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2012年8月17日 (金)

夏の読書(その1)

朝日新聞(8月14日)に載っていた経済学者、金子勝さんの文章が目を引きました。

「ある国会議員が、高額所得の芸能人の母親が生活保護を受けていることを問題にしました。

その芸能人は法律(生活保護法)に違反していたわけではありません。

でも、人気商売である芸能人が反論できないのをよいことに、テレビや週刊誌からも袋だたきにされ、多くの人がその騒動を楽しみました・・・

その議員は、親族の扶養義務を強めるべきだと主張しました。

でも、そんなことをされたら、たちまち生活に困ってしまう弱い立場の親子だっているんです」

* * * * *

『生活保護の謎』(祥伝社新書→『こちら』)の著者、武田知弘さんによると、「生活保護の本当の問題は不正受給ではない」と言います。

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私も知らなかったのですが、武田さんによると生活保護に関しては次のような事情があるとのこと。

「あまり知られていないが、実は日本の生活保護費というのは、先進国の間では最低のレベルなのである。

支給総額も、受給者の人口割合も、先進国の中では断トツに低い。

生活保護受給者が200万人を突破したなどと大騒ぎされているが、世界的に見れば、日本の生活保護費はまだまだ少ないほうなのである」(本書24頁)

そして武田さんは、本当の問題とはこういうことだと主張します。

「生活保護に関して、恐ろしい問題が待っている。

それは、生活保護予備軍が、実は2000万人単位でいる、ということだ。

統計的に見て、あと30年後には、必ず2000万人単位で生活保護受給者(資格保持者を含む)が生じる。

現在の10倍である」(本書25頁)

そして問題の根底には日本の社会が急速に格差化していることが挙げられると言います。

「平成11(1999)年には、年収5000万円を超すサラリーマンは8000人ちょっとだったのが、2006年には2万人を超えているのである」(本書40頁)

* * * * *

このほかにも「東京・千代田区では家族4人の生活保護支給額は、月30万円」だとか、「生活保護費の50%以上に相当する額が、医療機関に流れている」など、本書には生活保護に関する情報が満載といった感じです。

あえて難点をあげるとすると、読者として知りたいと思うデータ類の出所が記されていないところが比較的多い点。

新書なので仕方がないのかもしれませんが、たとえば上記の「年収5000万円を超すサラリーマンが10年で2倍以上に増加した」という記述に関し、本書にはこれは「国税庁の統計記録であり、国税庁のサイトで誰でも見ることができる」と書いてあります。

しかし実際に国税庁のサイトに行って、どの統計記録なのか、探してみましたが、私には見つけることができませんでした。

私の探し方が悪かったのかもしれませんが、本書をベースにもう少し簡単にオリジナルデータに行けたら、読者に対して親切ですし、使い勝手も増すと思いました。

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