ハイパーインフレは襲来しない
時おり雑誌や書籍などで、ハイパーインフレが日本を襲うなどという衝撃的な記事を目にすることがあります。
歴史を紐解くと、ハイパーインフレは、敗戦後の日本や1992年のロシアのように、米、小麦粉、パン、卵といった日常生活に欠かせない食料品などの「物」が市場から消えたときに起こってきました。
1991年12月にソビエト連邦が崩壊して誕生したロシア連邦。
エリツイン大統領はショック療法と称される方法で市場経済化を急ぎました。
それまで「物」の価格は政府が決めていたのですが、翌月の1992年1月にはこれを一気に自由化。
その結果、この月だけで前「月」比 245%の価格上昇に襲われました(1992年を通してみると年率2520%のインフレ率となりました)。
社会主義から市場主義への体制変化をあまりに性急に行ったため、生活に必要な物資が消費者のもとに届かなくなってしまったのです。
スーパーや百貨店の棚からは食料品が消え去ってしまいました。
最近のハイパーインフレの事例としては、アフリカのジンバブエが有名です(『こちら』)。
かつて南ローデシアと呼ばれていたこの国は、ムガベ大統領の独裁政治のもとで失政が続き、国のGDPの67%を政府支出が占めるといったありさま。
失業率は政府公称ベースで80%、国連の推測では94%。
国民の9割以上が失業しているといった状況下では、たしかにハイパーインフレが起きても不思議ではありません。
一方の日本。
不景気で暗い世の中とはいえ、日本はまだ世界第3位の経済力を保っています。
日本の対外純資産は2010年末時点で 3.1兆ドルに上り、20年連続で世界第1位を記録しています。
この世界最大の対外純資産が生み出す所得収支はここ数年毎月1兆円前後の黒字で推移しており、この結果、日本の経常収支は大幅な黒字を維持しています。
その日本から、突然物が消えてしまうことなどあるでしょうか?
仮に今後、超高齢社会のなかで問題が積み重なってくるとしても、ハイパーインフレがやってきたり、超円安が襲うとは考えにくいと思います。
「ハイパーインフレが来る」、「通貨の価値が著しく減る」といった噂に踊らされ、今年の4月ブラジル・レアルの預金(金利が高い)をした人は、1レアル54円をつけていたものが半年で40円となり、25%も下落してしまいました。
この辺については5月のテレビで私が警告したとおりの展開となってしまいました(『こちら』)。
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ところで本日発売となったプレジデントに『定年後の①貯蓄、②年金、③医療介護、④再雇用、⑤日本経済』が特集されています(30~39頁)。
上記のうち、①、②、④、⑤で私の発言が Quote されています。
興味のある方はご覧になってみてください。
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