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2013年2月13日 (水)

エコノミストの見方

先日のブログ(『こちら』)に

「リーマンブラザーズでの毎週月曜日、朝のミーティング。これはエコノミスト、ポール・シェアードの話から始まった」

と書きましたが、

興銀でも部店長会議の際には調査部長の話がかなり重要な位置を占めていました。

調査部門を抱えている金融機関はある意味恵まれているわけですが、そうでない場合はネットなどを使って積極的に情報を取りにいくことが重要になります。

たとえば先日の経常収支半減のニュース。

新聞記事を読むとかなり心配になりますが、興銀の調査部出身の塚崎さん(久留米大学教授)の説明ですと、こうなります(以下、引用)。

昨年の経常収支黒字が半減したそうです。

しかし、今年は再び増加に転じるでしょうから、心配は無用です。

輸入はドル建て、輸出の一部は円建てであるため、輸出入数量が変化しないとすれば、円安によって貿易収支は悪化するでしょう。

かし一方で、投資収益は、受け取りが外貨建て、支払いが円建てですから、大幅に黒字が拡大して、貿易収支の赤字拡大を帳消しにするでしょう。

あとは、円安で輸出数量が増えて輸入数量が減る分だけ経常収支黒字が増えるという計算です。

海外の景気が悪化すれば別ですが、海外の景気は緩やかに拡大していくと思われますから、その面でも大丈夫でしょう」

なるほど、という感じですね。

消費者物価は上がっていくかについては:

(以下、これも塚崎さんのコメントの引用です)。

「ESPフォーキャスト(エコノミストたちの予測の平均値)が発表されました。

これによれば、消費者物価指数の上昇率は13年度が0.17%、14年度が2.45%となっています。

消費税が3%引き上げられた分がフルには転嫁されないという予測になっているのです。

これは、「消費税の転嫁分を除いても2%は消費者物価が上昇する」という「日銀の目標」とはかけ離れています。

解散表明前の昨年10月末に行なった同じ調査で13年度が0.11%、14年度が2.36%であった事と比較しても、ほとんど予想インフレ率は高まっていません。

つまり、エコノミストたちは、日銀が金融を緩和してもインフレ率は高まらない(高まったとしても誤差の範囲である)、と予測していることになります。

金融緩和が直接物価に与える効果だけではなく、為替の円安や経済成長率の上昇も、予想インフレ率にはほとんど影響...していない事になるのです。

金融緩和による物価への直接的な影響が無いという点では、私の意見も同じなのですが、円安になっても成長率が高まってもインフレ率には影響しない、と言われると、さすがに違和感を感じます。

日本の物価がそこまで上がりにくい体質になっているのか、エコノミストたちの物価観がそこまでデフレ慣れしているのか、私は後者だと考えていますが、どうでしょうか。

(ちなみに日銀自身も、解散表明前から消費者物価予想をほとんど変えていません。

これは、「日銀としては、これ以上金融を緩和しても意味がない、と考えている」という主張なのでしょう。しかし、実際に円安になり、成長率予測も上方修正しているのですから、消費者物価見通しも上方修正しても良いと思いますが・・・)

エコノミストとは別に、経済界の人々はどう考えているのでしょうか?

経済界の人々もエコノミストたちと同じように「物価は上がらない」と考えているのだとすれば、実質金利(=金利-期待インフレ率)は高まらず、設備投資も増えにくい、という事になってしまうかも知れません。そうだとすると、あまり嬉しくないですね」

* * * * * 

私は時おり塚崎さんのウェブサイトを見て参考にさせていただいています(『こちら』です)。

 (注)上記2つの記事はウェブサイトには載っていないかもしれません。

詳しくは上記にリンクを貼りましたので、塚崎教授のウェブサイトを直接ご覧になって頂ければと思うのですが、最近の塚崎さんの記事で興味深かったものをPDFファイルの形で以下に載せておきます。

『アベノミクスへの期待』

『金融緩和に賭けるべきか』

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