社外取締役
欧米の投資家の人たちとお付き合いして10数年になります。
これまでに彼らが日本市場や日本企業に大きな関心を寄せた案件が3つあります。
(1)リップルウッドによる日本長期信用銀行の買収
欧米の投資家の感想:「リップルウッドは日本国政府を相手にずいぶんと旨い商売をしたらしい。うちも破綻した日本の銀行を買いにいこう」(→その後ウィルバー・ロスなどのファンドが続々と日本にやってくることに繋がった)
(2)ブルドックソース
欧米の投資家の感想:「日本ではロジックが通じないらしい。スティールによる買収に反対したブルドックの株主は結果として大損してしまった」(注:拙著「M&A新世紀」94頁参照)。
(3)オリンパス
欧米の投資家の感想:「日本ではコーポレイト・ガバナンスが機能していない。日本企業の財務諸表は公認会計士が監査しているからといって無条件で信用すると酷い目にあう」
昨日の日経新聞では西村あさひ法律事務所の太田洋弁護士がオリンパス事件に関連して社外取締役について発言していました。
(太田弁護士とは以前、テレビ東京『NEWS FINE』に一緒に出演したことがあります)。
太田弁護士の言うように本来はコーポレイト・ガバナンスの機能を強化する目的でもうけられているはずの社外取締役。
オリンパスの有価証券報告書を見てみます(→『こちら』の42頁)。
3人の方が社外取締役になられていました。
1人は順天堂大学教授(がん治療センター長などを歴任)の方。
もう1人は、日本経済新聞社入社後、日経の専務取締役を経てテレビ愛知社長になられた方。
3人目の方の経歴は、昭和49年野村證券入社、昭和63年パリバ証券債券部長、平成13年クレディ・スイス証券、平成16年アルティマ・パートナーズ(現アングラム)、平成17年アイ・ティー・エックス社外監査役、平成20年オリンパス社外取締役。
ところでオリンパスに関してはマスコミがいろいろ記事にし始めましたが、そもそも最初に書いたFACTAを別にすれば、これまでのところ、週刊東洋経済(11/19号)が一番詳しく、網羅的に書いています。
まだ駅の売店などで売っていますので、ぜひ一読されることをお勧めします(アマゾンは『こちら』)。
FACTAの方は月刊なのですが、12月号のFACTAオンラインは本日夕刻に解禁されるとのこと(『こちら』)。
この問題をウヤムヤにすれば、日本市場は益々地盤沈下します。
東京地検特捜部の奮起を期待します。
| 固定リンク
コメント
はじめまして。
オリンパス株について、ゴールドマン・サックス証券が10月12日付で投資判断を「中立」から「買い」(コンビクションリストに採用)、目標株価を2,400円を3,800円に引き上げ、13日に大量に空売り、14日には英国人社長が解任され、株価が急落。
ゴールドマン・サックスが目標株価を大幅に上げた翌日に大量の空売り、これは違法ではないのでしょうか?
オリンパスが上場廃止になって一番損するのは個人投資家ですから、一個人投資家として平等な投資環境を望みます。
投稿: km | 2011年11月19日 (土) 12時02分
ゴールドマンはリーマンショック時も、サブプライム証券化商品を顧客に勧め続け、一方で、自己勘定取引ではこれを空売り(ショート・ポジション)し、米国では大きな批判を浴びました。
今回の件は法律的には、ゴールドマンが大量に空売りをすることを決めたうえで、目標株価引き上げを実行したと、当局が論証できるかがポイントだと思いますが、ゴールドマンとしてはプロップ部門と株式調査部門との間では情報の行き来がなかったなどと主張して逃げるんでしょうね、おそらく。
投資家として出来ることは、この種のことを行う投資銀行が掲げる目標株価などの調査結果を簡単には信じないということだと思います。
同じように欧米の一部投資家はオリンパスの監査法人(これは日本航空が破綻した時の監査法人でもあるのですが・・)の監査結果については「これからは疑いの目を持ってみる」と語っていました。
投稿: 岩崎 | 2011年11月19日 (土) 19時54分