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2014年5月25日 (日)

キンキナトゥス

キンキナトゥス(Cincinnatus)は共和政ローマ前期に登場する伝説的人物。

      Cincinnatus

彼は紀元前5世紀頃の農民で、執政官に任命されて、ローマを外敵の襲撃から守ります。

そして敵を滅ぼすと、ただちに進んで政治権力を返上。

ふたたび農民に戻ったことで知られています。

2012年12月。

ブラジル、リオデジャネイロ。

ニューヨーク出身のジャーナリスト、グレン・グリーンウォルドは、この地に住みながら、英国ガーディアン紙などに寄稿していました。

12月1日。

彼は1通のメールを受け取ります。

コンピューターの画面に現れた差出人の名前は「キンキナトゥス」でした。

       Glenn_greenwald_2

       (グレン・グリーンウォルド)

キンキナトゥスと名乗る人物は、メールでグレンに対して「あなたはPGPを使っていないのではないか、だとすれば、ぜひPGPを使ってほしい」と促してきました。

PGP は Pretty Good Privacy の略。

1991年に開発され、その後、何度も改良が重ねられてきました。

メールやオンライン経由の通信を、監視やハッキングから守るツールです。

Pgp

〝キンキナトゥス"と名乗る人物は、「グレンのPGPの〝公開鍵″を見つけようとしてあちこち探した」。しかし、「どこにもなかった」と書いてきました……

* * * * *

以上のような出だしで始まるのが、グレン・グリーンウォルド著『暴露:スノーデンが私に託したファイル』

スパイ小説のように話は展開していきますが、これはすべて事実。

実際に起きたことであり、現実にいま起きていることです。

Snowden

自らの身の危険も顧みず本書を著したグレン・グリーンウォルド氏。

そして何よりも、スノーデン氏の勇気ある行動に敬意を表したいと思います。

ある意味、スノーデン氏は現代のキンキナトゥスなのかもしれません。

スノーデン氏の情報に基づいた英ガーディアン紙による米情報収集活動の暴露報道は今年、ピュリツァー賞を受賞。

また本書『暴露:スノーデンが私に託したファイル』は ソニー・ピクチャーズエンタテインメントによって映画化されることが決定。

プロデューサーはスパイ映画「007」シリーズのマイケル・G・ウィルソン氏とバーバラ・ブロッコリ氏が務めることになりました。

スノーデン氏はこう綴っています。

「私は政府の最も暗い一角で働いてきました」

2009年。

キンキナトゥスの名前でグレン・グリーンウォルド氏にメールを送る3年前のことです。

スノーデン氏は日本に派遣されていました。

表向きはデルの社員として日本には2011年まで駐在しました。

そして日本で、より高次元の機密へのアクセス権を得るようになりました。

「日本のNSA(米国国家安全保障局)で多くの時間を過ごすほど、こうしたすべてを自分の中だけに留めておくことはできないと感じるようになっていきました」

それにしても例えば……

われわれが普段なにげなく使っている携帯電話。

CIAやNSAの手にかかれば、この携帯電話が盗聴器に変身する……。

携帯電話を使って話す会話が盗聴されるだけではありません。

たとえ携帯の電源を切っていたとしても、部屋の中の会話が「電源を切られた携帯電話」を遠隔操作するCIAやNSAによって盗聴されてしまいます。

これを防ぐには携帯電話の電池を抜くか、携帯電話を冷蔵庫などに入れてしまい、ひそひそ声で話すしかないとのことです。

そういった、今までは「知らなかった」ことが、次から次へと出てくる本。

私は一気に読んでしまいました。

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