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2013年9月30日 (月)

米国連邦政府機関の一部閉鎖問題

この問題については一部誤解もあるようなので整理しておきます。

米国連邦政府の一時閉鎖(Government Shutdown)についてはこのブログでも何度か書いてきました。

2011年4月9日 米国連邦政府の一時閉鎖 (Government Shutdown)

2011年4月9日 シャットダウンの回避

2011年7月16日 米国債(政府債務残高上限問題)

2012年10月30日 財政の崖(Fiscal Cliff)

ということで、多くの日本人は「米国連邦政府の一時閉鎖の可能性」のニュースを見ても、「なんだ、またか」くらいの感想しか持っていないのかもしれません。

「どうせ最後の最後では共和党・民主党の妥協が成立し、シャットダウンは回避されるのではないか」といった感想です。

しかし今朝のニュースを見て一部の人は疑問に思ったかもしれません。

「米国連邦政府の資金が底をつく(資金繰りがつかなくなる)のは、10月17日頃ではなかったのか」

「それがなぜ急に明日(10月1日)からシャットダウンなのか」

冒頭私が一部には誤解があると述べたのはこのことです。

今回の米国連邦政府機関の一部閉鎖問題には実は2つの問題がからんでいます(といっても根っこは同じなのですが・・)。

一つは債務上限問題。

現在の上限は16.7兆ドル(1650兆円)。

この上限を引き上げないことには米国債がデフォルトしてしまう。ルー米財務長官によればこの期限が10月17日頃に到来するとのこと。

もう一つの問題が国家予算。

日本政府の会計年度は4月1日から翌年3月31日ですが、米国政府は前年の10月1日から9月30日まで。

ちょっと分かりづらいかもしれませんが、2013年度の会計年度(FY13)は、2012年10月1日~2013年9月30日です(詳しくは『こちら』)。

ということで今日が会計年度の最終日。

そして明日(10月1日)から新しい会計年度(2014年度)となるのですが、この予算が成立していません。

9月20日に12月15日までの予算措置を講じた暫定予算を下院(共和党多数)が可決しましたが、オバマケア(健康保険)関連予算の削減が盛り込まれていたため、上院(民主党多数)での成立の見込みが立っていません。

米国連邦政府機関の一時閉鎖(Government Shutdown)に追い込まれれば、パスポート、査証の発給は出来なくなり、国立公園は閉鎖されます(追記:10月2日現在、東京のアメリカ大使館では査証の発給が行われているようです)。

今週4日に予定されている米雇用統計の発表が延期になることもあり得ます。

クリントン政権時代。

1995年11月14日~15日と1995年12月16日~1996年1月6日までの合計28日間、米連邦政府の一部はシャットダウンしました(『こちら』)。

このときの米国経済は堅調でしたが、今回はまだ病み上がりの状況。

さらに1996年は大統領選挙の年でドール上院議員(共和党;この年の大統領選でクリントンの対抗馬となった)がシャットダウン終焉に向けて動いたといった経緯もあります。

しかしオバマは今年2期目に入ったばかり。次の大統領選挙は2016年。安易には妥協に応じないと見られるだけに、シャットダウンの可能性は高いと指摘する人たちが多くなってきました。

こうした状況下、当面円高、株安になるのは避けられない見込みです。

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2013年9月29日 (日)

クロージングベル

意外なことにニューヨーク証券取引所で演説した日本の現職首相というのは、今回の安倍さんが初めてだったんですね(『こちら』もしくは『こちら』)。

25日のニューヨーク証券取引所クロージングベルでのスピーチは『こちら』で見ることが出来ます。

     Abe_3 

米国人を相手にスピーチを行う時のポイントを3つほど挙げますと:

①最初の30秒で聴衆を惹きつける話をする(今回の安倍さんのスピーチでは、マイケル・ダグラス演じるゴードン・ゲッコーの話)

②聴衆が思わず笑ってしまうようなユーモラスなエピソードを入れる(今回の安倍さんのスピーチで一番受けたのは次の1節でしょう)

「もし、リーマンブラザーズが、リーマンブラザーズ&シスターズだったら、今も存続していたのではないか」

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     (Lehman Brothers Head Office after the collapse. Photo is taken in October 2008)

③具体的な成果や約束事を言う(今回の安倍さんのスピーチでは例えば次の1節)

「日本から、『待機児童』という言葉を一掃します。2年間で20万人分、5年間で40万人分の保育の受け皿を、一気に整備します。すでにこの夏の時点で、12万人分を整備する目途がつきました」

    Nyse 

ということで、安倍さんのニューヨーク証券取引所でのスピーチは好評だったようです。

後は安倍さんが演説の最後の方で約束した次の1節をほんとうに守ってくれるかどうか。

「日本に帰ったら、直ちに、成長戦略の次なる矢を放ちます。投資を喚起するため、大胆な減税を断行します」

大胆な減税。

多くの海外投資家はこれが実行に移されるかどうかを固唾を呑んで見守っているというところでしょう。

ある海外投資家の言葉です。

「DPJ(民主党)時代は、Pro-Business (ビジネスにとって友好なスタンスを取る政治)ではなかったが、安倍首相には期待できる」

東証が27日に発表した株式投資部門別売買動向によると、外国人投資家は9月第3週(17日~20日)、2890億円の買い越し(3週連続での買い越し)。

なお安倍さんのスピーチにあった「もし、リーマンブラザーズが、リーマンブラザーズ&シスターズだったら、今も存続していたのではないか」とのくだりは、『こちら』のブログなどで紹介されています。

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2013年9月26日 (木)

映画 『JOBS』 (邦題「スティーブ・ジョブズ」)を観て

先日米国で映画 『JOBS』 (邦題「スティーブ・ジョブズ」)を観ました(日本での公開は11月1日)。

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   (this image is from Wikipedia

期待して観に行ったのですが、ややがっかり。

アマゾンのレビュー的に星の数で評価すると、☆3つというところでしょうか。

私だけでなく、ジョブズのファンはみんな似たような感想を持つような気がします。

一言でいうと、ジョブズの描き方がやや浅薄。

CNETは、「特に失望したのは、大きな歴史的偉業を考えると、この映画がいかに浅く感じられたかという点だ」とコメント(『こちら』)。

ニューヨークタイムスのレビューは、「Walter Isaacson が書いた本では描かれていたジョブズの持つ情熱、完全主義、デーモン(悪魔)、欲望、芸術性、邪悪さ、そしてコントロールに対する強迫観念といったものを、映画製作者は描ききることができなかった(The greater blame rests on the filmmakers, who never find a way to navigate the “passions, perfectionism, demons, desires, artistry, devilry and obsession for control” that Walter Isaacson enumerated in “Steve Jobs,” his 2011 authorized biography)」とコメント(『こちら』)。

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映画はジョブズがリード・カレッジのキャンパスでカリグラフィーに魅せられるところから始まり、アップルを起業、そのアップルから追い出され、再びアップルに戻るところまでをカバーしています。

1970年代を感じさせる映像は懐かしく、「あーそうだ。あんな感じだった」と思うシーンがいくつも出てきます。

しかし一方で、ジョブズに係る数あるエピソードの中から「これを選ぶの?」と感じさせるものも少なくなく、脚本もいまいち。

それでも映画を観終った後の感想は、総じて言えば、まずまず。それなりに満足できた(☆3つ!)のは、やはりジョブズという素材が秀逸だからでしょうか。

あまり期待して観に行くと裏切られますが、観に行くべきかどうかと問われれば、私としてはそれでもやっぱり観に行くことをお勧めします。

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2013年9月22日 (日)

Money for Nothing

今日はドイツの総選挙日。

メルケル首相率いる与党(中道右派)の勝利が確実視されていますが、一方で与党が単独で過半数を得るのは難しい情勢。

マーケットはメルケル続投を予想していますが、連立の協議が長引けば、金融市場は不安定になるでしょう。

そして、万が一、協議が決裂し、野党が結集して政権交代といった展開にでもなれば、市場が大きく動揺する可能性もあります(もっとも市場の予想はあくまでもメルケル続投です)。

(詳しくは『こちら』および『こちら』)。

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   (The above photo is from Wikipedia.)

さて米国では先週FRBが量的緩和縮小を見送り、ダウ平均株価の18日終値は、15,676ドルを示現。

史上最高値を約1カ月半ぶりに更新しました。

しかし週の後半、19日(木)、20日(金)と2日間にわたって市場は下落。

結局は、16日(月)や17日(火)の終値を下回る水準で1週間を終えています。

Dow_2

以上、先週1週間の米国の動きをグラフで示すと上図のようになります。

それにしてもバーナンキがいみじくも述べたようにQE3を縮小するほどには雇用情勢は改善していません。

そして欧州や中国、新興国の経済情勢もパッとしません。

にもかかわらずダウ平均株価が歴史上最高値になるというのは、これはいったいどういうことなのでしょうか。

FRBによる毎月850億ドル(8.5兆円)という資産買い入れが株式や不動産などの資産価格上昇を招き、その結果、資産の持つ実力以上の価格が形成されているという指摘もあります。

(もっともダウ平均株価のPERは14.3(『こちら』)でさほど高いわけではありませんが・・)。

「バブルの最中にあるときには人はいまバブルにあると認識しづらい」と言います。

バーナンキ議長の前任のグリーンスパン前議長。

ジュリアード音楽院を出たクラリネット奏者(注:NY大学で経済学のPH.Dも取っています)は、FRB議長在任中はマエストロともてはやされました。

しかしリーマンショック後は

「金利を長期間にわたって低下させすぎた(He kept the interest rates too low too long)」

「金融危機を防ぐことが出来なかった(failed to prevent the financial crisis)」

と批判されました。

現在のバーナンキ議長は今までのところ「金融危機を終焉させた」として高い評価を得ています。

しかしQE3の出口戦略を一歩間違えれば人々の評価が一変してしまう可能性もあります。

米国で話題になっているドキュメンタリー・フィルム「Money for Nothing」

このtrailer(予告編)を見ていて、私はそんなふうに思いました。

   Mfn

なおこの映画は米国の10か所の映画館でしか上映されておらず、私も予告編しか見ていません。予告編は『こちら』をクリックしたうえで「Play Trailer」のボタンを押せば見れます(英語で3分8秒)。

いずれにせよ今回(9月17-18日)の会合でFRBが量的緩和縮小を見送ったことにより、マーケットが注目するのは次回会合(FOMC meeting)に移りました。

10月29-30日。

このときまでに米国の雇用情勢の改善が見られるのかどうか。

そしてこのときバーナンキ議長はどういった決断を下すのかが注目されます。

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2013年9月19日 (木)

現場に足をはこぶ

人気テレビドラマ半沢直樹を見ていると、銀行員が現場(取引先)へ足を運ぶことの重要さを改めて思い知らされます。

かつて興銀の審査部には「宅調」という制度がありました。

お金を貸して良いか、貸さないか、一つの企業を審査するのに要することが出来る時間は、興銀審査部の場合、通常1か月間。

宅調とは、「この間、銀行に出社するには及ばず」という制度でした。

私が在籍していた時(1987~92)にはすでに宅調制度は無くなっていましたが、部の雰囲気としては宅調時代に近いものがありました。

審査対象の会社の主要工場に通って、工場長のみならず現場の方たちの話を聞く、製造工程を把握する、あるいは納入業者や顧客にヒヤリングをかけるために訪問する・・。

日中はこうしてほとんど外に出ていることで時間が過ぎていきます。

外出先から深夜自宅に戻り、入手してきた資料を整理し、ヒヤリング内容を紙にまとめていく・・・。

銀行審査部の席をあたためている時間はあまりありませんでした。

* * * *

「現場に足を運ぶ」ということを徹底させてきたつもりの私にも、今になって思うと反省点は多々あります。

自戒の念を込めて書きしるすと、そのひとつが、水俣病を引き起こしたチッソ㈱を融資課長として担当していた時のこと。

金融支援をめぐっては環境庁、大蔵省(大臣官房、銀行局、理財局)、熊本県庁、他の市中銀行などとの調整に追われました。

この間、チッソの水俣工場には何度も足を運び、マスコミ(地元熊日や西日本新聞)の取材を受け、国会議員の方々からの呼び出しにもこたえるといった毎日。

しかし当時の私に決定的に不足していたのは地域の方々と(直接お宅にお邪魔してでも)1対1になって会話をするということでした。

いったい水俣の方たちはどんな気持ちでいるのか。本当の気持ちはどこにあるのか。

この基本中の基本とも言える情報を私は2次情報に頼ってしまった―このことが悔やまれます。

もちろん東京から来た銀行員にすぐに心を割って話してくれることはなかったかもしれません(ただでさえ東京の私には熊本弁が難解でした)。

しかし努力はすべきでした。

「水俣病であると手を上げると、まわりの人たちから白い目で見られる。

金が欲しいのかと思われるのが辛いし、私はこれから先、ずっとこの地で生きていかなくてはならないから、そんなことは出来ない」

当時こうした生の声を直接聞くことが出来ていれば、もう少し違った対応が出来たかもしれません。

(なお水俣病の問題については以前にもいくつかブログ記事を書いてきています)

『金融機関から見た水俣病(その1)』(2006年2月25日)

『金融機関から見た水俣病(その2)』(2006年3月28日)

『金融機関から見た水俣病(その3)』(2006年4月13日)

『金融機関から見た水俣病(その4)』 (2006年4月14日)

『新聞協会賞』(2006年9月7日)

『宝子』 (2007年1月28日)

『Chisso accountable to public』(2008年2月3日)

『水俣から、未来へ』(2008年10月26日)

『オバマ大統領と水俣病』(2009年12月1日)

『金融のロジックと財政のロジック』(2010年2月24日)

『汚染者負担の原則』(2011年3月23日)

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2013年9月16日 (月)

ジャン・ジャンセン

現代フランスを代表する画家の一人、ジャン・ジャンセン が先月27日に 93歳で亡くなってから3週間近くになります。

卓越したデッサン力で、2003年、フランス政府よりレジオンドヌール勲章を授勲。

アルメニア政府からも国家勲章を授章。

写真1は画廊アートエミュウから頂いた絵葉書を写真に撮ったもの。

1986年のリトグラフで「赤いレッグウォーマーのバレリーナ」。

バレリーナが自分の進むべき方向を見つめている-将来に対する思いのようなものを感じさせます。

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写真2はカレンダー(2007年)になった作品を撮影したもの。「休息するバレリーナ」。

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写真3は「黄色いミュージシャン」のリトグラフを撮影したもの。

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安曇野には世界初のジャン・ジャンセン専門美術館があります(『こちら』)。

ジャンセンは晩年になっても作品を創り続けていたようで、安曇野ジャンセン美術館には2006年(ジャンセン86歳のとき)の作品も収蔵されているようです。

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2013年9月14日 (土)

売上が1割落ちるだけで株価が半分になることがなぜ起こりえるのか

売上が1割落ちるだけで、企業の株価は時として半分になることもあります。

こうしたことが起こりえるのはなぜでしょうか。

株価は、理論的には企業が上げると予想される毎年のキャッシュフローを現在価値に割り引き、各年分の現在価値額をすべて足し合わせて得られる「企業価値」がベースになって算出されます。

「ベースになって算出される」というのは、具体的には、「企業価値」から債権者の取り分を差し引き、残った金額(=株主価値)を株数で割ります。

これが理論的に算出される株価、いわゆる理論株価です。

つまり株価は、企業がこれから上げると予想されるキャッシュフローがベースになっているのです。

キャッシュフローと言うと分かりづらいかもしれませんが、簡単に言うと、株価は、投資家が予想する企業の「利益額」がベースになっていると考えて頂いても結構です。

そして、ここでのポイントは、この「投資家が予想する企業の利益額」は、売上高以上に大きく変動しうるということです。

たとえば売上高100の会社が8の最終利益を上げているとしましょう。

この企業の売上が1割落ち込んで90になったとき、最終利益は1割以上に落ち込みます。

なぜでしょうか。

売上が1割落ち込んだからといって企業は人員をすぐにカットするわけにもいかず、工場や機械設備も当面はそのまま維持せざるを得ません。

どんな状況下でも企業は一定の固定費を負担せざるを得ないので、

「売上」−「固定費」−「変動費」=「利益」

の関係になっています。

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そしてこの式から明らかなように、売上が1割落ち込んだだけで、利益はたとえば(上の例では)8の半分の4になってしまうことも実際には起こり得ます。

もしも投資家がこのレベル、すなわち利益が半分になった状態が、将来も続くと信じれば株価も半分になってしまいます。

逆に売上が1割上がるだけで利益が格段に向上することもあります。

繰り返しますが株価には企業の予想利益が反映されます。

そして予想利益は売上高の振幅以上の幅をもって変動します。

つまり売上が1割落ちるだけで株価が半分になることが実際に起こりえますし、こうしたことから、投資して 2~3年のタームで見れば、株価が2倍になったり、半分になってしまうことが現実の世界では起こりえるのです。

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2013年9月11日 (水)

雑誌「プレジデント」

米国に行き昨晩日本に戻ってきました。

今回行ったのは西海岸。

早いものでリーマンショック(2008年9月)から、もうすでに5年。

西海岸では住宅価格も上がり始め、人々の暮らしも漸く改善してきたように感じられました。

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(南カリフォルニア・オレンジ郡の街並み;広い道路、青い空)

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(オレンジ郡Fashion Islandにある電気自動車テスラのディーラー)

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(上記のモデルS車の販売価格は約11百万円)

さて、私が米国にいる間、日本で 9日(月)の日に 「プレジデント」 が発売されました。

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この最新号の 「プレジデント」 84~85頁に「TVドラマ半澤直樹」に関する記事が載っています。

編集者の方たちがこの記事のインタビュー取材のために私のオフィスに来られたのは8月20日。

ちょうどテレビドラマ第1部の大阪編(7月7日テレビ放映の第1話~8月11日放映の第5話まで)が終わったところでした。

ドラクエなどのゲーム風に言えば、ステージ1を戦ってクリアし、ワンナップして、いよいよこれから東京編へと進み、「ラスボス」大和田常務に挑もうとしているところ。

「人気ドラマに関して取材を受ける」というのは、私にとっては初めてのことでしたが、なかなかどうして楽しいインタビューになりました。

このインタビュー記事の全文は「こちら」でもご覧になれます。

そう言えば、今回米国へ向かう飛行機のなかで読んだのが『ロスジェネの逆襲』

         Photo_2

現在放映中のテレビドラマ「半澤直樹」東京編の続編にあたるものです。

ネタバレになっては申し訳ないので、ここではこれ以上書きませんが、営業2部次長の後、半沢はM&Aのアドバイザーの仕事に就くことになります(あくまでも小説での話です)。

彼が大阪の支店で融資課長をやる前のポストが本店審査部。

私も興銀時代に本店審査部→営業3部(融資課長)→企業投資情報部(M&Aのアドバイザー)と動きましたので、なんとなく親近感がわきます。

それにしても前回(第8回)の平均視聴率が関東32.9%、関西32.7%だとか・・(『こちら』)。

テレビドラマがこれだけヒットしたので、TBSは、ほぼ間違いなくこの後「半沢直樹2」もテレビドラマもしくは映画にするんだと思います。

半沢が今回のステージでラスボスをどう倒すのかとともに、次ステージ(M&Aのアドバイザー)での活躍ぶりも早く見てみたい気がします。

半年ほど前のことですが、TBSの幹部の方とお話ししていたら「社内では‘振り向けばテレ東’と言われているんです」と自虐ネタを披瀝されていましたが、今やTBSは半沢のヒットで快進撃中。

何があるか分からない。これだからビジネスの現場は面白いんだと思います。

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2013年9月 1日 (日)

CEOの辞任

CEO(最高経営責任者)が「1年以内に会社を辞める」と発表した途端に、その会社の株価が急騰するとしたら、発表したCEO当人はどんな気持ちになるでしょうか。

株式市場はときに冷酷で、実際にそういった非情な動きを演じることも少なくありません。

先月マイクロソフトのバルマーCEOが「1年以内に辞める」と発表した時もそうでした。

Microsoft

        (ここ1か月間の株価の動き)

発表を受けて株価は朝から一気に35ドル20セントまで上昇(8月23日)。

一時前日引値比8.7%増を記録しました(最終的には23日は34ドル75セント、前日引値比+7.2%でクローズ)。

バルマー氏と言えば、ハーバード時代、ビル・ゲイツと同じ寮に住んでいて、ビル・ゲイツに説得されて創業間もないマイクロソフトに入社したことで有名。

実はバルマー氏はハーバード卒業(1977年)後、マイクロソフトに入社する前に、スタンフォードのビジネスクールに入学しています。

私より1学年上の「79年クラス(class of 79)」(1977年入学、79年卒業の学年)。

われわれの学年の同窓会では今でも当時のバルマー氏の話題が出たりしています(当時のスタンフォードでは冬学期、春学期の選択科目授業で1年上の学生と一緒になることがあったのです)。

さてバルマー氏はスタンフォードのビジネスクールに入学したものの卒業せずにマイクロソフトに入社。

これは彼が下した人生最高のビジネス・ジャッジメント(経営上の判断、意思決定)だったかもしれません。

なにせフォーブス誌によると、彼の個人資産は今や1兆5200億円(1ドル=100円で計算)。

全米19位の金持ちです。

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     (Steve Ballmer; The photo is from Wikipedia)

彼が保有するマイクロソフト社の株数は3.3億株(『こちら』)。

8月22日の引値で計算しても1兆700億円。

これがどうでしょう。

自らの辞任を発表したことで株価が上昇。

彼の持ち分もたった1日で800億円も価値を上げ、1兆1500億円となったのですから、彼自身ちょっと複雑な心境になったのかもしれません。

もっともいろいろな新聞記事を読んでみると彼は必ずしも辞任を望んでいなかった、むしろ続投したかった、というのが真相のようです。

しかし『こちら』の記事にあるように、

「バルマー氏がビル・ゲイツに代わってCEOになった前日のマクロソフトの時価総額は6000億ドルを超えていた(つまりこれが彼がビル・ゲイツから引き継いだマイクロソフトの時価総額)。

それがバルマー氏が辞任を発表する前日のマイクロソフトの時価総額は2700億ドル以下になってしまった(つまり彼のCEO在任中、マイクロソフトの時価総額は半分以下に減少した)。

(On the last day of 1999, the day before he took over as CEO, Microsoft’s market capitalization was $600 billion. On the day before he announced his intention to retire, it was less than $270 billion)」

であるからこそ、株式市場はバルマー氏辞任のニュースにポジティブに反応したということなのでしょう。

冷酷なようですが、こうした「実績なり結果による評価」、「数字による評価」が徹底しているところに、米国の資本主義の強さの秘密があるように思います。

さて話は変わりますが、日本。

1兆円とかいう数字が並んだ前段の記事に比べてぐっとスケールダウンしますが、ハンバーガー・チェーンのマクドナルドの話です。

先月27日、日本マクドナルドは、原田泳幸・会長兼社長兼最高経営責任者(CEO)が会長専任となり、サラ・カサノバ氏が社長兼CEOとなる人事を決めたと発表しました。

社長退任となった原田氏が記者会見で「決して退任ではない」、「マネジメントの強化だ」と述べたことで、かえってCEO退任が大きなニュースとなって取り上げられてしまいました(たとえば『こちら』)。

もともと米国マクドナルド本社のアニュアルレポートやプレスリリースでは最近の日本の業績について厳しめの表現が目立つようになっていました。

2011年のアニュアルレポートでは、「APMEA(アジア・太平洋・中近東・アフリカ)地域は中国とオーストラリアに牽引されて好調だったものの日本は地震の影響もあり、苦戦を強いられている(face some challenges)」と説明していました。

2012年になると「日本のuneven recovery と中国経済の減速があったにも係らずAPMEA地域は売り上げ増を達成した」と表現。

今年7月22日のプレスリリースでは、「第2四半期は、世界全体では1.0%の売り上げ増・・ただし中国、オーストラリア、日本のネガティブな結果により、APMEA地域の売り上げは0.3%のマイナス」とコメント。

先月8日に発表された業績報告によると、「7月は世界全体では0.7%の売り上げ増・・ただし日本、オーストラリア、中国のネガティブな結果により、APMEA地域の売り上げは1.9%のマイナス」。

なお米国マクドナルド本社は世界各国での店舗数推移を発表しています。

これによると:

     (2007年)→(2012年)

全世界 31,377   34,480

米国   13,862      14,146

日本   3,746        3,279

主な国では日本だけがマイナス。

米国本社としては「日本にもっと頑張って欲しい」との気持ちが強かったのかもしれません。

いずれにせよ新たに日本マクドナルドのCEOとなったサラ・カサノバ氏が事業をどう立て直すのか、その手腕が期待されます。

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