ドル減価の裏側
2年前に書かれた本ですが、岩本沙弓『新・マネー敗戦』を読みました。
(各国から巨大な借金をしている米国が取りうるシナリオについて)
「・・極端なやり方としては、金と交換可能な新ドル発行をする一方で、旧ドル紙幣に関しては、偽造が多いなどを理由に交換を停止する、
米国内のドルは兌換可能だが、国外に関しては通貨発行権を行使していないのを理由に対象外とする、・・
その結果、為替市場で旧ドルが下落し、ドル建て国債の価値も減価することで支払い義務は一気に解消する・・」(本書218頁)。
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ここまで極端ではないにしても、
(1)日本政府が為替介入で9兆円相当のドルを買う(2011年10月31日以降の実際の介入額)→
(2)このドルを使って米国債を購入→
(3)その後、更にドル安となるとした場合、購入した米国債は減価
以上のようなプロセスで日本の国富が流出していくことが懸念されます。
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注:現に日本政府は2003年に20兆円、04年には14兆円強の円売り・ドル買い介入を実施。
このとき、03年の平均為替レートは116円、04年の平均為替レートは108円ですから、当時日本政府が購入した米国債が円ベースでどれだけ減価したか、容易に想像がつきます。
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さてここでもう一度岩本氏の『新・マネー敗戦』に戻ります(同書、85頁)。
(米国が日本を相手に1万ドルの借金をした場合)
「外国為替がドル安になろうが、ドル高になろうが、結局米国は1万ドルの借金をしているだけだから、損失を一方的に日本が被るだけで米国は得をしているわけではないのではないか、と思われるかもしれない。」
それが必ずしもそうではないことは、この続きの86頁を読んでみることをお勧めします。
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なおこの本が書かれたのは今から2年前の2009年12月5日。
このときの為替は1ドル=88円。
今から2年前の段階で、著者は2011年には77円を切るような円高になる(場合によっては70円を切る)とグラフで示し、更に2012年の秋口には60円割れ(59円)もあり得ると予想しています(上記著書225~227頁)。
著者が本書に記したグラフを読み解けば、為替が76円台になるのを著者は2011年3月と予想しているように思えますが、現実に76円台に突入したのは4か月遅れの 2011年7月。
このように少しのずれがありますが、多くの類書が為替の予想を外してきたのに比べれば、本書は見事なまでにその後の為替レートを言い当てています。
とすると、来年には70円割れの 69円台突入(来年秋口には場合によっては59円も!)といったシナリオになっていくのですが、さて・・・。
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