あなたのそばにいる「ミセス・ワタナベ」
「投機的な動きには断固たる措置を取ると何度も言ってきた。
しかし残念ながら、(円相場は)日本の実体経済を何ら反映せず、
一方的に投機的な動きが続いていた」(安住財務相;10月31日、ロイター(『こちら』))。
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「介入額は過去最高だった前回8月4日の約4兆5千億円を大幅に上回った可能性が高い」(10月31日、産経新聞(『こちら』)。
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「外為市場でFXに参加する主婦が「ミセス・ワタナベ」と呼ばれるなど相場への影響力が高まっている。
元本である証拠金は6月末時点で9446億円に達し、現在は1兆円を突破しているとみられる。
証拠金の25倍まで取引が可能で、平均10倍と仮定すると、10兆円もの取引量となる」(10月30日、産経新聞(『こちら』)。
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仮に今回の介入額が(一部で報道されているように)10兆円前後だったとしても、「ミセス・ワタナベ」などが活動するFX市場の取引量((注)証拠金残高から推定した、ポジションを中立にするための取引量)と同程度。
政府が本当に投機的な動きを封じ込めたいとするのであれば、外為証拠金取引(FX)市場を一時的に封鎖するとか、証拠金倍率の規制をさらに引き下げる方が効果があるのではないでしょうか。
しかし政府としてそこまでやることは考えていないらしい。
いったい「投機的な動き」とは、どこまでが青い目や黒い目のヘッジファンドで、どこまでがミセス・ワタナベなのでしょうか。
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「実際に為替介入が行われて円安ドル高に戻った際に買っておいたドルを売って円を買えば、大もうけできる・・・
政府・日銀が円売りドル買い介入に踏み切れば、「待ってました」と大量の円買いが出され」る(介入の前日、10月30日付、産経新聞(『こちら』))。
ミセス・ワタナベのシナリオ通りに進んだ今回の介入。
いずれにせよ政府のやることは「ちぐはぐ」です。
「投機的動きも市場の動きを活性化させ、市場を厚くする」とばかり、外為証拠金取引(FX)市場がここまで大きくなるのを見守ってきた一方で、「投機筋は敵だ、製造業を守れ」と介入する。
そもそも政府は誰を相手に戦っているのか、よく分かりません。
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『政府を相手に儲けるのが一番やりやすい』、こう豪語するミセス・ワタナベは意外とあなたの近くにいるかもしれません。(まあ、安住さんのことをオオカミ少年だと信じ切っていた人は今回は火傷したんでしょうけれど、いくらなんでも、そのような人はあまり多くないような気がします・・)。
【注】この記事を読んで自分もFXでもやってみるかと思う方がいたら、よく考えてみることをお勧めします。政府を相手に勝負できる(すなわち「読みやすい」)機会はそう頻繁には訪れません。
多くは「ミセス・ワタナベ」対「ミセス・ワタナベ」、あるいは「ミセス・ワタナベ」対「プロのトレーダー」の構図。
このゼロサム・ゲームの消耗戦を生き抜くには、相当の根性がいります。
拙著『マネー大激震』のFX取引のところをお読みになって(その結果、多くの方は『ヤッパリ止めた』と思うのではないでしょうか)、
それでも参戦したいという方は、少額の掛け金(証拠金)から入ることをお勧めします。
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