先物取引
前回のブログ記事で5月23日の日経平均株価下落(前日比▲1,143円)について記した部分に関しコメントを頂きました。
「海外投資家の動向を知るには現物だけでなく先物市場も見るべき」というもので、確かに先物市場で誰が売り越したかを見ると、海外投資家の動きがより鮮明に見えてきます。(下記で▲赤字は売り越しを示す)。
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【海外投資家】
5月第3週(5月13日~5月17日)
東証一部 現物 6,262億円 買い越し
東証 先物 304億円 買い越し
大証(日経225先物) ▲3,910億円 売り越し
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【海外投資家】
5月第4週(5月20日~5月24日)
東証一部 現物 ▲166億円 売り越し
東証 先物 ▲418億円 売り越し
大証(日経225先物) ▲869億円 売り越し
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なお東証一部 現物に限って記すと、
5月第4週(5月20日~5月24日)は
個人が 3,988億円買い越し、
国内法人が ▲3,889億円売り越し
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5月26日に発売された日経ヴェリタス紙は「先物買いが逆回転」として次のように記しています(以下青字部分。同紙1面より)。
「海外ヘッジファンドなどがコールオプション(買いの権利)の買いを膨らませていた。
一方、コールの売り手となっていたのは証券会社。
株高局面ではコールの買い手が利益を得て、逆に売り手は損失を被る。
この損失を補うだけの利益を確保するため、証券会社は先物買いを積み上げていた。
先物買いが現物株への買いを誘発。
日経平均が1万4000円台に6営業日滞在しただけで1万5000円と駆け上がる要因にもなった。
こんな需給のカラクリが23日には逆回転し、株安の勢いを増幅させたのだ。
ひとたび株安に転じれば、積み上げた先物から巨額の損失が発生してしまう。
証券会社は競うように先物売りに走った」
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もちろん上記は取引の一部分のみを記述したに過ぎないのであり、実際には様々な要因が交錯して▲1,143円の下落につながっていったのでしょう。
なお現物取引では株式を期限無く5年、10年と保有できますが、日経225先物などでは取引できる期間があらかじめ決まっています(各限月(満期月)の取引期間は最長1年3ヶ月。『こちら』を参照)。
期日の前営業日(=取引最終日)までに決済されていないポジションについては、SQにより自動的に決済され、損益が確定します。
ここでSQとは「特別清算指数(=Special Quotation)」のことで、限月(3月,6月,9月,12月)の第2金曜日の日経225各銘柄の寄付値を基にした数値のことです。
期日を迎え最終売買日までに決済されなかった建玉は、SQで強制的に清算が行われることになります。
つまりSQで先物価格と現物価格は一致することになります。
次回のSQ算出日は6月14日(13日が取引最終日)。
6月13日(およびその前)の現物取引はSQ値算出を意識した取引になると言われています。
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なお上記日経ヴェリタス紙にもう一つ興味深い記事が載っていました。
戦後の日経平均を振り返ると1日に5%以上急落したケースは5月23日を除き、41回。
うち40回は、遅かれ早かれ急落前の株価をいったんは取り戻したとのこと。
問題は回復までの所要日数ですが、40回のケースの平均は48日。
さて今回はいったい何日を要することになるのでしょうか。
あるいは、41回のうちの、たった1回の例外のように、これから先、回復することはないのでしょうか。
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コメント
こんにちわ。コメントを紹介して下さりありがとうございます。
もう一点付記しますと、ご指摘のように「国内法人が ▲3,889億円売り越し」ではあるのですが、信託銀行が4570億円の売り越しであり、国内法人の売りというのは信託銀行の売りと言えます。
株式市場における信託銀行の手口とは年金の手口と言い換えることもでき、GPIFの手口と言っても過分ではありません。先日もGPIFの資金配分見直しがニュースになりましたが、昨年からの株価上昇によって株式は規定の配分枠をオーバーし、債券は直近の下落によってアンダーしていると考えられ、それぞれをリバランスする(常に一定の配分枠までアジャストする)必要が出ています。
特に5月に入ってからは株式の上昇スピードが上がり(債券の下落スピードが上がり)、それを月内に調整する必要が生じていたと考えられます。それを知っていたヘッジファンドが先回りしたといったところでしょう。
投稿: kaito | 2013年6月 1日 (土) 19時45分
kaito様
重ね重ね有難うございます。
信託銀行による「売り・買い」を遡って調べてみました。
2012年1年間で1兆76億円の売り越し(月平均にすると840億円の売り越し)。
2013年2月は1ヶ月間で5,583億円の売り越し
2013年3月は1ヶ月間で8,737億円の売り越し
2013年4月は1ヶ月間で7,098億円の売り越し
5月1週は1週間で40億円の売り越し
5月2週は1週間で70億円の売り越し
5月3週は1週間で2,516億円の売り越し
5月4週はご指摘のように1週間で4,570億円の売り越しでした。
5月は、月の後半に一気に売りを加速させているのが特徴的で、仰るようにリバランスなのでしょうね。
投稿: 岩崎 | 2013年6月 1日 (土) 21時38分