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2011年11月23日 (水)

消費税減税

このブログ記事のタイトル「消費税減税」は、「増税」の間違いではありません。

今年の7月に消費税を「減税」した世界第9位の経済大国(といっても「国」ではありませんが)、カリフォルニア州の話です。

まず米国では国としての消費税はなく、代わりに州レベルなどで売上税が課せられます(売上税が全くない州もあります(『こちら』))。

米国カリフォルニア州。

サンフランシスコ、ロサンゼルスなどを擁するこの州は年間1.9兆ドルのGDPを稼ぎ出しています(2010年)。これは米国全体の13%にあたります。

もしカリフォルニア州が1つの国であるなら、その経済規模は世界9位。

8位のイタリアに次ぐレベルに位置します(『こちら』)。

さてカリフォルニア州の消費税(売上税)「減税」とはどういうことでしょう。

もともとカリフォルニア州では消費税が7.25%でした(State Rate 6.25% プラス Local Rate 1.00%)。

これが2009年4月1日から2011年6月30日までの期間限定で1%増税の8.25%になっていたのです。

そしてこれをこのまま延長するか、あるいはもとに戻すかで議論になっていたのですが、結局は当初予定通り今年7月1日からもとに戻すこととなり、1%の減税、結果 7.25%の消費税となりました(『こちら』)。

実際には州に加えて市や郡の税金も課せられることがあるため、たとえばロスアンゼルス市の場合はというと、消費税(売上税)はトータルで今年の6月まで 9.75%。

それが今年の7月から1%下がって 8.75% となりました。(ちなみにニューヨーク州ニューヨーク市の消費税は 8.875%)。

もちろん消費税「減税」になったから、「それで安泰、国民生活はよくなった」かというと、そんな安直なことではありません。

カリフォルニア州の場合、裁判所が月に1回閉鎖されるとか、市役所職員は週1日は自宅待機させられるとか、州や市による行政サービスはレベルの低下を余儀なくされています(『こちら』)。

ただ日本では消費税増税のニュースばかりが取り上げられ、なかなかこういった「減税」のニュースが紹介されないのはどういったことなのかと考えさせられてしまいます。

ヨーロッパの国を見てみましょう。

消費税(付加価値税)が一番高いのが破綻したアイスランド(25.5%)。

ギリシャ23%、ポルトガル23%、イタリア21%・・。

消費税の高いこれらの国はやや問題児とされている国々です。

消費税が高くて、政府が大きくなり、非効率となったのか、あるいは政府が非効率で財政危機となり消費税を高くせざるをえなくなったのか、鶏が先か卵が先かのような議論でありますが、イタリアの場合、財政の危機的状況を踏まえ、今年の9月17日から消費税が20%から21%へと増加しました。

一方、ユーロ圏の優等生ドイツは19%。為替が強いスイスは 8%です。

2週間前。私はポルトガルにいました。

高速道路網は整備されており、首都リスボンを少し離れると立派な高速道路にクルマはまばらという日本の様な状況が続きます。

高速道路がデコボコしたニューヨーク周辺や道路標識が極端にに少ないカナダ西部と好対照です。

さて消費税増税について竹中平蔵さんがかつて次のように話していました。

「増税をして経済がよくなるのはただ一つのケースだけだ。それは民間よりも政府が賢い場合だ」(『こちら』)。

まぁ、財務省的には財務省のキャリアの方が民間より賢いと思っているからこそ、消費税増税に向かって邁進しているんでしょうが・・。

1997年(平成9年)4月1日、橋本内閣のもとで消費税が3%から5%に引き上げられました。

その前後で税収はどう変化したかをグラフ化したのが下図です(オリジナルのデータは財務省の『こちら』の頁の第4表。なお下図は図の上をクリックすれば大きくなります)。

Photo_2

すなわち消費税増税前の租税収入レベルは50兆円(平成7~8年度)。増税後の平成9年度、一時的に税収は 52兆円になりますが、この1年だけ。

景気悪化を招き、平成11年度には税収は46兆円、平成14~15年度には42兆円レベルにまで落ち込みます。(ただし上のグラフで明らかになっている税収減には景気悪化の影響だけではなく平成10~11年の法人税減税、平成11年の所得税減税の影響も含みます)。

なお日本のGDP成長率推移は下記のとおり(オリジナルは『こちら』から取りました。なお下図は図の上をクリックすれば大きくなります)。

Gdp

経済は生き物です。

消費税を上げれば、消費者はマンションや自動車、ピアノや家電製品の購入を控えるようになります。

消費税を上げた結果、日本の経済を悪化させてしまうことに繋がらないか、過去の橋本増税の検証を含め、多面的な検討が必要になります。

以下は高橋洋一『財務省が隠す650兆円の国民資産』からの引用(151~152頁)。

『一般会計の歳出に大きな比重を占める項目に「国債費」がある。2011年度予算では約22兆円がこれに充てられている・・・国債費は・・実は利払いには半額しか使われていない。では、残りは何に支出されているのか。

予算項目では「債務償還費」とある・・・国債を償還できなくなると一大事だ。そうならないよう基金として積み立てているというわけだ。これが「減債制度」と呼ばれるものである・・・

普通、莫大な借金があるのに、さらに借金して積立をする馬鹿はいない。積立できる余裕があるなら、そのおカネは借金返済に充てるのが、普通の人の感覚だ。そのほうが余計な金利を払わなくて済むので当然だ。

国のレベルでも一緒で、だから普通の国には減債制度はない』

まず最初に実現すべきは効率的な政府の実現です。

そのうえで大きな政府(手厚い社会保障)を望むのか、それとも小さい政府(社会保障は手厚くないが税負担が軽い)を望むのか――、これを国民が選択することが必要になってきます。

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コメント

はじめまして

私は、政治とは何のためにあるのか、また政府の真の目的はなんのためにあるのかを考えると、おのずとして答えが出て来ると思います。

今の、民主党政権、自民党も同類でありますが、消費税増税により、国民の懐から金を巻き上げて財政を健全化しようという論法であります。
私は、今の政治のスタンスは根本的に間違っていると思います。

私は、国民を豊かに、幸せにするには何をすべきであるか、そのためには国民から今頂いている血税をどのように活用し、国、国民を豊かにするかというお金の活かし方を考えなければならないのが、政府、政治家の仕事であると思います。
デフレの解消策もなく、増税をすることは、国民の所得を減らし、貧乏にさせる政策であり、国を潰す政策といっても過言ではないと考えます。

私は、一般企業、主に欧米の会社のサクセス(社員も)のお手伝いをしている仕事柄、今、日本政府がやっている方策は、私のコンサルティングスタイルとは全く正反対であると感じています。赤字だからもっと金をくれ。そんなバカなことはできません。

一般の会社は、赤字だから値上げをすると言う事は出来ません。いや、もっと価値の高い商品やサービスを提供しなければなりません。また、社員の賃金も社会一般より低い給料にはできません。いや、もっと給料を上げてやりたいのです。
一般の会社は社会に貢献し、満足いただける、他社よりも優れた製品、サービスを提供しなければ存在の意味もありません。社員もこの会社に働いて幸せといえる会社でないと存在の意味はないのです。そしてそのため、社員は会社が社会に貢献出る製品、サービスを提供し、社会に歓迎され、そのお礼の御代を頂くのです。
その御代を次への有効な投資、満足できる社員給料、投資家、社会への還元と合理的に分配するのです。そして正のスパイラルを作り社員はやる気にし、付加価値の高い仕事をし、価値の高い製品を世に生み出し、社会から会社全体の信頼を高めていくのです。
いうまでもなくの会社の成功には、システム(哲学も含む)、テクノロジー、人の三つの要素が重要になります。

今の、日本を経営している総理大臣の言動を見ていると、この国を破産させるために、経営しているとしか思えません。

投稿: 土井喜久 | 2012年1月27日 (金) 18時28分

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