M&A の視点からみた「これからの企業財務戦略」
デフレ時代には企業は果敢な設備投資を行いづらくなります。
投資計画を立てて設備を発注し、増設を完了させ、いざ生産活動を開始するようになる頃。
この頃には、デフレのために製品販価引き下げを余儀なくされるような状況に陥ってしまう。
こうしたことが起きかねません。
いきおい企業としては日常の企業活動で上げるキャッシュを
「とりあえず現預金のまま貯め込んでおく」
といった行動に出てしまう・・・。
そして円高メリットを享受すべく(貯め込んだ現預金を使って)
円ベースでは安くなった「海外企業の買収」を行ったりするようになります。
(上図は拙著「M&A新世紀」のカバー写真から)
ところが・・です。
円高が是正されると、こうした企業行動は変更を余儀なくされるようになります。
多くの日本企業は外資ハゲタカのターゲットになりうるようになるからです。
今は日本企業の株価収益率(Price Earnings Ratio; PER)は 24となっています(『こちら』)。
つまり企業が上げる予想キャッシュフローに対して株価が高い(注:米ダウ平均株価のPERは13です 『こちら』)。
このため、日本企業を狙う動きはまだ活発化していません。
ただ今後企業収益の方が上がってきて、PERが国際的にみた「歴史的平均値」(=14)に近づいてくると話は違ってきます。
ターゲットとして日本企業がハゲタカたちの視野に入ってくるようになります。
その時には一部の日本企業が抱える「過分なキャッシュ」はハゲタカたちを惹きつける「エサ」となってしまいかねません。
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円高という防波堤が期待できなくなってきた昨今、企業が持つ余分な現預金は設備投資に回してキャッシュフローを高めるのに使うか、あるいは適当な投資案件がないのであれば、増配や自己株購入(消却)の形で市場(投資家)に返すことを考えるべきです。
買収防衛策としては、ROEを高めて株価を上げるのが、いつの時代にも相応しい手法です。
ここで、R(企業収益)を高めるのが難しければ、E(自己資本)を引き下げる、すなわちレバレッジを高めることを検討すべきです。
たとえば自己株を購入・消却するための資金を銀行借り入れによって調達すれば、レバレッジは一気に高まります(お金が、日銀→銀行→企業という形で回るようになります)。
企業が資金効率を高め、適正な負債比率を実現すること―
このことはROEの改善、ひいてはハゲタカから身を守ることにもつながっていきます。
同時に、市場でお金が「より効率的に」回っていくことにもつながっていくことが期待されます。
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