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2013年5月 3日 (金)

暴走老人

本を買うに至るルートとしては、私の場合、大きく分けて2つ。

(1)書店で見て面白そうだから買う

(2)知人から「あの本は面白かったよ」と勧められて買う

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西条泰著 『石原慎太郎「暴走老人」の遺言』 は(1)のルートでは決して買わなかった本です。

都知事時代の石原さんの発言。

「新銀行東京をM&Aで買うことに関心を寄せているところがあるんです」

こういった発言はM&Aの世界ではタブー(それが事実であればディールの成立にプラスにならないので当事者は決して口にしてはならない)。

これは単なる一例ですが、正直なところ、私としては政治家石原慎太郎には1,000円出して本を買うほどの関心はこれまでありませんでした。(カラスを退治してくれたのは有難かったですが)。

ところが、Oさんいわく「この本はひじょうに面白い」とのこと。

虚心坦懐。

読んでみると、あにはからずや、なるほどこれは面白い本でした。

3章、4章あたりは石原慎太郎をヨイショし過ぎで、ちょっと長く感じましたが、1章、2章と5章、6章はテンポもよく、あっという間に読み終えてしまいました。

石原慎太郎の父親は脳梗塞に襲われ52歳で病死してしまいます。このとき石原慎太郎は大学受験を控えていました。

慎太郎いわく、

「一家の稼ぎ手を失った石原家の将来の見通しはつかなかった。

私の弟は、ありていに言えば不良ですわな。

私が一家の家計を支えなければならなくなった。

当時は京都大学に行って文学の勉強をしたかった。

しかし、ある人物から、そのころ制度となったばかりの公認会計士は収入がいいからやってみないかと勧められた。

そして、その合格への近道として一橋大学を紹介された」(本書188頁)。

しかし会計士の勉強は半年で止めたといいます。

法学部に入ったものの、一橋大学独特の“トンネル”と呼ばれる手法で社会学部の社会心理学のゼミ(南博教授)に入ります。

慎太郎いわく、

「一橋で学んだことなんて何もないよ。南先生も私を破門したしね。あとで和解したけどね」(本書191頁)。

私が本書で興味を持って読んだのは、このように人間石原慎太郎を描いている部分。

石原慎太郎という人物については、政治的には読者によって好き嫌いいろいろあるでしょう。(私も政治的には賛成できないことが多々あります)。

しかしたとえば、石原慎太郎が尖閣購入をぶち上げたワシントンでの演説(2012年4月16日)。

この同じ演説の中で、彼が同時に次のように述べていたのを私は本書を読むまで知りませんでした。

「私は、共産主義は嫌いですけど、毛沢東が短い論文でとてもいいことを言っている。

これは方法論としては非常に正しいと思います。

私たちの目の前にある解決しなくちゃいけないと思っている問題の背景には、もっと大きな矛盾がある。

それを彼は『主要矛盾』と言っています。

解決を強いられている問題は、実はその主要矛盾から発生した『従属矛盾』である。

背景にある大きな矛盾というものを捉えないと、本当の解決にはならない。

これから時間的空間的に狭くなっていく世界でいろんな問題が起こってくるでしょうが、

実はその背景に世界全体の歴史の中で大きな波が動いているということを知らなきゃならないと思います」(本書211頁)。

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