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2013年7月28日 (日)

零戦

1970年というと今から43年前。私はまだ高校生でした。

このときに書かれた本が今また多くの読者に読まれていると言います。

堀越二郎著『零戦』

       Zero_2

現在上映中の『風立ちぬ』や百田さんの『永遠の0』(12月21日上映開始)を見たり読んだりして、この本を買ってみたという人も多いのでしょう。

航空機の設計の話であり、1970年に書かれた本。

手にしたときは「読みづらいのかな」と思って頁をめくってみたのですが、あにはからんや、ひじょうに平易に書かれていました。

著者の堀越二郎氏は零戦の主任設計技師。

本書は、堀越氏が勤務する三菱重工業の名古屋航空機製作所に、海軍から「十二試艦上戦闘機計画要求書」が送られてくるところから始まります(昭和12年10月6日)。

この要求書には、試作機の最大速度、上昇力、航続力など全体で20項目近くについてこまごまと記されていました。

最大速度:高度4千メートルで、時速5百キロ以上。

上昇力:高度3千メートルまで3分30秒以内で上昇できること。

航続力:ふつうの巡航速度で飛んだ場合、6時間ないし8時間。

これを見て堀越氏は「わが目を疑った」と言います。

「はたして、こんな飛行機ができるものだろうか」と、「不安がだんだん広がっていくのを感じないではいられなかった」とのこと。

なお「十二試艦上戦闘機」とは零戦の試作段階での呼び名でした。

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こうして本書には堀越氏を中心とする設計チームが「不可能と考えられていた海軍の要求」に挑戦していく過程が描かれているのですが、堀越氏自身、本書の冒頭(第1章、43頁)で次のように書いています。

「どんなにすぐれた戦闘機でも、平時で4年、戦時なら2年で旧式となり、通用しなくなってしまう」

しからば零戦優位のもとで始められた日米開戦のあと、日本とアメリカはそれぞれどう対応したのでしょうか。

本書の最後の方(212頁)で堀越氏は次のように書いています。

「アメリカは、開戦とともに、率直に零戦の優位を認め、零戦から制空権を奪う新しい戦闘機と、・・戦略爆撃機の完成に技術開発力を集中し、

それ以外の中間的な機種を新しく開発するのを中止した・・

単発の艦爆や艦攻、双発や四発の陸爆などは緒戦に現われたものがそのまま使われていた・・」

これに対して日本は、

「挙国一致の重点政策に切り換えるべきだったのに、開戦から2年たっても、航空機開発にはいぜん、総花主義が行われていたのである」

選択と集中を徹底させた米国と、総花主義を追い求めた日本。

何やら戦後数十年を経て現れる日米経済戦争(企業間競争)を暗示しているような記述です。

なお私には堀越氏が「まえがき」に書いた次の言葉が印象に残りました。

「自分の仕事に根深くたずさわった者の生涯は、一般の人の生涯よりもはげしい山と谷の起伏の連続である・・

大きな仕事をなしとげるためには、愉悦よりも苦労と心配のほうがはるかに強く長い・・

そして、そのあいまに訪れる、つかのまの喜びこそ、何ものにもかえがたい生きがいを人に与えてくれる・・」

著者の堀越二郎氏は、本書を著した12年後の1982年、78歳で他界されています。

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2013年7月27日 (土)

メレディス・ウィットニー

1週間前、20日(土曜日)のブログでご紹介したメレディス・ウィットニーが、デトロイト市破綻について、昨晩 The Daily Ticker で話しています。

5分間の動画です(『こちら』)。

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2013年7月26日 (金)

アナリスト・レポートを読む

2007年から開始したので、早いもので今年で7年目になりますが、引き続き大阪経済大学大学院で教えています。

土曜日の朝9時。

新幹線で東京を発ち、1時から4時まで講義。

夜8時頃東京に戻ってきます。

     Nozomi  

講義にあたって留意していることは、毎年講義内容を変えるということ。

2011年はケーススタディとしてアップルを取り上げ、2012年はシャープを教材にしました。

今年はトヨタ。

講義の基本はDCF分析で理論株価を算出していくというものですが、今年はセルサイド・アナリスト(sell-side analyst)のレポートをどう活用すべきかといった点についても触れていきたいと思います。

* * * * *

セルサイド・アナリストとは、投資銀行や証券会社の株式調査部に所属するアナリスト。

「〇〇社の株式はこれから先、△△円くらいなると考えられます」といった調査レポートを出します。

投資銀行や証券会社の株式部のセールス部隊は、このレポートを持って顧客である機関投資家(生損保など)を訪問。

「〇〇社の株を買ったらどうですか」あるいは「売ったらどうですか」と勧めます。

一方、バイサイド・アナリスト(buy-side analysts)は機関投資家・資産運用会社に所属。

自社のファンドマネージャーが投資先を選定したり、ポートフォリオの中身を変更する際に必要なレポートを作成。ファンドの運用成績向上のサポートをします。

* * * * *

生命保険会社や損害保険会社の運用企画部、株式投資部、株式部といった部署を訪れると投資銀行や証券会社などが持ちこんでくるセルサイド・アナリストの調査レポートが山ほど積まれていることがあります。

個人投資家の方がこれらのレポートを手にすることは可能なのでしょうか。

取引している証券会社の証券マンや証券レディに頼めば、その証券会社のアナリストが書いたレポートであれば持ってきてくれます。

しかし安易に頼むと「その後、株の売り込みの電話がたくさんかかってきてたまらない」と躊躇する投資家の方も多いかもしれません。

* * * * *

例えばトヨタについてセルサイドのアナリストたちはどういったレポートを書いているのでしょうか?

IFIS(『こちら』)によると、アナリスト13人が予想するトヨタの経常利益予想平均値は、2兆4700億円。

目標株価の平均値は7,589円。

現状の株価(26日、午前引値)である 6,220円からはかなり乖離しています。

* * * * *

もう少し詳しく内容を知るにはやはり個別のアナリストレポートを読んでみる必要があります。

個人が簡便に(たとえ取引している証券会社がまだなくとも)個別のアナリストレポートを読むことは出来ないでしょうか。

グーグルで例えば「トヨタ 株式調査レポート アナリストレポート」の3つの単語を入れて検索すればヒットするアナリストレポートもあります。

しかしこれらの中にはキャッシュフローモデルや収益モデルを載せていないものが多く、あまり参考になりません。

ネット証券などでとりあえず口座だけ開いてみるのはどうでしょう。

そうすれば提携の投資銀行や調査会社のレポートを入手することができます。

たとえばマネックス証券に口座をお持ちの方はJPモルガンの調査レポートをダウンロードしてみてください。

トヨタの目標株価を9,000円とするレポートが出てきます。

23ページからなるこのレポートには収益モデルやキャッシュフロー展開表が記されています。

最後に、個人投資家の人たちはこれらの調査レポートとどう接していけばいいのでしょうか。

明日の(大阪経済大学での)講義ではこの辺についても触れていきたいと思います。

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2013年7月24日 (水)

巨大なクジラ

前回のブログ記事では触れませんでしたが、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)はマーケットでは巨大なクジラ。

120兆円という巨額な資産を運用するだけに、その動向は(個人投資家も含め)すべての市場関係者の注目を集めざるをえません。

もう一つ。

この120兆円は国民の年金支払いの原資になるもの。

国民一人一人の老後を支えていく役割を担う「貴重な資産」でもあるので、我々誰もが関心を持っていくことが重要です。

前回のブログ記事でご紹介した番組を見逃した方は『こちら』をクリックしてみてください。

そうすると画面が出てきます。その画面の一番右上の窓を再度クリックします。

そうすればPCでも(そしておそらくスマホでも)番組をご覧になれます。

約15分間です。

ぜひご覧になってみてください。

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2013年7月22日 (月)

GPIF

日経CNBCテレビ『日経ヴェリタストーク』に出演しました。

今回はGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)について。

私たちの国民年金・厚生年金の積立金約120兆円はGPIFで運用されています。

これに関連して、去る7月1日、「公的・準公的資金の運用・リスク管理等の高度化等に関する有識者会議」が開催されています(詳しくは昨日発売の日経ヴェリタスをご覧ください)。

Gpif

ところで、GPIFが自主運用を開始したのは平成13年度。

この時から昨年度(24年度)まで、過去12年間の名目ベース運用利回りは、

年率平均2.0%(手数料控除後1.5%)でした。

運用対象別の年平均利回りは、国内債券1.8%に比し、国内株式は▲0.3%

(詳しくは『こちら』の資料の7頁および86頁をご覧ください)。

少なくとも過去の実績を見る限り、単純に運用対象として株式の割合を増やせば運用利回りが向上するというわけでもありません。

海外の年金基金はどう運用されているのでしょうか。

カルパース(カリフォルニア州職員退職年金基金)の場合、運用資産の65%を株式で運用しています(日本のGPIFでは今年6月7日の見直し後、内外株式の比率は全体の24%)。

その結果、カルパースのリターンは下表のように年によって変動する割合が大きくなっています(詳しくは『こちら』)。

Calpers
上表は1990年から2012年までの23年間のいわば「成績表」。

この間、リーマンショックや911の同時多発テロなど、時にリターンは大きくマイナスになりましたが、過去23年間をならしてみると、年率平均約8%。

もちろん日米では物価上昇率も違いますし、比較対象の期間(米23年、日12年)も違うので、単純に8%対2%と比較することは適切ではないでしょう。

ただGPIFが運用するのは120兆円という巨額な資産。

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仮に1%運用利回りが改善するだけで10年で12兆円になります。

それだけに少しでも中長期にわたる平均リターンを上げるべく、GPIFの組織・体制も含めて、日本の英知を結集させて検討してくことが必要のように思います。

番組を見逃した方は、再放送が2回あります。7月22日(月) 24:00~と7月23日(火) 13:40~です。

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2013年7月20日 (土)

デトロイト市の破綻

デトロイト市が18日、米連邦破産法9条を裁判所に申請し、財政破綻しました。

負債総額$18.5billion(1兆8500億円)。

Detroit
        (Photo of Detroit, from Wikipedia)

この問題の詳細はUSA Today がQ&Aにまとめていますので、『こちら』をどうぞ。

本件は米国の自治体の破綻としては過去最大なのですが、ここでのもっと大きな問題は、

「デトロイトは始まりに過ぎないのか」 

「これに続く自治体があるのではないか」

という懸念です。

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      (Meredith Whitney; Photo is from Wikipedia)

米国の金融に詳しい人ならメレディス・ウィットニー(Meredith Whitney;43歳)の名前をご存知でしょう。

現在はメレディス・ウィットニー・アドバイザー・グループ(Meredith Whitney Advisor Group) という会社の創設者兼CEOです。

彼女はオッペンハイマー社(Oppenheimer)のアナリストとして活躍していました。

彼女の名を一躍有名にしたのは2007年10月31日に出したレポート。

「シティー(Citigroup)は配当を出し続けられるか」というアナリスト・レポートです。

これまで米国では銀行株というと安全で配当は確実と思われていただけに衝撃的な内容でした。

その後のサブプライムローン危機、リーマン破綻(2008年9月15日)に至る経緯は皆さんの記憶に新しいところだと思います。

この結果、メレディスは2008年の「この年、もっとも活躍した人物(Power Player of the Year)」に選ばれました。

ダイモン氏(JP モルガンCEO)や、バーナンキFRB議長、ポールソン財務長官を抑えて彼女が選出されたのです(『こちら』)。

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そんな彼女を再度「時の人」にしたのが、2010年12月19日に放映されたCBSの人気TV番組、60 Minutes。

この中で彼女は「全米で50から100の数に及ぶ市や町、郡が破綻の懸念にある。その結果、1000億ドルを超える損失が生じる可能性がある。これは今後12カ月の間に心配すべきことだ」と述べたのでした。

この彼女のコメントに猛烈に反発したのは地方自治体や、彼らが発行する地方債を売る証券マンたち。

メレディスが言うような破綻は「現実には起きていないではないか」というのが彼らの主張でした。

しかしここにきて、ついにデトロイトが破綻。

メレディスの予言の一部が現実化しました。

はたして彼女の分析・予想のとおり、これに続く自治体が次々と現れるのかどうか・・。

実はメレディス、先月6日にもテレビでデトロイトの名前を上げながら破綻の可能性があると述べていました(『こちら』で見ることができます)。

このときデトロイトのほかにもいくつかの自治体の名前が上げられていましたが、はたして今後どうなるのか。

いずれにせよメレディスは全米のメディアで再び引っ張りだこになりそうです。

興味のある方は先月4日に出版された彼女の本を読むといいと思います。

『Fate of the States』です。

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2013年7月17日 (水)

スノーデン氏はどこにいる?

タス通信によると、エドワード・スノーデン氏は16日、ロシア移民局に一時亡命を正式に申請したとのこと(『こちら』)。

           Cialobbyseal_2
    (The above photo is from Wikipedia; CIA seal in the lobby of the Original Headquarters Building)

ところでスノーデン氏は6月23日からモスクワの空港のトランジット・エリア(国際線乗り換え区間)に「滞在」しているとされています。

日本ではあまり報道されていませんが、欧米のメディアは「スノーデン氏はモスクワの空港のいったいどこにいるのか」を幾度となく報じてきました(たとえば『こちら』)。

私がクロアチアで見たCNN Europe では、CNNが記者数名をモスクワ空港に派遣。

トランジット・エリアをくまなく探すさまを番組に仕立てていました。何人もの乗降客に「スノーデン氏を見たか」を聞き、空港内の店舗の店員などにもヒヤリングをかけていましたが、誰もスノーデン氏らしき人物を見たことがないとのことでした。

ワシントンポストは、「スノーデン氏は、政府関係者やプライベート・ジェット利用客のみが使うことが出来るターミナルAにいるのかもしれない」と報道(『こちら』)。

それでも香港から着いたときに降りたであろう「ターミナルD、E、Fの何れか」とは、ターミナルAは 2キロ離れています。

地図で見る限り、いったんロシアに入国しなければ、ターミナルAには行けないような気もするのですが・・・。

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2013年7月14日 (日)

半沢直樹

現在テレビドラマの視聴率争いでツートップといえば、

テレ朝の「DOCTORS 2」(平均視聴率19.6%)と

TBSの「半沢直樹」(平均視聴率19.4%)。

半沢直樹の方は(私は先週クロアチアにいたので)今日再放送で第1話を見ました。

そして今晩第2話を見ましたが、どちらも面白かったです。

番組は、直木賞作家である池井戸潤氏による企業エンターテインメント小説『半沢直樹シリーズ』の中から、

『オレたちバブル入行組』

          Photo_2

『オレたち花のバブル組』 とを

          Photo_3

原作としてドラマ化したもの。

堺雅人さん演じる半沢直樹は、東京中央銀行大阪西支店の融資課長。

上司である支店長から強引な指示が下り、新規取引先の西大阪スチールに5億円の融資を実行する羽目に。

運悪く融資からたった3か月で西大阪スチールが倒産。

しかも提出された同社決算書は粉飾されていたことが発覚。

どうやら西大阪スチールの東田社長は同社を計画倒産させたらしい。

それも数年がかりで会社資産を個人の隠し資産へ移すという用意周到な計画倒産。

はたして東京中央銀行の融資課長、半沢直樹は西大阪スチールの東田相手に貸金の回収をすることができるのか・・。

一方、東田を脱税容疑で追う国税も東田の資産差し押さえに動くが・・。

半沢直樹は国税に先回りして貸金の回収をすることができるのかどうか・・。

興銀で銀行員を22年間勤めた私が見ても(細部では若干の違和感もありますが)じゅうぶんに楽しめるドラマ。

なによりも半沢直樹を演じる堺雅人さんの演技が秀逸です(所作がきれいというか、様になっています)。

番組のなかでの「たかが銀行員に出来るのはカネの流れを追うことぐらいだ」といった言葉が印象に残りました。

以下は原作者の池井戸潤さんが番組に寄せた言葉です。

「相手が上司だから、顧客だから、度胸がないから──。

いろんな理由で、反論したくてもできなかった理不尽な経験は誰にだってある。

思わず唇を噛んだその悔しさを、半沢直樹が晴らしてくれる」

半沢直樹ではありませんが、私も銀行の融資課長を4年間勤めたことがあります(1992~96年;本店営業第三部)。

そう言えば、朝銀行に行くと、担当のK君が「取引先のA社が不渡りを出して倒産したみたいです」と報告してきたこともありました。

改めて思い返すと22年間勤めた興銀時代、一番面白かったのはこの融資課長時代でした。

ところで、このドラマではバンカーという言葉が出てきます。

金融や経済に馴染みの無い方には分かりづらいかもしれませんが、バンカーとは英語で言うBanker。

銀行員のことです。

ただ一口に銀行員と言っても大組織である銀行にはシステム開発をする人もいれば、総務部で施設管理を担当する人もいます。

ドラマで使われているバンカーという言葉は、銀行員のなかでも「融資」(お金を貸すこと)や(融資をしていいかどうかを決める)「審査」を担当する行員といったイメージで使われているようです。

もっとも英語でBanker というと半沢直樹のようなCommercial Banker だけでなく、Investment Banker のことを指す場合もあります。

この件についてはかつてこのブログで書きましたので、『こちら』をご覧ください。

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2013年7月10日 (水)

28番目の加盟国

香港から帰って数日間日本にいただけで、今度はクロアチアに行ってきました。

クロアチアと言えば、今月1日に、28番目の加盟国として、新しくEU(欧州連合)に迎え入れられた国。

Croatia

      (写真はクリックすると大きくなります)

1991年に旧ユーゴスラビアから独立しましたが、その後も民族間の争いが続き、私が1週間ほど滞在したドゥブロヴニクの町も、92年まで戦火に見舞われていました。

空港からホテルまでタクシーを運転してくれたドゥーロ・オブラドヴィックさんも22年前、「銃を持って戦争に参加した」と言います。

「当時私は26歳だった。セルビア人は内陸にいるだけでは飽きたらず海に出たかったんだ。それでこの町(ドゥブロヴニク)に攻めてきた。

モンテネグロもドゥブロヴニクに攻撃をしかけてきた。

我々は必死になって戦ったが、1日に3000発もの爆弾を落とされた時もある。

今でも町のあちらこちらに戦火の傷跡が残っている。

幸い、私も家族も無事だったが多くの友人が死んだ。

クロアチアは今回 EU(欧州連合)の一員になったが、セルビアはまだEUのメンバーになることが出来ていない」

ドゥブロヴニクの旧市街には戦争写真館(WAR PHOTO LIMITED)があり、建物の上層階からスナイパー(狙撃手)に射殺された市民の写真などが展示されています。

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  (WAR PHOTO LIMITEDの許可を得て展示写真の写真を撮りました)

書店でアニタ・ラキドゥジージャさんが書いた「ドゥブロヴニクのある戦争物語」(2009年7月版)を買いました。

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アニタさんは今年55歳。

この本は1991年10月1日から始まる日記形式で綴られており、1992年8月30日で終わります。

この日、アニタさんの息子ヴラーホ君(本の写真の少年です)は、戦火に巻き込まれて亡くなりました。

9歳でした。

「あなたはまだ幼い子供でした(You were only a little boy)。しかし偉大な人(a great man)であり、私にとっての偉大な息子、そしてクロアチアの偉大な息子でした」

こう書き記してアニタさんは本書を終えています。

クロアチアのEU(欧州連合)加盟に関連して、ドイツの大衆紙ビルトは「クロアチアは我々ドイツの納税者のカネの新しい墓場」と評していると言います(7月3日付、朝日新聞)。

「EU(欧州連合)を28か国に拡大させるよりも、まずは17か国のユーロ通貨圏(EU加盟でユーロを使用している国)の結束と安定だ」という声も少なくありません。

    Dubrovnik2

     (現在は平和なドゥブロヴニクの光景)

しかしかつて戦争で戦ったタクシー運転手のオブラドヴィックさんの次の言葉を聞くと、この問題は必ずしも経済的合理性だけでは割り切れないことを知ります。

「我々は過去からずっと戦争をしてきた。しかも50年に1回は大きな戦争だ。今月EU(欧州連合)に加盟したことにより、少しでも平和が長く続くようになればいいと思う」

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