豪ドル vs. ブラジル・レアル
昨晩は日経CNBC『日経ヴェリタストーク』に出演しました。
トピックスは、豪ドル vs. ブラジル・レアルについて。
このところ豪ドル預金やブラジル通貨レアルの預金が人気を集めているといいます。
日銀の資金循環統計(2011年3月23日発表)によると2010年12月末の個人の金融資産は1,489兆円。
このうち株式投資は64兆円、日本円の流動性預金は297兆円、定期性預金が464兆円となっています。
注目すべきは外貨預金で、残高5.4兆円を記録しました。
2010年10月末時点で個人の外貨預金残高は4.9兆円となり、2000年以降で最高となったとニュースで伝えられていましたが、たった2か月間でその最高記録さえも10%ほど上回ったことになります。
特に人気を集めているのが高金利を付けている豪ドル。
たとえば三菱東京UFJ銀行の円定期預金は預入期間1年もので年0.03%。
それが豪ドルだと、3.42%にもなります(2011年5月27日現在)。
これだけ金利差があると、金利と為替の裁定が働き通貨安(円高、豪ドル安)に見舞われそうですが、少なくともここ2年くらいの動きをみると、豪ドルはむしろ円に対して強含んでいます(下図1)。
結果的に豪ドル預金者は金利で得をして為替でも利益を得てきたことになります。
ブラジルの通貨、レアル建ての預金はどうでしょう。
ソニー銀行は5月16日から国内銀行では初めてのブラジル・レアル建て外貨預金の取り扱いを開始しました。
金利は3か月ものが5.4%。
レアル預金の取り扱い開始後たった10日間余りであっという間に3億円程度を集めたといいます。
ブラジル・レアルについても2009年以降の為替は堅調で、レアルの預金者は金利と為替の両面で利益を上げることが出来ました(下図2)。
ただここで気をつけなくてはならないのは、豪ドルにしてもブラジル・レアルにしてもこの10年の間に数か月間で為替が約半値になるという暴落を経験していることです。
豪ドルについては2008年7月には1豪ドル105円であったのが、5か月後の12月には58円にまで45%も暴落しています(上図1)。
リーマンショック(2008年9月)で海外の投資家が一斉に資金を引き揚げて自国通貨に変えたことなどの事情によるものですが、
こういったリスクを抱えた上での外貨預金投資であることは認識しておく必要があります。
ブラジル・レアルについてはここ10年の間に2回(2002年と2008年)も半分近くに通貨が暴落することを経験しています(下図3)。
(図3)
両通貨とも資源を持つ国の通貨として人気を集めていますが、
せっかくの高金利も為替の下落リスクと背中合わせの関係になっていることを認識する必要があります。
よほどの余裕資金でもない限り、個人投資家として運用期間は1か月程度にしてこれをロールオーバー(再設定)するといった形の方が無難かもしれません。
1年間という期間設定だと為替が激しくアゲンストに動き始めても、預金を下ろすに下ろせないということになりかねません。
更に付け加えますと、仮に2008年後半のようなことが再度あるとすると、たとえ1か月程度の運用期間であったとしても傷つく可能性があります。
リスクなくして「リターンだけある」といった「都合の良い話」なんて、基本的にはありません。