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2013年5月 6日 (月)

保守的な投資家はよく眠る (3)

フィッシャーの『保守的な投資家はよく眠る』という本の第6章。

モトローラの話が出てきます。

1974年3月12日。

モトローラの株価は48ドルと5/8でした(48.625)。

翌朝株価は60ドルを付けました。

23%強の上昇。

12日の取引終了後にモトローラが

「テレビの製造から撤退し、工場と在庫を松下(現在のパナソニック)に売却する

と発表したからです。

さて、このニュースを受けてモトローラの株式購入に走った投資家は正解だったのか、どうか?

フィッシャーいわく

「株価が安いか高いかは、それまでのその会社の株価と比較して判断すべきではない。たとえどんなに我々がこれまでの株価に慣れ親しんでいようとも、だ」

「ポイントは現在の市場関係者による評価に比べて、実のところ会社のファンダメンタル(事業素質)はいったいどうなんだ、ということだ」

分かったような、分からないような説明ですが、この話から遡ること約20年。

1955年にフィッシャーはモトローラの株を購入。

以降2004年に96歳で亡くなるまで彼は約50年間モトローラを保有し続けました。

この間、モトローラは配当を出していましたので、株価だけで投資のリターンを把握することは出来ません。

しかし息子さんのケニス・フィッシャーが書いた文章によると、1978年から2003年までの25年間(約50年の保有期間の約半分)だけで、配当を入れないで計算しても株価は30倍になったとのこと。

ちなみに会社の資本勘定はどう変化したか。

1955年と2004年のモトローラのアニュアルレポートを比較してみると、約50年間で資本勘定は56百万ドルから13,331百万ドルへと、238倍へとなっています。

* * * * *

以上がモトローラの話ですが、一般にフィッシャーというと有名なのが、

【1】このモトローラの話(約50年間保有して素晴らしいリターンをあげた)と、

【2】フィッシャーの15原則です。

フィッシャーの15原則とは株式投資をするにあたってのチェックポイント。

15原則のうちの多くを満たせば投資は、“ボナンザ”【bonanza】(正解)。

逆に多くを外せば投資は失敗になることが多いとフィッシャーは言います。

またこれらの15ポイントについてフィッシャーは

「会社の関係者(従業員、元従業員、納入業者、顧客、競争相手)や会社の経営陣に直接質問するときに使ってもいい」

と述べています。

なおこの15原則はフィッシャーの最初の書籍、『Common Stocks and Uncommon Profits』(1958年)に出てきます。

* * * * *

さて、フィッシャーの15原則の第1は以下のとおり。

「その企業は、十分な潜在力をもっているか。

すなわち少なくともこれから先数年は売上をかなりの程度で向上させるだけの製品やサービスをもっているか?」

この第1の原則を説明する際にフィッシャーはモトローラを引き合いに出します。

当時(1950年代後半)モトローラはラジオ無線の世界でナンバーワンでした。

「ラジオ無線による双方向コミュニケーションは警察やタクシーの分野で使われ始めた。

しかし今(1950年代後半)や、無限の成長の可能性を持っている。

トラック業界、配達業者、建設会社などでも使われるだろう。

さらにモトローラは半導体の分野にも進出している。そのほかステレオ・蓄音機、補聴器なども期待できる」

フィッシャーはこうしてモトローラは少なくともこれから先数年は売上をかなりの程度で向上させるだけの製品やサービスをもっていると判断し、モトローラの株を買ったと言います。

ところが1955年に購入した後、モトローラの株はパッとしません。

個入価格から5~10%下落したレベルで行ったり来たりしています。

フィッシャーの顧客の一人はこのことにイラつき、モトローラという単語を言うのを意図的に避けてフィッシャーと会話をしたと言います。

「that turkey which you bought me (あんたが私に買ったあの“どうしようもない株”だが)・・」

という具合です。

しかしフィッシャーは「いったん投資した以上、3年間は持つ」という3年ルールを事前に決めていました。

3年後、モトローラの株はある巨大機関投資家(保険会社)が当時持っていた全ポートフォリオの中でもっとも高いパフォーマンスを上げていました。

* * * * *

なおモトローラはその後ケータイ電話機器端末の分野にも進出していきます。

2011年、モトローラは携帯電話とセットトップボックス事業を行うMotorola Mobilityと、

エンタープライズおよびネットワーク事業製品を担当するMotorola Solutionsの2社に分社(両社とも上場会社)。

Motorola Mobilityの方は 2012年にグーグルに買収されています。

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