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2014年11月17日 (月)

舞台裏の話

【その1】

日本では、60歳以上の人が個人金融資産の8割を握っています(若い人は住宅ローンを抱えていてネットベースの金融資産はさほど多くありません。一方、60歳や65歳になると退職金を手にする人が増えます)。

しかも60歳以上の人というのは、すでに日本の全人口の3分の1を占めています。

結果として、新聞や雑誌、テレビなどは、人数もたくさんいて、お金(購買力)もある彼らを対象とすることが多くなります。

具体的には、マネーと健康をテーマにしたものが多くなります。

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日経新聞だけでなく、朝日などの一般紙でも「なるほどマネー:リタイアに備える」といったコラムを連載し、テレビは「駆け込みドクター」、「健康カプセル」といった番組を流します。

【その2】

出版の世界も例外ではありません。

編集者の方たちから私のところに持ち込まれる話も、50~60歳以上の読者を対象としたマネー・資産運用といったものが少なくありません。

【その3】

しかし書く方にしてみれば、同じようなテーマで本を書くことに対しては、正直なところ、あまり食指が動きません。

そんな中、今年の4月、編集者のYさんから私のところに送られてきたメールが目を引きました。

「『ビジネスマンの父より息子への30通の手紙』という名著がありますが、ああいったコンセプト、形式で岩崎さんなりに書いていただくのは、どうかと考えました」

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【その4】

それから何度かYさんとの間でメールのやり取りが行われました。

私からYさんにメールにして送ったのは、

「埼玉大学や秋田国際大学などによばれて講演した時の経験からすると、最近の若い人たちは、我々の世代の成功体験よりも、失敗談の方に興味があるのではないか」

といった点。

その後、1か月以上かけて、私はYさんとの間で、幾度となくメールのやり取りを行いました。

これはいわば企画として煮詰めていくプロセス。

と言っても、私はYさんのメールに答えただけで、実際の作業はほとんどが編集者であるYさんの方で行われます。

【その5】

こうして最終的に本の企画としてまとまってきたのは、6月に入ってから。

「ビジネスマン・・・」といった当初の切り口は消えつつも、基本コンセプトは継承。

新たに「20年後の世の中を見据えて・・」といった視点が加わりました。

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想定している読者層は主として20代~40代で、最近の「50~60歳以上をターゲットとする」といった世間一般の流れとは完全に逆を行くもの。

【その6】

さて「20年後の世界を見据えて・・」となると、本来は未来学の知識が必要になってきます。

6月にYさんサイドで企画が固まって私に提示されて以降、私は1か月以上かけて未来学の本を読み漁りました。

しかしいざ本を書く段になってみますと、読者は私に未来学を語ることを期待しているわけではないことに気づきました。

あくまでも私なりの視点で20年後をどう見るか、がポイントです。

そして私はこの段階になって、あることに気がつきました。

【その7】

実は私が金融の世界で過去40年近くにわたってやってきたことは、「将来のキャッシュフローを引く」ということにほかなりません。

5年後、10年後、20年後の世界を予想してキャッシュフローを引く・・・。

興銀の審査部で西豪州の液化天然ガスプロジェクトやチリの銅山開発プロジェクトなどを審査したときも、20年以上にわたるキャッシュフローを引きました。

プロジェクト・ファイナンスの審査のポイントは大きく言って3つ。

①プロジェクト期間をカバーするだけの埋蔵量があるか

②開発コスト、採掘コストなどのコスト査定

③プロジェクト期間における収入見通し

埋蔵量やコスト分析については、興銀の審査部では地質学を専門とする大学教授や資源開発の業務経験豊富なエンジニアの方を技術嘱託として抱えていましたので、彼らとも議論しながら分析を深めていきます。

③の収入見通しの際のポイントとなるのは、油価(天然ガス価格が影響を受ける)や銅価の見通しで、これはたとえば20年後の消費国のGDPがどうなるかなどによって影響を受けます。

【その8】

つまり金融の世界で、私は業務の一環として、20年後の世界を予想しつつキャッシュフローを引くということをしてきたわけです。

であれば、こうした経験をベースに金融アナリストの立場から、「これから先」の世界を見通してみることができるのではないか・・・。

そしてそういった切り口に加えて、自らの失敗談なども交えながら、これからの時代のキャリアの積み方を語れば、20代~40代の方々にとって参考にして頂ける部分もあるのではないか・・・。

こう思って書き始めることにしました。

【その9】

4~5月 編集者との間で企画を煮詰めていく段階

6~7月 情報収集(とくに未来学)、どういった形で書物に落とし込むかの考察

7~10月 執筆

【その10】

こうして出来上がった本があと少しで発売になります(アマゾンで予約可能です;『こちら』)。

全体の構成(章立て)は以下のとおりです。

第1章 今から20年後の世界人口は87億人。一方でシビアな状況を迎える日本

第2章 勃興する成長産業に目をつけろ   

第3章 パイ(売上高と営業利益)が大きくなる企業の見抜き方   

第4章 なくなる職種、絶対なくならない職種、新たに求められる職種    

第5章 狩猟的職業選択のススメ、定住的職業選択のリスク     

第6章 バイリンガル的な語学力は必須 そのうえで差がつくスキルとは    

第7章 未来情報を織り込むマーケットと向き合い、胆力と察知力を身につける方法

第8章 年収1000万円超になっても、「激務」だけが残る働き方を目指すべきではない

第9章 「働きがい」を因数分解しながら、さらなる成長を目指せ    

第10章 苛烈な資本主義(レッド・オーシャン)に取り込まれない働き方が起業であるとの逆説  

【その11】

そう言えば、私のこのブログ、ニフティのサービスの一環として読者のプロファイリングが出てきます(といっても性別、年齢層などだけですが・・)。

ニフティがどうやって判断しているのか分かりませんが、読者層のうち男性95%、女性5%。

年齢層としては

10代:2%

20代:15%

30代:43%

40代:35%

50代以上:4%

つまりこのブログをご覧になっている層の方々にこそ、今回の本を手に取ってみて頂ければと思います(と言っても実際に書店に並ぶのは来週になりそうですが・・)。

 

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