のレントゲンが1回で600マイクロシーベルトだから、1ヶ月で2回のレントゲンを受けることになる)』(詳しくは『こちら』)。

もちろん武田さんの議論の前提は、「こういった値がそのままずっと続けば」というものでしょう。

また武田さん自身がブログで書いているように

「人間には放射線に対する防御力があり、強い放射線を短時間に浴びるよりも、間歇的に放射線を浴びれば、人体がその損傷を回復してくれる」

(すなわち同じように総量1ミリシーベルトと言っても、短時間に総量1ミリシーベルトを浴びるのと、長い時間かけて浴びるのでは意味合いが違う)

といった側面もあるでしょう。

ただテレビで「30マイクロシーベルトだから安全」とコメントするのも確かにおかしいと思います。

『福島原発から北へ50キロ程に住んでいる人たちは、1日以内に一般人が1年で浴びても良いとされる放射線を上回る可能性があります』

こう武田さんは警鐘を鳴らしています(『こちら』)。

我々に出来ることは、ここ当面の間はあまり必要性の高くない外出は控えて、出来るだけ屋内、室内にいること。

その方が浴びる放射能の量も少ないでしょうし、公共交通機関の渋滞緩和、ガソリン消費量の節約にも役立ちます。

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エーシ― (AC)

テレビ(民放)では同じCM(エーシー)が何度も流れています。

「いったい、どうして?」 

「エーシーって、そんなにおカネがあるの?」・・・

いろいろと不思議に思う方には、『こちら』のブログが参考になります。

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チャイナ・シンドローム

チャイナ・シンドロームとは原子炉事故の炉心溶融のことです。

米国で発生すれば、地球の地殻を突き抜け、反対側の中国にまで及ぶという意味(注:そんなことはありません)で、

1971年ころから原子力学者の間で使われてきた言葉です(詳しくは『こちら』)。

この言葉を題名に使った映画が1979年に製作されていて、通常この言葉を聞くと映画の方を思い浮かべることと思います。

もっとも映画の方は、当初はチャイナ・シンドロームでは一般の人に分かりづらいので、

ウィットネス(目撃、証人)といったような別の題名を使うことが考えられていたといいます。

低予算で作られたにもかかわらず、この映画は当時大ヒットしました。

ジェーン・フォンダ、マイケル・ダグラス、ジャック・レモンが主演しています。

        China_syndrome

映画『チャイナ・シンドローム』は、米国の電力会社やプラント建設会社のずさんな管理体制、利益至上主義、隠蔽体質にメスを入れたものです。

ということで、福島第一と比較したり、対比したりして、見るべきものではありません。

映画の中ではジャック・レモン演じる技術者が、文字通り死を賭して大惨事を防ぎます。

なおこの映画が米国で公開されたのは、1979年3月16日。

このわずか12日後の1979年3月28日に

米国でスリーマイル島原子力発電所事故が起きました。

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ヨード製剤の内服

AFS同期(18期)の寺門医師の文章です(これもそのまま転写します)。

* * * *

「緊急被ばく医療研修のホームページ」

http://www.remnet.jp/index.html

「原子力安全委員会専門部会報告(H14年)」

http://kokai-gen.org/information/6_015-1-1y.html#13 

などに、放射性ヨードの被曝を予防するための安定ヨードの内服について触れられていますが、

通常のヨード製剤(ヨウ化カリウム製剤)投与は体内を正常な安定ヨードで飽和に近い状態にし、入ってくる放射性ヨードの体内比率を下げるのが目的です。

一時的に大量に通常のヨード製剤を内服し、放射性ヨードの吸収を阻害しておけば、甲状腺に吸収されず、甲状腺癌の予防にはなります。

余分なヨードは尿に排泄されます。

現在は放射性ヨードが大量放出されていないようなので、ヨウ化カリウム製剤には、副作用もありますし、予防服薬をせず、原子炉破壊されたら、すぐに服用されれば間に合いますが、

ただし、通常、このヨウ化カリウム製剤は、普通の医療機関には備えは無いので、破壊があった場合に、公的機関が配布するだろうと考えられます。

放射性物質の汚染には、風向きにも注意が必要です。

気体ヨードは水溶性で、濡れたマスクが有用との事です。

他の放射性物質は、衣類についたりしますので、払い落としたり、シャワーを浴びたりが有効なようです。

寺門道之@トータルクリニック寺門医院・小山市・栃木県

miteraka@df6.so-net.ne.jp

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2011年3月18日 (金)

被災地の病院の状況

「転送大歓迎」ということで送られてきましたので、以下このまま転写します。

* * * *

「被災地の病院の状況」

By 坪谷 透/TSUBOYA Toru (Mr.) M.D. 内科認定医 

東北大学大学院医学系研究科 公衆衛生学 博士課程大学院生 D2 

PhD student of Division of Epidemiology 

Department of Public Health and Forensic Medicine Tohoku University Graduate School of Medicine

http://www.pbhealth.med.tohoku.ac.jp/

「知り合いより医療機関の情報を集めました。主に現場で何が必要としているのかについて書いてもらいました。医療機関によっては、行政と連絡が取れず現状を伝えることができず、ニーズが伝えられず、本当に必要なものが届いていません。転送大歓迎です。よろしくお願いします。」

1、石巻赤十字病院 (3/15夜の時点)(宮城県)

物資に関しては、当院は食料は何とか3食おにぎり1つだけ食べられています。飲料水に関しては、一時危機的でしたが、救援が届き、今は何とかなっています。雑水(トイレの水など)は本日で尽きると報告されました。電気は14日より病院のみ開通しました(それまでは自家発電で最小限のことは維持できていました)。ミルクは迅速な支援でかなりだぶついており、むしろ哺乳瓶と乳首が不足しているとのことです、お湯も無いようです。

薬剤:絶対的に不足。インスリン、ワーファリン、降圧薬が特に不足 酸素ボンベも不足無洗米(食料であれば水、加熱、食器の要らないもの)。

病院は慢性疾患の方が薬をもとめて群れをなし、あるいは水道が使えて電気があるので避難所として、また現在透析ができるのが当院だけなので、これを求め、また自衛隊が次々ヘリで搬送し、入院させたくても適応外とせざるを得ないもの、患者以外のもの、施設にいた寝たきりの人々などが集中し、院内そこかしこに多数の被災者が「住んで」しまっている状態です(これらの方々に食料は提供されていません)。そのため衛生(院内は既にアンモニア臭)、治安(盗難が多数発生)上の問題を呈し、その他文章で残すのがはばかられるような事態が発生しています。現在いかに最後の砦である病院を守るかというのが喫緊の課題です(これらの方々に食料は提供されていません)。

脳神経外科として状況は、外傷は意外に少なく、むしろ脳卒中が多発しています。現在の病院の能力で物資的には診療継続が可能ですが、ベッドが既に埋まって個室にベッドなしで2-3人入れる、廊下に担架で入れる等して対応していますが、そろそろ限界です(回復しても、帰る場所がない、もともと入院中の人も帰るところがない)。またマンパワーとしても2人で診療に当たっており(1名はトリアージ)、3名とも疲労が極度に蓄積しています(これは職員すべてにいえることですが)。

2、石巻市立病院(宮城県)

周囲火災と、津波で犠牲者が少数おり、診療継続不能。旧市外である雄勝地区、鮎川地区、北上地区では病院を含め街はほぼ壊滅で、医療が不要になってしまった。女川地区は未だ未踏の地)。石巻市内は冠水しており、自分のアパートの回りも死体が浮いている状態です。

3.県南中核病院(宮城県)

当院には岩沼、亘理、山本の海岸部を含めて被災者、患者が多数来院しています。病院建物の被害はほとんどありませんが、周辺の地盤が下がって段差ができている状態です。電気、水道などのライフラインは制限内で稼働中です。携帯電話はつながりにくいですが、病院の固定電話は回復しています。画像はCT, Xpのみ可能です。MRIは復旧の目処がたっていません。マイクロが損傷しており開頭術は困難です。(全体の手術そのものにも制限があります)薬剤、点滴は現時点では足りていると思われますが、今後の供給しだいです。

4.東北大学病院(宮城県)

被災地で最も欲しいもののひとつが粉ミルクです.被災地の現場では超緊急です.たとえば気仙沼や石巻です.単位グラムあたりで,助かる人と未来の量は,もっとも効果的と思われます. 粉ミルクの件で補足します。まずは粉ミルク自体を供給していただくことが先決で、投与の方法はその先です。粉ミルクがあることで助かる子供のために提供と運搬お願い申し上げます。

5、仙台市立病院(宮城県)

3月12日。地震2日目の夜を仙台市立病院で迎えました。既に400人を超える患者を受け入れきましたが、現在もなお救急車(他県からの緊急消防援助隊)も含め収容依頼なしで搬入されてきています。仙台市内の死者もおそらく1000名を超え、宮城県内では1万人を楽に超すものと思います。夕方からは他県のDMAT(災害派遣医療チーム)2チームに当院に入ってもらい手伝ってもらっています。病院はなんとか診療機能を維持し、電気は復旧、水道は給水車による優先給水、医療ガスは備蓄でやっています。市内の他院は電気が復旧しないため非常発電に依存しており重油の供給がいつ再開されるかがカギです。共通の問題点は、患者・職員の食料(備蓄もそれほど多くない。コンビニは長蛇の列)、薬品・診療材料の不足(卸が停電で機能せず、また壊滅状態となったところもあり、供給の見通しが立たず)等々です。市立病院の建物にも一部被害があり、入室禁止箇所があるため入院患者数の制限を余儀なくされています。

3月13日。地震後3日目の夜となりました。仙台には全国各地から70を超えるDMAT(災害派遣医療チーム)が参集し、当院には昨日夕方から2チーム(神奈川赤十字病院、置賜総合病院)、本日は交代で4チーム(新庄病院、独協医大、深谷赤十字、JA中濃厚生病院)が救急診療のサポートにあたってくれています。地震直後からの受け入れ患者数は500名を超え(昨日、本日の臨時日中外来を含む)、まだ続々と傷病者が搬入されています。電気が復旧し非常電源から解放された病院も少しずつ出始めていますが、依然として医薬品、診療材料、医療ガス、重油等々の供給体制にいずれも不安を抱えながら診療にあたっているのが実情です。救急患者の質も少しずつ変化し、元々重症外傷患者の搬入が比較的少ないのも今回の災害の特徴のようですが、内因性の疾患が時間とともに増加している印象です。

県庁に宮城県の災害対策本部が設置され、今回初めて医師が災害医療コーディネーターとして(大崎市民病院の大庭先生が実質トップでコントロール)災害対策本部に入り、災害拠点病院、医師会等の無線ネットワーク(電話は全くと言って良いほど機能しない)を駆使して、自衛隊による空路救出、ひき続き域外搬送(県外病院)や県内・市内病院への搬送調整、DMATの出動先調整等を行っています。そのため携帯型無線機を常に携帯しながら絶えることのない余震が続く院内を動いています。通常の救急医療体制に戻るにはまだまだ時間が必要でしょう。一緒に働く病院職員や救急隊員の中にはいまだ家族の安否が不明の人たちも少なからずいます。多方面からの御支援、励ましを糧として今日も院内泊です。

3月14日。地震4日目の夜を迎えました。石巻市立病院が病院機能を維持できなくなり、ほぼ全入院患者を自衛隊の大型ヘリで霞の目駐屯地は搬送し、そこから仙台市内の病院、あるいは県外の病院へ搬送しています。また東北厚生年金病院も電気が復旧せず、非常発電用の重油の供給が途絶える等のために患者の他病院搬出をはじめています。仙台市内の病院の受け入れキャパシティもかなり苦しくなっているのが現状です。本日も県外DMAT(愛知医療センター、千葉県救急医療センター)の医療支援を受け、心の底から有難く感じています。

3月15日。地震5日目です。当院屋上の煙突(鉄製の煙突周囲をコンクリートで固めたもの)に崩落の危険があり再評価の結果、仙台市立病院本館の放射線、検査部門はほぼすべて立ち入り禁止区域となり、また病棟もナースステーションを含め東西とも立ち入り禁止となったため今後入院患者数を制限せざるを得ず、また現在手術も臨時のみで、お産も制限されそうです。それでも救急患者の収容要請は途切れることがありません。病院の診療能力の低下はやむを得ないものの、できることをやっていくしかありません。当院での診療状況は、外来は通常通り開設、救急対応もいたします。検査機器はCT, MRI, DSAとも稼働します。ただし、MRIは緊急対応のみです。手術は、手術室のダメージのために制限がありますが、開頭・穿頭ともに可能です。今回の地震後、急性硬膜外血腫、気管切開などの手術を行っています。脳内出血、急性硬膜下血腫、視神経管骨折など、通常であれば開頭手術を行っているケースも入院していますが、災害対応優先のため、あきらめざるを得ないケースも多数入院しています。

6、米沢市立病院(山形県)

山形県へは福島からの被災された方々がいらしてきています。 当院でも昨日被爆疑いの方10人程度ERへ訪れ被爆チェックしておりました。(幸いゆゆしき問題のある方はおらず、服を脱がせて預かった程度でした。)おそらくこの後も増えていくと思われます。山形もガソリンが手に入らなくなりました。

7、磐井病院(岩手県)3月15日

幸い建物の損傷がなく水や燃料の備蓄分で診療を続けられています。一関市旧市街は電気水道とも部分的に復旧していますが、病院は電源のみ昨日から供給が始まりました。水道は今日来るか明日来るかといったところです。市民生活では燃料の不足が深刻になってきているようで、開くかどうかわからないGSに長蛇の列です。通勤の足が確保できず病院に泊まり込む職員もいます。地震の被害そのものはライフラインの寸断が主なもので、建物被害はさほどなく、これらは宮城県のほうがひどいようです。患者トリアージの甲斐もあって院内は大混乱にはなっておらず、重症患者の受け入れもさほど多くはないようです。津波からの生存者は数名搬送されてきました。脳外科は初日の急性硬膜外血腫と、昨日急性硬膜下血腫を受け入れただけで、緊急手術もどうせできないので比較的暇です。薬剤や材料は不足しており、点滴をなるべく減らし、外来の処方日数も制限しています。いつまでもつのかは不明ですが、現在特に必要なものとしてお願いしたいものはありません。電気が来たことでおいおい復旧するでしょうが、固定電話;携帯電話ともにつながりにくい状況でADSLなどももちろん不通です。院内では岩手県の行政ネットが生きておりweb-mailは可能です。

8、宮城病院(宮城県)

電気、水道、電話、携帯など復旧の見込みもなく、救急車も連絡手段が無く突然搬送されて来るのを待つ状況です。検査は単純写と採血がなんとか使えますが、CTなどは動いていません。

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東京電力

Mixi の 「ろこ(みぃ子)さんの日記」 が閉鎖されて 3日経ちました。

彼女によれば、

「私の意図とは別な方向に使われてしまったため 閉鎖します

現場を見た私が伝えたいことは今も変わっていませんが 文章を編集・悪用され 皆様の不安を煽る結果となってしまったため 閉鎖させて頂きます」

とのことです。

現場の最前線で文字通り「死闘」する東電の方々の状況を伝えるものが消されてしまって大変残念です。

この文章は東電の社員の方の実名入りの投稿でした。

まだご覧になっていない方は、「こちら」 で、今でもその文章を読むことが出来ます(【注】「ろこ(みぃ子)さんの日記」の原文と変わっていないことを祈ります)。

* * * *

それにしても、テレビでの記者会見を見て感じたことですが、東電の広報部は要領をえません。

「原子力災害対策特別措置法第10条第1項の規程に基づく通報以後の状況についてご説明させていただきます」

とか

これは〇〇法〇〇条〇項に該当するものです」

とか、そういったことをテレビカメラに向かって説明する必要があるのでしょうか。

出血多量の患者を救うべく手術する医者が「医師法第〇条に基づきメスを入れます」と言っているようなものです。

「ろこ(みぃ子)さんの日記」が伝える「現場」と、テレビに登場する「本部」の温度差に唖然とします。

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2011年3月17日 (木)

3.11

3月11日を最後にブログを更新していなかったものですから、何人かの方から「地震でどうかしたのですか」とメールを頂戴してしまいました。

巨大津波が町を飲み込む映像を見て、とてもブログを書く気になれなかったというのが正直な気持ちです。

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3月22日の日経CNBCヴェリタストークに出演する予定でしたが、先ほど日経CNBCの方から電話があり、番組そのものが22日は見送られることになったとの連絡を受けました(今週14日の番組も見送られました)。

この時期に株式投資についてコメントするのは気が重かっただけに中止の決定を聞いてほっとしています。

* * * * * * *

昨日は大阪から東京に新幹線で戻ってきたのですが、東京へ帰る新幹線はガラガラ。逆に東京駅に着くと、東京から大阪方面に向かう人たちで新幹線のホームはかなり混雑していました。

外資系企業、大使館関係などでは社員や大使館員に対して関東平野から退避した方が良いとの勧告を出しているところもあるようです。

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昨日夕刻、冬が戻ったような寒風が吹きすさぶ中、表参道の道を歩きました。人通りはいつもの半分以下。ほとんどのショップも照明をぐんと落とし、薄暗い中で営業していました。

光が消えた静かな街なみからは、被災地への思いが感じられました。

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2011年3月11日 (金)

インサイド・ジョブ

2月27日に発表された第83回アカデミー賞(『こちら』)で長編ドキュメンタリー映画賞[Documentary (Feature)] を受賞したのが『インサイド・ジョブ』

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2008年のリーマンショックに至る過程に迫ったもので金融関係者必見の映画と言えます。

私は飛行機の中で見ましたが、残念ながら日本での公開は今のところ予定がないようです。

ただ『こちら』の予告編(トレーラー)でおおよその内容を知ることができます(2分20秒です)。

映画のナレーションは俳優のマット・デイモン。

監督は政治学者(Ph.D 政治学、MIT)でもあるチャールズ・ファーガソン(『こちら』)。

内容的にはやや一面的に偏っているきらいもありますが、アメリカの金融界が抱える問題を鋭く突いています。

1

細部についても、一例としてCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)は保険とは違う、たとえばビルの火災保険であれば、保険会社はたとえビルが全損となってもビルの価値以上のリスクを負わないが、CDSでは購入者は対象債権の保有者である必要がない、したがって、ある債権に対して何重ものCDSが設定されうる(損失がうなぎ登りになりうる)(『こちら』)―

こういった点について、丁寧な説明がなされています。

リーマンショックについてはNHKスペシャルなどでも何回か特集を組んでいました(『こちら』)が、

これらに比べれると『インサイド・ジョブ』は、はるかに秀逸な出来ばえとなっています

(そういった意味では経済関係の記者の方などマスコミ関係者などにもぜひ観ていただきたい映画です)。

この映画はすでに DVD化 されていて(ただし、リージョン1ですので日本での再生には注意)、ブルーレイ 『こちら』 で購入することが出来るようです(英語字幕は有りますが、日本語字幕はない模様)。

Insidejob

また(英語になってしまいますが)、『こちら』のスタディ・ガイドや、『こちら』のプレス・キットも参考になると思います。

 

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2011年3月10日 (木)

ヘッジファンドへ投資する機関投資家

Prequin のウェブサイトから:

・投資家が要求するファンド・マネージャーのトラックレコード:62%の機関投資家は3年以上のトラックレコードを要求。

・投資家が要求するファンド・マネージャーの運用資産規模:64%の機関投資家が1億ドル(82億円)以上の運用資産規模を要求。

・Long/Short Equity に投資する機関投資家の平均期待利回り:8.7%

・Rest of World-based funds of funds に投資する機関投資家の平均期待利回り:9%

以上詳細は『こちら』

・米国の民間セクター年金ファンドの56%がヘッジファンドに投資。運用資産の9.8%をヘッジファンド投資に割り当て。

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以上詳細は『こちら』

* * * *

そのほかPreqin のウェブサイトには興味深いリサーチ記事が多く載っています。ご関心のある方は『こちら』をどうぞ。

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2011年3月 9日 (水)

日刊ゲンダイ

3月9日の日刊ゲンダイに掲載された記事(『こちら』)です。

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2011年3月 4日 (金)

史上最大のボロ儲け

アルゼンチンに行っていて昨日帰国しました。

アトランタでの乗換待ち時間6時間を含め、片道、行きは29時間、帰りは31時間でしたので、ずいぶんと本を読むことができました。

面白かったのが『史上最大のボロ儲け』

       Photo_2

このブログでも何度かご紹介(『こちら』)したジョン・ポールソンの話です。

* * * * *

2007年と2008年の2年間でジョン・ポールソンは個人として60億ドル(4800億円)の所得を上げました(本書には出てきていませんが、彼が2010年に個人所得 4,100億円を上げたのは上述のブログ記事で紹介したとおり)。

ポールソンが運営するヘッジファンドが顧客のために稼いだ額(2007-2008年)は200億ドル(1兆6000億円)にも上ると言います。

2008年2月20日。

ベアー・スターンズのCOO(最高執行責任者)兼CFO(最高財務責任者)のモリナロは、ヘッジファンドの大物20数名をランチに招待します。

ベアー・スターンズ本社の役員専用ダイニングルームで、モリナロは20分間にわたり、ベアーの財務状態の改善ぶりを説明し、その後の20分間はヘッジファンド・マネージャーたちからの質問によどみなく答えました。

モリナロはヘッジファンド・マネージャーたちの心をとらえることに成功し、決定的な勝利が目前に迫っていると思いました。

その時、ジョン・ポールソンが手を上げます。

「御社のバランスシートにレベル2資産やレベル3資産がどのくらいあるかご存知ですか?」

「すぐにはわかりませんね」

「だいたいでいいんです」

「推測でものを言いたくないものですから。机に戻れば正確な値をお教えできますが」

「いえ、私がお教えしましょう。2200億ドルです。何が言いたいのかというと、御社の株主資本は140億ドル、レベル2、レベル3資産は2200億ドルです。このような状態では、資産にわずかな動きがあっただけで、株主資本はすっかり消えてなくなってしまいますよ」  (本書350~351頁より)

* * * * *

本書が読み手を引きつけてやまないのは、この本がジョン・ポールソンという優れた投資家の単なる成功物語を綴ったものではないからです。

実際、本書にはポールソンのほかにも、個性豊かな人物が数多く登場します。

彼らに共通するのは、アメリカ中が住宅ブームに沸く中、「何かがおかしい」と気づいたことです。

たとえばパオロ・ペレグリーニ。イタリア語なまりの英語を話す彼は、2度の結婚に失敗し、45歳にして資産ゼロ、無職となってジョン・ポールソンのもとに転がり込んできます。

あるいはジェフリー・グリーン。金遣いの荒い父親が事業で失敗を繰り返し、夫婦喧嘩が絶えなかった家庭で生まれた彼は、大学生の頃から電話販売員としてアルバイトをはじめ、やがてこの事業(電話販売事業)を自ら手掛けるようになります。

そこで得た資金をもとに不動産業に進出。不動産で成功をおさめ、ハリウッド女優アンジェリーナ・ジョーリーらに家を貸し、オリバー・ストーン監督、マイク・タイソン、パリス・ヒルトンたちと交友を持つに至ります。そして2005年。ガールフレンドとクルーザーに乗り、2か月にわたって世界各地を訪れたジェフリー・グリーンは気が付きます。

「まともじゃない。みんな開発業者になりたがっている。世界中どこへ行っても不動産の話ばかりじゃないか。誰がこんな値段で買うというんだ?」(本書200頁)。

このほかにも不動産市場の異常さに気が付いた人たちが登場します。

アンドリュー・ラーゲ。2006年4月。彼は勤務先の投資会社で解雇され、ワンベッド・ルームの安アパートで暮らしていました。エアコンのない蒸し暑いアパートの自室で彼は自らの名前をつけた「ラーゲ・キャピタル」という会社を設立します。

あるいはマイケル・バリー。早くからCDS(クレジット・ディフォルト・スワップ)に興味を示した彼はもともとは医師でした。彼は2歳になる前から腫瘍のため左目に義眼を取り付けられ、幼年時代をいじめられて過ごした経験を持ちます。

パオロ・ペレグリーニ、ジェフリー・グリーン、アンドリュー・ラーゲ、マイケル・バリーといった多彩な登場人物。

彼らの多くは、大企業や政府機関で出世したり、周囲の人々を発奮させるリーダー的な存在ではありません。

「薄闇の中で机に足を乗せ、何かがおかしいのではないかとじっくり考え、それに備える方法を模索するような」(本書391頁)タイプの人間です。

アンドリュー・ラーゲは2008年10月、自らの会社を閉鎖し、顧客あてに手紙を書きます。

「私が今回成し遂げた成功に対し、心から感謝したい人は大勢います。しかし私は、賞を取ったハリウッド俳優のようなスピーチはしたくはありません。・・・もっとお金を欲しいという人は、純資産を9桁、10桁、11桁と積み上げていけばいいでしょう。しかしそういう人の生活は最悪です。・・・トーマス・ジェファーソンとアダム・スミスが亡くなって以来、この国は尊敬すべき哲学者を輩出していません。少なくとも政治システムの改善に目を向ける哲学者はいません。資本主義は200年もの間機能してきましたが、時代は変わり、システムは腐敗してしまいました・・・」(本書378~379頁)

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私は1977年に大学を卒業してから34年間、ずっと金融の世界に身を置いてきました。

この間、金融に関する数多くの本を読んできました。といっても実のところ、最初の10~20頁を読んでみて、大した内容ではなくて残りは斜め読みにしてしまった本もたくさんあります。

本を読むことで、私は金融に関する様々な世界を知りました(ひとくちに金融といっても本当に広領域にわたっていて自分の経験していない世界もたくさんあります)。そして思索を深めるうえで役立たせてきました。

1998年、私はそれまで21年間勤めてきた興銀を退社し、2003年には外資系投資銀行を辞めましたが、こういった人生の転換期において、それまでの読書で身につけてきたことが、私の決断をうながしてくれたような側面もあったような気がします。

ときおり「金融の世界に身を置くあなたにとって、これまでに一番影響を及ぼした本は何ですか」といった質問を受けることがあります。

私はこれまで、

『野蛮な来訪者』(原題:『Barbarians at the Gate』

と答えてきたのですが、これからは『史上最大のボロ儲け』(原題:『The Greatest Trade Ever』)と答えるようになると思います。

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最後に本書の著者がペーパーバック版あとがきに記した次の一言が印象的でした。

「(リーマンショックという)金融システムの崩壊を、人為的なミスによるものではなく、起こるべくして起こった自然災害のようなものと説明すればいい。あたかも自分に落ち度はないかのように振る舞い、高報酬の仕事を今までどおり続けている専門家がどれだけいることか。」(本書392頁)

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