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2013年8月23日 (金)

ソール・バス

8月8日に放送されたカンブリア宮殿。

佐藤可士和さんがデザインしたヤンマーの新たなブランドロゴが紹介されていました(『こちら』)。

 Y_3  Y2

       (右はエンブレムになった状態のイメージ)

強さと未来が感じられるデザイン。

さすがです。

番組を見ていて、興銀時代に海外広報を担当していた時のことを思い出しました。

今から30年以上も前のことです。

当時私は26歳。

留学から帰って最初に配属された部署が海外広報を担当するセクションでした。

電通、博報堂などの広告代理店、海外メディアなど、さまざまな人たちが訪問してきました。

一度ソール・バス(Saul Bass)のエージェントの訪問を受けたこともあります。

ソール・バスと言えば、ユナイテッド航空、クウェイカー・オーツ、AT&Tなど数々の米企業のブランド・ロゴマークを手掛けたデザイナー。

     Sb_2

当時すでに海外でよく使われていた興銀の「IBJ」という略称。

この「IBJ」を彼にデザインさせ、ブランドロゴ化させてはどうかという提案でした。

「いったい幾らくらいかかるのですか」

こう聞くと、エージェントは概算ということで金額を提示してきました。

けっして安くはありませんでしたが、エージェント氏いわく、

「ソール・バスのアプローチは顧客企業の過去と未来(戦略、方向性)を理解したうえで、それをロゴマークに落とし込むというもの。

何人もの経営陣にインタビューさせていただくことになります」

ソール・バスに「IBJ」をデザインさせたら、どんなものになるだろう、と興味が湧いてきました。

そして、このデザインは興銀が海外展開するうえでの武器になるような予感もしてきました。

しかし残念ながら担当者(私)の力不足もあって、最終的にはこの話は通りませんでした。

* * * * *

ところで若者のクルマ離れということが言われて久しくなります。

トヨタは多額の費用をかけてテレビでジャン・レノ扮するドラえもんのCMや信長がキムタクの姿となって現在に蘇えるというCMを流しています。

しかしはたしてこれで若者のクルマ離れに歯止めがかかるかどうか。

そもそも公共交通網が発達した都会で人はなぜクルマを欲するのでしょうか。

ここから先は私のまったくの個人的な見解なのですが、私には答えは映画「三国志(レッドクリフ)」や「アバター」のなかにあるように思えてきます。

どちらも馬(アバターの場合は空飛ぶバンシー、レッドクリフの場合は、子馬「萌萌」を最後、諸葛亮へプレゼントするシーン)が出てきます。

昔から、そして未来でも、人間は自分たちよりも力(horse power)があって、速く走れる「馬」のようなものを本能的に欲したし、欲するのではないでしょうか。

さらにそれが美しく力強い馬であれば権力の象徴になったのかもしれません。

そう言えばポルシェやフェラーリのエンブレムは跳ね馬であり、

フォード・マスタングも馬(そもそもマスタング mustang は野生馬の意味)。

ジャガーのエンブレムは(馬ではありませんが)ジャガー(ネコ科ヒョウ属)で

ランボルギーニは闘牛。

プジョウーは百獣の王、ライオンです。

* * * * *

トヨタのエンブレムはTの字を連想させながらも、未来や宇宙を感じさせます。

「21世紀に間に合いました」といって1997年にプリウスを世に送りだしたトヨタにはピッタリ来ます。

しかし古来から人間が馬に求めてきたような「本能的な欲望」にうまく突き刺さるのかどうか。

「人類がもしクルマを一台だけ持つことが許されるとしたら、それはスポーツカーになるだろう」

かつてポルシェ博士はこう発言したと言いますが、人がなぜクルマを欲するかを突き詰めていかないと現代の若者のクルマ離れは止められないような気もしてきます。

もし仮に佐藤可士和さんにトヨタのエンブレムをデザインさせたらどんなものになるのか、見てみたい気がしてきます。

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2013年8月19日 (月)

米国企業はなぜ強い

日経CNBCテレビ『日経ヴェリタストーク』に出演してきました。

冒頭、キャスターからの質問は、米国企業はなぜ強い?

7月末時点で時価総額の大きい順に世界の企業を並べると:

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①エクソンモービル

②アップル

③マイクロソフト

④J&J

⑤ウォールマート

と米国企業が並びます。

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答えとしては:

①イノベーションを興す力

②グローバルに展開する力

③株主資本主義の企業文化

などが挙げられると思います。

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私は米国の投資銀行で働いた経験を持ちます。

そのとき感じたことですが、米国の投資銀行では、経営者から幹部・中間管理職に至るまで、「株主から預かっている資本をいかに効率よく使って利益を上げるか」という意識が徹底していました。

株価を十分に上げることが出来ない経営者は株主からレッドカードを突き付けられます。

場合によってはその会社はM&Aの標的にされてしまうかもしれないのです。

ところで、時価総額とは会社の株主価値のことです。

「企業価値」 = 「株主価値」 + 「債権者の持ち分」

米国では、株主の力が強くて、経営者は株主価値を引き上げることが自分たちの使命と認識しています。

時価総額ランキングの上位に米国企業が並ぶ背景にはこういった事情もあるように思えます。

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2013年8月17日 (土)

映画『スティーブ・ジョブズ』

先ほど(数時間前)から米国で公開が始まった映画『スティーブ・ジョブズ』(米国での公開日:8月16日、日本公開は11月1日)。

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      (this image is from Wikipedia; see here

日本語でのトレイラー(予告編)は『こちら』

スティーブ・ジョブズが亡くなってそろそろ2年になろうとしています。

映画の予告編を見ただけでも、在りし日のジョブズがアップルの製品を公開したり大学でスピーチしていた姿が思い起こされます。

以前にもこのブログで紹介(『こちら』)しましたが、ジョブズ28歳の時のスピーチが『これ』。((注)最初の20秒くらいは音楽だけで暗い画面が続きます)。

2011年10月に彼が逝去してから 2年もしないうちにアップルは大きく変わりました。

株主には多額の配当金を配るようになり、更に加えて、会社は自社株購入を開始。

物言う投資家として知られるカール・アイカーン氏がアップル株を大量に保有し、

ジョージ・ソロス氏も7万株近くのアップル株を購入したとのニュース(『こちら』)が伝わってきます。

アップルは何の変哲もない普通の会社になってしまいました。

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2013年8月14日 (水)

海外駐在員

アップルの株価がここ2日間で8%近く上がっています(454ドル→489ドル)。

Chart forApple Inc. (AAPL)

      (最近5日間のアップルの株価推移)

「iPhoneの新機種が1ヶ月後には発表になる」というニュースのほかに、もうひとつ。

Carl Icahn がアップル株をかなり(large portion)保有していて、アップル経営陣に対し、自己株買いをもっと行うようプレッシャーをかけているとのニュースも伝わってきています。

* * * * *

さて・・。

少し前のことですが、興銀時代の先輩Fさんとお会いしました。

「岩崎君、きみはあの時の食事会のことを覚えているかい?」

「あの時っていつですか」

「もう30年以上も前になるかな。

欧州系外銀幹部数名が来日したときにK常務が主催した食事会。

若手では君と僕とが出席していたんだけど、なんで急にK常務から担当もしていない外銀の食事会に出ろと言われたか、不思議に思わなかったかい?」

そう言えば、そんな食事会があったかなと昔の記憶を手繰り寄せていると、Fさんがポツリ。

「あれはK常務独特の試験だったんだな。

君も僕も、あの後、比較的すぐに海外の駐在員になった。

海外の支店勤務と違って駐在員は若手でも日本から来る大切なお客に会わなければならない。

だから人事部任せにしないで、K常務がひとりひとり適性を見極めていたらしい」

30年以上も前の食事会にそんな意味合いが込められていたとは・・。Fさんから聞かされて初めて知りました。

K常務と言えば数々の逸話の持ち主。

彼自身、若い頃興銀のフランクフルト駐在員を務めていたのですが、

現地の有名なレストランのメニューを上から下まで全部暗記していて、

日本から来たお客がメニューを見ているとき、自分ではメニューをいっさい見ずに日本語で内容を淀み無く説明したとか・・。

Fさんと私が出席を命じられた食事会でも、K常務は来日した外銀幹部をただちに食事の席に案内することはせずに、最初の30分間くらいは飲み物を片手に立ったまま談笑するというスタイルを取りました(場所は興銀本店の14階の一室)。

K常務自らがひとりひとり外銀幹部の方たちに好みの飲み物を聞き、バーテンとの間に立って、見事なホスト役を務めていました。

シンジケートローンにしてもユーロ債の主幹事にしても、興銀が外銀と伍してやっていけるようになっていくのは、それから5~6年先のことでした。

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2013年8月11日 (日)

iPhone5S

AllThingsD.com はダウジョーンズ社(Dow Jones & Company Inc.)の子会社 (㊟ 経済紙のウォールストリートジャーナルも同じくダウジョーンズ社によって発行されています)。

AllThingsD.com はまたウォールストリートジャーナル紙のデジタル・ネットワークの一員でもあります。

ということで、それなりに報道内容には信憑性があると思うのですが、

そのAllThingsD.com が昨日(日本時間の今日)、「iPhone5S が1か月後の9月10日にも発表される」と報じました(『こちら』)。 

記事は、厳密には「次の iPhone (next iPhone)」とだけ報じていて、それが iPhone5S になるのか、iPhone6になるのか、明らかではありません。

よく読んでみると、どうやら iPhone5S (おそらく)とともに、廉価版の iPhone5 (iPhone5C?) も同時に発表になるかもしれないとのことですが、さて・・・。

日本ではツートップ戦略(「GALAXY S4」と「XperiaA」)を展開するドコモが、これを機にいよいよ iPhone5S を扱うようになるのか、それとも今まで通りツートップで行くのか、気になるところです。

以下は過去5年間の株価推移(5年前をゼロとした場合の騰落率)。

9984はソフトバンク(青線)。

9433はKDDI(au)(緑線)。

5年前と比して下落しているのが9437のドコモ(赤線)。

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2013年8月 3日 (土)

TPPとアフラック

TPPとのからみでニュースになることの多いアフラック。

ここでは 日経新聞週刊ダイヤモンド(DIAMOND online) の記事のリンク(上記↑)を貼っておきます。

* * * * *

「がん保険というとアフラック」というくらい日本では広く知れ渡ったアフラック。

この会社の本社(Aflac Incorporated)は米国ジョージア州コロンバス市にあります(アニュアルレポートは『こちら』)。

ニューヨーク市場に上場されていて、ティカーコード(証券コード)は、AFL。

(㊟ 東証第一部外国株にも上場されています(『こちら』)。ちなみに現在東証第一部外国株として上場されているのはアフラックを含む8社のみ)。

ニューヨーク市場におけるアフラックの株価パフォーマンス(過去5年間)は:

Afl_2

ところで日本では有名なアフラックも米国人には意外と知られていません。

時価総額を他の保険会社と比較してみます(単位:10億ドル)。

AIG            71

MetLife       56

Prudential    38

Aflac           29

第一生命     14

(注:第一生命については1ドル=100円で換算)

アフラックの特徴は売上げ(収入)の約8割を日本で上げていること。

米国にいる米国人の多くが、「AIG や Prudential の名前は知っていても Aflac については聞いたことがない」というのも、そういった理由からだと思われます。

アフラックのアニュアルレポート(『こちら』)8頁を見ると、当社の Total Revenues(総売上げ)、Premium Income (保険料収入)などで日本がどのくらいの割合を占めるかが出てきます。

具体的には例えば:

当社の2012年度 Total Revenues(総売上げ)は、254 億ドルですが、このうち 79%にあたる 201億ドルが日本での売上げです(アニュアルレポート(『こちら』)10頁)。

このように主として日本のマーケットで活躍している保険会社であれば、役員(Board Members)や経営陣(Executive Management)は日本主体かと思いきやそうでもありません。

14名いる取締役のうち日本人名は1人(アニュアルレポート(『こちら』)30頁)。

17名いるExecutive Management メンバーのうち日本人名は6人(アニュアルレポート(『こちら』)31頁)。

米当局に届け出られた資料によれば、創業者Amos家のメンバーである Daniel Amos、 John Amos、Paul Amos の3氏の当社株保有数は1,096,883株。

時価にして68億円になります。

今から40年近く前、「日本でこの種の保険は売れる」と考え、日本に進出してきた創業者の先見性は評価されるべきなのでしょうが、米国と違って国民皆保険制度の日本です。契約者である日本の人たちはきちんとその必要性を分かって保険に入ることが重要です。

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