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2012年1月 5日 (木)

人口ピラミッド

本の執筆は基本的に土、日と出勤前の早朝にするようにしています。

ただ年末年始は私が勤める会社(インフィニティ)の「海外の顧客」はクリスマス前から年末にかけて休暇入り、「日本の顧客」も28日頃から新年4日頃までは休みのところが多く、私にとっては執筆に回せる時間ががぜん増えます。

ということで、昨日まではひたすら本の原稿を書いて過ごしました。

もっともちょっとしたところに引っかかってしまうと、あちらこちら調べまわすことに陥り、筆が止まります。

たとえば消費税の増税。(ちなみに3月8日発売予定の今回の本は消費税増税について書いている訳ではありませんし、これに関連する項目もいっさいありません。たんにこういったことの基礎知識無しには本を書けないので調べているだけです)。

朝日新聞の12月31日1面には「国家破綻を防げ」という編集委員の方の記事が載っていました。

しかし消費税が10%になることで国の借金が減るのかというとそうでもない。(10%にせず5%のままならば借金はおそらくもっと増えるのでしょうけれど・・)

今後もプライマリーバランス(基礎的財政収支)は赤字のままで、2015年にこの赤字を半減させる目標さえ、この達成は「少し苦し」い(野田首相の発言)とか・・(政府目標は2020年度の基礎的財政収支黒字化です)。

では現状の財政収支はどうなのか。内閣府の資料にプライマリーバランス推移が見つかりました。

Pb_2

(上表や下図はすべてそのうえでクリックすると大きくなります)

2004年度~07年度はまずまず良かったのですね。 内閣にすると小泉、安倍、福田内閣の時代。

そこをリーマンショックが襲ったので急激に悪化・・・と、欧州や米国と同じような道筋なのですが、財務省資料に下図がありました。

     財政収支の国際比較(対GDP比)

Pb2_2

リーマンショックの影響はヨーロッパの方が大きかったはずですが、日本の財政収支はドイツ、フランスなどに比して悪化の度合いがひどい。これを見るとリーマンショック後イタリアはむしろ頑張ってきていた・・?

さて政府は「社会保障と税の一体改革」の掛け声のもと、素案をまとめました。昨年12月30日です。このベースになったのは昨年7月1日の閣議報告(『こちら』)。

消費税増税(5%→10%)により税収は約13兆円増えます。しかしこのうち社会保障の「充実」に回るのは1%分の2.7兆円。年金分はそのうち6000億円にすぎません。

もともとお金に色は無いわけですから、13兆円はこう使われますといっても、あまり意味はない・・・・ですが、政治的には「消費税を増税して八ツ場ダム(総事業費4600億円。ただし大半を支出済み)を完成させるのに一部使います」などとは言えないのでしょうね、きっと・・。

ところで13兆円税収が増えるくらいでは社会保障の問題は解決しそうにもありません。

2050年の日本の人口ピラミッドを見ると唖然とします。

  2050

現役世代や将来世代に過度な負担をかけないためにも、いまから社会保障の支出は抑え込んでいかないと将来大変なことになります。

たとえば、言いにくいことですが、現在年金をもらっている方々の「もらい過ぎ」は是正しないといけません。

「けっしてもらい過ぎていない」、こう高齢者の方に怒られそうですが、年金の支給額は物価水準に応じて上下することとなっています。

しかし、現実にはデフレ下でも年金額を据え置くという「特例水準」が1999年に決められました。この結果、7兆円もの「年金支払い過ぎ」が発生しています。

これについては昨年末の「社会保障と税の一体改革素案」で解消すると決めたでしょう、と言われそうですが、すでに1999年以降現在までに支払済みの7兆円については手を付けない(換言すれば高齢者によるもらい得)が決まっています。

しかも今後3年間は支払過多を(額は減るものの)継続するとの案です。

当然のことながらこれら(7兆円+アルファ)の追加負担は、すべて現役世代、将来世代への負担となって先送りされていくことになります。

将来の人口ピラミッド(上の図)を見た時、われわれの前に立ちはだかる問題の大きさがわかってきます。

まだ先のことですが、いずれ生産年齢人口(15~64歳)1.3人で高齢者(65歳~)1.0人を支える社会がやってきます。

そのときにむかって持続可能な社会保障制度はどういったものか。

よく言われる「消費税を16~17%にすれば社会保障4経費を賄える」というのは、あくまでも2015年あたりの社会保障4経費を言っているわけです。

ベーシックインカムの議論にしても、国民1人に仮に月7万円配るとしても、なにせ稼いでいる国民はこのとき(2055年)約半数しかいません。残り半分は65歳以上か、15歳未満。

と、まぁ、こういったことをいろいろ考えていくと、なかなか「本の原稿を書く」という作業に入っていけなくなってしまいます。

本の中のたった数行の文章でも、調べて、悩んで、苦しんだ結果の文章であることが少なくありません。

それさえも編集者の「この部分は分かりにくいのでカットしましょう」の一言でばっさり切られてしまうこともあります。

それだけに本が完成して書店に並んだ時の嬉しさもひとしおなのですが・・

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