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2011年11月19日 (土)

監査法人と証券会社(投資銀行)

昨日のブログ記事に関して頂いたコメントです。

『オリンパス株について、ゴールドマン・サックス証券が10月12日付で投資判断を「中立」から「買い」(コンビクションリストに採用)、目標株価を2,400円を3,800円に引き上げ、13日に大量に空売り、14日には英国人社長が解任され、株価が急落。
ゴールドマン・サックスが目標株価を大幅に上げた翌日に大量の空売り、これは違法ではないのでしょうか?

オリンパスが上場廃止になって一番損するのは個人投資家ですから、一個人投資家として平等な投資環境を望みます (by km)』

私は法律家ではないので専門的なところは分からないのですが、以下のように km さんのコメントに回答しました。

『ゴールドマンはリーマンショック時も、サブプライム証券化商品を顧客に勧め続け、一方で、自己勘定取引ではこれを空売り(ショート・ポジション)し、米国では大きな批判を浴びました。

今回の件は法律的には、ゴールドマンが大量に空売りをすることを決めたうえで、目標株価引き上げを実行したと、当局が論証できるかがポイントだと思いますが、ゴールドマンとしてはプロップ部門と株式調査部門との間では情報の行き来がなかったなどと主張して逃げるんでしょうね、おそらく。

投資家として出来ることは、この種のことを行う投資銀行が掲げる目標株価などの調査結果を簡単には信じないということだと思います。

同じように欧米の一部投資家はオリンパスの監査法人(これは日本航空が破綻した時の監査法人でもあるのですが・・)の監査結果については「これからは疑いの目を持ってみる」と語っていました』

オリンパスの件では日本のマスコミや当局の動きが欧米に比べ遅れるなか、はたしてどこまでの真相解明が今後なされていくのか、よく分かりません。

この種のことが行われると結局傷つく(損をしてしまう)のは、証券会社に目標株価を伝えられ、監査法人の監査報告書を信じてしまう個人投資家です。

オリンパスではホリエモン事件以上の粉飾が行われていたにもかかわらず、この事件が今回ウヤムヤにされてしまっては、市場から投資家が離れていってしまうことに繋がりかねません。

ところで日本航空の破綻に関連しては昨年こんなブログ記事(『こちら』)が載りました。

『JALについては、平成21年3月期の有価証券報告書で株主に対して提示された決算は、JALの経営状態について企業存続の上で問題がないとされていたにもかかわらず、わずか7カ月後のタスクフォースのデューデリジェンスではJALは5500億円(資本不足3000億円、2500億円の実質債務超過)の債務超過であるという驚くべき経営状態となってしまった現実があります。

平成21年9月の中間決算においても、純損失が1312億円を計上していますが、債務超過を示唆する記載もありません。

株主に提示された財務諸表では、そのような破綻寸前の状態にあることはまったく見えなかったにもかかわらず、JALはある日突然、実質破たんしているのですよと宣告されました。

果して21年3月の有価証券報告書が正しいのか、それとも21年10月の巨額の債務超過の方が事実なのか。・・・

(中略)

・・・JAL経営陣は「存続性の疑義」を株主にも説明しておりませんし、新日本監査法人はそれに対して適正意見を付しています。

そうであったにもかかわらず、いつの間にか密室で創作されたのではと疑いたくなるような巨額の債務超過が既成事実化して、「株主責任」という話で、我々株主のみがすべてを失うことが正当化されたのです』

『岩崎芳太郎氏のブログ』より;【注】たまたま苗字が同じ「岩崎」ですが、同氏と私との間には何の関係もありません)

昨年11月30日。東京地裁が日航の更生計画を認可したその日に、再建中の日本航空は、会計監査人をそれまで監査し続けていた新日本監査法人からあずさ監査法人に切り替えました。

このときこの変更については新日本は「過去の経営監視の甘さを問われた」と報道されました(『こちら』)。

今回のオリンパスでは、2009年あずさ監査法人がオリンパスに対して「不正がある」と指摘、その直後にオリンパスはあずさ監査法人を解約。2010年3月期以降は新日本監査法人が監査を行っています(『こちら』)。

今回、新日本が行ってきた監査の監査報告書はオリンパスの有価証券報告書で見ることができます。

たとえば今年の6月29日付のものは、『こちら』をクリックして147/152頁を見ます。

新日本は、オリンパスの財務諸表は『すべての重要な点において適正に表示しているものと認める』と断定しています。

私はオリンパスが今年10月19日『一連の報道に対する当社の見解について』と題するプレスリリースを発表したのを受け、同社の有価証券報告書を読み、その日のうちにブログの記事にしました(『こちら』)。

監査法人がどうしてこれを『すべての重要な点において適正に表示しているものと認める』と断定できたのか、いまもって不可解です。

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コメント

ありがとうございました、勉強になりました。

投稿: km | 2011年11月20日 (日) 16時36分

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