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2011年11月30日 (水)

日本国債の利回り

昨日は横ばいでしたが、ここ約10日間でじわじわと上がってきています(『こちら』 および 『こちら』)。

日本国債のCDS(クレジットデフォルトスワップ)スプレッドの方はブルームバーグの『こちら』のチャートで確認できます。

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取り敢えず明日の10年物利付国債入札に注目(『こちら』)。

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ザ・金融闘論

昨晩は日経CNBCの新番組「ザ・金融闘論」の公開収録に参加しました(詳しくは『こちら』)。

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参加者は佐藤隆文一橋大学大学院教授(元金融庁長官)、野崎浩成シティグループ証券MD、と私の3人。

コーディネーターは日経CNBCの西川靖志経済解説委員、進行役は曽根純恵キャスター。

金融「闘」論という名に相応しい対立軸を打ち出せたかどうか・・・。

番組の放送は12月9日(金)21時00分~21時30分です。

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2011年11月29日 (火)

バフェットは日本企業の株を買うか

昨晩は日経CNBC『日経ヴェリタストーク』に出演しました。

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ウォーレン・バフェットの投資会社、バークシャー・ハサウェイは、2006年、オランダのIMC社を買収。

IMC社は2008年、福島県のタンガロイ社を買収。バフェットは間接的にタンガロイ社を持つことになりました。

そして今月20日、タンガロイ社の新工場完成式典に出席するためバフェットは81歳で初めて日本を訪問しました。

これから先、バフェットは日本企業の株を買うことがあるのでしょうか。

そもそも彼はIMC社のほかに米国以外の株を買ったことがあるのでしょうか。

バフェットが最初に海外企業の株を億ドル単位で買ったのは、2003年。

ペトロ・チャイナ株を5億ドル投じて買いました(当時ぺトロ・チャイナの11%に相当)。

これに対しては全米で批判の声が上がりました。

以前、このブログでも紹介(『こちら』)したダルフール問題に関連して、米国ではペトロ・チャイナを批判する声が大きかったのです。

たとえばハーバード大学の大学運営基金はかつてペトロ・チャイナ株を保有していましたが、この問題の表面化により同社株を売却。

バフェットもバークシャーの株主総会で株主から鋭い糾弾を浴びました。

バフェットによればこの種の糾弾が理由ではないとのことですが、2007年には彼はペトロ・チャイナ株を全株売却。35億ドルで売ったとのことですで、4年間で7倍のリターンをあげたことになります。

ちなみに北京オリンピックが2008年ですから、2007~8年が中国株が高かったとき。

バフェットはピークに近い形でペトロ・チャイナ株を売り抜けたことになります。

さて、今やバフェットが自ら投資に乗り出す時のミニマム・サイズは10億ドルと言われています(これより小さい額の投資は配下のトッド・コームズとテッド・ウェシュラーが担当)。

となるとバフェットが日本企業の株を買う場合、時価総額2兆円の会社でも4%ほど保有してしまうことになります。

逆に言えば、時価総額2兆円以上が、バフェットにとって心地良いサイズなのかもしれません。

となると、銀行株と通信、JT、商社を除けば、トヨタ、キヤノン、ホンダ、日産、ファナック、武田くらいしか候補がありません(バフェットはたばこ株に批判的)。

このうち可能性がありそうなのは、キヤノン、ホンダ、ファナック・・・

時価総額は小さいですがVWとの間でもめているスズキは・・・?

スズキの場合、時価総額は約9,000億円。VWが19.9%持っていますので、この分は1,700億円。ドル換算で23億ドル。

スズキがバークシャー相手に約23億ドル相当の第三者割当増資をする・・どこかの投資銀行が考えつきそうなアイデアです。

81歳の鈴木修会長兼社長が同じく81歳のウォーレン・バフェットをネブラスカ州オマハに訪ねる、なんて、想像するだけでも面白いと思うのは私だけでしょうか。

番組ではもちろんこんな妄想めいたことは話していませんので、ご安心を。

なお番組の再放送は:11月28日(月) 24:00~24:15、11月29日(火) 17:45~、19:06~の3回です。

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2011年11月27日 (日)

定年後 年金前 の空白期間

毎週土曜日、日経ラジオで放送している『集まれ!ほっとエイジ』

早いもので昨日(11月26日)で第9回目を迎えました。

昨日のテーマは、「定年後 年金前 の空白期間」。

「政府は年金の支給開始を68歳もしくは70歳に変更することを検討している」

―― 先月このように報じられただけで、世間では大問題になりました。

この結果10月27日、政府はとうとう「来年の通常国会に提出する関連法案には『年金年齢支給開始の引き上げ』を盛り込まない方針」を示しました。

ということで、当面68歳とか70歳といった話は無くなりました。

現在は「年金の支給開始時期」をかつての60歳から65歳に移行していく上での「過渡期」という位置付けにあり、当面の間はこの状況に変更はありません。

ところで「過渡期とはどういうことか」というと、以前は「60歳から支給していた」年金を、徐々に「支給開始年齢」を引き上げていって、 「いずれは65歳になるまで一切年金をもらえないようにしよう」、 そうすれば「年金財政は、少しは楽になる」- こういった観点から現在年金支給開始時期の変更がすでに走り出しているということです。

そして更に申し上げれば、この「65歳支給開始」は、やっぱり、いずれは68歳もしくは70歳支給開始に変わるかもしれない。

この辺は先月政府がほのめかした通りなのですが、われわれとしてはその位のところを覚悟して現実的な対応を考えていった方が良いと思います。

ではいったいなぜこのような事態になってしまったのでしょうか。

そもそも政府は現在の年金制度は100年安心と言っていたのではないか―こう言いたくなるのはやまやまですが、年金問題がここまでこじれてしまったのは、端的にいうと、これまで甘い見通しの上に制度設計をしてきたからです。

現実を直視すれば、このままいけば、年金財政は何れ破綻します。

この解決策には次の4つの選択肢しかありません。

① 年金の保険料率を上げる(→これに対しては、「これ以上、給与から保険料が天引きされる額が増えるのはたまらない。現在でも十分大きな額が給与から差し引かれている」と現役世代が悲鳴をあげそうです)。

② 年金の支給額を下げる(→これに対しては、現在の国民年金の支給額は月6万6000円です。十分に低いので、これを更にこれ以上、引き下げるとすると、年金はやめて、生活保護に行く人が増えてしまうことになりかねない、そういった声が出てきます)。

③ 年金の支給年齢を引き上げる(→ これが先月、突然報じられた案ですが、この選択肢の問題点は、退職した後、年金がもらえるようになるまでの「空白期間」をいったいどうするのかという点です)。

④ 4番目は税と年金との一体改革といわれるものです。要は、税金を年金財政に流し込みましょうということですが、これはますますの増税に繋がっていってしまいます。

ということで、これらの選択肢はどれもが痛みを伴うものです。

番組ではこの辺を出来るだけ分かりやすく説明しました。聞き逃された方は今からでもポッドキャストで聴くことができます(15分間です)。

『こちら(日経ラジオ)』のサイトをクリックすると出てくる下記ボタンの「聴く」を押してください。(下記ボタンをいきなり押してもリンクされていません。必ず『こちら』をまずクリックしてください)

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iTunes でも聞けます(無料です)。『こちら』です。

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2011年11月23日 (水)

消費税減税

このブログ記事のタイトル「消費税減税」は、「増税」の間違いではありません。

今年の7月に消費税を「減税」した世界第9位の経済大国(といっても「国」ではありませんが)、カリフォルニア州の話です。

まず米国では国としての消費税はなく、代わりに州レベルなどで売上税が課せられます(売上税が全くない州もあります(『こちら』))。

米国カリフォルニア州。

サンフランシスコ、ロサンゼルスなどを擁するこの州は年間1.9兆ドルのGDPを稼ぎ出しています(2010年)。これは米国全体の13%にあたります。

もしカリフォルニア州が1つの国であるなら、その経済規模は世界9位。

8位のイタリアに次ぐレベルに位置します(『こちら』)。

さてカリフォルニア州の消費税(売上税)「減税」とはどういうことでしょう。

もともとカリフォルニア州では消費税が7.25%でした(State Rate 6.25% プラス Local Rate 1.00%)。

これが2009年4月1日から2011年6月30日までの期間限定で1%増税の8.25%になっていたのです。

そしてこれをこのまま延長するか、あるいはもとに戻すかで議論になっていたのですが、結局は当初予定通り今年7月1日からもとに戻すこととなり、1%の減税、結果 7.25%の消費税となりました(『こちら』)。

実際には州に加えて市や郡の税金も課せられることがあるため、たとえばロスアンゼルス市の場合はというと、消費税(売上税)はトータルで今年の6月まで 9.75%。

それが今年の7月から1%下がって 8.75% となりました。(ちなみにニューヨーク州ニューヨーク市の消費税は 8.875%)。

もちろん消費税「減税」になったから、「それで安泰、国民生活はよくなった」かというと、そんな安直なことではありません。

カリフォルニア州の場合、裁判所が月に1回閉鎖されるとか、市役所職員は週1日は自宅待機させられるとか、州や市による行政サービスはレベルの低下を余儀なくされています(『こちら』)。

ただ日本では消費税増税のニュースばかりが取り上げられ、なかなかこういった「減税」のニュースが紹介されないのはどういったことなのかと考えさせられてしまいます。

ヨーロッパの国を見てみましょう。

消費税(付加価値税)が一番高いのが破綻したアイスランド(25.5%)。

ギリシャ23%、ポルトガル23%、イタリア21%・・。

消費税の高いこれらの国はやや問題児とされている国々です。

消費税が高くて、政府が大きくなり、非効率となったのか、あるいは政府が非効率で財政危機となり消費税を高くせざるをえなくなったのか、鶏が先か卵が先かのような議論でありますが、イタリアの場合、財政の危機的状況を踏まえ、今年の9月17日から消費税が20%から21%へと増加しました。

一方、ユーロ圏の優等生ドイツは19%。為替が強いスイスは 8%です。

2週間前。私はポルトガルにいました。

高速道路網は整備されており、首都リスボンを少し離れると立派な高速道路にクルマはまばらという日本の様な状況が続きます。

高速道路がデコボコしたニューヨーク周辺や道路標識が極端にに少ないカナダ西部と好対照です。

さて消費税増税について竹中平蔵さんがかつて次のように話していました。

「増税をして経済がよくなるのはただ一つのケースだけだ。それは民間よりも政府が賢い場合だ」(『こちら』)。

まぁ、財務省的には財務省のキャリアの方が民間より賢いと思っているからこそ、消費税増税に向かって邁進しているんでしょうが・・。

1997年(平成9年)4月1日、橋本内閣のもとで消費税が3%から5%に引き上げられました。

その前後で税収はどう変化したかをグラフ化したのが下図です(オリジナルのデータは財務省の『こちら』の頁の第4表。なお下図は図の上をクリックすれば大きくなります)。

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すなわち消費税増税前の租税収入レベルは50兆円(平成7~8年度)。増税後の平成9年度、一時的に税収は 52兆円になりますが、この1年だけ。

景気悪化を招き、平成11年度には税収は46兆円、平成14~15年度には42兆円レベルにまで落ち込みます。(ただし上のグラフで明らかになっている税収減には景気悪化の影響だけではなく平成10~11年の法人税減税、平成11年の所得税減税の影響も含みます)。

なお日本のGDP成長率推移は下記のとおり(オリジナルは『こちら』から取りました。なお下図は図の上をクリックすれば大きくなります)。

Gdp

経済は生き物です。

消費税を上げれば、消費者はマンションや自動車、ピアノや家電製品の購入を控えるようになります。

消費税を上げた結果、日本の経済を悪化させてしまうことに繋がらないか、過去の橋本増税の検証を含め、多面的な検討が必要になります。

以下は高橋洋一『財務省が隠す650兆円の国民資産』からの引用(151~152頁)。

『一般会計の歳出に大きな比重を占める項目に「国債費」がある。2011年度予算では約22兆円がこれに充てられている・・・国債費は・・実は利払いには半額しか使われていない。では、残りは何に支出されているのか。

予算項目では「債務償還費」とある・・・国債を償還できなくなると一大事だ。そうならないよう基金として積み立てているというわけだ。これが「減債制度」と呼ばれるものである・・・

普通、莫大な借金があるのに、さらに借金して積立をする馬鹿はいない。積立できる余裕があるなら、そのおカネは借金返済に充てるのが、普通の人の感覚だ。そのほうが余計な金利を払わなくて済むので当然だ。

国のレベルでも一緒で、だから普通の国には減債制度はない』

まず最初に実現すべきは効率的な政府の実現です。

そのうえで大きな政府(手厚い社会保障)を望むのか、それとも小さい政府(社会保障は手厚くないが税負担が軽い)を望むのか――、これを国民が選択することが必要になってきます。

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2011年11月20日 (日)

逆境下の資産運用指南

『逆境下の資産運用指南』と題する文章が本日の神奈川新聞に掲載されました(下記)。

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(上の画像をクリックすると約4倍に拡大表示され読めるようになります)

これは拙著『マネー大激震』の書評です。

この本の76頁に『日本株に投資してきた投資家は過去25年間、損してきた』と題する表(下記)があります。

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つまるところこの本では不用意にインデックス投資などはせずに、パフォーマンスの悪い株には断捨利を実施せよと主張しました。

先週末の日経平均は 8,374円。この本の発売日(今年7月26日)の日経平均は 10,097円でしたので、本書を買って断捨利をされた方は、今では「振り返ってみて良かった」と思われていると思います。

神奈川新聞の書評も、あるいは10月27日にご紹介した日刊ゲンダイの書評(『こちら』)も

「クロをシロと言い切り、癒着や談合、なれ合いで大きくなってきた既得権型の日本企業株へ投資することに警鐘を鳴らしている」

ことを評してくれています。

繰り返しになりますが、オリンパスでは高山社長も菊川前社長も『過去の買収は適切に実施し、不正行為は一切ない』と断言してきました。

11月7日に週刊朝日が損失隠しを報じ8日に会社が謝罪会見を行うまで、ブルームバーグ(10月17日)、フィナンシャルタイムス、ウォールストリート・ジャーナルなどの海外メディアが何を報じようと一貫してクロをシロと言い張ってきたのです。

10月17日にブルームバーグが疑惑についてかなり詳細な記事を報じましたが、この時点でこの海外メディアの報道を信じてオリンパス株を売った人は1,555円で売却できました。

逆に経営陣のクロをシロとする発言を信じてしまった人は先週末は625円でしたので、随分と損をしてしまったことになります。

過去にもたとえば1999年のプリンストン債事件がありました。

このときは、結果的には紙くず同然となった損失先送り商品であるプリンストン債に対して、数十社の日本企業(ヤクルト、アルプス電気など)が総計1000億円を超える資金を投入していました。

投資家は自分の身は自分で守らないと身ぐるみ剥がれてしまうことにもなりかねません。

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老人ホームの選び方(その2)

日経ラジオで放送している『集まれ!ほっとエイジ』。昨日(第8回目)は、「介護付き老人ホームの選び方(その2)」。相当具体的なところを突っ込んで話していますので参考になると思います。

ポッドキャストで随時聴くことができます。『こちら(日経ラジオ)』のサイトをクリックします。そうすると下記ボタンが出てきますので、「聴く」を押してください。

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iTunes でも聞けます(無料です)。『こちら』です。

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2011年11月19日 (土)

監査法人と証券会社(投資銀行)

昨日のブログ記事に関して頂いたコメントです。

『オリンパス株について、ゴールドマン・サックス証券が10月12日付で投資判断を「中立」から「買い」(コンビクションリストに採用)、目標株価を2,400円を3,800円に引き上げ、13日に大量に空売り、14日には英国人社長が解任され、株価が急落。
ゴールドマン・サックスが目標株価を大幅に上げた翌日に大量の空売り、これは違法ではないのでしょうか?

オリンパスが上場廃止になって一番損するのは個人投資家ですから、一個人投資家として平等な投資環境を望みます (by km)』

私は法律家ではないので専門的なところは分からないのですが、以下のように km さんのコメントに回答しました。

『ゴールドマンはリーマンショック時も、サブプライム証券化商品を顧客に勧め続け、一方で、自己勘定取引ではこれを空売り(ショート・ポジション)し、米国では大きな批判を浴びました。

今回の件は法律的には、ゴールドマンが大量に空売りをすることを決めたうえで、目標株価引き上げを実行したと、当局が論証できるかがポイントだと思いますが、ゴールドマンとしてはプロップ部門と株式調査部門との間では情報の行き来がなかったなどと主張して逃げるんでしょうね、おそらく。

投資家として出来ることは、この種のことを行う投資銀行が掲げる目標株価などの調査結果を簡単には信じないということだと思います。

同じように欧米の一部投資家はオリンパスの監査法人(これは日本航空が破綻した時の監査法人でもあるのですが・・)の監査結果については「これからは疑いの目を持ってみる」と語っていました』

オリンパスの件では日本のマスコミや当局の動きが欧米に比べ遅れるなか、はたしてどこまでの真相解明が今後なされていくのか、よく分かりません。

この種のことが行われると結局傷つく(損をしてしまう)のは、証券会社に目標株価を伝えられ、監査法人の監査報告書を信じてしまう個人投資家です。

オリンパスではホリエモン事件以上の粉飾が行われていたにもかかわらず、この事件が今回ウヤムヤにされてしまっては、市場から投資家が離れていってしまうことに繋がりかねません。

ところで日本航空の破綻に関連しては昨年こんなブログ記事(『こちら』)が載りました。

『JALについては、平成21年3月期の有価証券報告書で株主に対して提示された決算は、JALの経営状態について企業存続の上で問題がないとされていたにもかかわらず、わずか7カ月後のタスクフォースのデューデリジェンスではJALは5500億円(資本不足3000億円、2500億円の実質債務超過)の債務超過であるという驚くべき経営状態となってしまった現実があります。

平成21年9月の中間決算においても、純損失が1312億円を計上していますが、債務超過を示唆する記載もありません。

株主に提示された財務諸表では、そのような破綻寸前の状態にあることはまったく見えなかったにもかかわらず、JALはある日突然、実質破たんしているのですよと宣告されました。

果して21年3月の有価証券報告書が正しいのか、それとも21年10月の巨額の債務超過の方が事実なのか。・・・

(中略)

・・・JAL経営陣は「存続性の疑義」を株主にも説明しておりませんし、新日本監査法人はそれに対して適正意見を付しています。

そうであったにもかかわらず、いつの間にか密室で創作されたのではと疑いたくなるような巨額の債務超過が既成事実化して、「株主責任」という話で、我々株主のみがすべてを失うことが正当化されたのです』

『岩崎芳太郎氏のブログ』より;【注】たまたま苗字が同じ「岩崎」ですが、同氏と私との間には何の関係もありません)

昨年11月30日。東京地裁が日航の更生計画を認可したその日に、再建中の日本航空は、会計監査人をそれまで監査し続けていた新日本監査法人からあずさ監査法人に切り替えました。

このときこの変更については新日本は「過去の経営監視の甘さを問われた」と報道されました(『こちら』)。

今回のオリンパスでは、2009年あずさ監査法人がオリンパスに対して「不正がある」と指摘、その直後にオリンパスはあずさ監査法人を解約。2010年3月期以降は新日本監査法人が監査を行っています(『こちら』)。

今回、新日本が行ってきた監査の監査報告書はオリンパスの有価証券報告書で見ることができます。

たとえば今年の6月29日付のものは、『こちら』をクリックして147/152頁を見ます。

新日本は、オリンパスの財務諸表は『すべての重要な点において適正に表示しているものと認める』と断定しています。

私はオリンパスが今年10月19日『一連の報道に対する当社の見解について』と題するプレスリリースを発表したのを受け、同社の有価証券報告書を読み、その日のうちにブログの記事にしました(『こちら』)。

監査法人がどうしてこれを『すべての重要な点において適正に表示しているものと認める』と断定できたのか、いまもって不可解です。

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アリ

“He who is not courageous enough to take risks will accomplish nothing in life.” - Muhammad Ali

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2011年11月18日 (金)

社外取締役

欧米の投資家の人たちとお付き合いして10数年になります。

これまでに彼らが日本市場や日本企業に大きな関心を寄せた案件が3つあります。

(1)リップルウッドによる日本長期信用銀行の買収

欧米の投資家の感想:「リップルウッドは日本国政府を相手にずいぶんと旨い商売をしたらしい。うちも破綻した日本の銀行を買いにいこう」(→その後ウィルバー・ロスなどのファンドが続々と日本にやってくることに繋がった)

(2)ブルドックソース

欧米の投資家の感想:「日本ではロジックが通じないらしい。スティールによる買収に反対したブルドックの株主は結果として大損してしまった」(注:拙著「M&A新世紀」94頁参照)。

(3)オリンパス

欧米の投資家の感想:「日本ではコーポレイト・ガバナンスが機能していない。日本企業の財務諸表は公認会計士が監査しているからといって無条件で信用すると酷い目にあう」

昨日の日経新聞では西村あさひ法律事務所の太田洋弁護士がオリンパス事件に関連して社外取締役について発言していました。

(太田弁護士とは以前、テレビ東京『NEWS FINE』に一緒に出演したことがあります)。

太田弁護士の言うように本来はコーポレイト・ガバナンスの機能を強化する目的でもうけられているはずの社外取締役。

オリンパスの有価証券報告書を見てみます(→『こちら』の42頁)。

3人の方が社外取締役になられていました。

1人は順天堂大学教授(がん治療センター長などを歴任)の方。

もう1人は、日本経済新聞社入社後、日経の専務取締役を経てテレビ愛知社長になられた方。

3人目の方の経歴は、昭和49年野村證券入社、昭和63年パリバ証券債券部長、平成13年クレディ・スイス証券、平成16年アルティマ・パートナーズ(現アングラム)、平成17年アイ・ティー・エックス社外監査役、平成20年オリンパス社外取締役。

ところでオリンパスに関してはマスコミがいろいろ記事にし始めましたが、そもそも最初に書いたFACTAを別にすれば、これまでのところ、週刊東洋経済(11/19号)が一番詳しく、網羅的に書いています。

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まだ駅の売店などで売っていますので、ぜひ一読されることをお勧めします(アマゾンは『こちら』)。

FACTAの方は月刊なのですが、12月号のFACTAオンラインは本日夕刻に解禁されるとのこと(『こちら』)。

この問題をウヤムヤにすれば、日本市場は益々地盤沈下します。

東京地検特捜部の奮起を期待します。

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2011年11月16日 (水)

出版と株価

2002年1月。今からほぼ10年前。以下は 『スティーブ・ジョブズⅡ』172頁からの引用。

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『当時、ソニーのCEOを務めていた出井伸之がレッドへリング誌の編集者、トニー・パーキンスに次のように説明している。

「スティーブという男には、ご存じのように、自分の思惑というものがあります。

天才かもしれませんが、なんでもオープンにしてくれるわけではありません。(ソニーのような)大企業としては、付き合いにくい相手なのです・・・悪夢と言ってもいいですね」』

(注:カッコ内は岩崎付記)

このときのアップルの時価総額は、7,000億円。

一方、ソニーの時価総額は、6兆4,000億円。

なるほどソニーの方が9倍も大きな株主価値を誇っていました。

出井さんが「(ソニーのような)大企業としては、(アップルは)付き合いにくい相手」と評した背景にはこうした状況があったのでしょう。

こうして約10年前ソニーは音楽配信に関しアップルなどとの協議を取りやめ、スティーブ・ジョブズは独力で音楽配信を開拓せざるをえなくなりました。

そして約10年後の現在。

アップルの時価総額は、27.1兆円(当時の39倍)。一方のソニーは1.4兆円(当時の5分の1)。

今やアップルはソニーの19倍もの株主価値を持つ企業になりました。

* * * * *

昨日出版社の編集長の方が来社、『スティーブ・ジョブズ I』『スティーブ・ジョブズⅡ』に話が及びました。

「IとIIですでに100万部突破したらしいですよ」と編集長。日本だけの数字です(『こちら』)。村上春樹の「1Q84」(BOOK1、2)を超える記録だとか・・。

* * * * *

『スティーブ・ジョブズ I、II』の表紙の写真は世界共通ですが、日本語の文字の大きさ、形、配列、帯などやはり装幀が重要な役割を担います。

さきほどの編集長の話によると、「スティーブ・ジョブズ I、IIの装幀者と岩崎さんの『M&A新世紀』の装幀者は同じ方なんですよ」とのこと。

調べたら装幀はどちらも重原隆さんでした。

* * * * *

ところで先週ヨーロッパに行った際の話。

本屋を覘くとどこでも『スティーブ・ジョブズ I、II』が書店の入り口に平積みされていました。

ぱらぱらと頁を捲って気が付いたことですが、英語版の方がジョブズのプライベートな写真の点数が日本語版よりもずっと多かったですね。(値段は日本語版の方がずっと高いのですが・・)

* * * * *

もう1点。

この本は世界14言語で10月24日同時発売となりました。

発売日10月24日のアップルの株価は405ドル。以降ずっと下落基調で11月14日は379ドル。

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ジョブズ逝去のニュースでもアップルの株価は下落しなかったのですが、(関係あるかどうか分かりませんが)本の発売とともに株価はじりじりと下落。

たしかに本を読むとジョブズあってのアップルであったことが改めて実感されます。これを読んでアップルの株を売却した個人投資家がいたとしても不思議ではありません。

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2011年11月15日 (火)

老人ホームの選び方

10月1日から毎週土曜日、日経ラジオで放送している『集まれ!ほっとエイジ』

先週土曜日(11月12日)で第7回目を迎えました。

先週土曜日のテーマは、「介護付き老人ホームの選び方」。

このブログを読んでいる方にとってみれば、この問題は「まだまだ先のこと」。よって関心無いという方が多いかもしれません。

しかしそれでは「親御さんたちの世代」は、というと場合によっては体の自由がきかなくなってきたというケースもあるかもしれません。

私は『定年後 年金前』という本を書くにあたり数多くの方々にインタビュー(取材)しましたが、40~60代世代の多くの方が次のように話していたのが印象的でした。

「体の自由がきかなくなってきた親の面倒をみることにより、自分が80代になったときのイメージがくっきりとわいてきた。このことは自分自身の老後を考えるうえでもとても勉強になった」

* * * * *

番組では介護付き老人ホームの選び方について具体的な事例を交えながら丁寧に説明しました。

「まだまだ先のこと」と思っておられる若い方もいずれは直面する問題ですので、知っておいて損はないはず。

聞き逃された方は今からでもポッドキャストで聴くことができます(15分間です)。

『こちら(日経ラジオ)』のサイトをクリックすると出てくる下記ボタンの「聴く」を押してください。(下記ボタンをいきなり押してもリンクされていません。必ず『こちら』をまずクリックしてください)

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iTunes でも聞けます(無料です)。『こちら』です。

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2011年11月13日 (日)

2009年の第三者委員会

先週1週間ほど欧州に行っていました。

イタリア首相の辞任を初め激動の1週間だったのですが、この辺については追々このブログでも触れていきたいと思います。

ところで欧州でもオリンパス問題が現地マスコミで取り上げられていました。

朝日新聞や中日新聞がすでに報じていますが、オリンパスは今を遡ること2年半前、2009年にも第三者委員会(今回とは別メンバー)に買収に関する意見を求めていました(『こちら』)。

これに応えて、弁護士、公認会計士、元大学教授の3名の方々が連名で、2009年5月17日付にて、オリンパスの監査役会宛てに『報告書』と題する文書を提出。

一連の企業買収については「違法もしくは不正があったとまで評価できるほどの事情はない」と結論づけたとのことです(『こちら』)。

何度かこのブログでも書いていますが、2100億円の買収を助言し、666億円にも上る手数料をアドバイザーが取ることはあり得ません。

この辺はM&Aの教科書を見ればどの本にも書いてあることであり、実際に実務を経験している人に確認するなり、あるいはネットで調べても簡単にわかることです。

それをこれだけ高名な肩書を持つ3名の識者の方々が「違法もしくは不正があったとまで評価できるほどの事情はない」と結論づけたとは、いったいどういうことなのでしょうか・・。

正直腑に落ちません。

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2011年11月 9日 (水)

伝記

『リード(注:ジョブズの長男)は、4人1組で争うローカルテレビのクイズ番組に、高校の同級生と参加したことがある・・・・

まず、大人になったらなにになりたいかと司会者がたずねる。

「がんの研究者です」

がリードの答えだった。』

* * * * *

(ジョブズの幼年期)『(小学校)4年生が終わるころ、ヒル先生がジョブズに知能検査を受けさせたところ、高校2年生レベルの成績だった。

この結果、ジョブズの知能が並はずれていると学校側も認め、4年生が終わったら7年生へと2年飛び級したらどうかと驚くような提案をしてきた・・・

ジョブズはいじめられることが多く、7年生の半ば、両親に最後通告をつきつける。

「もっといい学校に行かせてくれって頼んだ」

そのためにはお金がかかるが、そのころジョブズ家はかつかつの生活をしていた。しかし、ジョブズの要求をけるという選択肢はなかった。

「難しいって言われたけれど、だったらもう学校に行かないって宣言したんだ。そうしたら、どこがいいかいろいろと調べ、2万1000ドルもお金をかき集めて、もっといい地域に家を買ってくれたよ」』

* * * * *

(ジョブズの発言)『IBMやマイクロソフトのような会社が下り坂に入ったのはなぜか、僕なりに思う理由がある。いい仕事をした会社がイノベーションを生み出し、ある分野で独占かそれに近い状態になると、製品の質の重要性が下がってしまう。

そのかわり重く用いられるようになるのが、“すごい営業”だ。売り上げメーターの針を動かせるのが製品エンジニアやデザイナーではなく、営業になるからだ。

その結果、営業畑の人が会社を動かすようになる。

IBMのジョン・エーカーズは頭が良くて口がうまい一流の営業マンだけど、製品についてはなにも知らない。

同じことがゼロックスにも起きた・・・

・・・

・・・スタートアップを興してどこかに売るか株式を公開し、お金を儲けて次に行く ― そんなことをしたいと考えている連中が自らを「アントレプレナー」と呼んでいるのは、聞くだけで吐き気がする。

連中は、本物の会社を作るために必要なことをしようとしないんだ・・・

1世代あるいは2世代あとであっても、意義のある会社を作るんだ。それこそウォルト・ディズニーがしたことだし、ヒューレットとパッカードがしたこと、インテルの人々がしたことだ・・・

・・・

・・・僕はまわりに厳しくあたった。あそこまで厳しくなくてもよかったんじゃないかとも思う。

社員をひとりクビにした日、6歳のリードが家に帰ってきたときに

「今日、失業したんだと家族や小さな息子に話さなきゃいけないなんて、彼はどういう思いをするんだろう」

って考えてしまった。

つらかったよ。でも、誰かがやらなきゃいけないんだ。チームをすばらしい状態に保つのは僕の仕事だとずっと思ってきた。僕がやらなきゃ誰もやらないからだ』

* * * * *

この伝記(『スティーブ・ジョブズ I』『スティーブ・ジョブズⅡ』)が幅広く読まれるのは、等身大のジョブズを描いているからのように思えます。

そこには悩み苦しむジョブズがおり、家族の愛があり、生と死の物語があります。

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2011年11月 6日 (日)

老人ホームはいったい幾らかかると見積もればよいか

日経ラジオで毎週土曜日に放送している『集まれ!ほっとエイジ』 も昨日で第6回目になりました。

これから先も毎週土曜日、12月24日(土)のクリスマスイブも、31日(土)の大みそかにもお届けします(本当です!)

ご期待ください。

さて昨晩のテーマは、「老人ホームはいったい幾らかかると見積もればよいか」。

前回(10月29日放送、第5回)は「老後はほんとうは幾ら必要か」を試算してみました。

このとき敢えて計算に入れなかったのが、介護付き老人ホームのコスト。

「老人ホームになんか入りたくない、ある程度年を取ったらポックリ死にたい」

そう言う人が多いのですが、年を取ってくると、足腰が自由に効かない、介護が必要だという人が増えてくるのも現実です。

はたして老人ホームのコストは幾らと見積もればいいのでしょうか。

入居一時金の額は?

月額利用料は?

そもそも入居一時金の「償却」とは?

「初期償却」とは?

番組ではこういった点について出来るだけ丁寧に説明しました。

若い方も知っておいて損はないと思います(たった15分間です)。

聞き逃された方は今からでもポッドキャストで聴くことができます。

こちら(日経ラジオ)のサイトをクリックすると出てくる下記ボタンの「聴く」を押してください。(下記ボタンをいきなり押してもリンクされていません。必ず『こちら』をまずクリックしてください)

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iTunes でも聞けます(無料です)。『こちら』です。

なお「こういったテーマを取り上げてほしい」といった番組に対するご要望がありましたら、お聞かせください。

このブログにコメント頂いても結構ですし、ラジオNIKKEIへのコメントも歓迎です。 iTunes にもコメント欄があります。

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2011年11月 5日 (土)

コダック

『米写真用品大手のイーストマン・コダックは3日、特許ポートフォリオの売却で利益を得るか、社債発行により新たな資金を調達できなければ、向こう1年事業を継続することが困難になる可能性があることを明らかにした』 (ウォールストリート・ジャーナル紙、『こちら』)。

(Eastman Kodak Co. said Thursday that it will have trouble staying in business over the next year if it can't squeeze more money out of its patent portfolio or raise new funds by selling debt.

The warning came in a dense filing with the Securities and Exchange Commission as the imaging company reported that its cash supply dwindled again in the third quarter, even as it drew $160 million from its credit line. )

一時は90ドルを超えていた株価が今は1ドル。

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かつての名門会社も時代の変化(フィルム→デジカメ)に対応できなければ市場からの撤退を余儀なくされることもあり得る、いかに名門であっても油断はできないということなのでしょう。

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創業者の言葉(タイヤの会社)

ファイヤーストーン・タイヤの創業者は、Harvey Samuel Firestone(1868-1938)。

         Harvey_samuel_firestone  

彼はこんな言葉を残しています。

"You get the best out of others when you give the best of yourself."

一方、後にファイヤーストーンを買収することになったブリヂストン。

創業者、石橋正二郎氏はこんな言葉を残しています。

「一生涯の目的を達成せんとするものは、いかなる固執も、障害も、目前の名利も介さず、忍ぶ、粘る、堅忍持久、終始一貫、最後の目的に突進することである」

        Si_2

石橋さんがプリンス自動車工業の育ての親であることは初めて知りました(『こちら』)。

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2011年11月 4日 (金)

新しいウェブサイト

私ごとで恐縮ですが、今般ウェブサイト(ホームページ)を新しくしました。

宜しかったらご覧になってみてください(→『こちら』です)。

Hi_2

なおPCにはキャッシュという機能が働いています。これはサイトの表示速度を早くするため、一度見たサイトを記憶する機能です(→『こちら』)。

このため、ごく稀にですが、古いサイトが重複して画面に現れることがあります(その結果、上図画像のような表示になりません)。

その場合にはブラウザの更新ボタンを押すか、キーボードのファンクションキーF5を押してみてください。

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2011年11月 3日 (木)

円売り介入の含み損40兆円弱、ドル来秋72円で拡大も-JPモルガン

既にご覧になった方も多いと思いますが、ブルームバーグの記事です(→『こちら』)。

政府が40兆円損をした(ただし実現損ではなく含み損)ということは、国民の税金がそれだけ使われた、国民が損をしたということです。

その結果得をしたのは、政府を相手に相場をはった人、すなわち(1)ミセス・ワタナベ、(2)ヘッジファンド、(3)プロのトレーダー、(4)介入後の一時的円安局面で目一杯輸出為替予約を入れた輸出企業・・・などです。

(4)であれば納得感もありますが、それにしても40兆円、第3次補正予算案の復旧・復興対策予算規模が9兆円、消費税1%増が2.0~2.5兆円であることに鑑みれば、相当大きな国富の流出です。

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2011年11月 1日 (火)

あなたのそばにいる「ミセス・ワタナベ」

「投機的な動きには断固たる措置を取ると何度も言ってきた。

しかし残念ながら、(円相場は)日本の実体経済を何ら反映せず、

一方的に投機的な動きが続いていた」(安住財務相;10月31日、ロイター(『こちら』))。

* * * * *

「介入額は過去最高だった前回8月4日の約4兆5千億円を大幅に上回った可能性が高い」(10月31日、産経新聞(『こちら』)。

* * * * *

「外為市場でFXに参加する主婦が「ミセス・ワタナベ」と呼ばれるなど相場への影響力が高まっている。

元本である証拠金は6月末時点で9446億円に達し、現在は1兆円を突破しているとみられる。

証拠金の25倍まで取引が可能で、平均10倍と仮定すると、10兆円もの取引量となる」(10月30日、産経新聞(『こちら』)。

* * * * *

仮に今回の介入額が(一部で報道されているように)10兆円前後だったとしても、「ミセス・ワタナベ」などが活動するFX市場の取引量((注)証拠金残高から推定した、ポジションを中立にするための取引量)と同程度。

政府が本当に投機的な動きを封じ込めたいとするのであれば、外為証拠金取引(FX)市場を一時的に封鎖するとか、証拠金倍率の規制をさらに引き下げる方が効果があるのではないでしょうか。

しかし政府としてそこまでやることは考えていないらしい。

いったい「投機的な動き」とは、どこまでが青い目や黒い目のヘッジファンドで、どこまでがミセス・ワタナベなのでしょうか。

* * * * *

「実際に為替介入が行われて円安ドル高に戻った際に買っておいたドルを売って円を買えば、大もうけできる・・・

政府・日銀が円売りドル買い介入に踏み切れば、「待ってました」と大量の円買いが出され」る(介入の前日、10月30日付、産経新聞(『こちら』))。

ミセス・ワタナベのシナリオ通りに進んだ今回の介入。

いずれにせよ政府のやることは「ちぐはぐ」です。

「投機的動きも市場の動きを活性化させ、市場を厚くする」とばかり、外為証拠金取引(FX)市場がここまで大きくなるのを見守ってきた一方で、「投機筋は敵だ、製造業を守れ」と介入する。

そもそも政府は誰を相手に戦っているのか、よく分かりません。

* * * * *

『政府を相手に儲けるのが一番やりやすい』、こう豪語するミセス・ワタナベは意外とあなたの近くにいるかもしれません。(まあ、安住さんのことをオオカミ少年だと信じ切っていた人は今回は火傷したんでしょうけれど、いくらなんでも、そのような人はあまり多くないような気がします・・)。

【注】この記事を読んで自分もFXでもやってみるかと思う方がいたら、よく考えてみることをお勧めします。政府を相手に勝負できる(すなわち「読みやすい」)機会はそう頻繁には訪れません。

多くは「ミセス・ワタナベ」対「ミセス・ワタナベ」、あるいは「ミセス・ワタナベ」対「プロのトレーダー」の構図。

このゼロサム・ゲームの消耗戦を生き抜くには、相当の根性がいります。

拙著『マネー大激震』のFX取引のところをお読みになって(その結果、多くの方は『ヤッパリ止めた』と思うのではないでしょうか)、

それでも参戦したいという方は、少額の掛け金(証拠金)から入ることをお勧めします。

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