食品の匂いと異臭
今月の勉啓塾は「食品の匂いと異臭」について。
大和製罐㈱ 総合研究所 の加藤所長とワイ・エム・ピー・インターナショナルの渡辺所長を講師に迎えしました。
二人は『食品の匂いと異臭』という本を共著しています。
講演のサブタイトルは「我々は毎日ppm(100万分の1)、ppb(10億分の1)、ppt(1兆分の1)のにおい世界を体験しています」というもの。
世の中にはほんのごく微量でも感じられる臭いがあります。
その昔、製罐会社各社は製造した罐の運送工程で木のパレットを使っていたことがあり、このため罐の内側ににおいを出す物質が付着してしまった・・
その結果、ビールがにおうというクレームがビール会社に寄せられ、ビール会社は製品を回収、最終的に製罐会社が巨額の費用負担をする羽目に陥った・・・
私の記憶の及ぶ範囲では、こういった事件がその昔あったことはちょっと思い出せないのですが、以降 大和製罐㈱ では総合研究所 で匂いの研究をすることになったとのことです。
勉啓塾の講演会では講師の方々が数多くの小瓶を持参。
その中に詰められたにおいを順番に嗅いでいくことも行われました。
コーヒーも会場に持ち込まれていました。
講師の加藤さんが「みなさん、コーヒーを飲んでみてください」と言います。
コーヒーの香り、そしてコーヒーの味が口のなかに広がります。
「今度は鼻を手で押さえてコーヒーを飲んでみてください」
手で鼻をしっかりふさいでますので香りはしません。
味は・・?
というと、さっきのコーヒーの味もしない!
液体を飲んでいるという感覚しかありません。
「コーヒーの香りは、焙煎したコーヒー豆が持っている物質そのものの一部が空気中に飛び出し、皆さんの鼻の中に入り、その物質がキャッチされているのです」
と加藤さん。
「またコーヒーの味とは、実は香りです。味覚はそもそも塩味、甘味、苦味、酸味、旨味の5つしかありません」
実験はさらに続きます(注:みなさんも簡単に出来ることですのでやってみてください)。
「手で鼻をしっかりふさいでコーヒーを飲んでみてください。そしてコーヒーを飲み終わったところで手を放してみてください」
さっきと同じで香りはしません。コ―ヒーの味もしない。しかし手を放した瞬間、コーヒーの味がしてきます!
「そうです、喉から上がってきた物質が鼻の奥に到達して、コーヒーの味となって認識されるのです。このように味とは実は鼻の奥で感じる匂いであることが多いのです」
加藤さんの説明に思わず納得。
このほかにもいろいろなことを知りました。
たとえばペットボトルはたとえ封がしてあって開ける前でも、においが混入していく。したがってナフタリンなどの匂いのする納戸で長期間保存しておくと、納戸の匂いが混入する場合があるとか・・
目薬が墨汁のような匂いがするのはなぜか、などなど。
たとえば目薬の匂いの件については、『こちら』 に ワイ・エム・ピー・インターナショナルによる、化学式(下図)つきの面白い記事があり、要領よく説明されています。
なお加藤さんは工業化学科の卒業。渡辺さんは応用化学専攻の修士。我々が普段それほど意識することのない臭いの世界にも化学者たちは鋭く切り込んでいきます。
(AnalyzejNetのウェブサイトより)