昨日は日経ヴェリタストークに出演しました。

トッピクスは「金利消滅という戦慄―中央銀行の国債丸抱えが生む歪み」。

以下、番組内容のエッセンスです。
Q:主要国の国債利回りは下がり続け、史上最低の水準まで下がっている。先進国での史上最低金利は何を意味するか。
A:これについては2つのまったく違った見方がある。1番目の考え方は、史上最低と一口に言っても英国については産業革命よりも前、つまり1703年まで遡っても現在の国債利回りは最低であるという点(『こちら』の第1面参照)に着目する。
米国についても南北戦争から6年後の1871年まで遡っても10年物国債の利回りは先週付けた1.4%台が最低である(『こちら』)。
こういった状況はもはや資本主義が「根本的な修正・見直しを余儀なくされていることを示す」という考え方が、第1番目の考え方だ。
2番目の考え方は、もともとバーナンキは2014年末までゼロ金利政策を取ると言ってきたのであり、こういった史上最低の金利は、いわば病気を治す過程で起きている現象、コントロール可能という考え方だ。
Q:先進国の金融緩和をどう評価するか。
A:米国は相応の効果を上げたが欧州は必ずしも上手くいっていない。
米国はQE1、QE2の効果もあって、失業率は一時の10.0%から8.2%まで低下。株価もボトム(2009年3月)のダウ平均6,400ドル台から12,500ドル台へと2倍近く上げた。
一方、欧州は昨年4月比で失業率は1.0%悪化(現状11.0%)。株価も昨年4月以降2割ほど下げている。
Q:QE3はあるか。
A:7日のバーナンキの議会での発言を吟味すると、このままの状況では19日-20日のFOMCでのQE3はないだろう。
ただ彼は必要ならばQE3をやると言っており、それが安心感となって市場を下支えしている。
Q:銀行はこれからも国債を買い続けるか。
A:企業の資金需要が後退。銀行にとって適当な貸出先が少なくなってきている(よって資金の行きつく先が国債に向かってしまう)。
これは日本だけでなく米国にも共通してみられるようになってきた。
例えばアップルは利益を上げ現預金を積み上げてきた。投資もしているが、それ以上に急ピッチで現預金が積み上がり、いよいよ配当および自己株購入の形で資金を株主に戻すことにした。
市場や銀行から資金を調達するといった局面には、これから先も向かいにくい。
Q:欧米では金利の低位安定が続くとの見方が多い。一方、日本では財政の悪化から金利がゆるやかに上昇するとの見方もあるが・・
A:日本だけゆるやかな形で金利を上げると円高圧力に結びつく。
日本も他の先進国の出方を見ながら中央銀行によってある程度管理された金利水準をキープするだろう。
日本国債や円への信認が無くなれば一気に国債が下落することも理論的にはあり得るが、日本の対外純資産は253兆円で21年連続世界1位。2位の中国の2倍近い対外純資産額を誇っている。
貿易収支の赤字化が話題となるが、2011年は原発事故の影響で原油、LNGなどの燃料費が嵩み、年間の輸入金額は国全体で68兆円。
一方、輸出産業は円高で苦戦したといっても年間を通すと 66兆円もの輸出が行われた。
海外投資家の目からすれば日本はまだまだ国際的な競争力ある産業を抱えており、財政の問題はあるものの、消費税は未だ5%と低く、上げる余地がたくさんある。
総じて日本は先進国のなかでもまだ勝ち組との位置づけで、日本国債や円への信認が一気になくなるとは、いまのところは考えにくい。
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ところで、国債と金利の関係を歴史を遡ってみていくと面白い話にたくさん出会います。
そもそも国債は、王家の相対借入に代わるものとして17世紀後半に登場。主として、君主(王家)による戦争をファイナンスする目的で使われてきたようです。
またたとえばアメリカ南北戦争の時代、北部・南部の政府がそれぞ
れの通貨で国債を発行しましたが、その国債の価格を金で表示して比較すると、
北部政府国債の金利のほうが低くかったことがわかります。

つまり市場は戦争の帰趨をも見通していたことが分かるのです(詳しくは『こちら』の本をご覧ください)。
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なお日経ヴェリタストークの再放送は:6月12日(火) 18:30~、19:06~です。