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2011年12月31日 (土)

大晦日のラジオ放送

日経ラジオで放送している『集まれ!ほっとエイジ』

前回の放送はクリスマスイブでした。

そして第14回は今日、大晦日の夜に放送されました。

番組ではこれまで「定年後 年金前」の空白の埋め方ということで、再雇用・再就職の状況について見てきました。

再雇用に関しては、たとえ会社が職を用意してくれても、給与がかなり下げられてしまうとか、仕事の内容やポストが極端に落ちて精神的に苦痛になるケースもあるといった、やや暗い話もありました。

それでも定年後、退職金を利用して、世間でよく言われているような「ラーメン屋さんを始める」のはお勧めできません。

定年前の現役時代に実際に飲食業に携わっていた人は別ですが、そうでない人、すなわち「客として単に利用してきただけの人」が、ラーメン屋やコーヒーショップを始めても失敗する確率がぐんと増えてしまいます。

もし皆さんが定年後、自分で独立して個人事業を始めると決めた場合には、自分が良く知っている分野での起業を心がけるべきです。

たとえば現役時代、小学校の先生だった人が定年退職後、自宅で塾を始めるとか、 あるいは不動産会社の営業マンの方が定年後、個人で営業専門の会社、といっても社員はおらずあくまでも個人事業ですが、こういった会社を作る。そして 現役時代のコネを使って、物件情報をもらって販売営業をしていくといったような起業です。

現役時代との違いは何かというと、不動産会社の営業マンを例にとると、サラリーマン時代は売れなくても給与はもらうことが出来ました。

それが、個人で起業すると、売れなければ収入がゼロになってしまいます。

さらに不動産の販売の努力をする過程で使った電話代とか電車賃などの交通費も全部個人で負担することになってしまいます。

そのかわり売れたときの収入は全部自分のものです。 リスクも高いけれどもリターンも大きい。 ある意味、ハイリスク、ハイリターンです。

定年後には再就職がいいか、あるいは個人事業を始めるのがいいか、これは我々一人一人の性格によると思います。

定年後の再就職のケースでは、若い人たち中心の職場に配属されて、みんなから煙たがられたり、 あるいは以前の部下が上司になるといったように、 精神的苦痛になるケースもあります。

しかし毎月毎月、給料日には、きちんと給料が個人の預金通帳に振り込まれます。

たとえ給料が現役時代の半分に減ってしまったとしても、毎月毎月、会社が給料を振り込んでくれる。これはすごいことです。

一方、個人事業の方は、払うべき給料の分を、自分自ら稼いでこないといけない。 今月給料が稼げないかもしれないことを不安に思い、精神的苦痛に感じるか、 あるいは、 たとえ今月はダメでも来月もしかすると300万円くらい稼げるかもしれないと思って、チャレンジしようという気になるか、この辺は、まったくもって、一人一人がどういうタイプの人間かによると思います。

起業に向いていない人が起業しても楽しくありませんし、失敗するリスクも高くなると思います。

番組ではこの辺を探っています。

大晦日の夜ということで、ラジオ放送を聞き逃された方は今からでもポッドキャストで聴くことができます。

『こちら(日経ラジオ)』のサイトをクリックすると出てくる『岩崎日出俊の生涯現役!を「聴く」』のボタンを押してください。

iTunes でも聞けます(無料です)。『こちら』です。

年末のためかポッドキャストもiTunesも、現時点ではまだアップされていませんが、しばらくするとにアップされると思います。

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2011年12月30日 (金)

イタリア と ギリシャ

下の図はWHO(世界保健機関)が発表している人口10万人当たりの自殺者数の図(詳しくは『こちら』)。

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図はクリックすると大きくなります。

赤が自殺者の多い国。

黄色がその次。

青が自殺者の少ない国。

北朝鮮などはデータが無いため白く表示されています。

各国別のデータは『こちら』です。

10万人あたり自殺者は日本の場合、男性が36.2人、女性が13.2人。

男性の方が精神的に弱いということでしょうか・・・。

日本の男性より自殺者の割合が多いのは:(いずれも男性での比較ですが)

リトアニア、ロシア、ベラルーシ、スリランカ、カザフスタン、ハンガリー、ガイアナ、ウクライナなど。

ヨーロッパはフランスが意外にも赤色で、やっぱりというか、(国際金融の世界では問題児とされている)イタリア、ギリシャが「優等生」の青色です。

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2011年12月28日 (水)

正月休みの読書

12月の忘年会。

「正月休みをどう過ごす?」といった話題も出ました。

忘年会仲間で比較的多かった答えが、読書。

ということで、最近(ここ1~2か月の間に)私が読んだ本の簡単な感想を書いてみます。特にお勧めという観点で書いていませんので、辛口の感想もあるかと思います。

『それでも、あなたは新築マンションを買いますか?』

著者の牧野さんには勉啓塾に12月講師で来てもらいました。

この本は住宅購入を考えている人にお勧め。

牧野さんの本では以前に『なぜ、町の不動産屋はつぶれないのか』を読んだことがありますが、私としては、以前の『なぜ、町の・・』よりも、こちらの『・・新築マンション・・』の方が面白かったです。

『生命保険のカラクリ』

著者の頭の良さが感じられる本です。序章として「はじめて届けた保険金」の描写から書き始めるなど心憎い演出。構成の妙。同じ物書きとして参考になりました。

しかし生命保険が良く分かっていない人には、養老保険などの用語が丁寧な解説なしにいきなり出てくるので、この本でも難しすぎると思います。

『バーゼルIIIは日本の金融機関をどう変えるか』

金融闘論の公開収録前日に当日の準備の目的で読みました。一般の人向けの本ではありません。この本を読んで、「バーゼル規制上、貸出を行うと銀行は自己資本の積み上げを要求される。だから銀行が集めた資金は民間の企業への貸出に回らず、国債購入に向かってしまうのでは・・」とふと疑問に思いました。

『ジャパン・ショック』

上記の疑問もあってこの本を読みました。著者の山崎さんも同じ疑問を持っているようです。ところで、この本の帯には『民主党の経済ブレーン』と著者が紹介されていました。

そして思い出しました。著者の主張する高速道路無料化はどうなったのでしょう?たしか著者は自民党政権時代の民主党シャドーキャビネット(影の内閣)の国土交通大臣だったのではないかと思いますが・・

『財務省が隠す650兆円の国民資産』

アマゾンの商品紹介や本書38頁にある「(福島原発事故の真犯人たちは今も)酒池肉林の世界でほくそ笑む」はやや書きすぎだと思います。

ただ650兆円とは言いませんが、すこしでも吐き出して欲しいと思います。

話は少しそれますが、28日の日経新聞で武藤さん(財務事務次官、日銀副総裁など歴任)が「消費税を16%にすれば、社会保障費を賄える」と言っていましたが、これは2015年の社会保障費40兆円のことだと思います。

2050年には65歳以上が国民の40%を超える。

その時、消費税率がいくらにならないと社会保障を賄う上で足りないのか、日経の滝田編集委員による武藤さんへのインタビュー記事がこの辺をあやふやなままにしているのが気になりました。

『資産フライト』

文章の専門家が書いただけあってひじょうに読みやすいです。

冒頭の章。空港の手荷物検査を札束を入れたまま通り抜ける人をルポライター的に追ったのが面白い・・

もっともそんなにまで苦労して円を海外に持ち出す必要があるのかと思わざるをえません。

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2011年12月26日 (月)

ハイパーインフレは襲来しない

時おり雑誌や書籍などで、ハイパーインフレが日本を襲うなどという衝撃的な記事を目にすることがあります。

歴史を紐解くと、ハイパーインフレは、敗戦後の日本や1992年のロシアのように、米、小麦粉、パン、卵といった日常生活に欠かせない食料品などの「物」が市場から消えたときに起こってきました。

1991年12月にソビエト連邦が崩壊して誕生したロシア連邦。

エリツイン大統領はショック療法と称される方法で市場経済化を急ぎました。

それまで「物」の価格は政府が決めていたのですが、翌月の1992年1月にはこれを一気に自由化。

その結果、この月だけで前「月」比 245%の価格上昇に襲われました(1992年を通してみると年率2520%のインフレ率となりました)。

社会主義から市場主義への体制変化をあまりに性急に行ったため、生活に必要な物資が消費者のもとに届かなくなってしまったのです。

スーパーや百貨店の棚からは食料品が消え去ってしまいました。

最近のハイパーインフレの事例としては、アフリカのジンバブエが有名です(『こちら』)。

かつて南ローデシアと呼ばれていたこの国は、ムガベ大統領の独裁政治のもとで失政が続き、国のGDPの67%を政府支出が占めるといったありさま。

失業率は政府公称ベースで80%、国連の推測では94%。

国民の9割以上が失業しているといった状況下では、たしかにハイパーインフレが起きても不思議ではありません。

一方の日本。

不景気で暗い世の中とはいえ、日本はまだ世界第3位の経済力を保っています。

日本の対外純資産は2010年末時点で 3.1兆ドルに上り、20年連続で世界第1位を記録しています。

この世界最大の対外純資産が生み出す所得収支はここ数年毎月1兆円前後の黒字で推移しており、この結果、日本の経常収支は大幅な黒字を維持しています。

その日本から、突然物が消えてしまうことなどあるでしょうか? 

仮に今後、超高齢社会のなかで問題が積み重なってくるとしても、ハイパーインフレがやってきたり、超円安が襲うとは考えにくいと思います。

「ハイパーインフレが来る」、「通貨の価値が著しく減る」といった噂に踊らされ、今年の4月ブラジル・レアルの預金(金利が高い)をした人は、1レアル54円をつけていたものが半年で40円となり、25%も下落してしまいました。

この辺については5月のテレビで私が警告したとおりの展開となってしまいました(『こちら』)。

* * * * *

ところで本日発売となったプレジデントに『定年後の①貯蓄、②年金、③医療介護、④再雇用、⑤日本経済』が特集されています(30~39頁)。

        President_2

上記のうち、①、②、④、⑤で私の発言が Quote されています。

興味のある方はご覧になってみてください。

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2011年12月24日 (土)

イブの夜のラジオ放送

クリスマスイブはラジオを聴いて過ごした、という方はあまり多くないかもしれません。

日経ラジオで放送している『集まれ!ほっとエイジ』

今晩(12月24日)で第13回目を迎えました。

第13回目は、『定年後の再雇用・再就職 ~「定年後 年金前」の空白の埋め方~』の第2回。

60歳以降の雇用延長制度・再雇用制度は、会社の中にいる人たちにとっては必ずしも心地よくない制度であると言われています。

その結果サラリーマン人生の最後の段階でうつ病になってしまうとか、不幸せな気分になってしまう人もいます。

これはいったいどういうことで、さらにどうしたら防げるのでしょうか。

番組ではこの辺を探っていきます。

イブの夜ということで、ラジオ放送を聞き逃された方は今からでもポッドキャストで聴くことができます。

『こちら(日経ラジオ)』のサイトをクリックすると出てくる『岩崎日出俊の生涯現役!を「聴く」』のボタンを押してください。

iTunes でも聞けます(無料です)。まだアップされていませんが、しばらくすると『こちら』にアップされます。

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2011年12月21日 (水)

きょうの番組

朝日新聞の人気コーナーに「きょうの番組」というページ(本日の場合は35面)があります。

最終ページに載っているテレビ番組表のなかで、今日とくに注目すべき番組について紹介しています。

きょうはとくに「家政婦のミタ」の最終回。

さてどんなことになるのか、三田の「豹変とは・・?」と思って、今朝このページをご覧になった方も多いかもしれません。

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その同じページで紹介されていたのが、毎週土曜日にお届けしているラジオ番組「集まれ!ほっとエイジ」です。

上記に掲載された記事をアップロードしますので、ぜひお読みになってみてください。

上の記事は、クリックすると大きくなって読みやすくなります。

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2011年12月19日 (月)

バラク・オバマ・ドット・コム

かなり前のことですが、ネットで調べものをしていて、結果的にバラク・オバマ・ドット・コムにメール・アドレスを登録することになりました。

すると大統領から1週間に何回かメールが来ます。

米国人ではこのようにオバマ大統領からメールを受け取る人はたくさんいるのでしょうし、ほとんどの場合、どこまで大統領が目を通しているのかも明らかではありません。

でも今朝来たメールは大統領自身が書いたような気がします。

Friend --

Early this morning, the last of our troops left Iraq.

As we honor and reflect on the sacrifices that millions of men and women made for this war, I wanted to make sure you heard the news.

Bringing this war to a responsible end was a cause that sparked many Americans to get involved in the political process for the first time.

Today's outcome is a reminder that we all have a stake in our country's future, and a say in the direction we choose.

Thank you.

Barack

多大な犠牲と不幸、そして混乱をもたらしたイラク戦争は米軍の撤収により形の上では一応の終結を迎えます。

イラク国内での対立やテロは続き、イスラエルがイラクの領空を経由してイランを攻撃しやすくなるという状況が現出します。

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2011年12月18日 (日)

2012年の意味

来年、2012年はどんな年なのでしょうか。

これは団塊の世代がはじめて65歳に達する年です。

つまり来年からいよいよ急ピッチで日本の高齢化が進展することになります。

一般に65歳以上を高齢者と呼び、高齢者の総人口に対する割合を「高齢化率」と言います。

この割合が7%になると「高齢化社会」(仮に『第1段階』と呼びましょう)。

14%になると「高齢社会」(「化」が取れます。仮に『第2段階』と呼びましょう)。

21%になると「超高齢社会」です。仮に『第3段階』と呼びましょう)。

さてクイズです。

米国は上記の何段階でしょうか。

答えは『第1段階』。

『こちら』が2010年の米国国勢調査の結果。65歳以上は全国民の13%なので、まだ高齢社会には達していません。

日本は何段階でしょうか。

団塊の世代がまだ65歳に達していないので、第2段階の高齢社会?

いいえ。

日本の65歳以上の人口は、2,990万人。全人口の23.4%です(『こちら』)。

実は日本は「疾うの昔」(言い過ぎ?)の2007年に第3段階の「超高齢社会」に達していました。

しかもこれからが本番です。

なにせ団塊の世代が高齢化年齢(65歳)に達するのはいよいよ来年からなのですから。

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(上図は「高齢化白書」(『こちら』)より。クリックすると大きくなります)。

一般に団塊の世代と言われるのは、昭和22、23、24年生まれの人たちです。

「何だ、たった3年か」と思われるかもしれません。

戦後のベビーブームは日本の場合3年で終わりました。

ほかの国は15~20年、続いたのですが・・。

日本の場合、「3年で終わった」と言うよりも「終わらせた」のです。

優生保護法の改正(昭和24年)などにより、昭和25年から大規模な産児制限が実施されたからです。

ということで、この戦後のベビーブーマー世代(団塊の世代)がいよいよ65歳になっていきます。

その最初の年が来年、2012年なのです。

その結果、どういうことが予想されるか。

現状23.4%の高齢化率はますます上昇していきます。

2015年には26.9%。

2005年(高齢化率20.1%)から2010年(高齢化率23.1%)まで、高齢化率が3%上がるのに5年要したところが、4年足らずで3.5%も高齢化率がジャンプします。

そして今から44年後、2055年には40.5%にまでなります。

生産年齢人口(15~64歳)を支え手とすると、1.3人で65歳以上を支えるということになっていきます。(現状は『こちら』でも明らかなように、2.7人で1人を支えている)。

「税と年金の一体改革」と言っても、65歳以上が「それ以下の世代に支えてもらう」という発想を変えない限り、どう考えても無理が生じます。

現在年金をもらっている方たちも含めて、65歳以上にももっと負担してもらわないことには社会が成り立たなくなってしまいます。

たとえば65歳以上でも働ける人は働くとの前提で社会全体の仕組みを構築しなおす必要が出てくると思います。

高齢化の進展については実は平成19年(今から4年前です)に政府は高齢化白書(『こちら』でかなり鮮明に予想して見せているのですが、対応が先延ばしになってきたのが残念です。

そしてついに団塊の世代が高齢化グループ入りする2012年が、来年やってきます。

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2011年12月17日 (土)

65歳までの再雇用義務化

『集まれ!ほっとエイジ』日経ラジオ)の第12回が放送されました。

これに関連して最近ニュースになっている「65歳までの再雇用義務化」についてみてみましょう。

大手新聞各紙が「企業による再雇用義務化へ向けての法改正」を報じたのが12月14~15日。

その後、夕刊フジなどがさっそく「65歳定年義務化のまやかし」などの特集記事を組み始めました(12月16日)。

実はそもそもの新聞記事ですが、1面トップで「65歳まで再雇用義務化」と報じた朝日新聞(12月14日)に比して、日経は翌15日に「65歳まで再雇用厳格化」と報じ、その扱いははるかに冷静で客観的でした。

どうも朝日は厚労省から「今度こういった法案を出すよ」とつぶやかれ、それを詳しく吟味せずして記事にしてしまった、そんなような感じの一面トップ記事でした。

そもそも高齢者雇用安定法はすでに平成16年に改正され、平成18年4月からは企業は従業員を65歳まで働かせるよう、以下の何れかの措置を講ずるよう促していました。

①定年延長、②継続雇用、③定年制廃止

そしてこの措置は平成25年4月1日までに遂行するよう義務付けられていました。

ただしこの改正高齢者雇用安定法にはいくつかのループホール(抜け穴)がありました。

その一つが労使で協定を結べば、企業は「働く意欲がある」「健康上の問題がない」などの再雇用の条件を例外的につけられるというもの。

政府が来年の国会に提出しようとしているのは、「この例外規定を撤廃する」という改正案です。

しかし実はもっと大きなループホールがあります。

そもそもこの改正高齢者雇用安定法には罰則規定がなく、大企業にはこれを守る余裕があっても、中小企業にはとてもそんな余裕がない、そんなことをしていれば、企業そのものが破綻してしまうという現実です。

そして今回の改正案に関しては、この大きなループホール(罰則規定が欠如)がどうなるかについては何の報道もありません。

われわれ庶民としては、政府が新聞社に書かせた記事をそのまま鵜呑みにしてしまうと、われわれの老後の生活設計が崩れてしまいます。

その辺も踏まえたうえで、17日、夜のNIKKEI ラジオの放送「定年後 年金前の空白の埋め方」をお聞きいただければ幸いです。

聞き逃された方は今からでも、iTunes で聞けます(無料です)。『こちら』です。

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2011年12月15日 (木)

日本の金融機関の巻き返しは・・?

1989年、日本のバブルが影響していたのですが、金融機関を世界で時価総額順に並べてみると、トップ20に日本の銀行、証券などが19社も入り、日本勢がこのリストをほぼ独占していました。

いま同じようなリストを作ってみると、世界のトップ20に入ってくるのは、三菱UFJが14位に入るのみ。

世界3位の経済大国にしては日本の金融機関の地盤沈下が目立ちます。

私は拙著『リーマン恐慌』でも書きましたが、金融が経済を牽引するという考えには、必ずしも賛成していません。

実需のないところに、金融工学を駆使して、世界の金融センターになろうとしても、アイスランドのような誤りを犯してしまう危険性が高いからです。

むしろ金融は黒子に徹し、その国の産業、経済を支えるものでなければならない。

けっして金融に「しゃしゃり出ろ」と言っている訳ではないのですが、それにしても日本は世界第3位の経済大国です。

その日本の金融機関が世界のトップ20に1社しか顔を出さないというのは何とも寂しい状況です。

現場の世界に目をやっても、私が現在コンサルタントとしてお手伝いしている中堅中小企業の社長さんたちは、なかなか銀行が自分の会社のことを理解してくれない、融資に対しても極めて慎重で必要な資金が調達できないとの印象を持っています。

銀行にしてみれば良質な資金需要が少ないため「預金に対する貸出の比率」(預貸率)が低いということなのでしょう。

その辺は貸し手と借り手の見方の違いなのでしょうが、金融規制はこれにどう影響しているのでしょうか。

BIS規制上、国債を持ったほうが貸出を行うよりも(必要とされる自己資本が少なくてすみ)楽だ、ということで、預金受け入れなどで集めた資金を国債に投下しやすくなっている状況もあると思います。

(しかし余談になりますが、その結果、銀行が購入したイタリア国債が本当に中小企業に貸すよりも安全だったか、先日ブログに書いた記事『こちら』なども参考にしてみてください。MFグローバルの破綻で明らかになったように債券というのは値動きが激しく実は危険性の高いものです)

以上のような問題意識を持ちながら、先日『ザ・金融闘論』に参加しました。

テレビ番組を見逃した方、日経CNBCはケーブル契約をしていないので見れないという方もいらっしゃると思います。

こういった方々は是非『こちら』をクリックしてみてください

ユーストリーム ( USTREAM )によるこの番組の配信です(30分番組ですが、これが24時間、繰り返し回っています。途中から見てもしばらくすると最初に戻ります)。

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2011年12月12日 (月)

名古屋証券取引所での講演

名古屋に行って帰ってきました。

行きの新幹線から見た富士山です(↓)。

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さて本日は名古屋証券取引所のセミナーに講師として参加しました。

約200名の方々が聞きにいらしてくださいました。

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セミナーでは、「ヨーロッパはどうなるか」、「今後の為替レートはどうか」、「米国株は・・?」 などといった、9つの問題について説明しました。

そのうちの1つ。

「日本株は反転して上昇していくか」について。

(1)現在の日本株のPER を見てみます。PERを見るには『こちら』のサイトがいいと思います(頁の右側に「株価収益率」として載っています)。

すると現在のPER = 16(実績)~15(予想)で、これは概ね適正レベルであることが分かります。

実はバブル期(1980年代後半)にはPER = 89 だったこともあります。

(2)ところで現在の米国ダウ平均株価のPERは『こちら』で見ます。

すると PER = 13(実績)~12(予想)。  

(3)今後の日本株の動向ですが、以上のように PER は概ね適正レベルにあることから、今後の株価は主として、「企業業績がどうなるか」によって変わってきます(企業業績が株価を決めるうえで大きな要素となる)。

具体的には、 + の要因としては:

①震災復興需要(2兆円強の4次補正)、

②震災、タイ洪水などもあり、今までの業績が悪すぎた(今後はよくなるはず)

マイナス(- )の要因としては:

①円高が更に続き、より一層の円高に向かう可能性も大きいこと

② ヨーロッパの状況

などが上げられます。

なお倒産しかかった企業の評価を除き、PBR(株価純資産倍率)を使って株価を評価する外国人投資家はほとんどいません。

* * * * *

さてセミナーでカバーした、残り8つのポイントですが、これについては、またどこかのセミナーなどで機会があればお話ししたいと思います。

もっとも私はセミナー、講演、あるいは大阪経済大学大学院の授業などにおいて出来るだけ同じ話はしないように心がけています(たとえば大学院の授業にはここ数年、毎年受講しに来てくださっている社会人受講生の方もいますので)。

いずれにせよ本日のセミナーの内容が参加者の方にとって少しでも参考になったことを願います。

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2011年12月10日 (土)

定年後 年金前 の空白期間(その3)

皆既月食を写真に撮りました。

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* * * * * *

さて日経ラジオで放送している『集まれ!ほっとエイジ』

今日(12月10日)で第11回目です。

今日は、「定年後 年金前 の空白期間」の第3回。

若い人たちの中には公的年金には「頼れない」、あるいは「頼らない」という人も少なくありません。

しかし、もしわれわれが例えば100歳まで生きたとして、このときの生活費はどうするのでしょう。

100歳あるいは105歳まで生きるとの前提で、しっかり預金をためている人はそんなに多くありません。

何とかなるさと思われるかもしれませんが、その方々の生活費は誰かが払わなければなりません。

公的年金とは、「不幸にして早く死んでいってしまう人が、長生きしていく人の生活を支える仕組み」です。

社会全体として「支えあう」という仕組みなのです。

われわれは公的年金には「頼れない」のではなくて「頼らざるをえない」のです。

といっても政府が言う「100年安心プラン」などというキャッチフレーズをそのまま鵜呑みにしてはいけません。

年金制度が現在抱える問題点を直視して、われわれ一人ひとりが現実に即したライフプランを考えていく必要があります。

喫緊の課題としては、年金の支給開始がだんだんと遅くなっていき、退職後も年金が払われないという「空白期間」の問題が挙げられます。

これも政府に言わせれば「高齢者雇用安定法」を改正したので、企業は年金が支給開始となる年まで雇用を確保してくれます、安心です、といったことになります。

しかし残念ながら現実はそんなには甘くはありません。

番組ではこの空白期間について出来るだけ分かりやすく説明しました。

聞き逃された方は今からでもポッドキャストで聴くことができます。

『こちら(日経ラジオ)』のサイトをクリックすると出てくる『岩崎日出俊の生涯現役!を「聴く」』のボタンを押してください。

iTunes でも聞けます(無料です)。『こちら』です。

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2011年12月 9日 (金)

グローバル金融の新ルール

先日ご案内した「ザ・金融闘論」、今夜9時からの放送です。

詳しくは『こちら』をどうぞ。

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2011年12月 6日 (火)

イタリア国債の価格

ちょっとした頭の体操です。

『10年物のイタリア国債(残存期間も10年とします)の金利(クーポン)が3%であると仮定します。

これが価格100で取引されていました。

すると、突如、金融危機が起きて、この国債の価格が急落。

利回りが7.5%となりました。

このとき国債の価格は当初の100から幾らになったのでしょう。

単純化のため、(1)国債の金利は年1回払われるものと仮定、(2)金利の期間構造はフラットであると仮定します』

この国債から得られる毎年の金利収入は

100 × 3% = 3

よって、利回りが7.5%となったときの、この国債の価格は

価格=[3/(1.075)^1] + [3/(1.075)^2] + [3/(1.075)^3] + [3/(1.075)^4]+[3/(1.075)^5] + [3/(1.075)^6]+[3/(1.075)^7] + [3/(1.075)^8]+[3/(1.075)^9] + [(100+3)/(1.075)^10]

(注)^は乗数を示します。

以上により、価格を求めると 69.11。

ということで、100 が 69.11まで下落します。

この辺はエクセルでもっと簡単に展開させて求めることができます(下記は画像)。

Bond1_3

エクセル・ファイルは下記をどうぞ。

「bond_valuation.xlsx」をダウンロード

いずれにせよ3%が7.5%になるということは、100が69になることです。

これを保有している金融機関やファンド、投資信託にとっては厳しい状況になります。

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2011年12月 3日 (土)

定年後 年金前 の空白期間(その2)

毎週土曜日、日経ラジオで放送している『集まれ!ほっとエイジ』

早いもので今日(12月3日)で第10回目を迎えました。

この番組を始めた10月1日頃は年金問題などについて一般の方々の関心はさほどは高くなかったのですが、その後

「政府は年金の支給開始を68歳もしくは70歳に変更することを検討している」

などと報じられるに及んで、俄然世間の注目を浴びるようになりました。

こういった社会情勢の変化もあって、ラジオNIKKEIでも日経新聞11月24日号に下記のような広告を掲載(第17面)、番組の後押しをしてくれています。

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さて今日のテーマは、「定年後 年金前 の空白期間(その2)」。

現在「年金の支給開始時期」はかつての60歳から65歳に移行されていく上での「過渡期」にあります。

しかしそれだけでは足りず、以下のような抜本策の何れかがこれから先、講じられなければなりません。

① 年金の保険料率を上げる ② 年金の支給額を下げる ③ 年金の支給年齢を更に引き上げる ④ 税と年金との一体改革

そもそも2004年に年金の大改革を行った際、政府は「これで100年は安心だ」と言っていました(「100年安心プラン」)。

それがなぜ7年で再度抜本策を講じることが必要になったのでしょうか。

甘めの前提で制度設計をしたからです。

たとえば① 集めた保険料は年4.1%で運用する(→それで安全に運用できるのであれば、銀行や機関投資家は1~2%の利回りの日本国債をこんなにたくさん買い込んだりしません)。

② 国民の賃金は年2.5%で上昇していき、それに従って徴収する保険料も増加する(→現実には賃金が下がっているケースも出てきています)。

この間の事情について、お役所の方が書いた文章などを見てみますと、「①政治家の圧力に屈してしまった」、「②長期にわたった制度を設計する場合、日本国が成長していくという前提で制度設計をせざるをえない、国家が衰退するとの前提では制度は設計できない」などとしています。

気持ちは分かりますが、やはり現実を直視したうえで制度設計しないと国民が不幸になります。

さらに、いまの年金制度にはもう一つ大きな問題があります。

かつて年金は我々が積み立てたものを老後に使うといった積み立て方式が取られていました。

それが過去のある時点から「若い世代が払う保険料を高齢者が年金として使う」といった「賦課方式」に変わりました。

これは自転車操業方式にほかなりません。

そしてその結果、1940年生まれと2010年生まれの間の世代間格差は5000万円以上になるという試算結果(学習院大学鈴木教授)も出てきました。

残念ながら我々は高度経済成長時代に生きているのではありません。

賦課方式は成熟経済、少子化の世の中では若い世代に酷に働きます。

現実的な立場に則した制度の抜本的な再設計を早く取りまとめる必要があります。

番組ではこの辺を出来るだけ分かりやすく説明しました。聞き逃された方は今からでもポッドキャストで聴くことができます(15分間です)。

『こちら(日経ラジオ)』のサイトをクリックすると出てくる下記ボタンの「聴く」を押してください。(下記ボタンをいきなり押してもリンクされていません。必ず『こちら』をまずクリックしてください)

Ha3

iTunes でも聞けます(無料です)。『こちら』です。

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2011年12月 2日 (金)

ドル減価の裏側

2年前に書かれた本ですが、岩本沙弓『新・マネー敗戦』を読みました。

(各国から巨大な借金をしている米国が取りうるシナリオについて)

「・・極端なやり方としては、金と交換可能な新ドル発行をする一方で、旧ドル紙幣に関しては、偽造が多いなどを理由に交換を停止する、

米国内のドルは兌換可能だが、国外に関しては通貨発行権を行使していないのを理由に対象外とする、・・

その結果、為替市場で旧ドルが下落し、ドル建て国債の価値も減価することで支払い義務は一気に解消する・・」(本書218頁)。

* * * * *

ここまで極端ではないにしても、

(1)日本政府が為替介入で9兆円相当のドルを買う(2011年10月31日以降の実際の介入額)→

(2)このドルを使って米国債を購入→

(3)その後、更にドル安となるとした場合、購入した米国債は減価

以上のようなプロセスで日本の国富が流出していくことが懸念されます。

* * * * *

注:現に日本政府は2003年に20兆円、04年には14兆円強の円売り・ドル買い介入を実施。

このとき、03年の平均為替レートは116円、04年の平均為替レートは108円ですから、当時日本政府が購入した米国債が円ベースでどれだけ減価したか、容易に想像がつきます。

* * * * *

さてここでもう一度岩本氏の『新・マネー敗戦』に戻ります(同書、85頁)。

(米国が日本を相手に1万ドルの借金をした場合)

「外国為替がドル安になろうが、ドル高になろうが、結局米国は1万ドルの借金をしているだけだから、損失を一方的に日本が被るだけで米国は得をしているわけではないのではないか、と思われるかもしれない。」

それが必ずしもそうではないことは、この続きの86頁を読んでみることをお勧めします。

* * * * *

なおこの本が書かれたのは今から2年前の2009年12月5日。

このときの為替は1ドル=88円。

今から2年前の段階で、著者は2011年には77円を切るような円高になる(場合によっては70円を切る)とグラフで示し、更に2012年の秋口には60円割れ(59円)もあり得ると予想しています(上記著書225~227頁)。

著者が本書に記したグラフを読み解けば、為替が76円台になるのを著者は2011年3月と予想しているように思えますが、現実に76円台に突入したのは4か月遅れの 2011年7月。

このように少しのずれがありますが、多くの類書が為替の予想を外してきたのに比べれば、本書は見事なまでにその後の為替レートを言い当てています。

とすると、来年には70円割れの 69円台突入(来年秋口には場合によっては59円も!)といったシナリオになっていくのですが、さて・・・。

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2011年12月 1日 (木)

10年利付国債(第319回)の入札結果

本日の入札結果は、『こちら』。1か月前、318回債の時は 『こちら』

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