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2014年8月29日 (金)

スライドシェア

2012年5月。

今から2年以上前でした。

リンクトインは約120億円を投じてスライドシェアを買収する旨を発表(『こちら』)。

と言っても、「そもそもリンクトインって何なの?」という方は、『こちら』 をご覧ください。

「フェイスブックとの違いは?」という方は、『こちら』 が参考になります。

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     (リンクトイン上場以降の株価推移)

リンクトインと言えば、2011年5月19日に株式を上場。

公募価格(IPO Price)45ドルに対して、

上場時の初値が83ドルをつけ話題を呼びました(『こちら』)。

現在は225ドル前後ですので、公募で買っていれば、3年強で5倍。

初値で買っていれば、2.7倍です。

さて、話を元に戻しましょう。

リンクトインが2年ほど前に買収したスライドシェアは、PowerPointなどで作成したプレゼンテーション用スライドの共有サイト。

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まずは『こちら』に入ってみてください。

全世界の人々が作製したプレゼン資料を見ることが出来ます(ここまでは会員登録不要)。

会員(無料)登録すれば、自分のプレゼン資料をアップロードすることも可能。

たとえば私が今年5月16日に行った東京証券取引所での講演。

私は、以下の3点を考慮し、このときのプレゼン資料をアップしても良いのではないかと考えました。

①すでに講演してから3カ月以上を経過している

②講演を聞きにいらした方々(約200名)にとっては無料の講演だった

③東証は、「投資家教育、金融リテラシー向上」を目的としてこの種の講演を企画してきている

ということで、このとき使ったスライドを一部修正の上、Version2 として、先日スライドシェア上にアップしました。

『こちら』をクリックして頂ければ、55枚のパワーポイント・スライドを見ることが出来ます。

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2014年8月28日 (木)

原発の労働問題

先週の勉強会は、縄田和満東京大学教授 による「原発の労働問題」についてでした。

縄田教授は3.11の後の原発事故が起きる前から、原発の労働問題について研究し、警鐘を鳴らしていました。

すでに各方面で発言されてきていますが、以下、教授が今年7月、『知財問屋 片岡秀太郎商店』 に出演し、インタビューに答えていた時の模様を抜粋します。

青字が縄田教授の発言、茶色がインタビューアーです。

* * * *

(縄田教授) 

『・・東電は法律で決められたところ以外は殆ど下請け会社(協力会社)に丸投げ、その下請けも丸投げ…。

東電にとって、これほど楽なことはありません。

計画書を示せば、元請からその下請けまで、すべてやってくれる。

組合から見ても現場の作業員とホワイトカラーは分離した方がやり易いし、本社の賃金体系では高すぎます。

更に作業員に問題が起きても、下請け会社の問題で済ませられます・・』

『・・ある原子力発電所では、暴力団のフロント企業が下請けに入って摘発されました。

そういうものや利権、地元対策が絡むとどうしても重層になってしまうようです。

東電が調べて3次の下請けまでだったといっていても、実際は4次の人が上の会社として登録していたというような偽装下請けの例も多く見られます。

平時は、それでも皆、大きな不満は持たずにやっていましたし、何とかまわっていました。

しかし、非常時になると、まったく機能しません。

東電には指揮命令権がなく、下請け会社の社員に対して命令できず、マニュアル通りの事しかやれない。

下請け会社の社員には契約内容にないことをやる義務はないし、業務以外の事を頼まれてやれば、そもそも労基法違反です・・』

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   (上はGoogle Earth で出てくる福島第一の写真)

(片岡)

『そうしたことを事故の前からご提言されていましたね』

(縄田)

『2007年から労働経済、労務管理問題の延長として原発を調べはじめました。

電力業界というのは非常に特異な業界で、例えば、殆どの他の業界が経験している人員整理も経験していません。

総括原価方式ですから…。

そうなると普通のモデルは当てはまらない。

巨大な業界なのに外部の人間による客観的な科学的データによる分析が殆どありませんでした。

勿論、原発村が内輪で行ったものはありましたが。

私は原発村の人間ではないし、原発に反対でも賛成でもない、ただ科学的にこういう事態になっていると、先ほど話したような問題点を指摘したのですが、他の業界とは比較にならない反発がありました・・』

* * * *

『こちら』 でインタビューの全文をお読みになることが出来ます。

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2014年8月26日 (火)

ご案内

昨晩出演した日経CNBCテレビ、『日経ヴェリタストーク』ですが、再放送は8月28日(木) 、21:15~。

またPCやスマホでもご覧になれます(『こちら』をクリックしてください。その後、一番右上の窓をクリック)。

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2014年8月25日 (月)

Toilets first, temples and churches later

今晩は日経CNBCテレビの『日経ヴェリタストーク』に出演しました。

インド経済について。

今年5月の選挙でインド人民党(BJP)が勝利し、あたらしくインドの首相となったモディ氏。

         Modi1_2

今月31日~9月3日の予定で来日します(『こちら』)。

安倍首相をツイッターでフォローする人は35万人いますが、逆に安倍首相がフォローする人は3人しかいません(『こちら』)。

その貴重な3人のうちの1人がモディ首相です(残り2人のうちの1人は安倍昭恵夫人)。

          Modi2_3

モディ首相と言えば、2002年のグジャラート州宗教暴動で1000人以上のイスラム教徒が死亡した際、これを黙認したとの疑いで裁判にかけられたことで有名です。

この事件はそもそもヒンドゥー至上主義の活動家2人が乗っていた列車に火が放たれ、58名が死亡。それに激怒したヒンドゥー教徒が、イスラム教徒を復讐の標的として1000人以上を殺戮したというもの(『こちら』の本の169-170頁)。

最高裁はモディの責任に言及することなく、裁判の差し戻し判決を下しました。

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               (2012年3月26日号;アジア版)

しかし米国はモディに対してビザの発給をずっと拒否してきました。[2005年にモディがニューヨークでインド系アメリカ人に対して演説をする目的で米国に行こうとしたときにも、これを認めませんでした(『こちら』)]。

モディが「米国入国への禁止者リスト」から外れたのは彼が首相になってから(『こちら』)。

生粋のヒンドゥー至上主義者であり、いまでも民族義勇団(RSS) の一員であるモディ首相 (『こちら』 の27頁参照)。

そんな彼も選挙中は、「Toilets first, temples and churches later(寺院や教会よりも、まずトイレを)」と訴えました。

宗教の問題は置いておいて、とりあえずインフラの整備、経済発展を、というわけです。

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           (From Google Earth)

自身の就任式にはパキスタンのシャリフ首相も招きました。パキスタンは国民の97%がイスラム教徒です。

インドとパキスタンの融和は米国の国益にも合致。

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      (The Taj Mahal Palace Hotel, Mumbai)

モディがほんとうに、「Toilets first, temples and churches later」の政策を進めるのか、各国が固唾を呑んで見守る中、彼は首相就任以来、2番目の訪問先(最初の訪問はブータン)として日本を今月末訪問します。

1991年6月、インドを経済危機(外貨危機)が襲い、外貨準備高は11億ドルにまで落ち込みました。その時、3億ドルの緊急融資を行い(『こちら』の133頁)、急場を救ってくれた国――。それが今度モディが訪問する国、日本です。

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2014年8月23日 (土)

ジャクソンホール (その2)

おおかたの予想どおり、今年のジャクソンホールでのミーティングは大したインパクトもなく終わりました。

これから先の米国の利上げがどうなるか―。

これについての新しいヒントは、今回の会合では何もなく、すべては今後の経済指標とこれから先のFRBでの議論を見て判断していくしかありません(9月16-17日、FOMC 開催予定)。

もっとも為替は一時的に円安に振れました(下図)。

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           (30分足)

それともうひとつ。

日本の新聞ではあまり報道されていないと思いますが、WSJ、FT、CNBC、ABC、NY Times などが一斉に報じたのが、緑のTシャツを着た人々。

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「どこに回復があるんだ?(What recovery?)」と書かれたTシャツを着て、わざわざジャクソンホールまでやってきたようです。

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ニューヨーク(ウォール街)では史上最高値の株価を更新したりしているのに、一向に生活が良くならない人々のイライラ感がこうした行動に走らせているのかもしれません。

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ブルームバーグのニュース(『こちら』)によると、

(Tシャツ)グループのお抱え弁護士のアディ・バーカン氏は、会場のジャクソン・レーク・ロッジのエクスプローラー・ルームの入り口でイエレン議長と短く言葉を交わした。

同氏によれば、「議長はわれわれの言いたいことを理解しており、できる限りの措置を講じていると述べた」。 』

とのことです。

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2014年8月20日 (水)

ジャクソンホール

毎年のように、このブログで、ジャクソンホール(ワイオミング州)でのシンポジウムについて書いてきました(『2011年9月7日』『2012年8月16日』『2012年9月1日』)。

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ご存知の方も多いと思いますが、この経済シンポジウム会議(Economic Symposium Conference)は、カンザスシティ連邦準備銀行(FRBカンザスシティ)がスポンサーとなって、1978年より毎年開かれてきています。

もっとも開催地がジャクソンホールとして固定したのは1982年からで、それ以前はコロラド州Vailなど(1981年)、とくに開催地が決まっていたわけでもなく、FRBカンザスシティの管轄地域内の「どこか」で開かれていました。

また会議のテーマも当初は農業問題が中心(注:1978年以降の毎年のテーマ、そしてそこで行われた全演説の内容は『こちら』でご覧になれます)。

そもそも連邦準備制度理事会の議長がわざわざワシントンDCからやってくるような会議ではありませんでした。

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会議が全米、さらには全世界の注目を浴びるようになったのは、1982年から。

それまでの「注目を浴びなかった会議」をなんとか変えようと、FRBカンザスシティが一計を案じたのです。

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1982年、連邦準備制度理事会議長のポール・ボルカーがフライ・フィッシングを好むことを知って、FRBカンザスシティは、マス釣りで有名なジャクソンホールで会議を開くことにしました。

そしてボルカー議長を招くことに成功したのです(詳しくは『こちら』)。

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こういった経緯で始まったジャクソンホールでの経済シンポジウム会議。

今年のテーマは、“Re-Evaluating Labor Market Dynamics”というもので、8月21日から23日にかけて行われます。

Keynote speaker はYellen議長で、22日(金)にスピーチを行う予定(『こちら』)。

日銀の黒田総裁も出席予定。

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ただし今年の会議はあまり大したことなく終わるのでは、との見通しが大勢(『こちら』)。

Yellen はこれまで十分に喋ってきていますし、この場でさらに新しく話すことは無いのでは、との見方です。

なおYellen が22日のいつ話すのかといった点に関する「プログラムの詳細」は21日、現地時間の午後6時に明らかになります。

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ところでポール・ボルカーと言えば、グリーンスパンの前任のFRB議長。

身長が2メーター以上あり、背が高いことで知られています。

かつての興銀の黒澤元頭取も背が高く、ボルカーとよく2人でテニスをしたりしていました。

いまの日本の金融界にYellen議長と個人的に親しくしている人がいるのかどうか…。

今年、Yellen議長や黒田総裁が、ジャクソンホールでの会議が終わった後、マス釣りをやるかどうかは定かではありません。

 

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2014年8月18日 (月)

大学運営基金

先日GPIFについて書きましたが、欧米の運用の世界では、年金と同じく存在感があるのが大学の運営基金。

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ハーバードの運営基金は残高3兆3000億円。

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過去20年間の平均リターンは年率12%を超えます(『こちら』)。

スタンフォードは運用残高2兆2000億円。

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過去10年間の平均リターンは年率10%。

下図はベンチマークとの比較。

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エンジ色がスタンフォードですからベンチマークに比して勝っています。

日本の場合は規模が、米国の100分の1近く。

もっとも大きな慶応でさえ438億円でハーバードの1.3%(『こちら』)。

下表は少し前(2012年)の比較表(『こちら』)です。

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運用利回りは、というと、東大の場合、年1.2%でした(『こちら』)。

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2014年8月15日 (金)

セイルフィンプレコ

水槽の中で一匹だけいる魚がセイルフィンプレコ。

いつも姿を隠していてなかなか見ることができません。

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上の写真でも、見えるのはカエルレウス(黄)、コバルトブルーシクリッド(青)、レッドゼブラ(オレンジ)、スノーホワイトシクリッド(白)で、セイルフィンプレコの姿は見えません。

セイルフィンプレコはいったいどんな魚なのでしょうか。

なぜ一匹だけいるのでしょうか。

実はセイルフィンプレコは下のように黒褐色であまり格好よくありません(大きさは他の4種の魚とさほど変わりません)。

    S45_2

見た目は格好よくない(ややグロテスク)なのですが、この魚は、水槽のガラス面に生えてくるコケや藻を食べてくれます。

言ってみれば、お掃除ロボのような役目を果たしてくれるのであり、だからこそ一匹だけ水槽の中にいるのです。

もっともセイルフィンプレコはいつも姿を隠していて、なかなか見ることができません。

臆病なので、他の魚に突っつかれると、すぐによけて隠れてしまうのです。

小さな水槽の中ではありますが、そこには、縄張りだとか、突っつきあいだとか、えさの奪い合いだとか、生きる者にとっての「ひとつの世界」があります。

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2014年8月12日 (火)

GPIF

昨晩は日経CNBCテレビの『日経ヴェリタストーク』に出演しました。

時間の関係で十分説明できなかった点をいくつか・・・

(1)各国の公的年金運用状況

こちらの表が詳しいです(このままでは読めませんが、図の上でクリックするとかなり大きくなって普通に読めるようになります)。

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(2)アメリカのSocial Security Trust Fund

こちらの説明が参考になります(この資料も、図の上でクリックすると大きくなります)。

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Wikipedia の説明も参考になります(『こちら』)。

「2033年にはSocial Security の積立金が枯渇する」というと、今から19年後。

私自身、シカゴに5年勤務して、Social Security Tax を払っていたので、

66歳になれば米国の年金ももらえる(その分、日本の年金が少ない)はずなのですが、

枯渇してしまうんですね、原資が・・・。

(3)GPIF 運用資産額・資産構成割合推移

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これも図の上でクリックすれば大きくなります。

(4)最近の日銀によるETF購入状況

先週は8月4日(月曜日)以降、毎日156億円ずつ買っていました。

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もっと詳しいデータは『こちら』でどうぞ。

(5)再放送

番組の再放送は8月14日(木) 21:15~。

またPCやスマホでもご覧になれます(『こちら』をクリック)。

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2014年8月11日 (月)

株投資の上限撤廃 公的年金、20%台に拡大へ

昨日の日経新聞によると、公的年金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は、18%とされていた国内株式の保有上限を一時的に撤廃(『こちら』)。

18%というのは、GPIFが持つ資産127兆円に対する国内株式の保有割合の上限設定数値。

これは、12%の基本運用割合に、6%の上限乖離許容幅を加えたものです。

具体的な数字で見てみましょう。

たとえば2014年3月末時点で、GPIFが保有していた国内株式は20兆8000億円。

これはGPIFの全資産126兆6000億円の16.47%に当たりました。

つまりこの時点での国内株式の運用割合は、12%の基本運用割合は超えていたものの、乖離幅は+4.47%で、+6%の上限乖離許容幅の内側に収まっていたことになります。

さて、今回の「上限一時的撤廃措置」により、これから先は、18%(=12%の基本運用割合+6%の上限乖離許容幅)の「上限」を超えても、国内株を買い増せるようになります。

報道によると、これは9月に新たな資産割合を決めるまでの暫定措置で、9月以降は国内株式の割合を20%台に増やすとのこと。

実は、GPIFが国内株の割合を「20%にする」とか、「20%超も考える」とかいったニュースは、6月初め頃から幾度となく流れてきていました。

GPIFは国民の年金を預かるところですから、透明性が要求されます。

ですから運用委員会での議論や運用委員長の見解が報道されるのはやむを得ない面もあるのでしょう。

しかしながら、「9月にも20%(もしくは20%超)」ということが伝わると、市場では、「GPIFが買いに入る前に買っておこう」と考える人たちが出てきます。

その結果、株価が先に上がってしまい、GPIFが制度上、買えるようになる時には、マーケット全体が高くなってしまっている、つまりGPIFとしては高値掴みをすることになってしまう・・・

それを避けるには、20%(もしくは20%超)ということが正式に決まる前に、GPIFにも(18%の)上限を超えても株を買うことを認めてしまう、つまり他のマーケット参加者と同じ立ち位置にGPIFを置く・・・

それを決めたのが今回の上限撤廃のニュースということなのだと思います(もちろん安倍政権としては、少しでも早く株式市場へのテコ入れをしたかっただけという見方もあります)。

ところで、上限が撤廃されたことで、運用割合は、今月中にも、18%→20%となるのでしょうか。

理屈の上ではそうではなくて、「12%の基本運用割合+6%の上限乖離許容幅」が、「20%(もしくは20%超)の基本運用割合+6%(?)の上限乖離許容幅」へと変化する(18%→26%)ということでしょう。

とすると、インパクトは8%前後にもなり得ることになります。

1%で1兆3000億円ですから、市場に与える影響は10兆円にも及びうることになります(もっとも最初から上方への乖離を目指すというわけではなくて、乖離はあくまでも市況が上がった結果、生じうるものでしょうから、現実には「16~18%」が「20%になる」といった程度のインパクトだとは思います)。

いずれにせよ、GPIFの資金は私たちの大切な年金の原資。

高値掴みにならないよう、安値で、慎重に買い進めていって欲しいものです(と言っても、市場はGPIFの先回りをしようとしますから、「言うは易し、行うは難し」ですね・・・)。

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2014年8月10日 (日)

困難なことをしていないとしたら、あなたは時間を浪費している

ハイディ・ロイゼンは1983年のスタンフォードMBA卒(私より3年後輩になります)。1996-97年にかけてアップル社の副社長(Vice President)を務めました。

『1989年の3月1日(注:彼女がアップルに勤める前)に、

スティーブ・ジョブズが交渉のために電話してきました。

実は、私は父が出張先のパリで急死したとの連絡をその前の晩に受けたところだったのですが、電話を取るとスティーブだったので、電話に出ました。

父が亡くなったことをスティーブに話すと、「何であなたはいま働いているんだ。すぐに家に帰った方がいい。私もすぐに行くよ」と言ってくれました。

実際、スティーブは家に来てくれ、私が2時間泣く間、私の隣で床に座っていてくれました。

On Mar. 1, 1989 Steve called to talk to me about a negotiation, and as it was Steve I took the call, even though I had just learned the night before that my father had died suddenly while on a business trip in Paris.

When I told Steve what had happened, he said, ‘Then why are you working? You need to go home. I’ll be right over.’

Jobs came to her house and sat on the floor beside her while she sobbed for two hours.』

以上はForbes誌(2012年10月22日号)の

「スティーブ・ジョブズの伝えられて来なかった話  “Untold Stories About Steve Jobs”」の一節(『こちら』)。

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ハイディ・ロイゼンは、今ではベンチャー・キャピタリストとして活躍する一方、スタンフォード大学のエンジニアリング・デパートメント(工学部)で教えています(『こちら』)。

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      (Photo from the Website of Heidi Roizen)

彼女の講義はスタンフォードのウェブサイトで動画として見ることが出来ます(『こちら』)し、

幾つかの記事にもなっています(とくに『私がスティーブ・ジョブズと交渉して学んだこと』のブログ記事(『こちら』)は多くの人に読まれています)。

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その彼女が語る『人生とキャリアを充実させる8カ条』が和訳されてLifehacker 誌に掲載されました。

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第1条は:困難なことをしていないとしたら、あなたは時間を浪費している。

以下は、『こちら』でどうぞ。

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2014年8月 9日 (土)

ヒトの脳まねた半導体

すでに日経新聞(8月8日付)などでも記事になっていました(『こちら』)が、IBMがヒトの脳の情報伝達をまねた半導体を開発したとのこと。

米サイエンス誌で発表されています(『こちら』)。

日経記事によると、

『ヒトの脳の神経細胞は「シナプス」と呼ぶ組織で無数につながり、情報を伝えたり記憶したりする。

限られた大きさにもかかわらず、わずかなエネルギーで複雑な作業をこなす脳を模した半導体チップができれば、人の脳と同等の作業ができるコンピューターが実現するとされる。

IBMの日米の研究所とコーネル大学の研究チームは、100万個の神経細胞と2億5600万個のシナプスを模した回路を持つ半導体チップを試作した…』

先日ご紹介したレイ・カーツワイルの予言する世界(『こちら』)に近づいてきました。

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THE 21

本日発売の『THE 21』(PHP研究所)9月号。

          Php219

38-39頁にインタビュー記事が掲載されていますので、宜しかったら本屋さん、コンビニなどで、ご覧になってみてください。

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2014年8月 4日 (月)

人間の脳をスキャンしてアップロードする技術

「2020年、コンピューターは人間の知性を超える」― こう予言するのは米国のレイ・カーツワイルです。

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ビル・ゲイツは、彼のことをこう評しています。

「レイ・カーツワイルはわたしの知る限り、人工知能の未来を予言しうる最高の人物だ。 

ITが急速に進化をとげ、人類がついに生物としての限界を超える未来を(カーツワイルの著書は)魅惑的に描いている。 

そのとき、われわれの人生は想像もつかない大変革を経験するだろう」

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レイ・カーツワイルは1947年生まれ。

「フラットベッド型スキャナー」をご存知でしょうか。

いまでは市販のプリンターやコピー機などにも組み込まれているものです。

原稿をガラス台に固定し、下から光を当てて読取装置を動かして画像を読み取るスキャナーです。

レイ・カーツワイルは1975年に光学文字認識方式の「フラットベッド型スキャナー」を発明。

翌年には読み取った文章を音声化することにも成功しました。

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     (National Medal of Technology and Innovation)

彼はこのほかにも数多くの発明を手がけ、「ナショナル・メダル・オブ・テクノロジー」など世界最高峰の賞を数々受賞、12の名誉博士号をもち、3人の米国大統領から賞を贈られています。

未来学者としても著名で、1990年の著作で、

「2000年までには、コンピューターがチェスの世界チャンピョンを打ち負かすだろう」

と予言しました(実際には1997年に、1秒間に2億通りもの手を読むIBMのスーパーコンピューター「ディープブルー」が当時12年間にわたってチェス世界一を誇っていたロシアのガルリ・カスパロフを2勝1敗3引き分けで打ち負かしました)。

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            (Deep Blue)

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          (ガルリ・カスパロフ)

レイ・カーツワイルの名を一気に世界に知らしめたのは、2005年の彼の著作「The Singularity is Near」(邦訳『ポスト・ヒューマン誕生』)です。

全米ベストセラーとなったこの著で、彼は、2020年には人間の知性に匹敵する能力(処理能力、記憶容量)を持つコンピューターが1000ドル(10万円)で買えるようになると予測しました。

さらに2025-30年にかけては、分子レベルで設計された、大きさがナノメートル単位の小ささのロボット(ナノロボット;もしくはナノボット)で体内から多くの病気を治せるようになると予測。

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2030年代の初頭には、自力運動性のナノロボット血球が導入されることにより、心臓の機能が代替される…。

人口赤血球レスピロサイトの酸素運搬能力が大幅に向上し、ナノロボットに酸素の供給と二酸化炭素の除去を任せられるようになる(つまり肺がなくても生きていけるようになる)…。

ナノロボットを使って脳をスキャニングすることが行われるようになり、人間の脳をリバースエンジニアリングで解析することが進む…。

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      (ヒトゲノムの構成要素の割合)

レイ・カーツワイルによれば、2030年代には、人間の身体は生物よりも非生物に近いものになっています。

リバースエンジニアリングと再設計技術の進化により、人間の脳内の情報さえもコンピューターにコピーできるようになる…。

人類は、「100年はかかる」と言われていたヒトゲノム解読を1991年から始めて、わずか13年で完了しました。

レイ・カーツワイルは「技術の進化」は下図のように指数関数的動きを示すと考えます。

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つまり彼は「こうした画期的なテクノロジーの進化は、実はすぐ近くまで来ている」と考えているのです。

彼が予測する今から約20年後の世界を『ポスト・ヒューマン誕生』から引いてみましょう。

『「脳をスキャンして理解する」よりももっと論議を呼ぶシナリオが、「脳をスキャンしてアップロードする」というものだ。 

人間の脳をアップロードするということは、脳の目立った特徴を全てスキャンして、それらを、十分に強力なコンピューティング基盤に再インスタンス化することである。 

このプロセスでは、その人の、人格、記憶、技能、歴史の全てが取り込まれる。 

もしも、ある人物の頭脳プロセスを本当に取り込むのなら、再インスタンス化された頭脳には、身体が必要となる。 

なぜなら、われわれの思考の多くは、身体的なニーズや欲望に向けられているからだ』(242-243頁)

2006年に彼がスタンフォード大学で行ったスピーチは『こちら』でご覧になれます。

『ポスト・ヒューマン誕生』は600頁近い大作ですが、面白くて、私は一気に読み終えました。

 

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