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2012年9月29日 (土)

種々雑感

【1】今日の朝日新聞夕刊に載った昭和史再訪の記事。

昭和47年9月当時の大平外相を書いた記事も興味深かったのですが、田中真紀子さんの話をまとめたコラムも印象深いものでした。

以下一部引用。

『父は「世界中を真紀子に見せてあげよう」と言っていたのに、日中国交の時は絶対だめだ、と言われました。「お父さんも命がなくなる可能性が高い・・・」と。

「お母さんと留守番してなさい。何があっても、微動だにしないで、き然としないとだめですよ」と言われました。

出発の日、うちの長男を抱っこするのを見て、こんな姿を見るのもこれでおしまいだなと。政治というのはすごいもんだなと思いましたね』

【2】話はころころ変わって申し訳ないのですが、私はこの1ヶ月、結構忙しくてケータイショップに行く時間を見つけられずにいました。

ようやく今日ドコモ・ショップとau ショップに行って、iPhone 5への乗り換えを手続(と言っても、予約しただけなので、実際に乗り換えが完了するのはまだまだ先です)。

最近届いたドコモの請求書を見ると、「継続利用期間は、8月末で14年8ヶ月となりました」とあります。

ということは、1998年1月からずっとドコモだったわけで、マーケティングの世界で言うところのロイヤル・カスタマー(loyal customer)。

iPhone 4や4Sが出たときも、ぐっと我慢していたのですが・・・。

今日もドコモ・ショップで感じたのですが、ドコモはショップやカスタマーセンターに電話した時の応対がいつも親切で感じ良く、好感がもてました。

【3】マーケティングと言えば(すみません、また話がガラリと変わります)、ひところF1とか F2 といった言葉をよく耳にしました。

F1 は20歳~34歳の女性、F2 は35歳~49歳の女性だったと思うのですが、最近あまり耳にしないように思います・・。

いずれにせよ、このF1層、現在では全女性の15.9%、F2は 20.5%です。

これに比べてぐんと増えてきているのが、60歳上の女性の割合。

日本人女性のなんと 34.8%が60歳以上(『こちら』)。

「3人に1人の水準」をはるかに超えてしまいました。

(ちなみに20代女性の割合は10.0%、30代は12.1%です)

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2012年9月27日 (木)

親子上場解消の動き

昨日(水曜日)の日経新聞夕刊(第5面)の「なるほど投資講座」、『M&Aと株式投資 ②』では、「広がる上場子会社の買収」と題して、最近の親子上場の解消、別言すれば、親会社による上場子会社買収の動きについて書きました。

何名かの読者の方から、目から鱗の話だったといったコメントを頂戴しました。

     Photo

木曜日は、株価とは何かの話に始まって、財務的買収者と戦略的買収者について書きます。

そして金曜日は「誰に対して敵対的なのか」との副題のもとに、敵対的買収について考察します。

宜しかったら是非ご覧になってみてください。

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2012年9月26日 (水)

iPhone5を分解してみると・・

バッテリーの持ちは改善されたのか?

カメラは・・?

といった具合に  iPhone5 を分解して中を調べてみるといろいろなことが見えてくるようです。

『こちら』をどうぞ。

解説は英語ですが、英語が苦手な人でも楽しめるビデオ(2分10秒間)です。

普通の消費者は新しく出て、苦労して買ったばかりの  iPhone5 を分解してみようとは思わないでしょう。

たった2分で iPhone5 の中がどうなっているのかを知る・・・興味深いビデオでした。

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2012年9月24日 (月)

780字の世界

日経新聞の夕刊、第5面に「なるほど投資講座」というコラムがあります。

毎週火曜日から金曜日にかけて連載されているコラムで、下は先週金曜日(9月21日)のもの。

      Naruhodo3

今週は、あす 25日(火曜日)から 28日(金曜日)まで、合計4回、「M&Aと株式投資」のタイトルで、私が執筆します。

毎回780字という限られた字数制限のもとで、「M&Aと株式投資」についてどこまで描けるか、チャレンジングな作業になります。

よろしかったらご覧になってみてください。

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2012年9月21日 (金)

iPhone5 の発売

iPhone5 が発売開始となりました。

「アップルストア銀座」には午前7時時点で徹夜組を含め約700人が大行列をつくった(『こちら』)とか・・。

* * * * *

ところで話は変わりますが、ドルコスト平均法という投資方法があります。

たとえば株式投資を行う場合、一度に全部を買うのではなくて、資金を分割して「均等額」ずつ定期的に継続して投資する方法です。

もっと具体的に言うと、たとえば

「予定資金を36分割して、月末ごとに資金の1/36を投入し、3年かけて全量を買う」といったような投資手法。

60分割にして5年とか、いろいろなバージョンがあります。

数量を等分するのではなく、金額を等分するところが味噌。

価格が高い時は購入数量が少なく、安い時には多いため、単純な数量分割に比べ平均値の点で有利になるとされています(以上、ウィキペディアの説明です)。

ドル・コスト平均法は「人間が考える」というところを否定するような側面があり、私は個人的にはこの投資法を取っていません。

自分でマーケットを見ながら「考えて投資」した方が、一定の法則にしたがって「考えないで投資」するよりも、恐らくは良い結果が得られるだろうと思っているからです。

* * * * *

今週は久しぶりに少しだけポートフォリオをいじりました。

円とドル、株と預貯金といったバランスは崩さないで、バークシャーを売って、そのドルでアップルを買いました。

アップルについては2010年5月から少しずつ買っています(『こちら』)が、さすがに株価が700ドル近辺になって、時価総額6,550億ドルを超えるようになると、考えさせられました(これまでの時価総額の世界記録は、ITバブルの99年12月に米マイクロソフトがつけた6,205億ドル)。

投資に対して「慎重」を促す情報もいろいろ出ています。

iPhone5よりも Windows Phone 8 の方が凄いらしい(『こちら』)とか、

これから出てくるであろう iPad mini と iPhone5 とのカニバリゼーション(cannibalization;共食い)が懸念されるとか、

Tim Cookは偉大なるCOOだけれども、偉大なるCEOではないといったところが主なものでしょうか。

来年くらいに出てくると予想されるアップルTVで躓くのでは、と懸念する向きもあります。

Photo

    ( Windows Phone 8 )

一方でアップルは3年後に(今の2倍以上の)1,650ドルになるというアナリストも現れたり(『こちら』)、結局のところ、よく分からないというのが正直な気持ちです。

しかしながら「偉大なるCOO」と揶揄されつつも、iPhone5は予約開始初日に200万台を超える予約獲得を達成し、9月21日に、日、米、英など9か国で発売、28日には更に追加で22か国で発売されます。

世界中でこれだけのオペレーションを一気に展開する力はやはり大したもの。

今後年内にどのくらいの台数が販売になっていくのか、当面の間、世界の投資家が注目するのはこの数字です。

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2012年9月16日 (日)

地図から消えた送電線

日本列島の地図と緑色の円に「維新」の文字が入っている「日本維新の会」のロゴマーク。

橋下徹大阪市長によれば「日本地図にこだわりました。尖閣諸島も竹島も入っている。ナショナルパーティーになるわけだから」(『こちら』)。

さて地図というのは、イコール国家の側面もあり、国の意向が反映されることは、古来珍しいことではありません。

国の「公器」ともいうべき国土地理院の地図。

その地図からいったん送電線が消えました(2011年2月; 『こちら』 参照)。

電力会社がテロの脅威などを理由に送電線データの提供を拒否するようになったからです。

しかし送電線自体は誰でも見ることができることから、いったいテロの脅威とはどういうことか、むしろ電力会社が発電と送電の2つの会社への分離論を嫌ったからではないかと一部の人に勘繰られたりしました。

これは勘繰り過ぎなのかもしれませんが、では、なぜ地図から消す必要があったのか・・・いずれにせよミステリーのような話です。

この話は2011年2月のことですので福島第一原発事故の前のことです。

ところで地図上に送電線の記号がないと、誰か困る人でもいるのでしょうか。

地図に詳しいMさんの話によると、「山登りの人たち、ハイキングに行く人たちが困る」とのこと。

「彼らは送電線で現在地の当たりを付けて、道に迷うことなく歩を進めるのだそうです。送電線をたどっていけば、町に出られますから」

このため国土地理院は改めて電力会社に送電線データの提供を求めることにした(2012年3月;『こちら』)・・・。

朝日新聞報道(当時)によれば、「再び拒否された場合は紙の地図にあったデータを使って電子国土基本図でも送電線が見られるようにする。

一部を消した発電所や変電所も『戦時改描を思わせる』との意見が寄せられ、送電線と同様に復活させる」

こうした国土地理院の働きかけの結果、再度、送電線情報が地図に記載されることになった(2012年7月;『こちら』)とのこと。

と言いつつも、国土地理院のウェブサイト(『こちら』)に行って、地図をダウンロードしてみると、現時点でも送電線は消えたまま(たとえば『こちら』)。

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地図に送電線が載せられるべきか、削られるべきか。

この点をめぐっての電力会社と国土地理院とのやり取り・・・。

やはりいろいろな思惑があったのかもしれない、とは勘ぐり過ぎなのでしょうね。

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2012年9月15日 (土)

日経CNBCセミナー

お知らせです。

10月6日(土)、東京 品川・御殿場のホテルラフォーレ東京で開催される『日経CNBCセミナー』で講演します。

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ご関心のある方は『こちら』よりお申し込みください。

無料です。

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2012年9月14日 (金)

ウォール街 ラウンドアップ

QE3が発表された後で、改めて昨日の日経夕刊「ウォール街 ラウンドアップ」(西村博之記者)を読み返すと、凄いですね。

「あらかじめ規模や期限を決めず・・」という新方式をみごと予想し当てる一方、この政策が抱える問題点にも言及するコラムに仕上がっています。

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QE3 と言うよりも QE open-ended?

QE3が発表されました(『こちら』)。

ポイントは次の3点(いずれもFRB プレスリリース原文の該当箇所をそのまま転記します)。

続きを読む "QE3 と言うよりも QE open-ended?"

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2012年9月13日 (木)

iPhone5

先ほど発表されたiPhone5。

すでにいろんなマスコミで紹介されていますが、

iPhone5についてはアップル社の『こちら』のビデオを見るのが一番分かりやすいです(約6分間)。

株価は after market で671.50ドルまで上がっています(前日引値 660.59)。

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2012年9月12日 (水)

排除の系譜

興銀時代、私は銀行の組合の副委員長を務めていたことがあります。

しかし実のところ、私は労働問題とか組合活動には疎い方で、学生時代にはマルクス経済学をかじったこともありましたが、いまひとつ納得できませんでした。

むしろサムエルソンの「近代経済学」を読んだ時の方がすとんと胸に落ちました。

私が学生のころは、労働問題とか組合というと、まず思い起こされるのが、ストライキ。

JRが国鉄と呼ばれていた時代で、ストで電車がよく止まり、これを利用する者としては大変不便な思いをしました。

国労と動労とがあって、それぞれがストを打っていたような記憶があります。

そう言えばこの当時、国鉄の上層部の方とお会いした時、「千葉方面は動労が強くて成田などには電車や列車のスピードを上げて運航することが難しい」と嘆いていたのが思い出されます。

もっともこれらは1960年代後半~70年代の話であって、実は終戦直後の組合は、これよりも更に強力であったようです。

電力会社でも同じで、かつて電産(日本電気産業労働組合)は強力な力を誇っていたと言われています。

しからば、その電産に電力会社はどう立ち向かったのでしょうか。

(木川田一隆は)「1946年6月、電産の前身となった「日本電気産業労働組合協議会」(電産協)の発足に伴い、これとの交渉役を果たすべく関東配電の企画課長から労務部長に昇進。すぐ労務担当の常務へと昇格し、以来、日発と九配電の首脳らで構成される「電気事業経営者会議」(電経会議)の事実上のリーダー格として、電産を圧倒する労務管理を追求し続けた・・・なお平岩外四が木川田の直属の部下になったのもこの時代だ。1949年に労務部の給与基準係長を拝命し、木川田の下働きを務めている」(123頁)

このように木川田一隆らが電産を排除していく過程を描くことで、東電という会社に流れる脈々とした「企業体質」とでも言うべきものに迫ろうとした作品が、『「東京電力」研究 排除の系譜』(斎藤貴男著)です。

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実はこの本は、ある出版社の編集長の方から「凄い本がありますよ」と勧められて購入したもの。

この編集長は著者の斎藤さんと知り合いらしいのですが、編集長が太鼓判を押しただけのことはあって、読んでみると、私も「なるほどこれは凄い本だ」との感想を持ちました。

数多くの人たち(多くが鍵を握る人物)に取材(インタビュー)を重ね、調べた文献の量も半端ではありません。

しかも本書のカバーする領域は東電に収まりません。

たとえばGHQとレッドパージとの関係。

「レッドパージは「日本の経営者が仕掛けた戦後初めてにして最強の労働争議」であった」(121頁)とする説。

あるいは、

「経団連には他にも、財閥や金融機関の経営者をトップに据えないという暗黙のルールがあった。強大で産業資本の生殺与奪の権を握っている彼らが覇権を得たら、総資本がいいように誘導されてしまいかねないからである」(219頁)といった記述。

本書を読むことで、乾いた土に水がしみこむように、いろいろな事実関係が頭の中にインプットされていきます。

知らなかった部分を知ることで全体像がはっきりと見えてくる、別な言い方をすると、パズルの missing piece が次々と見つかって埋まっていくような快感を得ることが出来た本でした。

もちろんジャーナリストである著者は自らの意見を本書ではっきりと主張しているのですが、自説を強引に展開するようなスタンスは見られません。

むしろ事実を丹念に積み上げているところが多く、事実は事実、意見は意見とはっきり分かれて提示されているところが好感が持てます。

さらに膨大な形で出典が注記さているのも特徴。

あとがきに「私が少なくとも原発推進の立場でないことを承知しながら、それでも誠実な対応をしてくれた原子力ムラの関係者たち、東京電力総務部広報グループの青野泰朗氏にも深く感謝したい」(389頁)とありますが、この本の立ち位置を示す言葉のようにも思えました。

前回のブログ記事でファクラーさん(NYタイムズ)の書籍を紹介しましたが、ファクラーさんに、日本にもこういう経済ジャーナリストがいることを知ってほしいと思いました。

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2012年9月11日 (火)

おはよう一直線

明日(12日、水曜日)、朝早いのですが、TBSラジオ「生島ヒロシのおはよう一直線」に電話出演します。

番組は5:30AM~6:30AM。

私が出るのは5:40頃です。

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2012年9月10日 (月)

モーラル・アウトレイジ

東日本大震災から明日でちょうど1年半になります。

* * * * * *

先週日経CNBC「日経ヴェリタストーク」に出演しましたが、番組収録後、キャスターの方から「岩崎さんはどこからいろいろな情報を仕入れているのですか」との質問を受けました。

先週の番組で話した内容の多くは、たまたま来日していたシリコンバレーの人との話とか、先月アメリカに行った時に会った人たちとの話がベースになっています。

もちろん人から聞いた話をそのままテレビで話すわけにはいかないので、信憑性については国際機関や各国政府、中央銀行のウェブサイト、学術論文などでチェックします。(シェールガスの話については結構たくさん論文を読みました)。

もう一つ。海外のメディアにもよく目を通しています。

正確な情報をいち早く入手するのは投資の世界にいる人間にとっては極めて重要なこと。

そして残念なのですが、日本のメディアからの情報だけでは十分でないことも多いのです。

たとえば少し前の話ですがオリンパス事件。

日本の雑誌FACTAの報道や解任された英国人社長の話を受け、ブルームバーグやウォール・ストリート・ジャーナル、ニューヨーク・タイムズなどの海外メディアがオリンパスによって支払われた数百億円にも上るM&A手数料をおかしい(不当に高い)と盛んに報じました。

私は海外メディアの報道を受け、自分でもオリンパスの有価証券報告書を調べ、ブログで10月19日から何度もこの問題を取り上げました。

M&Aの世界にいた人であれば、2,600億円程度の買収に対して 687億円もの手数料を支払うことが、「あり得ない」ことは誰にでも分かる話です。

海外では盛んに報じられているのに、当初は日本の大手新聞は、オリンパスの経営陣の発表を報道するのみで、なかなかこの問題を取り上げませんでした。

日経新聞は新聞社の先輩の方がオリンパスの社外取締役に入っていましたし、世界経営者セミナーに当時の菊川代表取締役会長兼社長をスピーカーとして招いていた(それも「コーポレイト・ガバナンス」について話す予定だった)ので、オリンパスの問題を取り上げにくかったといった事情があったのかもしれません。

しかし朝日にしても毎日にしてもこの問題を正面から取り上げようとしなかったのは不思議でした。

唯一NHKの記者だけが私のブログを見て連絡してきました。私はNHKのニュース・ウォッチ9に出演して、「オリンパスが支払ったM&A手数料の水準はあり得ない水準である」と番組で話しました。(この辺の経緯はすべて昨年10~11月の私のブログに記してあります)。

日本の大手新聞がオリンパスの件を大々的に報じ始めたのはこれよりもずっと後、具体的には会社が損失隠しを認めた後からです。

日本のメディア報道だけをベースに株の売買を行う個人投資家は海外勢に比べて不利な状況に置かれてしまうという一例です。(10月13日には2,482円を付けていたオリンパスの株価が11月11日には5分の1以下、460円にまで下落しました)。

このように日本のメディアがなかなか問題に切り込めず、当局や会社の発表をベースに報道するという姿勢は、海外メディアの関係者にはなかなか理解できないのかもしれません。

* * * *

以下は最近読んだニューヨーク・タイムズ東京支局長、ファクラー氏の本の一節です。

「2003年、・・・みずほ銀行のこうした現状について、私は・・ウォール・ストリート・ジャーナルにかなり批判的な記事を書いた。

これに、みずほフィナンシャルグループの広報担当者は激怒した。

彼は毎日のように私に電話をかけてきて、詰問口調であれこれ質問をぶつけてきた。

さらに、『ウォール・ストリート・ジャーナルから広告を全部引き上げる』と脅された。 

ウォール・ストリート・ジャーナルの上司にその話をしたところ、

『そうか。だったら広告なんてやめても構わないよ』と言って、

『ハッハッハッ!』と高笑いしてくれた」(104~105頁)

実はこのように、日本では通用するかもしれないけれど米国ではあまり通用しない話というのは、たくさんあります。

私の経験でも、外資系の投資銀行にいた時、銀行株のアナリストが書くレポートの内容が銀行にとって批判的だから、お宅には一切ビジネスを発注しないと言われたことがありました。

当時、私は金融機関を担当していなかったにもかかわらず、ある銀行の常務に呼び出されて、「そのように君たちの会社の上層部に伝えておいてくれ」と言われたのです。

しかし株価アナリストが公正なスタンスを曲げれば、株式部の顧客であるところの機関投資家に迷惑をかけてしまうことになるので、投資銀行は通常、このような圧力には屈しません。

* * * *

ところでファクラー氏のこの本を読むまで、私はニューヨーク・タイムズ東京支局による「3・11に関する調査報道」が、ピュリッツアー賞国際報道部門のファイナリストに選ばれていたことを知りませんでした。

氏はこの本で「メディアが権力を批判し・・なければ、健全な民主主義は絶対に生まれない」と記しています。

そして良いジャーナリストとは「a sense of moral outrage」を持つものだとして、日本の現状を「一番の被害者は、日本の民主主義そのものだ」と憂いています。

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『「本当のこと」を伝えない日本の新聞』と、タイトルはややセンセーショナルですが、いたって真面目な本だと思いました。

* * * * * *

東日本大震災から1年半。

はたして日本のメディアに変化があったのでしょうか。

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2012年9月 9日 (日)

ウラジオストク

ウラジオストクでの野田首相とクリントン国務長官との面談。

日本の新聞では「米、日本の脱原発に“関心”」などと報じられています。

クリントン発言の背景にあるのは米国サイドの下記レポートのような考え方なのだと思います。

The U.S.-Japan Alliance

(注: @niftyのココログのアップロード上限が1メガのため直接ブログにアップできません。上記のサイトに行ってPDFファイルをダウンロードすれば全文を入手できます)

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婦人公論

9月7日発売の婦人公論

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小島慶子さんによる曽根綾子さんへのインタビュー、

上野千鶴子さんと香山リカさんとの対談、そして

瀬戸内寂聴さん、美輪明宏さん、藤原竜也さんによる3者対談

といった具合に読み応えのある内容になっています。

その中にまじって私の記事(30~33頁)も載せて頂きました。

宜しかったらご覧になってみてください。

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2012年9月 8日 (土)

教えることの難しさ

2007年から大阪経済大学社会人大学院(北浜キャンパス)で毎年講師を務めてきています。

もう今年で6年目なのですが、毎年実感するのが教えることの難しさ。

受講生と一口に言っても、公認会計士もいれば、証券会社勤務の証券マン、中堅企業の経営者、自分で投資講座の私塾を経営されている方など様々な方がおられます。

一人ひとりの経験やニーズは違っていて、ある人にレベルを合わせると他の人は何が語られているのかよく分からない(あるいは逆に退屈に感じられる)ということが起こりえます。

受講生全員が「土曜日の午後にわざわざ学校に来てよかった」と感じるような講義をするというのは、言うのは簡単ですが、実は結構大変なことなのです。

思うに、教えるということには、いくらやってもきりがないという要素があるような気がします。到達点が見えにくいのです。

社会人大学院でもこんな状況なので、小学生や中学生相手の現場の先生のご苦労はほんとうに大変なものだと推察されます。

もちろん学校の先生といってもいろいろですから、なかには割り切っている先生もいれば、教頭や校長といった管理職を目指している先生もいるかもしれません。

しかし多くの先生が現場で一人ひとりの児童や生徒の能力を伸ばすにはどうしたらいいのだろうと知恵を絞っているのが現状なのだと思います。

クラスの出来ない子、宿題をやってこない子にレベルを合わせて授業をすれば、きちんと宿題をやってきた子は退屈してしまいます。

かといってきちんと宿題をやってきた子に授業を合わせれば、やってこなかった子は落ちこぼれていってしまうかもしれません。

* * * * * *

話は少し脱線しますが、今春「自分年金をつくる」といったタイトルの本を書いたことから、読者の方から問い合わせやご意見を頂くことがありますが、なかにはこんな問い合わせ(ご意見?)もありました。

「苦労して自分年金を作ったとします。すると、あなたは自分年金があるのだからといった理由で公的年金を減らされてしまうリスクはありませんか」

何やら宿題をやってきた子とやらない子、あるいは、ヨーロッパできちんと働くドイツ人と必ずしもそうでないギリシャ人の問題にも似たような設問です。

確かに老後のことが心配だとして必要以上に財布の紐を固くしてしまっている人もいれば、その逆に、いざとなれば生活保護の世話になればいいとして老後のことを深く考えずに大胆に使ってしまっている人もいます。

前述の本は、公的年金の不足分をいったいどのくらい自助努力で穴埋めすれば良いのかという視点で書いた本なのですが、もっと根底には自助努力をした人としなかった人との間でこれから先、公的年金支給額に差がつけられていくのかどうか、といった大きな問題が横たわっています。

もちろん現状は差をつけないというものですが、老後に余裕のある人の年金額をカットしようとの案も出てきています。

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2012年9月 5日 (水)

バルボア・アイランド

AFS留学で米国のどの地域に留学するかは、留学生にとっての関心事。

しかしこれは全てニューヨークのAFS本部が決めます。

留学生受け入れを希望する全米の家庭と、全世界からの留学生とを突き合わせて、「この留学生はこの家庭に」と決めるマッチングの作業・・・。

このマッチング作業がニューヨークのAFS本部で行われ、それに基づき、「あなたの留学先はここです」といった連絡がニューヨークから送られてくるのです。(・・・と、ここまでは私が留学した当時の情報ですが、現在でもこのシステムは変わっていないようです)。

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今から40年ほど前。当時日本から毎年100名ほどの留学生がAFSでアメリカに送られましたが、アラスカに留学した人もいれば、(確認していませんが)ハワイに行った人もいたのだと思います。

私と同じ年に留学した人もアイダホ州に行き、見渡す限り一面ポテト畑だったという人もいれば、アイオワ州に留学し、ライフルの打ち方を習ったという人もいました。

そんな中、高校生の私のところに届いた封書には、「あなたの留学先はカリフォルニア州バルボア・アイランドです」とありました。

当時はこう言われてもよく分からず、私は

「アイランドとは、もしかすると、太平洋沖合の島なのか・・。だどすると、せっかくアメリカに留学するのにアメリカ大陸には行けないのかも・・・」

と勝手に思ったりしました。

実際に留学するまでは、この地が全米有数の富裕層が住む地で、同じニューポートビーチ湾内のすぐ近くの島には映画スターのジョン・ウェインなども住んでいるといったことを全く知らなかったのです。

地図で見ますと、バルボア・アイランドは上図(クリックすると大きくなります)のAの場所に位置します。

ロスアンゼルスから南東に65キロくらい行ったところ。

この島は今から100年以上前、1909年ころにニューポートビーチ湾を浚渫して作られた湾内の人工の島です(『こちら』『こちら』を参照)。

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       (1921年頃のBalboa Island)

島と言っても下の写真のように湾内の島であり、しかも橋で陸地と繋がっています。

Balboa_islandkmz_4

先月訪れた時に写真を撮ってきました。

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この Coral Ave. の 117番地の家が当時私が留学していたところ。

ただし現在の家は、20年ほど前に新しく買ったオーナーが建て替えたものです。

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島では幾つかの住宅が売りに出されていました。

リーマンショックで不動産価格はかなり下落しましたが、ベイフロントの家は5億円、海辺から150メートルくらい離れた家で2億円前後といった値がついていました。

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2012年9月 4日 (火)

グリーンリバー

グリーンリバーはコロラド川の支流。

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     (グリーンリバー)

ワイオミング州に始まり、ユタ、コロラドの各州を流れ、コロラド川となっていきます。

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     (グリーンリバー流域)

グリーンリバーがコロラド川と合流するときの景色は有名。

2つの川の色が違うからです。

下の写真のように緑色のグリーンリバーと茶色のコロラド川とが合流するのですが、その景色はまさに圧巻。

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さてこのグリーンリバーがいまなぜ経済の分野で注目されているのでしょうか。

それはこの地のグリーンリバー鉱床(グリーンリバー層)が世界最大のオイルシェールの埋蔵量を有するからです。

      Oilshale_2   

      (燃焼するオイルシェール)

BPによれば、2011年末の世界の石油可採埋蔵量は1兆6530億バレル(『こちら』)。

これにほぼ匹敵する量のオイルシェールがグリーンリバー鉱床にあると言われています(『こちら』『こちら』など)。

技術進歩によりオイルシェールから原油を生産するコストが低下していけば、いずれはこの地域が世界最大のオイルの生産地となるかもしれません。

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2012年9月 3日 (月)

日経CNBC

日経CNBCの日経ヴェリタス・トークに出演しました(9月3日(月) 22:01~22:16)。

再放送は、9月3日(月) 24:00~、9月4日(火) 18:30~、19:06~です。

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シェールガス革命(その3)

昨日シェールガス革命(その2)の記事を書きましたが、たまたま今朝日経新聞でシェールガスの記事を目にしました。

松尾博文編集委員による「シェールガス革命 明と暗」(第11面)。

シェールガス革命によって世界のエネルギー情勢が大きく変わります。

このことによる日本企業へのマイナス面にも着目した記事であり、これまでこの辺に着目したマスコミ記事があまり無かっただけに価値あると思います。

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米国では安価なシェールガスを使ったエチレンの新設計画を積み上げると年産800万トンにもなるとのこと。

製造コストが日本の数分の1のこれらの製品が世界市場に出回れば、日本の化学メーカーはどうなるのでしょう。

あるいはシェールガスによりアメリカの発電コストはますます安くなるし、自動車の分野でもこれから先、電気自動車よりも天然ガス自動車が主力になるかもしれません。

ところで、世界最大の石油産出量を誇るサウジアラビア国営石油会社「サウジアラムコ」はシェールガス革命などによって起こるかもしれないパラダイムシフトについてどう考えているのでしょう。

今年の6月にサウジアラムコのCEO、Khalid A. Al-Falih がスタンフォード大学で講演した時、1人の学生(日本からの留学生)がこの点についてCEOに質問しました(上の写真)。

この点に関するCEOの答えは―。

『こちら』のYouTube でご覧いただけます。47分も続く講演会のビデオですが、上記質問と答えだけをご覧になりたい方は38分5秒くらいまでカーソルを動かしてからご覧になってみてください。

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2012年9月 2日 (日)

シェールガス革命(その2)

6月でしたが、シェールガス革命について書きました(『こちら』)。

従来不可能とされていたシェールガスを人類はどうやって採掘することに成功したのでしょうか。

ニューヨークタイムス紙などでシェールガス革命をもたらした人として登場する(たとえば『こちら』の記事)のがジョージ・ミッチェル氏。

        George_mitchell

今年93歳になったジョージ・ミッチェル(『こちら』)は、今から31年前、1981年からシェールガスの採掘に挑戦し始めます。

人工破砕や水平掘削などの工夫を重ね、1996年についに成功したとの話がテキサス大学のエリック・ポッター(アソシエイト・ディレクター)のもとにも伝わってきます。

しかし本当の意味で成功と確認されたのが1999年。ミッチェルが最初にこの技術に挑戦した1981年から数えて18年の歳月を要しました(『こちら』)。

この結果、彼は2004年フォーチュン誌の世界の富豪トップ500の一角を飾るようになり、現在でも個人資産1700億円を有し、フォーチュン誌の富豪リストに取り上げられています(『こちら』)。

なお日本語には翻訳されていませんが、ジョージ・ミッチェルの奮闘記は本になっています(『こちら』)。

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さてミッチェルが成功した後、2000年の段階ではアメリカのシェールガスの生産は全米のガス供給量の1%を占めるに過ぎませんでしたが、2011年には30%を占めるに至っています(『こちら』)。

今や米国は100年分以上もの採掘可能な天然ガス資源を持つとのことで、この結果、ダウケミカルやVallourec (仏)などの会社がシェールガスの産出地近くに工場を建設するようになったとのこと(『こちら』)。

シェールガス革命の結果は原油価格にも影響を及ぼすようになったと考えられています。

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上のグラフはクリックするとぐんと大きくなりますが、10年間の原油価格(WTI)をプロットしたもの。

2008年には140ドルを超え、いずれ200ドルになると言われていたのが記憶に新しいところです。

その後リーマンショックで暴落しますが、徐々に回復。

QE1やQE2でマネーの供給が増え、ダウ平均株価は史上最高値(引値ベース)14,000.41ドル(2007年7月19日)の94%のレベルにまで達してきました。これに対して、油価が 80~110ドル圏にあるのは、シェールガスなど非在来型天然ガスの開発成功も一因となっていると見る人が少なくありません。

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2012年9月 1日 (土)

狭い世界

バーナンキのジャクソン・ホールでのスピーチには決定的な内容は含まれておらず、as needed で対応するとのこと。

為替や株価は微妙な動きを示しました。

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この結果、9月12~13日のFOMCがどういったことになるのか、益々分かりにくい状況となってきました。

* * * * * *

さて話は変わります。

8月11日に催されたアメリカの高校の同窓会に参加した時。私は結構たくさんの人に会いました。

幹事の話によるとパーティーに出席したのは全部で 244名。

とても全員と話すことは出来ませんでしたが、実際に話したのが仮にその1割だとしても24名。

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クラスメートのジュリーはご主人を連れてきていました。

彼の名前はマイケル。

話してみるとスタンフォードのビジネススクール出身だと言います。

「何年の卒業ですか」と尋ねると、

「JDプログラムでビジネススクールとロースクールの双方を卒業したので88年だ」とのこと。

「私は80年の卒業です」と告げると、「ビノッドやラッセルと同じですね」との答えが返ってきました。

ビノッドもラッセルもベンチャーキャピタリストとして有名。

「2人を知っているんですか」と尋ねると、「シリコンバレーは狭い世界ですからベンチャーキャピタリストはだいたい知っています。ラッセルとは一緒に働いていたこともあるんですよ」とのこと。

私もかつてラッセルのファンドとは仕事で接点があったことがありました。

そういったことも含め、いろいろ話していくと共通の知人がどんどんと出てきました。

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マイケルが「あなたの会社はどういった仕事をしているのですか」と聞いてきたので、

「仕事の半分はマネジメント・コンサルティング。そこで得た収益をスタートアップ企業に対するシード・インベストメントや一部アーリーステージ・インベストメントに向けています」と答えました。

するとマイケルは「それは難しい領域で仕事をしていますね」。

そして彼は次のように続けました。

「我々のファンドもいろいろと調べましたが、日本でベンチャー・キャピタル業務を行うのは極めて難しいとの結論に達しました。

クライナーやセコイアも中国には拠点を設けているけれど日本には拠点を設けていないでしょう。

日本では優秀なエンジニアやサイエンストは起業することを選ばず大企業に行くと聞いています。

逆に日本企業の研究開発部門には優秀な人材が眠っているとの話も聞こえてきます」

なるほどアメリカの大手ベンチャー・キャピタルは結構日本や中国のことをよく調べた上で、日本ではなくて中国の方に進出している・・・。

言われてみれば、中国もアメリカと同じように格差社会で競争社会。

それに比べて日本はある意味、「居心地の良い社会」ですから積極的にリスクを取ろうという人が出にくいのかもしれません。

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