渡りに舟
あるスポーツジムの話。このジムではこれまで毎月15日と月末日とを定休日としていましたが、7月からは毎週水曜日を定休日にすることを検討中とのこと。
定休日が月2回から月4~5回に増加することになります。
「節電に協力する」という大義名分なのでしょうが、このジムはこれまでにも会員の月会費を値上げしてきたりしているので、収益改善の一環なのかもしれません。
確かに定休日が少し増えたとしても会員であることをやめようと思う会員はそう多くはないでしょう。
ジムの経営者にとってみれば、収入(これは主として会員が払う定額の月会費)はさほど変わらずに、人件費、水道光熱費などを削減できるということになります。
もちろん都心でスポーツジム、ヨガ教室、英会話学校などを経営する上で、一番のポイントは不動産賃借料です(この辺は実は『定年後 年金前』という本の中でも書きました)。
不動産賃借料は固定的側面の強いコストで、黙っていても毎月支払いが発生しますし、都心ではこのコストがバカになりません。
このため都心で事業を営む経営者にとっては、「不動産を休みなく働かせる」(不動産を休ませずに長時間営業し、出来るだけ不動産に金をもうけさせる)ことが重要になってくるのです。
家賃の高い都心でコンビニが朝早くから夜遅くまで開店しているのはそういった理由によるものです。
ただ月会費が定額制のスポーツジムにとっては話がすこしだけ違ってきます。
ひとたび会員を集めてしまえば、そして、それを維持することが出来さえすれば、彼らは、不動産を休みなく働かせるよりも、人件費(特にジムのスポーツ教室などで教えている外注費的な人件費)、水道光熱費などの変動費削減に目が行ってしまいがちになります。
このようなスポーツジム経営者にとって、「節電に協力する」という大義名分はまさに「渡りに舟」といえるのでしょう。ジムの評判を落とすことなくして変動費削減を図れます。
いま現場のビジネスの世界のあちらこちらで起きているのは、こういった「渡りに舟」的な動きです。
各社、各事業者にとっては最適解であっても、人員削減もしくは人件費カットなどを通じて、日本経済全体としては縮小均衡的な動きにつながります。
そしてやがてはこれを実施した会社や事業者自身の首を絞めることに繋がっていってしまいます。
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