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2011年9月29日 (木)

10月1日(土曜日)の放送

昨日ご案内した日経ラジオ『集まれ!ほっとエイジ』

初回(今週土曜日)は、

堺屋太一さん(ゲスト): 午後 9:00~9:30

松本すみ子さん(レギュラー): 午後 9:30~9:45

私(レギュラー): 午後 9:45~10:00

の時間割構成(おおよそ)です。

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私のコーナーでは、退職金の運用について取り上げます。

たとえば退職金は3%で運用しましょうなどというフィナンシャル・プラナーがいます。

しかし、そもそも3%で運用するなどということを目指さない方がいい。

退職金は(運用することで)減らさないように注意するべきです。

運用を勧めることを業とする銀行や証券会社の方が聴いたら

(もしかすると)気分を害されるかもしれないことをお話します。

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しかし著書でも触れましたが、現実には最近の情勢下で 3%で運用できているファンドや年金基金などはあまり多くありません。

3%で運用しようとしてリスクを取り、逆に 1割や2割も退職金を減らしてしまったら大変です。(若い頃なら取れるリスクでも退職者は取るべきではありません)。

この辺のところについて今週土曜日詳しくお話する予定です。

退職金の運用に限らず、最近の株の下落で損をしてしまった方などにとっても参考になるようにお話しします。

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2011年9月28日 (水)

集まれ!ほっとエイジ

今週土曜日(10月1日)から『集まれ!ほっとエイジ』という番組が日経ラジオにてスタートします。

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番組は『特集』と『連載』で構成されており、『特集』では毎回ゲストをお呼びします。

第1回のゲストは堺屋太一さん。

『連載』は、 松本すみ子さんと私が担当。

詳しくは『こちら』(←クリックしてください)をどうぞ。

私が担当するコーナーは約15分です。

毎週土曜日、夜9時~10時。

コーナーで取り上げてほしいこと、あるいはご質問などがありましたらお寄せください。

ところでテレビはあるけどラジオが無い(日経ラジオは短波です)という方もおられるかもしれません。

しかし今やラジオはパソコン(Radiko)で聴く時代。

『こちら』(←クリックしてください)をクリックすると日経ラジオが聴けます。

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2011年9月27日 (火)

ツイスト・オペレーション

昨日何人かの方からお電話を頂戴しました。

「TBSラジオ『生島ヒロシのおはよう定食・おはよう一直線岩崎の本のことを話していたよ」

この番組、月曜から金曜の朝5時~6時30分に放送しています・・・みなさん結構早起きなんですね。

生島さん、拙著をご紹介頂き有難うございます。

* * * * *

さて昨晩は日経CNBC『日経ヴェリタストーク』に出演しました。

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トピックスは、ツイスト・オペレーションについて。

ツイスト・オペレーションとはFRBが保有する米国債の中身をより期間の長い国債に入れ替えることにより長期金利の低下を狙う政策のことです。

FRBがこの政策を発表した時(9月21日)、私はちょうど米国にいました。

なぜ、QE3ではなくてツイスト・オペレーションだったのか。

ある米国人いわく「QE2は、一般の人に対しては金持ちから貰うチップの額が増えたくらいの効果しかもたらさなかった」。

QE2(2010年11月3日~2011年6月)によってFRBは6000億ドルの国債を追加購入し、マーケットに資金を供給しましたが、マネーが向かった先は、商品相場であったり、株式相場でした。

すなわち資産の価格が上昇したのです。

この結果、資産を持っていた金持ちは潤いましたが、持っていない労働者や一般の消費者にはマネーが回らず、失業率は9.1%と高止まり(25歳未満の若年者の失業率は18%)、

一般の人たちにとっては「金持ちから貰うチップの額が増えたくらいの効果しかもたらさなかった」というわけです。

今回のツイスト・オペレーションはQE2とは違います。これによって長期金利が低下することが期待されます。

そうすれば、消費者の中には住宅ローンを借り換えることができる人も出てくるでしょう。

こういった人たちには住宅ローン金利負担が軽減するという直接的な効果が期待できるのです。

また、QEとは違ってツイストにはさほどの副作用はありません。

イールドカーブの傾斜が緩くなる(フラットに近づく)ので、金融機関は長短ミスマッチ(短期で調達して長期で運用する)ことによる鞘稼ぎが難しくなる-こういった点が指摘されるくらいです(これも副作用といったものではありません)。

【注1】ここでちょっとアメリカの住宅ローンについて説明を加えますと、住宅ローン市場では:

住宅価格-住宅ローン=ホームエクイティ

という関係になっています。

住宅購入に際して、ローンによるファイナンスがカバーする率の高かった人(たとえば95%もローンでファイナンスして住宅を購入した人)は、住宅価格が下落することによりホームエクイティはマイナスになっています。

このため長期金利が下がっても借り換えができません。

すなわち一番困っている人はツイスト・オペレーションの恩恵を受けることが難しいという事情があります。

【注2】米国の失業率推移は米国労働省の統計で見ることができます(『こちら』)。

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* * * * *

さて一部ではアメリカの失業率が「予想に反して悪い」、あるいは「一向に改善しない」と報じられています。

しかし昨年11月のFOMCの段階で、FRBは2011年の失業率を8.9%~9.1%と予想しました(『こちら』)。

すなわちアメリカの失業率は 「予想に反して悪い、あるいは一向に改善しない」のではなくて、「予想通り悪い」のです。

そしてFRBは、既に昨年11月のFOMCの段階で、「失業率は2013年までは高止まりするだろう」と予想しています(『こちら』)。

リーマンショックはそれまでの資産バブルがはじけることで起きました。日本のバブル崩壊の後遺症は20年以上も続いています。

米国もそう簡単には治らない。少なくとも2013年くらいまではかかるだろう(これでも全治5年です)・・・

すでに昨年の段階でバーナンキはこういった診断を下していたのです。

だからこそFRBは今年8月のFOMCで低金利政策を「少なくとも2013年半ばまでは続ける」と決めたのです(『こちら』)。

バーナンキとしてはこのようにコンシステントな政策を展開しているのですが、市場の期待はもっと高いところにありました。

このため先週の米国株式市場は大幅に下落。

それでは今後はいったいどういうことになっていくのでしょう。

私は今後の市場動向次第では11月か12月のFOMCでFRBはQE3を行うことを宣言することもあり得る(3~4割の蓋然性)と見ています。

これから先、仮に世界経済を負のスパイラルに入り込むのであれば、たとえ副作用はあったとしても誰かがこのスパイラルを断ち切らなければならない、バーナンキはこう考えるのではないでしょうか。

なお『日経ヴェリタストーク』は9月26日(月) 24:00~24:15、9月27日(火) 18:30~、19:06~に再放送されます。

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2011年9月25日 (日)

60兆個の細胞

米国出張の際、機内で何冊かの本を読みました。

印象に残ったのは小出裕章著『原発のウソ』

これまでに私は原発関連の本をかなり読んできました(このブログでも何冊か紹介してきました)。

もし1冊だけを推薦するとしたら、この本になると思います。

放射線が人間のDNAを破壊する仕組みなどが非常に丁寧に書かれています。

* * * * *

『個体としての人間は、もともと父親からの精子と母親からの卵子が合体してできた、たった1個のいわゆる「万能細胞」です。

その1個の細胞が分裂して2個の細胞になり、また分裂して4つになり、8つになり、16になる・・・という具合に、どんどん細胞分裂を繰り返して人間の形になっていきます。

不思議なことに、ある時から「皮膚になる細胞は皮膚になる、目になる細胞は目になる、心臓になる細胞は心臓になる」というふうに、ある細胞が特別の細胞として機能分化していきます。

このような細胞分裂の果てに、人間の大人を形づくる約60兆個の細胞があるわけです。

皮膚にある細胞でも目にある細胞でも、約60兆個の細胞1つ1つが持っている「遺伝情報」は全部同じです。

私たちの生命は、細胞分裂しながら同じ遺伝情報を複製することで支えられています。

人間は、一人ひとりみんな違いますよね。

性格も違う、顔つきも違う、体つきも違う、考え方も違う。

もっと広く言えば、世界に70億人近い人間がいますけれども、誰ひとりとして同じ人間はいない。

それぞれの人が受け継いでいる自分だけの遺伝情報を複製しながら、「全く違う人間」として生きています』

* * * * *

それではこの遺伝情報はどのような方法で複製されるのでしょうか。

そして放射線に被曝するというのは、いったいどういうことなのでしょうか。

詳しくは本書を読んでみられることを是非お勧めします。

そうすることで同じ量の放射線(たとえば1シーベルト)を被曝した場合、がん死者数(白血病を除く)が、1万人あたり55歳の成年の場合は49名なのに対して、0歳児はその300倍以上の1万5152人となる(米国J.W.ゴフマン博士;本書92頁)・・・・こういったことの理由もわかるようになります。

すなわち放射線被曝から特に守るべきは15歳以下の子供たちであり、私のような55歳以上の大人はあまり関係ない・・・。

本書によると「50歳になると放射線によるがん死の可能性は劇的に低下」する・・。

であれば、われわれ大人たち(とくに50歳以上)の取るべき行動はおのずと明らかになってくるように思います。 

なお米国からの帰りの機内では児玉龍彦著『内部被曝の真実』を読みました。こちらは数々のデータ類が参考になります。

また児玉氏のこの著書には、チェルノブイリで5万人の症例を調べた日本の長瀬重信氏(長崎大学名誉教授)らの活躍や、

そもそも1960年代に米ソなどによる核実験が環境汚染をもたらすことを認めさせた猿橋勝子博士の話などが出てきます。

「世の中をかえる研究というのは純粋な心から生まれるものなのです」

これは児玉氏のこの本の中に出てくる猿橋勝子博士の言葉です。

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2011年9月24日 (土)

バフェット・ルール

昨日のブログ記事の続きですが、バフェット・ルールは『こちら』のオバマ大統領のサイト(BARACKOBAMA.COM)に出ています。

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  • このルールによって影響を受けるのは米国人のうち0.3%。この人たちは全員百万ドル(76百万円)以上の所得がある人たちである。(それ以外の人たちはこのルールの影響を受けない)。

  • 2009年、百万ドル(76百万円)以上の所得を得たにもかかわらず所得税(連邦)を一切払わずにすんだ家計が1,470あった。

  • 2009年、百万ドル(76百万円)以上の所得を得たにもかかわらず所得税率が15%以下の家計が22,000あった。

以下、このような記述が幾つか続きます。『こちら』をご覧ください。

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2011年9月23日 (金)

バフェットの秘書

米国に出張していて昨晩帰りました。

出張中、19日にはオバマ大統領による富裕層への課税強化などによる財政赤字削減案の発表があり、20日~21日にはFOMCがありました。

富裕層への課税強化については、『こちら』(←クリックすると出てくる動画画面の矢印を更にクリックしてみてください)の動画(「私はバフェットの秘書です」)が、現在米国で繰り広げられている議論の一端を表しています。

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(注)この動画には上の画像のように何人かバフェットの「秘書」と称する人物が登場しますが、もちろん本物ではありません。

世界有数の富豪である投資家ウォーレン・バフェットの所得の大半が仮にキャピタル・ゲインから成り立っているとすると、米国のキャピタル・ゲイン課税率は15%であることから、バフェットの税率は彼の秘書の税率よりも低いはず、現に2008年米国のhighest income tax payer 400人の平均所得税率は18.1%であった―― こういった点が上述の動画(そしてオバマ大統領の主張)の背景にあります。

もう一方のトピクッスであるFOMC。こちらの方は、結局QE3は実施されず、Twist Operation だけという結末になりました(『こちら』)。 これはこれで住宅ローンの金利を下げ、米国の消費者の家計に実利をもたらすのでしょうが、やはりマーケット(ダウ平均)は390ドル位以上も値を下げました。

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2011年9月19日 (月)

臨済宗神宮寺住職高橋卓志さんの話

敬老の日です。

9月16日に発表された総務省のデータによると、日本の65歳以上の人口は2980万人で総人口の23.3%を占めるとのこと(『こちら』)。

ところで、総務省は65歳以上を『高齢者』と呼んでいますが、平均余命が長くなってきた昨今、65歳以上が高齢者というのはやや違和感を感じてしまう人も多いかもしれません。

* * * * *

さて話は変わりますが、先ほど読み終えた本が、

『池上彰の宗教がわかれば世界が見える』

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全体が8章に分かれ、仏教の章、キリスト教の章、イスラム教の章といった形に章立てされています。

そして各章ごとに池上さんがそれぞれの分野の識者と対談するという形式。

新書版で買いやすいし(値段的にも)、池上さんなので読みやすそうだと思って買ったのが、実は 8月上旬。

たしかに読みやすく書かれているのですが、内容が内容だけに含蓄ある言葉や文章も多く、結局読み終わるまでに1か月半くらいかかってしまいました。(その間、何冊か別の本を読んでいました)。

* * * * *

たとえば第4章「仏教がわかる!②」に出てくる高橋卓志臨済宗神宮寺住職の話。

高橋さんが、慰霊行として西部ニューギニアのビアク島を訪れた時のことを語ります。

「島にはかつて日本兵が隠れて戦っていた洞窟がいくつもありました。

最初に入った洞窟は、千人以上の方々が米軍の攻撃を受けて一気に焼き殺されたという場所でした。私の足元にも遺骨があったのです。

戦争を知らず、高度経済成長のど真ん中で、日々の快適さを享受し、いのちの意味や人間の苦しみなど深く考えたことがなかった当時の私の足下に、家族や愛する人々を想いながら、苦しみの極みの中で息絶えた兵士たちの遺骨があったのです。

それを私は踏んでいました。身体中を戦慄が走り、立っていることがやっとでした。

震える声でお経を誦み始めたそのとき、私の後ろで同行されたご遺族の方の泣き声が聞こえました。

そしてそれは次第に号泣に変わり、そしてその方はそのまま泥水に身を屈し、泣き崩れたのです。

その方の夫は結婚後三カ月で出征し、戦後、ビアク島で戦死、という公報を受けたといいます。

散在する遺骨の中に三十三年前に出征した夫がいる。

思い出の中でしか会うことができなかった夫にいまめぐり合ったのです。しかもすさまじい死が訪れたであろう現場で、です。

それとともに、戦後をひとりで生き抜いてきた苦労が、一気に脳裏に映し出されたのでしょう。

その号泣を聞きながら私は、お経を誦むことができませんでした」

【ご参考】厚生労働省のホームページに『平和への想い~戦没者遺族、慰霊の旅~』のページがリンクされています(『こちら』)。そこに遺骨収集のためビアク島の西洞窟に向う作業隊員の写真が載っていました(下記)。

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* * * * *

國學院大学前学長の安蘇谷正彦さんと神道について対談(第6章「神道がわかる!」)した後の池上さんの感想は、

「死んだら人はどうなるのか。国学者でも人によって主張が違うという説明には驚きました。

『神道というのは寛大な宗教ですから、教えを統一するということがない』そうです。

いろいろな宗教に対して寛容な日本人。

神道は、まさに寛容な日本人にふさわしい宗教なのかも知れません」

* * * * *

2001年のインドネシア「味の素」騒動の記述もありました。

「イスラム教徒が多いインドネシアで、「味の素」の製造過程で豚の内臓に由来する酵素が使われていたとわかって、日系企業「インドネシア味の素」で働いていた日本人の社長や社員たちが逮捕されたほどでした。

後にインドネシア政府が、最終製品の「味の素」に豚の成分は含まれないと判断して釈放されたのですが、イスラム教徒はそれだけ豚肉を嫌っているわけですね」

* * * * *

最終章(第8章)の池上さんと解剖学者養老孟司さんの対談も興味深く読めます。

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2011年9月17日 (土)

ケース・スタディ

大阪経済大学(北浜キャンパス)社会人大学院で講師を務め始めたのは、2007年。

今年で5年になります。

   (下記は大学学内新聞「KEIDAI DAYS」(09年8月)に

  紹介された講義模様;クリックすると大きくなります)

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私が心がけているのは、毎年違った講義にしようということ。

もちろんコアになる部分は同じです。

DCF法(ディスカウンティド・キャッシュ・フロー方式)を使って株価決定を行う・・・。

投資銀行がM&Aなどの際に使う株価決定方式を受講者のみなさんに分かってもらって、株価とはいい加減な形で決まるものではないことを理解してもらう、この点につきます。

ただ毎年の講義内容に共通する、いわば基礎の部分は全体の15%くらいで、残りの85%くらいは応用部分。

この応用問題の部分は毎年変えています。

そしてこの部分は主としてケーススタディの形にして院生の方たちと一緒に考えるというスタンスで授業を進めています。

過去には、『トヨタと日産、どっちの株を買うか』をテーマにしたこともありました。リーマンショック前、トヨタショック前のときです。

さすがにこのときトヨタショックを見通せた人は(私も含めて)いませんでした。

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     (大阪証券取引所ビル内にある北浜キャンパス)

今年7月16日(土)の講義では、『アップルの株。 売るか買うか』をテーマにしました。

まず初めに受講生の方たち全員に私から質問しました。

『アイフォーンを持っている方はおられますか』

何と答えはゼロでした。(これは私にとっても意外でした)。

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       (大阪経済大学北浜キャンパス近景)

ケーススタディーではアップルの製品ごとの売上高、地域ごとの売上高などを分析しながら今後の成長力を検討していきます。

そして講義の終わりの方で、受講生一人一人の意見を聞いていきます。

運よく受講生の意見が違ったものとなり、教室が割れるようになれば、活発な討論も期待できます。

しかし残念ながら結果は・・というと、受講生たちの意見は、中立的意見が1人だったのを除き、あと全員が『アップルの株は売る』というものでした。

アップルの株を買うと答えた人は(受講生ではありませんが)私1人でした。

売るとした理由のうちで主なものは:

・アップルの株は高くなり過ぎた。今後は競争も激化し一人勝ちはできない

・いずれアンドロイド陣営に負ける

・スティーブ・ジョブズの健康問題(スティーブ・ジョブズがアップルCEOを辞任するのはこの講義から1か月以上後の8月24日です)

この講義の前日、7月15日(金)の段階でアップルの株は364ドル。

その後7月19日(火)の取引終了後、アップルは第3四半期の決算を発表し、20日(水)は取引開始と同時に株価は 396ドルまで高騰(WSJの『記事』参照)。

しかし8月第1週から2週にかけて起こった世界同時株安の影響を受け、アップル株も353ドルまで下落(8月8日)。

その後、株価は少しずつ値を戻し、昨日はようやく400ドル台を記録。

もちろんケーススタディは考え方を深めるためのものであり、正解・不正解はありません。

アップルは昨年10月15日に第4四半期のコンファランス・コールを行い、18日に第4四半期の結果を正式発表しています。

今年も10月中旬の決算発表を視野に入れながら株価が動いていくものと思われます。

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2011年9月13日 (火)

バリュー株投資

昨晩は日経CNBC『日経ヴェリタストーク』に出演しました。

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トピックスは、バリュー株投資について。

バリュー株とは、企業が持つ「本源的価値(intrinsic value)」と、「市場での評価(時価)」との間に乖離がある「割安株」のことです。

すなわち

「本源的価値」 > 「市場価格」

の関係にある株です。

この場合、バリュー株投資家は割安な市場価格で株式を購入。

市場が本源的価値に気づき株価が上がっていくのを待ちます。

詳しくは拙著 『サバイバルとしての金融に書きましたので、そちらをご覧になって頂くか、あるいはてっとり早くは、(英語になりますが)『こちら』の記事が参考になります。

ところでバリュー株投資の難しいところは次の2点。

(1)あなたは投資家として投資先企業の本源的価値をきちんと査定しえているか ―― もしかすると安いには安いだけの理由があるかもしれない

(2)仮にあなたがバリュー株を見つけたとして、あなたにフォローする形で、いずれは市場もこの割安株に気づき、「市場価格」が上昇していって「本源的価値」に収斂してくれるかどうか ―― 市場が気づかなければ、あなたはプラスのリターンを得られない 

特に(2)の点について敷衍しますと、

たとえば時価総額以上の現金を抱えた会社の株を買った場合、米国であればもしも市場価格が上がってこなければ、バリュー投資家はM&Aファンドなどにこの株を売却することが可能です。

しかし日本の場合、M&Aによってそういった会社を買収し、会社が保有する現金を投資家に配るとか、経営陣に自社株購入を働きかけるといった策を取りづらい(特に会社の資産を切り出すようなM&Aには拒絶反応が強い)―― こういった点を考慮する必要があります。

すなわち出口戦略が取りづらい、市場がフォローしてこない場合、市場でバリュー株を売るにしても、自ら行う「売り」が株価を一層下落させてしまうことになりかねない、といった点が指摘されます。

なお番組では以上のほかにアフリカ・アンゴラについて取り上げました。

この部分は時間が2分間しかなかったのであまりお話しできませんでしたが、日本にとってアンゴラは非常に重要な国。

詳しくは、『こちら』をご覧ください。

なお『日経ヴェリタストーク』は9月12日(月) 24:00~24:15、9月13日(火) 18:30~、19:06~に再放送されます。

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2011年9月10日 (土)

Stanford GSB Info Session

昨年(『こちら』)に続き、今年もスタンフォード・ビジネス・スクールのAdmission Information Session に参加しました。

今年のセッションは昨日から今日にかけて 3回に分けて行われました。

本日、午後のセッションには入学希望者約70名と9名の卒業生が参加しました。

80年卒業の私が断トツに年上で、私の次は 92年卒業の浅尾君(衆議院議員)まで飛びます。

2010年卒業生が2名、11年卒業生が1名と若い人が中心の会となりました。

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私のオフィス(小さな会社なので私は土曜も働いています)からセッション会場まで、タクシーに乗ると意外に近く、710円の距離。

あっという間に着いてしまいました。

早めに着いたので、会場にいた Admission Office の Ms. Seda Mansour と雑談していました。

「Seda というネームタッグを見て一瞬日本語の瀬田さんかと勘違いしました。ファーストネームなのですね」

「私はパレスチナ人です。パレスチナではSedaは狩りに成功すること(Successful Hunt)を意味します」

「最近の日本人のアプリカント(入学希望者)はどうですか」

「もっと数多くの日本人に入学して欲しいのですが、グローバルで比較すると負けてしまいます。中国、インドあたりから優秀な学生がたくさん応募してきます。スタンフォードでは国別に何人といった枠を設けたりしないで、優秀な人から採用していくので、結果、日本人の数が少なくなります」

「何が問題なのでしょう」

「日本人のアプリケーションはグローバルなパースペクティブ(Perspective)に欠けます。パースペクティブがドメスティックな人が多い。大学が求めるのは、世界にチェインジ(変化)をもたらす人。中国人やインド人の方がそういった意気込みを持っている人が多い」

* * * * *

全体のセッションが終わった後、卒業生9名の回りにはそれぞれ参加者(全体で約70名)の輪が出来て、彼らの質問に答えていきます。

私の回りに集まった人たちからは起業に関する質問が多く出ました。

私の長男が今年スタンフォードのビジネススクールを卒業して起業したことに関係しているのかもしれません。

質問に答えながら逆に私からも質問してみました。

「どうして起業したいのですか」

「起業して何をしたいのですか」

これらの質問にきちんと答えられないと、Admission Office を説得できるアプリケーションは書けません。

私の知っている「ある人」は南アフリカでエイズに感染された人たちの生活水準改善のボランティアに従事していました。

働いていて、自分の力の無さを思い知らされ、バイオのベンチャーを興したいとの思いを強くしました。

地球温暖化や地球の砂漠化を防ぎたいとの思いを強くし、アグリのベンチャーを興した人もいます。

一方、私の会社インフィニティは日本人のスタートアップとも広くお付き合いすることが多いのですが、日本の起業家には何をしたいのか、動機づけがはっきりしない人も少なくありません。

「単純に社長になりたいのです。人に使われるのは嫌です。自由な人生を送りたい」

「成功してヒルズに住んでフェラーリに乗りたい」

米国からセッション参加のためにやってきたAdmission Office の Ms. Seda Mansour の言葉があらためて思い起こされました。

「日本人のアプリケーションはグローバルなパースペクティブ(Perspective)に欠けます。パースペクティブがドメスティックな人が多い。大学が求めるのは、世界にチェインジ(変化)をもたらす人です」

* * * * *

私の同級生だったビノッド・コースラはインドからやってきて、同じく同級生のスコット・マクネリーとサンマイクロ・システムズを興しました。

その後、コースラはベンチャー・キャピタリストとしての道を進み、数年前に初めてファンドレイズするまでは自分で稼いだ金だけを投資に回していました。

自分の金なら人の指図を受けないからです。

投資先はもっぱらクリーンテックや太陽光発電、電池などの環境関連。

実はこれらのスタートアップは懐妊期間が長く、投資家にしてみれば難しい分野です。

単純に儲けようとすれば、フェイスブックやTwitterに投資すればいい。しかし彼にとっては金儲けは二の次で、将来世代に綺麗な地球を残したいとする気持ちの方がはるかに強いのです。

しっかりとした動機づけがビジネスを成功させる上でも、Admission Office を説得する上でも必要です。

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2011年9月 7日 (水)

QE3の可能性

米連邦準備理事会(FRB)は次回、9月20日(火)と21日(水)の2日間にわたって催される連邦公開市場委員会(FOMC)で量的緩和第3弾(QE3)に踏み切るかどうか、あるいは少なくともこのことを示唆するかどうか、―  マーケットでは引き続きこの点が大きな関心事です。

まずは8月26日に米国ワイオミング州ジャクソン・ホールで行われた米国連邦準備理事会 (FRB)年次会合におけるバーナンキ議長によるスピーチをどう解するかです。

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  (避暑地として有名な米国ワイオミング州ジャクソン・ホール)

昨年のこの会合は、バーナンキ議長が量的緩和第2弾(QE2)を示唆、会合に参加していた日銀の白川総裁は日本での対応協議のため急遽帰国の途につくなど、なにかと話題の多いものでした。

今年のバーナンキのスピーチは、というと全文は『こちら』のとおり。

かつてのJPモルガンでの同僚、中西 健治さん(現在は参議院議員)が彼のブログ(『こちら』のウェブサイト)で、分かりやすく解説していますので、以下にその一部を引用します。

* * * * *

『バーナンキ議長の26日のスピーチではQE3に関する示唆が全く無い一方で、9月のFOMCを二日間の開催にしてFRBが持つ様々な緩和策を十分に検討するということが盛り込まれました。

市場関係者はこれを、9月のFOMCでFRBがQE3を決断すると勝手に解釈したりもしているようです。

ところが、8月30日になると8月9日のFOMC議事録が公表され、実は9月におけるFOMCの 二日間開催が8月9日の時点で既に決定されていたこと、

更にFRBが考慮している追加緩和策は時間軸効果(これは既に8月9日に発表済)、買い入れ資産の量の増大や長期化(短期債券を売却 して長期債に入れ替え)、超過準備金に対する金利の引き下げなどであることが明らかになりました。

また、現在のアメリカ経済が直面している問題への対策、即ち景気回復策としては、金融政策は有効ではないという意見がFRB内部にあることも示されました』

* * * * *

話が少しだけ脱線しますが、私がモルガンの投資銀行部でM&Aなどを担当していた時、中西さんはスワップとかデリバティブのチームを率いていました。彼は若くしてモルガンのMD(マネージング・ダイレクター)となり、当時、JPモルガンが『I work for JP Morgan』と題する世界的広告キャンペーンを展開した時、日本から選ばれた3人のうちの1人となりました。

朝、日経新聞を開くと中西さんの顔が紙面全面に大きく載っていたのを記憶されている方も多いと思います。

* * * * *

話を戻します。

8月30日になって8月9日のFOMC議事録が公表され、実は9月におけるFOMCの 2日間開催が8月9日の時点で既に決定されていたことが分かると、

市場では「なんだ、8月26日のジャクソン・ホールでのスピーチは実は(QE3に関しては)新味の無いものだったのではないか」との声が広がりました。

と同時に「いやいや、8月30日になれば明らかになる “8月9日で決まった9月FOMC2日間開催の事実” を敢えてバーナンキが8月26日に開示したことに意味がある」

という解釈(たとえば『こちら』)や、「バーナンキは(市場のexpectation を鑑みるに)これを言わざるを得なかった」などの解釈も出回りました。

* * * * *

さてQE3の可能性を考えるうえで、一番のポイントは足元の景気動向、人々の景気に対する見通し、消費動向などをどう金融当局が判断するかです。

この点に関して、ジャクソン・ホールでのバーナンキのスピーチのほかにもうひとつ見るべきものがあります。

前回(8月9日)のFOMCの会議です。

まずは8月9日の会議のプレスリリースですが、『こちら』です。

そしてこのときの詳細な議事録(8月30日発表)が、『こちら』

すでに何度か報道されたように、このときの会議のポイントは下記を決定したことです。

「委員会は景気回復を促進し、インフレを長期的にFRB の責務に一致した水準とするため、FF目標金利を0~0.25%に据え置くことを決定し、経済資源の活用度の低さ、中期的にインフレが抑制されていることを含む経済状況が、少なくとも2013 年半ばまでFF目標金利を異例の低水準に据え置くことを正当化する」(To promote the ongoing economic recovery and to help ensure that inflation, over time, is at levels consistent with its mandate, the Committee decided today to keep the target range for the federal funds rate at 0 to 1/4 percent. The Committee currently anticipates that economic conditions--including low rates of resource utilization and a subdued outlook for inflation over the medium run--are likely to warrant exceptionally low levels for the federal funds rate at least through mid-2013.  注: 和訳は『こちら』から引用しました)

そしてこの決定は賛成7名(Ben Bernanke, William C. Dudley, Elizabeth Duke, Charles L. Evans, Sarah Bloom Raskin, Daniel K. Tarullo, Janet L. Yellen)、反対3名(Richard W. Fisher, Narayana Kocherlakota, Charles I. Plosser)のもとに行われました。3人の委員の反対が出たのは、1992 年以降のFOMCでは初めてとされています。

たとえば反対票を投じた一人、コチャラコタ氏( Presidet of Federal Reserve Bank of Minneapolis;彼は15歳でプリンストン大学に入学し、19歳で卒業、24歳で経済学博士となった)は、

QE2を決めた2010年11月に比して、(2011年8月は)「インフレ率は上昇し、失業率は下がった」との判断のもとに反対の一票を投じています。

(議事録では次のように表現: Mr. Kocherlakota’s perspective on the policy decision was shaped by his view that in November 2010, the Committee had chosen a level of accommodation that was well calibrated for the condition of the economy. Since November, inflation had risen and unemployment had fallen, and he did not believe that providing more monetary accommodation was the appropriate response to those changes in the economy.)

             Narayana1

              (コチャラコタ氏)

9月のFOMCでバーナンキがQE3に踏み込むには、これら保守派の委員たちが大きな壁となることが予想されます。

・QE3によって引き起こされるであろうインフレの問題を過小評価してはならない

・そもそもQE2によって供給されたドルは新興国でインフレを引き起こし、資源価格の上昇を招いただけで、米国の実体経済に対する効果はあまりなかったのではないか

こういった点が指摘される一方で、「2,500万人の米国人がフルタイムでの仕事を見つけることができないでいる」(ニューヨークタイムス紙;『こちら』)という現実があります。

これ以上の金融緩和は副作用の方が大きくなり効果はあまり期待できないのか、あるいは、何らかの手を打たないと、米国経済はもっと悪化してしまうのか、この辺のところをFOMCがどう判断するか、―  答えは2週間後に明らかになります。

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2011年9月 5日 (月)

債券投資の世界

日本ではかつて証券会社は株屋と言われていました。

しかし投資銀行に勤めておられる方ならお分かりだと思いますが、投資銀行が扱うのは株式だけではありません。

非常に大胆に言うと、投資銀行は次の3つの部門に分かれています。

「投資銀行部」 (M&Aなどのアドバイス業務、株式・公社債引受による資金調達支援)

「株式部門」 (株式の引受、販売、トレーディング)

「債券部門」 (債券の引受、販売、トレーディング)

(このほかに、調査部門、投資顧問部門、ウェルス・マネジメント、プライベート・エクィティなどの部門があります)。

このうち「債券部門」は多くの投資銀行で収益の中核をなしてきた重要な部門です。

しかし日本ではたとえば投資関係の本というと、これまでは株式投資について書かれた本が中心で、債券業務や債券投資を説明する入門書はあまり見受けられませんでした。

「証券会社=株屋」の世界であったことが影響しているのかもしれません。

そういったなかでかつてソロモンブラザーズの債券市場本部で活躍されていた方によって債券投資を説明する本が出ました。

『証券会社が売りたがらない米国債を買え!』

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債券価格と金利の関係、イールドの概念などについて分かりやすく説明しています。

* * * *

ところで話は少しだけそれますが、本書には著者の林さんがソロモンに入社した1990年にNY本社で受けた入社教育の話が出てきます。

有名な『ライアーズ・ポーカー』の中にも出てくる、あの入社教育です。

本書によれば当時ソロモンのグッドフレンド会長が最初の授業で言った言葉が、

『資産運用で一番大切なことは、売りたい時にその資産が売れるか否かにある』。

* * * *

「売りたい時にその資産が売れること」。 リーマンショックは証券化商品の時価が喪失してしまったことによって引き起こされました。

誰も買う人がいなくなってしまったのです。

時価があると思っていたにもかかわらず、その時価が無くなってしまう・・・

3年前に我々が経験した恐怖の世界がこれから先また起きないとも限りません。

たとえば・・・

ある日突然日本国債の時価がつかなくなってしまったら・・・。

日本国債はAAマイナスですので必要以上に心配すべきではありませんが、我々一人ひとりが頭の片隅にこれから何年か先にはこの種のシナリオも(可能性ゼロではなくて)ありうることを意識していく必要もあるかと思います。

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2011年9月 1日 (木)

トモダチ作戦の裏側

米国サンディエゴから日本の東北地方までの距離はざっと8,600キロ(グーグル・アース)。

震災後に日本に駆けつけた空母ロナルド・レーガンの時速は最大30ノット(『こちら』)。

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サンディエゴを出てレーガンが東北沖に駆けつけるには、6日以上かかる計算になります(8,600キロ÷30ノット(55.6キロ)÷24時間=6.4日)。

すなわち空母ロナルド・レーガンは地震が発生してからサンディエゴを出て日本にかけつけたのではなく、「すでに日本の近くに来ていた」、だからこそ震災直後の 3月13日には宮城県沖に到着していたということになります。

日高義樹氏はレーガンはすでに「グアム島を基地として行動していた」と説明し、「ロナルド・レーガンを中心とする機動艦隊は、時速30ノットの戦闘速度で北上し、地震と大津波が起きてから数十時間後には、仙台沖に到着して救援活動を開始した」(日高義樹著『世界の変化を知らない日本人』)と記述しています。

なるほど、これなら東北・グアム島間は約2,700キロですので48時間でグアムから東北沖まで着きます。

ウィキペディア(英語版)によると日高氏とは違って、空母ロナルド・レーガンは地震発生当時、朝鮮半島地域にいた(『こちら』)との説明。

いずれにせよ、横須賀を母港とする空母ジョージ・ワシントンに加えて、ロナルド・レーガンも第7艦隊の管轄地域に出入りするようになってきたということでしょう。

この点を長谷川慶太郎氏は、「第7艦隊の戦力倍増のため」と説明しています(長谷川慶太郎・日下公人共著『東日本大震災 大局を読む!』)。

実は空母ロナルド・レーガンの公式ウェブサイトがあります(『こちら』です)。

これによるとロナルド・レーガンはすでに2月2日に米国サンディエゴを出港。第7艦隊と第5艦隊の管轄地域(area of responsibility(AOR))での戦闘配備に就くためと説明されています。

そして日本の東北沖での任務遂行後、すでに5月9日には第5艦隊管轄地域のアラビア海に到着したとのこと。

ちなみに第5艦隊は、ペルシア湾、紅海、アラビア海から、ケニアまでの東アフリカを責任地域とし、バーレーンに司令部を置きます(下図は各艦隊のAOR)。

Usn_fleets_2009


ところで、そもそも米国には11隻しか空母(原子力)がありません。

1隻の空母の動きは軍事的にきわめて重要な意味を持ちます。

今回の空母ロナルド・レーガンの動きをどう読むか。

そう言えば最近北朝鮮が中国やロシアなどを訪問するなど動きを活発化させているのが気になります。

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