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2013年6月30日 (日)

ケインズと株式投資(その2)

香港に行っていて一昨日戻りました。

香港の人たちは相変わらずエネルギッシュというか、パワー全開という感じでした。

飛行機の中で読んだ本が、百田尚樹さんの『夢を売る男』

前回メルボルンに行くときに読んだ同じ百田さんの『海賊とよばれた男』が面白かったので、成田空港のTSUTAYAで買ったものです。

放送作家として活躍していただけあって、百田さんの本は読みやすいですね。

飛行機の中で読むにはうってつけでした。

本書の登場人物牛河原と荒木の会話が笑わせます(本書206頁より)。

「かといって、元テレビ屋の百田何某みたいに、毎日、全然違うメニューを出すような作家も問題だがな。前に食ったラーメンが美味かったから、また来てみたらカレー屋になっているような店に顧客がつくはずもない。しかも次に来てみれば、たこ焼き屋になってる始末だからな・・・」

「馬鹿ですね」

「まあ、直に消える作家だ」

一種の自虐ネタなのでしょうが、こう書けるのは、自信のなせるワザでしょうか。

* * * * *

さて前回のブログ記事の続き。

ケインズです。

ケインズを知るには、ロバート・スキデルスキーの3部作を読むべきと言われています。

John Maynard Keynes: Volume 1: Hopes Betrayed 1883-1920 

John Maynard Keynes: Volume 2: The Economist as Savior, 1920-1937

John Maynard Keynes, Vol. 3: Fighting for Freedom, 1937-1946

いずれも 500頁~800頁の大作で、まとまった時間が取れないと読破するのは大変そうです。

私のこのブログ記事は前々回、前回、そして今回も(スキデルスキーの3部作には依らず)、バートン・ビッグスの『ヘッジファンドの懲りない人たち』、東谷暁「経済学者の栄光と敗北- ケインズからクルーグマンまで14人の物語」、日経新聞、雑誌記事などを参考にして書いています。

* * * * *

1921-46年にかけて、ケインズはケンブリッジ大学の基金を運用しましたが、このときの記録をベースに記事にしたのが、2013年6月19日付の日経新聞記事。

この記事自体はDavid Chambers と Elroy Dimson による『こちら』のレポートをベースに書かれたものと推測されます。

日経の記事によると、ケインズの大学基金運用成績は年平均15.97%。

同時期の英国株式全体のリターンが年10.37%だったので、これを5%強上回ったとしています。

資産の6~7割を株式で運用。

運用スタイルは①バリュー投資、②集中投資、③長期投資、④逆張りといった具合で、ウォーレン・バフェットのそれに近いものであったとしています。

* * * * *

ケインズは「輝くばかりの知性と、かみそりのように鋭い頭脳を持っていた」(ビッグス、上掲書)と言われています。

1929年の大恐慌。

「大暴落で痛手をこうむったことで、ケインズは自分の個人資産の運用方法を変えた。 

1920年代、彼は自分を、通貨や商品の投機を使って景気循環で賭けをする科学的ギャンブラーであると考えていた。 

レバレッジは危険だと知りつつも、自分はどんな大災害も抜け目なく動いて避けることができると信じていた。 

一度、市場が下落しているときに、アルゼンチン産の小麦1ヶ月分の現物渡しを受けなければならなくなったことさえあった」 

「大暴落後、彼は株式に特化した。

価値を推定できるからだ。

また、バリュー派の長期投資を行うことがずっと多くなった。

しかし、リターンを大きく取るために、いつもレバレッジを使っていた」

「ケインズは根拠なき熱狂や相場の天井を見極めるのが決してうまくはなかった。

彼は1937~1938年の下落相場でまたしても大きな損失を出すことになる」

「ケインズが投資というゲームを好んだのは、投資とは自分の頭脳や直感で市場に立ち向かうことであるからだ」

「レバレッジと神経について言えば、ケインズは自分がやっていることをちゃんとわかっていた。

なにせ、1920~1921年、1928~1929年、そして1937~1938年と、レバレッジの高い代償を3度も払っているわけだから」

「1938年の終わり、彼の運用資産は14万ポンドに減っていた。

1936年の終わりに比べて62%の減少だ。

市場はすでに反発していたから、一番ひどいときの損はもっと大きかったに違いない。

ケインズが破産しかけたのはこれで3回目であり、突然鬱になったり癇癪を起したりするとリディアにこぼしている。

その後の年月、とくに第二次世界大戦中には、彼の投資は控えめだったが、ポートフォリオはいっそう株式が中心になった。

彼は株式に関する興味深い話をどうしてもやり過ごせなかったのである(以上、いずれもビッグス、上掲書)。

* * * * *

株式投資で成功するには「市場がフォローしてくれる」ことが必要です。

ケインズがいかに才気煥発で優良株を発掘できたとしても、ほどなくして市場がその優良株に気づき、フォローして買って値を上げてくれないことにはどうすることもできません。

ケインズは株式投資を美人投票にたとえましたが、「もっとも美人である女性」を選ぶのではなく、「投票者全体の平均的な好みに最も近かい者」を選ばなくてはならないとしました。

才あるケインズは、「もっとも美人である人」を選ぶことは出来たのでしょうが、市場は必ずしもそれに同意してフォローしてくれるとは限らなかったのです。

ケインズが62歳で生涯を閉じたとき、投資家としての彼は当時のお金で40万ポンド(注:50万ポンド弱との説もある)を残しました。

これは現在のお金で17億円とか20億円と言われています(注:32億円という説もある)が、いずれにせよ最終的には多くの財を残し得ました。

しかしそこに至る道のりはけっして平たんなものではなく、失敗と挫折と苦しみを伴うものであったのです。

70歳でヘッジファンドを始め昨年7月79歳で他界したビッグスは次のように書いています(上掲書)。

「集中力と深い洞察力を持つこの卓越した分析家でさえ、大きな成功であった投資歴の間に3回も破滅しかけたというのは、変な話だがほっとしてしまう」

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2013年6月24日 (月)

ケインズと株式投資(その1)

昨日に続いてケインズの話です。

ケインズというと誰もが思い浮かべるのが彼の著作、『雇用・利子および貨幣の一般理論』(1936年)。

学生時代に読んだ人も、読まなかった人も、もう一度、ウェブ上で(無料で)読むことが出来ます。

『こちら』をクリックすると原文が出てきます。

この本の第12章「The State of Long-Term Expectation」に株式投資に関する記述があります。

Or, to change the metaphor slightly, professional investment may be likened to those newspaper competitions in which the competitors have to pick out the six prettiest faces from a hundred photographs, the prize being awarded to the competitor whose choice most nearly corresponds to the average preferences of the competitors as a whole; so that each competitor has to pick, not those faces which he himself finds prettiest, but those which he thinks likeliest to catch the fancy of the other competitors, all of whom are looking at the problem from the same point of view.

It is not a case of choosing those which, to the best of one's judgment, are really the prettiest, nor even those which average opinion genuinely thinks the prettiest.

We have reached the third degree where we devote our intelligences to anticipating what average opinion expects the average opinion to be.

And there are some, I believe, who practise the fourth, fifth and higher degrees.

上記はケインズが記した原文ですが、野村證券のサイトに日本語での説明があります。

『株式投資は、投票者が100枚の写真の中から最も容貌の美しい6枚を選び、その選択が投票者全体の平均的な好みに最も近かった者に賞品が与えられるという新聞投票に見立てることができる。

各投票者は、自身が最も美しいと思う写真を選ぶのではなく、他の投票者の好みに最もよく合うと思う写真を選択しなければならないことを意味する。

何が平均的な意見になるのかを期待して予測することになる。 株式投資に関しても、投票者(=市場参加者)の多くの人が、容貌が美しいであろうと判断する写真を選ぶことが有効な投資方法であるということ』 (出所は『こちら』)。

ケインズは1919年の後半に、Oswald Toynbee "Foxy" Falk (1879-1972;『こちら』を参照)と2人でファンドを立ち上げます。

資金の出し手はケインズの父、義理の兄弟、ダンカン・グラントブルームズベリーのメンバーなどでした。

ファンドは1920年1月1日に運用を始め、2月の終わりまでに20%を超える利益を出しますが、ポンドの下落(対欧州通貨)などで損失を被り、一時期、ケインズの純資産はマイナスになるまで落ち込みます。

『1920年から1940年という史上最も相場が難しく、変動が激しかった時代』(下記書籍508頁より引用)に彼は投資活動を行い、3回も破滅しかけましたが、最終的には現在の時価にして約17億円の個人資産を残して生涯を終えます(1946年)。

この間の状況はバートン・ビッグス著『ヘッジファンドの懲りない人たち』に詳しいのですが、続きは次回に記すことにします。

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2013年6月23日 (日)

How much is enough?

「How much is enough? (いったい幾らお金を儲ければ気が済むんだい?)」

これは映画「ウォール街」(1987年)で、若き証券マン・バドが億万長者ゴードンに投げかける言葉。

「When does it all end? 

How many yachts can you water-ski behind? 

How much is enogh?」

とセリフが続きます。

「いったい終点があるのか(行き着く先は何なんだ) 

何隻のヨットを従えて水上スキーをするというんだ 

いったい幾らカネがあれば気が済むんだ」

とでも訳すのでしょうか。

How Much is Enough?: Money and the Good Life

さて話は変わりますが、この「How much is enough?」をタイトルにした本が、スキデルスキー親子が書いた上記の本(『こちら』)。

父親のロバート・スキデルスキーは英国の経済学者、歴史学者ですが、20年間を費やしてケインズの伝記を書いたことでも知られています(この伝記はWolfson History Prize、Duff Cooper Prize などを受賞)。

『こちら』にこの本(How much is enough?)に関するニューヨークタイムスのBook Review のリンクを貼っておきますので、ご関心のある方はご覧になってみてください。

スキデルスキー親子のこの本でも触れられていますが、1930年、ケインズは『Economic Possibilities for our Grandchildren(わが孫たちの経済的可能性)』と題するエッセイを著しています。

たった7頁ですが、ケインズの思考が分かって興味深いエッセイです(上記をクリックすると全文が読めます)。

ケインズはこのエッセイで、2030年には人々は週に15時間働くだけで生活水準を維持できるようになると書いていますが、はたして人々は自由な時間を潤沢に持つようになるとどういった行動を取るようになるのでしょうか。

彫刻や音楽などの芸術の道に進むのか、それとも overeat (過食)や飲酒、sleep late (寝坊)に終わってしまうのか・・・。

その昔、イギリスの貴族の「preferred leisure activities」は、hunting、gambling、seduction だった(上記NYタイムス Book Review)と言いますが・・。

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2013年6月20日 (木)

運動がビジネスにもたらすメリット

秋葉原駅クリニックの大和田潔院長へのインタビュー記事がプレジデント誌(6/3号)に掲載されていました。

      P

見逃された方は今からでも、PRESIDENT Online でご覧になれます(『こちら』です)。

詳しくは上記記事にありますが、大和田先生によれば、「運動は、脳を鍛え、判断力を冴えさせる効果ももたらしてくれ」るとのこと。

「体を動かすと、脳と筋肉の間のやりとりが活発化し、神経細胞ネットワークの速度が増していく。

その結果、体を動かしやすくなるだけでなく、脳の処理速度も向上していく」と言います。

「運動が認知症を予防し、ビジネスに必要なひらめきや判断力を向上させる可能性があることも、最新の研究によって分かってきました」とのこと。

たしかにジョギングをしていて、「プレゼンのアイデアがひらめく」なんていうことがありますね。

以下は上記記事のチャート図をコピペしたものです。

Photo_2

これを見ていて、私は昔読んだキューバ危機(1962年)の際のケネディ大統領の話を思い出しました。

一歩間違えば第3次世界大戦にもなりうる状況下。

ケネディ大統領は「海上封鎖」の最終決断を下す前に、プールで泳いだと言います。

一度頭の中を空っぽに近いような状況にしてみて、もう一度、その決断が正しいかどうかを判断したかったのでしょう。

最新の研究で分かってきたという「運動と判断力」の関係をケネディはすでに体得していたのかもしれません。

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2013年6月17日 (月)

長期金利

長期金利の動向が最近新聞紙上をにぎわしています。

ここ3カ月間の10年もの国債の利回りは下図のように推移してきています(ブルームバーグ『こちら』より)。

Jgb3_4

黒田緩和が4月4日に発表された後の翌5日、 10年もの国債の利回りは一時0.315%をつけました。

これは10年ものとしては、歴史上世界でもっとも低いレートと言われています。

しかし長期金利はその後上昇し、5月23日には一時1%台を付けるに至っています。

この間の推移をグラフ化した上の図を見るとたしかに金利は急上昇。

「いったいどうなってしまうのか」と心配になってくる方もおられると思います。

しかし、上と同じグラフをもう少し過去にまで遡って、スパン(期間)を長くして見てみると違った様相になります。

たとえば過去5年間の動きを見てみるとどうでしょう。

下図は10年もの国債の利回り推移を過去5年間にわたってプロットしたもの。

Jgb5

この図からも今年4月から5月かけての金利上昇の様子が(グラフの右端で)見てとれますが、昨年の春以前は、10年もの国債の利回りが1%を超えているというのはさほど珍しいことではなかったことが窺えます。

むしろここ5年の間では長期金利は1%を超えるときの方が多かったと言えます。

さて、ここからが本題です。

それではなぜ最近の長期金利の動向がこれほどまでに騒がれるのでしょうか。

それは長期金利がこの段階(2013年5月)で1%を超えるようになるとは、政府・日銀は想定していなかったからだと思われます。

黒田緩和により、日銀が買う長期国債は毎月7兆円。

新発債の発行額の7割に相当します。

本来ならば日銀によるこうした大規模購入で長期国債の需給が引き締まり(値段が高くなり)、長期金利の低下要因となるはずなのですが、金利は逆に上昇してしまったのです。

意に反した動きが出てしまったわけです。

この理由については

(1)日銀の大規模購入を起因とする流動性低下によるボラティリティ上昇である、とか

(2)民間銀行が将来の金利上昇(債券価格下落)リスクを嫌って保有国債の平均残存期間(デュレーション)を短期化したため

などと言われています。

いずれにせよ政府・日銀があまり想定していなかったことが起きてしまったことから、黒田緩和は大丈夫なのか、といった懸念が出てきてしまいました。

金利の急激な上昇は金融機関に巨額の評価損を発生させ得ます。

日銀は『金融システムレポート』の中で、1%の金利上昇によって銀行に6.6兆円の評価損が発生するとの試算を示している(全期間の金利が上昇する場合)とのこと(『こちら』)。

日経新聞(5月19日付)は、「48兆円の国債を持つ三菱UFJの場合、金利が0.1%上昇するだけで国債価格の下落で1500億円の評価益が吹き飛ぶ」と報じました。

今から2~3年後。

黒田緩和が奏功すれば2%のインフレが達成していることになります。

そのとき長期金利は2%を超える水準になっているはずです。

しかし現在はまだデフレが継続中。5月31日に発表された消費者物価指数は前年同月比▲0.4%。

6か月連続のマイナスでした。

デフレ下での長期金利の急激な上昇は、それがたとえ0.8~0.9%の水準であったとしても経済に与えるネガティブな影響が大きいことが懸念されます。

とくに日銀がこれをコントロールする有効な手だてを持っているとは考えにくいだけに、長期金利の動向が大きなニュースになりうるのです。

なお長期金利の上昇によって住宅ローン(固定金利もの)も若干ですが上昇してきています。

すでに5月の段階で、大手行は期間10年の固定金利ローンを、0.05%引き上げ、年1.40%(最優遇金利)としています。これは昨年10月以来7カ月ぶりの高い水準とのこと。

さらに6月にはこれを0.2%引き上げ、年1.60%としています。

もっとも変動金利ベースの住宅ローンは、連動する対象の金利が短期プライムレート(無担保コールレート翌日物に連動)であるため、今のところ変更はありません。

なお住宅ローンの実際のローン金利は上記の最優遇金利とは異なると考えられ、各銀行のサイトをあたるか、『こちら』のようなサイトを参考にする必要があります。

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2013年6月15日 (土)

世界遺産

クイズです。

次の中で世界遺産として登録されているのは?

(1)富士山

(2)広島原爆ドーム

(3)彦根城

* * * * *

答えは(2)です。

(1)富士山は6月16日から始まる国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界遺産委員会での審議を経て世界遺産に決定される予定。

今回の世界遺産委員会での新規登録案件は35件程度。

自然遺産、複合遺産、文化遺産の順で審議が行われる見通しで、文化庁によれば、富士山の審議は22日前後になるとのこと。

(3)彦根城は登録の前提となる暫定リストに掲載されている段階。

* * * * *

(2)の広島原爆ドームの世界遺産登録までの道のりはけっして平たんではなかったようです。

       Photo_3

『負の世界遺産』(洋泉社)によると、1992年に日本政府が世界遺産条約を批准すると、広島市は原爆ドームの世界遺産化を計画。

アメリカの反対が予想されたため当初政府は消極的だったようですが、95年には世界遺産登録を見据え、国の史跡に指定。

国内法による保護を行いました。

そして96年。

メキシコのメリダで行われた第20回世界遺産委員会で「原爆ドーム」が審議されました。

戦争の早期終結を実現した原爆使用を「是」と考えるアメリカは、この登録に強く反対。

中国は、日本が自国の戦争被害のみを強調するとして棄権。

しかし21ヶ国中19ヶ国が賛成する形で原爆ドームの世界遺産登録が実現しました。

(以上は『負の世界遺産』(洋泉社)より)。

* * * * *

なお世界遺産のなかには、

「人類の野蛮性を記憶する重要な場所」(アウシュヴィッツの登録理由)や、

「奴隷貿易を示す重要な証拠」として「記憶すべき島」(ゴレ島の登録理由)として

登録されたものもあります。

上記の本(『負の世界遺産』)は、これらの「未来への教訓、戒めとなるべき45か所」の世界遺産を紹介しています。

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2013年6月 4日 (火)

7年間不変

(1)GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)

GPIFの基本ポートフォリオは過去7年間変更していないとのこと。

5年に1度の見直しなので、今後見直しされるとしても実施は2015年度以降(本日の日経記事参照)。

現在の資金規模114兆円。

現在の基本運用割合は国内債券67%、国内株式11%など。

前回のブログ記事にコメントを寄せていただいたkaitoさんの指摘するように、5月第4週では信託銀行が4570億円ほど株式(現物)を売り越しており、このことが23日の相場下落に大きく影響したと考えられます。

その背景にあると考えられるのはGPIFによるリバランス。詳しくは前回記事のコメント欄をご参照ください。

それにしてもGPIFは114兆円という巨体。

それだけに相場に与える影響は大きなものがあります。

(2)日銀によるETF購入

日銀によるETF購入は現状年1兆円。

「米国のFRBが年48兆円のMBSを購入しているのに比べると、日銀によるリスク資産(ETF)購入は見劣りする」と4月9日のブログ記事で書きました(『こちら』)。

6月10日-11日の金融政策決定会合で、日銀はこの見直しを行うかどうか、注目しています。

(3)米国での新車販売(5月;対前年同月比)

日産が健闘、トヨタは他社に比べれば期待外れでした。

GM +3.1%

Ford +14.1%

Chrysler +11.0%

Toyota +2.5%

Honda +4.5%

Nissan +24.7%

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2013年6月 1日 (土)

先物取引

前回のブログ記事で5月23日の日経平均株価下落(前日比▲1,143円)について記した部分に関しコメントを頂きました。

「海外投資家の動向を知るには現物だけでなく先物市場も見るべき」というもので、確かに先物市場で誰が売り越したかを見ると、海外投資家の動きがより鮮明に見えてきます。(下記で▲赤字は売り越しを示す)。

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【海外投資家】

5月第3週(5月13日~5月17日)

東証一部 現物 6,262億円 買い越し

東証 先物 304億円 買い越し

大証(日経225先物) ▲3,910億円 売り越し

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【海外投資家】

5月第4週(5月20日~5月24日)

東証一部 現物 ▲166億円 売り越し

東証 先物 ▲418億円 売り越し

大証(日経225先物) ▲869億円 売り越し

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なお東証一部 現物に限って記すと、

5月第4週(5月20日~5月24日)

個人が 3,988億円買い越し、

国内法人が ▲3,889億円売り越し

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5月26日に発売された日経ヴェリタス紙は「先物買いが逆回転」として次のように記しています(以下青字部分。同紙1面より)。

「海外ヘッジファンドなどがコールオプション(買いの権利)の買いを膨らませていた。

一方、コールの売り手となっていたのは証券会社。

株高局面ではコールの買い手が利益を得て、逆に売り手は損失を被る。

この損失を補うだけの利益を確保するため、証券会社は先物買いを積み上げていた。

先物買いが現物株への買いを誘発。

日経平均が1万4000円台に6営業日滞在しただけで1万5000円と駆け上がる要因にもなった。

こんな需給のカラクリが23日には逆回転し、株安の勢いを増幅させたのだ。

ひとたび株安に転じれば、積み上げた先物から巨額の損失が発生してしまう。

証券会社は競うように先物売りに走った」

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もちろん上記は取引の一部分のみを記述したに過ぎないのであり、実際には様々な要因が交錯して▲1,143円の下落につながっていったのでしょう。

なお現物取引では株式を期限無く5年、10年と保有できますが、日経225先物などでは取引できる期間があらかじめ決まっています(各限月(満期月)の取引期間は最長1年3ヶ月。『こちら』を参照)。

期日の前営業日(=取引最終日)までに決済されていないポジションについては、SQにより自動的に決済され、損益が確定します。

ここでSQとは「特別清算指数(=Special Quotation)」のことで、限月(3月,6月,9月,12月)の第2金曜日の日経225各銘柄の寄付値を基にした数値のことです。

期日を迎え最終売買日までに決済されなかった建玉は、SQで強制的に清算が行われることになります。

つまりSQで先物価格と現物価格は一致することになります。

次回のSQ算出日は6月14日(13日が取引最終日)。

6月13日(およびその前)の現物取引はSQ値算出を意識した取引になると言われています。

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なお上記日経ヴェリタス紙にもう一つ興味深い記事が載っていました。

戦後の日経平均を振り返ると1日に5%以上急落したケースは5月23日を除き、41回。

うち40回は、遅かれ早かれ急落前の株価をいったんは取り戻したとのこと。

問題は回復までの所要日数ですが、40回のケースの平均は48日。

さて今回はいったい何日を要することになるのでしょうか。

あるいは、41回のうちの、たった1回の例外のように、これから先、回復することはないのでしょうか。

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