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2011年8月14日 (日)

アルゼンチン

前回に続き、国家財政の破たん、国債のデフォルトについて、もう少し書いてみます。

まず今回(2011年7月)のギリシャ救済パッケージ。

ギリシャ国債を持つ民間金融機関などは長期国債への債務再編協力を余儀なくされました。

このため今回ギリシャ国債は実質的にはデフォルトしたという意見(ムーディーズ、フィッチなど)があります。

この辺の技術的な話はさておいて、約10年前、2001年にアルゼンチンを襲った金融危機は今回のギリシャ危機の比ではなく、もっと強烈でした。

当時のアルゼンチンは年率40%のインフレが進行し、失業率は30%近くに達していました。

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      (ブエノスアイレスの街角で)

そして2001年12月1日、アルゼンチン政府は預金封鎖を行ないました。

この日を境にアルゼンチン国民は預金の引き出しが制限されたのです。

引き出せるのは1週間に250米ドルまで。

またキャピタルフライト(資本の海外避難)防止のため、海外送金も貿易取引をのぞき

1日1,000ドルまでに制限されました。

そしてその約3週間後の2001年12月23日、全閣僚とデラルア大統領が辞任した後で選出されたロドリゲス・サー暫定大統領が対外債務に対する支払い停止を宣言したのです。

この辺の状況は拙著『マネー大激震』に書いた通りです。

預金封鎖は翌年にも続き、2002年春からは引き出せる額が1か月に500ドルとなりました。

4月19日にはすべての銀行の一時封鎖が実施され、怒った国民は銀行に押しかけATMを破壊したりしました。

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      (ブエノスアイレス;街角のカフェ)

以前このブログにも書きましたが私は今年の2月から3月にかけてアルゼンチンを訪問しました。

アルゼンチンは日本とはちょうど地球の反対側に位置します。

成田を15:25に出ると12時間25分後の米国時間13:50にアトランタに着きます(デルタ航空を利用する場合)。

そして同じ日の19:50にアトランタを発ち、10時間後の翌朝7:50(アルゼンチン時間)にブエノスアイレス着。飛行機に乗っている時間だけで24時間近くになります。

これでも行きは良い方で、帰りは向かい風となるためもっと時間がかかり、飛行機に乗っている時間は24時間をゆうに超します。

さてブエノスアイレス滞在中に私はかつて米国シティバンクのブエノスアイレス支店に勤務していたという女性に会いました。

彼女の話では、2001年~02年の預金封鎖のとき、半年以上も預金が下ろせなくなり、封鎖が解かれた02年6月1日になると預けていた預金額は相当減価してしまったとのことです。

彼女の預金先はもちろん自分の勤め先であったシティバンク。

「米国の銀行だから大丈夫」と思っていたら、外銀であっても例外にならず封鎖をかけられてしまったといいいます。

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      (アルゼンチン;パタゴニア)

さて日本はどうでしょう。

現在のところ日本国債の格付けはAA-(弱含み)。

国債の消化が順調に進むうちは心配ありませんが、ある日突然、日本国債を買う人が減って国債の借り換えが思うようにできなくなってしまったら・・・。

そうなってしまった時の『危機シナリオ』は当然政府・日銀などで準備しているのでしょうが、われわれ国民もこの種の危機管理をそろそろ考えておいた方がよいタイミングにきているのかもしれません。

3月11日の震災直後、首都圏では有無を言わさず『計画停電』が実施されました。

当時いろいろな声が上がりました。

『夏場でもないのに本当に必要なのか』

『23区だけはどうして例外なのか』

『足立区は23区ではないのか』

そういったいろいろな声は無視されて、計画停電はとにかく実施されたのです。

日本国債の借り換えが進まなくなったときに導入される措置もおそらくこれと同じように、それがどういったものであったとしても、『有無を言わさず導入される』ことになると思います。

たとえばこれから先、もし万が一首都圏直下型大地震が起きたらどうなるでしょう。

経済はパニックになり、株式市場は一時閉鎖されるかもしれません。

はたしてその時でも従来同様に国債の借り換えは順調に行われるのかどうか。

危機が起きた時あなたの資産はどうすれば守れるのでしょうか・・・。

* * * *

今年の2月~3月。

地球の反対側のアルゼンチンで10年前に起きた出来事に思いを巡らしながら、私はいろいろなことを考えていました。

アルゼンチンのいま。インフレ率26%、消費税21%、失業率9%。貧富の差は相変わらず大きい・・・。

これがポストBRICsである、VISTA(ベトナム、インドネシア、南アフリカ、トルコ、アルゼンチン)の一角を占めているこの国の現状です。

決して誇らしい数字ではありませんが、それでも昨年の経済成長率は8%を超えています。

たとえ国家がデフォルトしようと国民は何とか生き延びて10年後の今を迎えている・・・。

当たり前のことですが、大陸的な観点でものごとを捉えると、10年前の出来事も歴史のひとコマに過ぎないように思えてきてしまいます。

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