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2014年8月 4日 (月)

人間の脳をスキャンしてアップロードする技術

「2020年、コンピューターは人間の知性を超える」― こう予言するのは米国のレイ・カーツワイルです。

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ビル・ゲイツは、彼のことをこう評しています。

「レイ・カーツワイルはわたしの知る限り、人工知能の未来を予言しうる最高の人物だ。 

ITが急速に進化をとげ、人類がついに生物としての限界を超える未来を(カーツワイルの著書は)魅惑的に描いている。 

そのとき、われわれの人生は想像もつかない大変革を経験するだろう」

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レイ・カーツワイルは1947年生まれ。

「フラットベッド型スキャナー」をご存知でしょうか。

いまでは市販のプリンターやコピー機などにも組み込まれているものです。

原稿をガラス台に固定し、下から光を当てて読取装置を動かして画像を読み取るスキャナーです。

レイ・カーツワイルは1975年に光学文字認識方式の「フラットベッド型スキャナー」を発明。

翌年には読み取った文章を音声化することにも成功しました。

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     (National Medal of Technology and Innovation)

彼はこのほかにも数多くの発明を手がけ、「ナショナル・メダル・オブ・テクノロジー」など世界最高峰の賞を数々受賞、12の名誉博士号をもち、3人の米国大統領から賞を贈られています。

未来学者としても著名で、1990年の著作で、

「2000年までには、コンピューターがチェスの世界チャンピョンを打ち負かすだろう」

と予言しました(実際には1997年に、1秒間に2億通りもの手を読むIBMのスーパーコンピューター「ディープブルー」が当時12年間にわたってチェス世界一を誇っていたロシアのガルリ・カスパロフを2勝1敗3引き分けで打ち負かしました)。

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            (Deep Blue)

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          (ガルリ・カスパロフ)

レイ・カーツワイルの名を一気に世界に知らしめたのは、2005年の彼の著作「The Singularity is Near」(邦訳『ポスト・ヒューマン誕生』)です。

全米ベストセラーとなったこの著で、彼は、2020年には人間の知性に匹敵する能力(処理能力、記憶容量)を持つコンピューターが1000ドル(10万円)で買えるようになると予測しました。

さらに2025-30年にかけては、分子レベルで設計された、大きさがナノメートル単位の小ささのロボット(ナノロボット;もしくはナノボット)で体内から多くの病気を治せるようになると予測。

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2030年代の初頭には、自力運動性のナノロボット血球が導入されることにより、心臓の機能が代替される…。

人口赤血球レスピロサイトの酸素運搬能力が大幅に向上し、ナノロボットに酸素の供給と二酸化炭素の除去を任せられるようになる(つまり肺がなくても生きていけるようになる)…。

ナノロボットを使って脳をスキャニングすることが行われるようになり、人間の脳をリバースエンジニアリングで解析することが進む…。

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      (ヒトゲノムの構成要素の割合)

レイ・カーツワイルによれば、2030年代には、人間の身体は生物よりも非生物に近いものになっています。

リバースエンジニアリングと再設計技術の進化により、人間の脳内の情報さえもコンピューターにコピーできるようになる…。

人類は、「100年はかかる」と言われていたヒトゲノム解読を1991年から始めて、わずか13年で完了しました。

レイ・カーツワイルは「技術の進化」は下図のように指数関数的動きを示すと考えます。

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つまり彼は「こうした画期的なテクノロジーの進化は、実はすぐ近くまで来ている」と考えているのです。

彼が予測する今から約20年後の世界を『ポスト・ヒューマン誕生』から引いてみましょう。

『「脳をスキャンして理解する」よりももっと論議を呼ぶシナリオが、「脳をスキャンしてアップロードする」というものだ。 

人間の脳をアップロードするということは、脳の目立った特徴を全てスキャンして、それらを、十分に強力なコンピューティング基盤に再インスタンス化することである。 

このプロセスでは、その人の、人格、記憶、技能、歴史の全てが取り込まれる。 

もしも、ある人物の頭脳プロセスを本当に取り込むのなら、再インスタンス化された頭脳には、身体が必要となる。 

なぜなら、われわれの思考の多くは、身体的なニーズや欲望に向けられているからだ』(242-243頁)

2006年に彼がスタンフォード大学で行ったスピーチは『こちら』でご覧になれます。

『ポスト・ヒューマン誕生』は600頁近い大作ですが、面白くて、私は一気に読み終えました。

 

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